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新しいもの、古いものってなあに?
〜私たちは思った以上に直線的な史観に囚われている

愚者は体験に学び賢者は歴史に学ぶ


新しいもの、古いものってなあに?〜私たちは思った以上に直線的な史観に囚われている

先日経済評論家の伊藤洋一さんと話していて面白いことを知った。

話はアメリカを代表する個人投資家のウォーレン・バフェットの投資対象の変化の話から広がった。
ウォーレン・バフェットは10代の頃から投資を始めて今ではビル・ゲイツと世界一、二を競う大富豪で、一昨年は凋落気味なビル・ゲイツを押しのけて一位に返り咲いたことで話題になった。
昨年はリーマンショック以降、破綻がウワサされていたアメリカの大手投資銀行の株を一人で引き受けて二次ショックを防ぐ立役者になったり、大統領選で財界に顔が利かないという印象があったオバマをいち早く支持することを表明したりと、何かと最近話題になる人だ。

このバフェットという人はいつも危機になると話題になる人だ。

ITバブルの時に、当時錬金術のようにマネーを産んでいたドットコム企業の株を全く買わない理由を聞かれて
「私は自分が理解できないものは買わない」
と言い放った。
実際バフェットが買うのはコカコーラとかP&Gとか、その業態が分かりやすいものばかりだった。

この当時この発言は
「バフェットさんももう過去の人だね・・・」
という印象で受け止められていた。
ところがITバブルが弾けて、ドットコム企業はまさに泡のように消えてしまい、そういうところに投資していたベンチャーキャピタルもバタバタ倒れた2000年過ぎには、バフェットがほとんどこのバブル崩壊の影響を受けていないことが話題になった。
「やっぱりバフェットさんは正しかった・・・」
ということなのだろうか。

バフェットは相変わらず、鉄道などのわかりやすい業態の株を中心に投資しているが、最近その投資対象に中国の電気自動車などが入ってきたり、
「バフェットさんもそういう新しいテクノロジーにも目覚めたのだろうか?」
という話をしていたら、伊藤さんが
「電気自動車なんて新しいテクノロジーでもなんでもないよ、それどころかコカコーラと同じくらい古いオールドテクノロジーだよ」
といって「デトロイト号」の話を教えてくれた。






1910年に日本にも輸入された電気自動車の「デトロイト号」
その動作原理はバッテリーで電気を蓄電しモーターで走る今のEVと全く同じものだ


最近GSユアサがこの電気自動車を復元して公開しようとしているので話題になっている。
動作原理は今のEVとほとんど全く同じで、違うのは能率だけだ。

伊藤さんによれば産業革命の時にスティーブンソンが蒸気自動車を発明し、やがてダイムラーがガソリン自動車を発明し、今日さらにテクノロジーは進歩してハイブリッド車や電気自動車などの新時代に入りつつあるという歴史観は間違っているのだそうだ。

蒸気自動車とほぼ同じ時期にガソリン自動車と電気自動車は出そろっていた、しかし結局その後石油がどんどん安価になっていき、産業は石油エネルギーを中心に発展することになり、自動車もガソリン自動車のテクノロジーだけが生き残ることになった。

そして今は一度は絶滅した筈の電気自動車が「エコブーム」に支えられて復活してきているだけで、それ自体は新しいテクノロジーでも何でもない。
その証拠がこのデトロイト号だということだ。

バフェットは相変わらずわかりやすいオールドテクノロジーに投資していることになる。

この直線的史観に囚われて物事の見方を誤るということは、意外に身近にあるような気がする。
自動車の歴史は蒸気、ガソリン、電気というように直線的に進化してきたわけではないということをどれくらいの人が知っているだろうか。

こうした直線的な史観に囚われやすいのは、私たちは、特に経済成長期に思春期以前を過ごした世代は進歩史観が刷り込まれているという教育の問題も関係ある。
自動車が蒸気からガソリン、電気と進歩してきたという歴史観はわかりやすいので受け入れやすい。
しかしそれは事実とは違うということに逆に奇異な印象を受ける。

今の若い世代だったら、こういう間違いをしないのだろうか。
人類は進歩も進化もしないで、永遠に同じ過ちを繰り返すという歴史観をすんなり受け入れられるのだろうか。
若い人達と話してみたいテーマだ。




2009年6月1日
















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青木さやか