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「成長戦略の必要性」は単なるお題目でもかけ声でもない、
今日本は本当にヤバいところに立っている

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「成長戦略の必要性」は単なるお題目でもかけ声でもない、今日本は本当にヤバいところに立っている

先日、ちょっとそういう必要があってIMF(世界通貨基金)のホームページからGDPのデータを取った。
そのGDPのページはこちら。
World Economic Outlook Database April 2009

我々が通常よく見るGDPの統計は日本一国の円建て実質GDPか名目GDPの総額、あるいはその推移、あるいはその成長率という統計で、そういう統計を見ていると
「日本はバブル以降も一度もGDP成長率がマイナスに転落していない、希有な国である。これもひとえに日本国民の優秀性と勤勉さの賜物である」
というような通説が本当らしく見える。

また
「GDPは成長していたから一昨年までは日本は好況であり、これはいざなぎ景気を上回る戦後最長の好景気であり、リーマンショック以降始めて期間でGDP成長率がマイナスになった」
という最近まで経済官僚が主張していた通説もそのように見える。
しかし、今回は各国のGDPを比較する必要があったので、すべてドル建てで表示してみた。
すると日本でいわれているGDP伝説とは全く違う世界が見えて、ちょっと驚かされた。

例えばこのグラフを見てもらいたい。





各国のGDP(単位:10億ドル)推移、2009年以降は予測
2010年に日本は中国に追い抜かれ世界第3位に転落する


このグラフを見ると来年には日本は中国に抜かれる。これまで世界第2位の経済大国と言っていたのが、第3位に看板をかけ替えないといけない。

このグラフを自民党の国会議員の先生に見せたところ
「中国は国民の数が日本の10倍いる。ということはGDPが並んでやっと日本の10分の1になったということだから、何ら危惧することはない」
とおっしゃっておられた。

つまり、これはグラフの作り方も悪かったのだが、GDPというとそういう静的な数字比較をすることに慣れているので、このグラフの怖さが見えないのかもしれない。

このグラフを見て私が怖いと思ったのは「中国に抜かれる」ということではなく、
「この15年間日本は成長していない」
ということなのだ。

一国の経済が15年も停滞すればそれはたしかに国民の生活は困窮するし、デフレスパイラル懸念が出てきたって不思議でもないし、派遣村ができたって何ら不思議でもない。

これは先進国4カ国(日米英独)+中国で作図してみたが、他のフランスや北欧などを入れても大体似たような姿で、世界のほとんどの先進国はそれなりに成長しているがただ一人、日本だけがこの15年間成長を止めているというグラフになる。
勿論ロシアやリトアニアなどの経済的に破綻している国は除く。


「それはおかしいではないか、日本はこの15年間平均で1%内外のGDP成長ははたして来た筈だ、なのに成長を止めている筈がない」
という反論は当然あると思う。

しかしそれは円建てで見た場合の話だ。
日本はこの15年間、いやすくなくとも2000年以降は意図的に通貨を円安に誘導して、一杯一杯まで緩めきってしまった金融緩和をさらに補佐した。

そのおかげでマイナス成長にはならなかったが、通貨はどんどん円安に振れた。
日本の通貨で評価すれば日本の名目GDPは成長してきている。
しかし、ドルで評価すれば、日本のGDPはこの15年間全く成長していない。
これはここにいたって外国人投資家が、日本株に全く魅力を感じていないで、PERで評価すれば抜群の割安にもかかわらずいっこうに買いに転じないという事実と符合する。
外国人は当然日本株をドルで決済するから、米ドルで評価する。
米ドルで評価すれば、日本の株も日本の国力を表す名目GDPも全く増えていないように見える。
株は増えることを期待して買うものだから、当然増えないものは買えない。

