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日米株安、円高ユーロドル安・・・なんでこういう
いびつな動きをするのかちょっと考えてみた

ちょっと整理


日米株安、円高ユーロドル安・・・なんでこういういびつな動きをするのかちょっと考えてみた

先日平均株価指数を表示するDashboardウィジェットを紹介したのだが、そういうものが必要になるくらい今は急激な株式の値動きが起きる。
以前、といってもほんの3年ほど前のことだったと思うがジェイコムショックの時に、誤発注のニュースが株式市場を揺るがせて一日で600円近くも平均株価が下がった。
あの時にはこんな大きな値動きが有るのかと驚かされたが、昨年のリーマンショック以降は一日に1000円以上株価が下がるという場面が何度も起きて、一日の値動きが600円くらいですんだら
「今日は大したことなかったな」
と思ってしまうようになった。

人間の慣れというのはコワいものがある。

ところでオバマ大統領の就任以降アメリカのマーケットが下げ止まらない。
おとついもガイトナー財務長官の追加経済対策の発表を受けてダウの株価が急落している。
これについて昨晩の「報道ステーション」で古館伊知郎が
「一部の黒人を歓迎しない層がマーケットを通じて不快感を表明している」
という珍説を披露していた。
この番組はいつまでこのプロレス中継上がりをキャスターにしておくつもりなのだろうか?

マーケットが晦渋な動きをしているのは、いくつかの説明があるが
「黒人大統領を好まない連中がマーケットを動かしている」
なんていう奇説はどこでも聞いたことがない。
こんなことを本気で信じているとしたら、この方はマーケットというものをご存じなさ過ぎる。

マーケットというところはもっと非情なところだ。
要はそこに金を入れて、パフォーマンスが得られるのか得られないのか、彼らマーケットのプレイヤーたちの関心事はそこにしかない。
アメリカの大統領が黒人だろうが、東洋人だろうがそんなことは彼らには関心は無く
「黒い猫も黄色い猫もネズミを捕る猫はよい猫だ」
という価値判断しかない筈だ。

マーケットが好ましい反応をしていないのは単純に
「この猫はネズミを捕らない猫だ」
と判断したから、そのように反応しているだけだ。
大統領が黒人かどうかなんてことは少なくともマーケットの反応に関してだけは全く関係ない。

昨晩の誤報は
「ガイトナー長官が発表した不良債権対策は『バッドバンク』とは違うのでマーケットは失望した」
というようなことを言っていたという点もある。
一昨日にガイトナー長官が説明した不良債権買い取り構想はまさしく「バッドバンク」そのものであり、そういう趣旨の説明だったと思う。
そしてマーケットは『バッドバンク方式』の不良債権買い取り政策に不信感を示したということだと思う。

これについてはクレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道さんがいみじくもおっしゃっていたが
「貸しはがしを防ぐために民間の資金を活用して、公的資金の補助もして不良債権をバランスシートから切り離すというけど、その民間の資金は結局は民間銀行から出てくるんですよ。
それで貸しはがしの防止になると思いますか?」
ということだと思う。
ガイトナーさんは非常な秀才らしいが、どうもまだ踏み込みが足りないというか腰が引けている感じがする。

オバマ大統領の就任演説当時もマーケットが大きく下げたのは、やはりマーケットは
「この政権はビジョンがない」
と判断したからだという。

これは白川さんが先々週に直接アメリカに行って、向こうのマーケット関係者に話を聞いてきた実感なのだそうだ。
今日本では「サブプライムローンなんて、どうせ対岸の火事」という空気がようやく消えて
「これは本格的なリセッションに入ったのではないか」
と認識し始めたところだが、アメリカの市場関係者はもうそんなどころではないそうだ。
驚くほど悲観的で
「何人生き残れるか?」
というレベルの危機感なのだそうだ。

オバマ大統領はプレスミーティングで
「今判断をためらったら日本の二の舞になる。大胆で迅速な決断が必要だ」
と語ったそうだが、そのやっていることはまさに日本の二の舞だという気がする。

この政権は前政権と同じく瀬踏みをしながら、ことの程度を測っているような様子があって、多分一昨日の景気対策もそのひとつだと思われる。
これでマーケットがいい方向に反応すれば事態はそれくらいの深刻度だと判断できるのだが、一昨日の瀬踏みは失敗し奈落はもっと深いことが明らかになってしまった。

これは昨年ベアスターンズを救済したのにリーマンを見殺しにした旧政権と同じ気分かもしれない。
ポールソン財務長官はベアスターンズで一応危機は沈静化したと見た気がする。
だからリーマンに対しては
「筋を通せ」
という対応をしてしまったようだ。
しかしこれを見て世界中の金融関係者がパニックになってしまい、自分が設定しているレバレッジだけでもとにかく巻き戻ししてしまいたい・・・という昭和恐慌の「取り付け騒ぎ」のようなことが起こってしまった。
これが昨年起こったことの概要だったと私は理解している。

