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大本営発表はなかなか認めたがらないが実は今は不況なのではないかという疑問

「実はもう去年から不況なんですよ」?


大本営発表はなかなか認めたがらないが実は今は不況なのではないかという疑問

FOMCが政策誘導金利を0.75%緊急追加利下げすると発表して即日実施したのに、ニューヨークの株が下げ止まらない。
これを受けて多分今日の東京もジェットコースターのような相場が続くんだろう。

0.75という思い切った数字にも驚かされたが、それに全く市場が反応しないということにもっと驚かされた。そんなに今は地合いが悪いのか。
サブプライムの影響がどうのこうのという説明のされ方をしているけど、確かにサブプライムは米主要投資銀行で十数兆円、世界全部で数百兆円という損害が見えてきて、それだけの金がこの騒ぎで消えたのだということを思うと、エンロン事件どころの話ではない。
だから、この巨額の損失が信用収縮につながっているという説明は一応分かるのだけど、逆に言えば被害はその程度に限定されたということもいえる気がする。

どんなに大きくったって、300兆円前後よりケタが増えたりはしないわけでしょ?
世界の金融資産残高は5000兆円ともいわれ、流動性の資金は京円という単位になるのだから、確かに傷はついたけどひん死の重傷というわけではないと思う。
それが見えればもう沈静化してもよさそうな気がする。
日本の不良債権を最後は産業再生機構という形で腫瘍をつぶして膿を出し切ってしまわないと、日本はどうにもならなかったわけだがそうして日本は乗り切った。
アメリカやヨーロッパもそれと同じことをやれば良いのだと思う。

ところが今朝のこのジェットコースター状態はもうサブプライム問題だけでは説明できないような気がする。


先日三菱UFJ総研の嶋中雄二さんの私的勉強会に参加してきて面白い話をまた仕込んできた。
嶋中さんはオーソドックスな循環論者で、コンドラチェクサイクルなど長短4つの景気循環サイクルをベースに経済の動きを純粋に数字から分析していこうという考え方の人で、今、日経の「私の履歴書」に自伝を執筆しているアラン・グリーンスパンと似たところがある方だと私などは勝手に思っている。
「森羅万象はその兆候、軌跡が数字に表れる」
という考え方が似ている気がする。

それで例によってまた膨大な統計資料を駆使した解説を聞いてきて、それをここで正確に再現して書くことは私の頭ではほぼ不可能なのだが、いくつか印象に残ったところだけ書く。
今政府経産省や日銀は
「日本は緩やかな景気拡大期にある」
という見方を崩していない。
それはGDPが拡大しており今の統計基準からいえば確かに景気は拡大しているという判断に「統計上は」なる。
だから
「いざなぎ景気を抜いて戦後最長の経済拡大期が続いている」
という大本営発表になる。

しかしこの「いざなぎを上回る」という好景気はなぜか実感を伴わない。

私自身もそうだし、身の回りで「景気が良くなってきた」と実感できるような現象がなにかあるだろうか?
それどころか雇用は需給がまた微妙になり、国民の収入も支出も伸びが止まって、個人消費は完全に失速しているという数字が統計から見て取れる。
こんな時に一段と賃金抑制を主張する経団連のおめでたさには感心する。
トヨタがいくら空前の企業利益を上げたって、それを消費に還元しなければ国内需要は尻すぼみになるに決まっているというこんな簡単な引き算がなぜあの人たちは理解できないんだろうか。
そして額賀さんは「一喜一憂するな」の一言で国内市場の不振を一喝した。

梶山静六が昔全く同じように「泣き言いうな」という言葉でデフレスパイラルに入りかけて心臓発作を起こしていた日本経済を一喝したのを聞いて
「やっぱり陸軍士官学校はその程度の発想か」
と思ったが、士官学校を出ていない額賀さんも同じだ。
「いざなぎ景気に劣らない好景気の最中だというのに、何が不満で株が下げるのだ」
ということだろうか。

しかし嶋中さんは各種統計を駆使して
「今は景気拡大期ではなく、07年の年頭から実は景気は後退期に入っていたのだ」
と分析する。

大本営発表がいくら「いざなぎを抜いて戦後最長の景気拡大期」と礼賛しても、嶋中さんの資料では昨年からあらゆる業種での成長が鈍化し、一部は後退し消費は失速していることが伺える。
常識的に考えれば昨年の年初から実は不況期に入っているということだ。
それに反論する資料は対アジア輸出の伸びと設備投資ということになるが、これもどちらもフロック的な数字だと嶋中さんは分析する。
現に輸出も設備投資も下向きの傾向がはっきり現れている。

嶋中さんの説を敷衍するといろいろなことがスッキリ腑に落ちる。
例えば昨年春以降景気は拡大局面にある筈なのに株価はどうしてずっと低迷しているのか。
日銀の景気観測や経産省の景気見通しを読んでいてもその理由がスッキリ説明できない。
でも嶋中さんがおっしゃるように
「昨年の春からもう不況に入っているのですよ」
と考えればその理由がスッキリ分かる。
景気が悪いのだ。
株価が下がるのは当たり前だ。

今日の東京は幸いちょっと戻したようだが、さすがにこの数日の売り疲れで戻したのだろう。
ただここでV字反転すると考える理由が見当たらない。
あえて無理矢理考えるなら、やっと市場関係者が軒並み悲観論になってきたので総悲観論になったら悲観的状況は終わりというアノマリーに従うなら、これで下げ止まりということになる。
でもいい材料ってそれしかないのじゃないかな。
日米とも株式市場に投資しているプレイヤーは今すごい勢いで投げ売りしているように見える。
買い手がいないから一日700円なんて記録的な値動きが起きてしまう。
さすがに売られ過ぎて、戻す時も300円近く戻す。
まさしくジェットコースターみたいだ。
それで嶋中さんの説が正しいとすればその「幻の不況」はいつまで続くかということだが、最短のキチンサイクルが今の波動に当たっているなら12ヶ月〜24ヶ月が半期、そろそろ終わりかあと一年で終わりとなる。
あと一年は続くのかなぁ。

嶋中さんは「インフレターゲット」という言葉を日本に紹介した人で小泉元首相などに経済政策について御進講をしたような人物だ。
世間では今は不況だという認識はないようだが、どうなんだろう。




2008年1月23日













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青木さやか