いよいよGoogle支配体制の布石は完了した!? その布陣の意味をどれだけの人が感じただろうか?
昨日のニュースで一番印象に残ったのが、こちらの
Google、携帯向けオープンプラットフォーム「Android」発表ーー33社が参加 - ITmedia エンタープライズというニュース。
Googleが中心になって立ち上げた「Open Handset Alliance」では
キャリア、ベンダー、アプリケーションデベロッパーの参加を広く呼び掛けている
噂されていたGooglePhoneは単にケータイ事業に乗り出し同業がひとつ増えるという話ではなく
ケータイ電話開発の新しいプラットフォームが誕生するという壮大な話だった
その詳細は段々明らかになってきて、こちらのベールを脱いだグーグルの携帯電話プラットフォーム「Android」-モバイルチャンネル - CNET Japanという記事にアライアンスというスタイルにしたその狙いなど詳述されている。
これまでにもケータイのOSについては、いろんなものが名乗りを上げて栄枯盛衰を続けてきた。
私は専門家ではないので、実際のコードの詳細は良く知らない。だからなんとなく聞いた話で書くが、いわゆるOSというものではこれまでは日本製のTRONとLinuxとケータイキャリアの独自OSが勢力を三分してきたと思う。
WindowsOSを搭載したものが最近では話題になっているが、これも注意してみるとケータイの世界ではミドルウエアのようにして使われているモノが多かったように思う。
つまりケータイの基本動作は別のOSで動いていて、ワードやエクセルやスケジュール帳のようなソフトを動かすためにWindowsOSがケータイOSの上の環境で(あるいは別領域で並列に)動作しているという感じだ。
パソコンOSの世界では絶対的な位置を占めているWindowsだが、ケータイの世界ではパソコンと違って特殊な位置にあるらしい。
このケータイの世界ではPalmOSなどを見れば分かるように、各機種、メーカーごとに独自OSが開発されることが多かった。
しかしケータイの端末開発は段々高コストになっていき、今では一機種5〜15億円、3機種1メーカーでラインナップを揃えれば、下手するとワンシーズンで開発費が50億を超えるという時代になってきた。
しかもその50億かけたラインナップは1年で陳腐化してしまい、2年も経たないうちにカタ落ちしてしまう。
とても各ベンダーで独自開発していたのでは割に合わなくなってきている。
そこでTRONベースのもの、Linuxベースのもの、他にクアルコムやシャープなどでモジュール化の試みが行われているが、一番成功しているのは多分ウィルコムだろう。
ウィルコムではSIM-styleカードを使って無線部分を完全にモジュールにしてしまい、ケータイ端末の開発をシャープのケータイ事業部ではなくZAURS事業部にやらせたり、事務所向けの切り替え電話を専門に作っている神田通信工業に作らせたり、挙句にバンダイのタマゴッチのチームに作らせたおもちゃケータイにカードスロットを実装させて子供のおもちゃケータイを本物のピッチにしてしまったり、モジュール化の恩恵を実現してみせている。
パソコンはHPでもIBMでもNECや日立ですら独自OSを開発しようと思えば可能な実力を持った企業がしのぎを削っているが、実際にはOSの開発をしているのはマイクロソフト社と、他はLinuxのディストリビュータ、Apple、OracleなどのUNIXのディストリビュータくらいで、PCベンダーはどこも独自OSを作ろうともしていない。
それはハードの開発だけでもう充分疲弊しているので、中身はモジュール化してできるだけ手間をかけずに開発したいという方向性がはっきりしているからだ。
先日の日立のPC撤退のニュースは、シンドイとは聞いていたがついにそこまでになったかということを思い知らせてくれた。
ウィルコムのモジュールはカードだけのことだが、チップもソフトも全部ヨソで作ってくれれば開発費を圧縮できて楽になる。そうしたらこの商売も悪くないサヤが穫れるのに。
ベンダーは皆そう思っているに違いない。
しかしその先にあるのは、PC事業と同じ運命だけなような気がしているのは私だけだろうか。
この世界ではWindowsの一極集中は起きていない。
だから事情が違う。
そうとも言えるが、それはWindowsがケータイOS用に開発されたOSではないからだ。