「筋を通せ」
というならGMやクライスラーこそ筋を通すべきだ。
また市場関係者の間では年末から年始にかけてGMあたりはきっとチャプターイレブン(連邦破産法第11条、破綻企業の再生申請)適用を申請するに違いないというウワサが流れていた。
しかしそうはならなかったのは、やはりポールソン財務長官は昨年のリーマンのときのパニックぶりを見て「恐怖を感じた」からに違いない。
GMは「今は筋を通さない」という方向に向かいつつある。

この「恐怖感」は当然オバマ政権にも引き継ぎがされている筈だ。
ホワイトハウスの引き継ぎは伝統的にずさんでおざなりに行われるというのが過去の通例らしいが、今回は「党派を超えて」引き継ぐ方も引き継がれる方も「恐怖感を共有」していたということらしい。

しかし元々は共和党よりも危機認識が薄かったオバマの政権だから付け焼き刃的に「ビジョンを示す」なんてことがまだできていない・・・この政権のマーケットでの不人気はこういうところが原因じゃないだろうか。


ところでそのアメリカのマーケット関係者に「日本株は買いか?」と聞いたところこれも彼らの大反論を食らったそうだ。
「日本株を買うなんてとんでもない、最も買ってはいけないのが日本株だ。なぜなら日本の政治不信こそが最も日本の警戒すべき地政学的リスクだからだ」
ということらしい。

麻生政権は大きな失政をしているわけではない。国民に不人気な大増税を打ち出しているわけではない。
大きな汚職疑獄を起こしているわけでもない。
多少失言癖はあるものの大きな問題があるわけではないのに、この政権の支持率の低さは異常だ。
これは国民が政治に対して全く信頼を寄せていないということに他ならない。
そういう国が個人消費を増やしていくことができるだろうか?
国民は多少の賃金を得たら、それを消費に回さずにいざという時の蓄えに回すに違いない。
なんせ政策が信じられないのだから、今派遣村で起こっているようなことがいつ自分の身に降り掛かってくるか分からない。
だから「いざという時用」貯金をますます増やして消費は締めるに違いない。

そして今のこの信用不安を契機に打撃を受けた経済を建て直すには、一時的には財政出動というカンフル剤は必要だが、結局遅かれ早かれ「個人消費の回復」というピースが揃わない限りどうやってもこのパズルは解くことができない。

そして日本にはそのピースが無いというのだ。

実に手厳しい見方だが的を射ている。
白川さんはエコノミストだが、ストラテジストなんかが日本株のポートフォリオをアメリカのファンドに売り込みにいくと、まさにこういう論調で袋叩きに遭うそうだ。

外国人は昨年以前は日本株をずっと買い越していたが、昨年急激に売り越しに転じて、それも「売って売って売りまくる」というくらいの投げ売り的な売りを演じて、今でも買い戻しにくるどころかまだ売っている。
そしてアメリカの市場関係者は
「日本株には全く興味がわかない」
と言い切っている。
しかし為替はユーロ急落、ドルもジリ貧でただ独り日本円だけが高値をつけている。

何が買われているのだろうか?

これがどうしても分からなかった。
日本の債券が外国の投資家に買われているとは思えない。
というよりも日本の国債は最も不人気な投資商品だと聞いている。(あまりにも金利が低すぎるために)
かといって先のアメリカ人のように日本株が買われているわけではない。
それどころか今日も日経平均は昨年の底値水準にまた一歩近づいた。

じゃ円を買っている資金は一体何を買っているのだろうか?
土地か?しかし日本の土地は底打ちの様子を見せていたけどもまた減速して、株と同じように二番底もありそうな方向感になってきた。

これはぜひともエコノミストの皆さんに聞いてみたい、と思っていたが皆さんも
「よくわからない」
ということらしい。
ただ、この円高は円が買われて高いのではなくユーロやドルが不人気で買い手がないから相対的に円が騰がっているように見えるだけだという説明が一番腑に落ちた。

ちょっと前には日本は世界一景気政策を誤った、世界唯一の10年不況の真っ最中の国で、金利も世界レベルとは比較にならないくらい安い、成長性も見込めない、つまり投資を美人投票に喩えたケインズ式の表現をするなら、世界一の不美人だった国だった。

ところが今は世界中が「日本化」している。
相対に日本のあばたもあまり目立たなくなって、
「どこがよりひどくないか」
という不美人投票のような状況になっている。
だから日本円が魅力的だから買われているわけではなく、どれもこれも似たり寄ったりになってきて、元々異常に安かった日本円が
「適正な水準に戻ってきている」
というだけのことらしい。


なんだか最近のチャートでよくわからないことが多かったのだが、整理してみると意外にシンプルなことだったのかもしれない。
相場を動かしているのは人心だから、そのように動いているということらしい。




2009年2月12日
















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