Googleが本気を出せば、TRONやLinuxに勝るようなものを作ってくるかもしれない。そのOSはケータイの世界だけで通用すればいいのだ。今までそういう割り切り方で開発されたOSはベンダーの独自開発OSだけだ。共用プラットフォームとして開発されるケータイ専用OSとしては初めてのものになるだろう。
WindowsOSは今までも現在もそして多分これからもミドルウエアとしてしか使われない。
煽るようなすごく幼い表現を使って言うなら、つまりこの世界はGoogleに支配されてしまう可能性がある。
上記の理由でWindowsは全くその対抗軸になり得ない。
対抗軸になりそうなTRONやLinuxだってもともとケータイ専用OSとして開発されたものではない。
歩はGoogleにある。
100ドルパソコンやwebアプリケーションサービスを次々と発表して、それに続いて今度は携帯端末の世界でもGoogleが独占の先鞭を付けるのだ。
ましてやそのアライアンスにはドコモやKDDI、クアルコムやモトローラも名前を連ねている。
もうひとつの対抗軸としてケータイ情報端末の世界に乗り出したiPhoneは、MacOSXのポケット版を搭載した初めての情報端末になりそうだ。
だが試みとしては意欲的で、面白いのだけどどうなのだろうか。
今日のニュースを受けてAccessあたりのどうでもいいような株価が上がったとか下がったとか、ピントがずれたニュースが流れていたが、今日のニュースにはなんだかとってもキナ臭いモノを感じてしまったのは私だけだろうか。
<追記>
11/7付けの日経朝刊に載ったシンビアンのクリフォードCEOインタビューによると、このGoogleOSもLinuxがベースになっているそうだ。考えたらその方がFedraCoreがベースになっている100ドルパソコンとの親和性でも有利かもしれない。そういう意味ではこれまでのLinuxベースのケータイOSと条件は同じということだ。
それでもGoogleが有利だという条件を探すなら、GSM陣営に牛耳られていたスマートフォンの規格を一から構築するにはアメリカのモトローラ、クアルコムなどのハード、チップセットメーカー、ドコモ、KDDIという日本のキャリアの参加が是非必要になるのだが、今回発表されたアライアンスのメンバーがまさしくそういうメンバーになっているという点か。
日本のベンダーは重くのしかかる開発費用を分担して負担するか投げ出すかということしか考えていない疲弊し切った状況になっている時に、まさに白馬の騎士のようにGoogleが現れてOSとチップセット、アプリケーションの開発フォーラムを作ってベンダーの負担を軽減してあげようという話をしているわけだ。
日本のベンダー、キャリアが飛びつかない筈が無い。中国はこれまでGSM寄りで進行してきたが、低コストで盛り上がることができるならいつでもそちらに乗り換えるというのが中国市場の回転の速さだ。
例を挙げるなら現に日本にまだ500万人しか加入者がいないPHSの契約者が、すでに中国には一億人いる!
なんとなく水が流れるように物事が動き始める予感がする。
喜ぶべきことなのか、懸念すべきことなのか?
<さらに追記>
このGoogleOSのコンソーシアムにドコモ、KDDIが入っているのはシンビアン/Nokia、Qualcommの呪縛から離れたいという両者の思いが滲み出ているという話を、どこかで聞いてしまった。
ネタ元はあえて挙げない。
マイクロソフトがあまり大勢力になるとPC世界の二の舞でおいしいところを全部MSに持っていかれるから、それを警戒しているがかといってQualcommも基本的にはMSと変わらない、そういう意味ではGoogle辺りのプラットフォームはちょうどお手頃な対抗軸のOSだということらしい。
Googleにだって結局おいしいところを全部持っていかれたら同じことじゃないのという混ぜっ返しも可能だが、多分そういうことではない理屈があるのだろう。
というよりここは事情を知っている人に教えてもらいたいのだが、ケータイのOSなんて一度Windowsを採用してしまうとLinuxやMacを後で採用できないパソコンの世界と違って、どのOSを採用してもどうにでもなるし、あとから載せ変えも簡単というような世界なんだろうか?
だからお気軽にQualcommの対抗軸なんてことになっちゃうんだろか。
今回4年ぶりくらいにケータイの世界の話題を取り上げたら、もう自分が浦島太郎になりかけていることに気がついた気がする。
2007年11月7日
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