このGDPグラフは多くの事実と符合する。

日本は見かけは成長しているように見える。
それどころか最近まで日本は戦後最長の好景気に突入して、いざなぎ景気を追い越したとか言っていたのだ。
国民にそんな実感が全くなかろうが関係なく、作り上げた統計数字がそうだったからそう発表した。
しかし上記のようにそれは日本円を安値に誘導したというからくりがあったからだ。

アメリカから容認されて日本は2000年以降は円を意図的に安値に誘導した。
ミスター円の称号を得ていた榊原英資の時代の話だ。

さすがに日本が一人ずっと10年近く不況を続けていることが、2000年には世界のお荷物になってきた。
そこでアメリカの財務当局が日本に
「もういい加減にしろ、不況を脱出するためなら為替介入でも何でもやっていいからなんとかしろ」
という指導を入れたというのが事実らしい。

日本は指導された通り円安に通貨を誘導した。
そして自国通貨換算ではGDPを成長させた。
しかし結局海外から見た日本のバリューである米ドル換算のGDPを成長させることができなかった。円安誘導というラストカードを切ったにもかかわらずだ。


さてここでGDPを自国通貨で評価するのとドル建てで評価するのとどちらが正しいかということが問題になる。
これはどちらを取るかは主観だという言い方もできる。
でもひとつだけ、はっきりしていることがある。
日本は既に円安カードを切ってしまっている。
これは借金をしているのと同じことだ。
借金はいつか返さないといけない。
自国通貨を切り下げると、いつかはそのツケを払わなくてはいけなくなる。
日本の場合はいずれ円高という形で、そのツケを払わされることになる。

下方にゴムバンドを引っ張って撓めた通貨価値は、そのエネルギーをどこかで解放しないといけない。
その時に日本経済が再び成長要素を取り返していれば問題無い。
しかしその時までに成長戦略を取り返しそびれていたら、その後は大変だ。
意図的なエネルギーを加えて歪まされたものは当然元に戻ろうとする。
日本円は安値に誘導されたのだから、どこかで本来の水準に戻ろうとする。

当座は為替は1年か1年半ほど円安ドル高のトレンドで動くだろう。
それは先のザラ場1ドル84円までやってしまった相場のエネルギーを放出するためだ。
しかしこれが落ち着いたら、また高値を切り上げてくるだろう。
今度はどんな水準に行くのか分からない。
前回は日足で86円まで行ったから今度は70円台前半、どうかすると60円台突入という水準もあり得るかもしれない。
それは1年半後以降の話だ。

「FXが今良いよね」
とか能天気なことを言っている人達は、せいぜい今のうちにその利益を享受すると良い。
しかしFXで利益を得られる期間は非常に短いことに注意した方が良い。
その次には利益を吐き出して、元手すら失うような大きな変動を体験することになるかもしれない。
そうなる前に足抜けすることだ。
それができれば誰も損はしないのがこの世界なのだが。


少し話がそれたが、なぜ日本はこの成長機会を逸してきたのかということを考えていて、「ああ、なるほど」と思わされた記事がこちら。
SMALL BIZ IN SMALL ISLAND-日本のハブ空港は外にあり(仁川国際空港)

日本には成田という国策の国際空港がある。
国際ハブ空港を目指した関西空港という空港もある。
しかしこれはどちらも利用者から見ると「国際ハブ空港」というには使い勝手が悪過ぎる。
しかし国内合意により、成田も羽田も関空も今の運用スタイルに落ち着かざるを得ない・・・なんてことを言っているうちに「仁川の方が便利ではないか」ということに皆気がつき始めている。
そして旅客も航空便も仁川に逃げていく。
これがJALやANAの経営の厳しさの根源なのかもしれない。

JALは直接的には旧運輸省天下り役人の乱脈経営が原因で経営が傾いているのだが、その天下りの年金をリストラすれば経営は立て直せるかといえば、それだけでは足りない気がする。

日本は製造業が中国を筆頭にアジアにどんどん工場を移して、産業の空洞化が起きるということをもう十数年前からいっている。
しかし今や運輸、サービスも空洞化していく。第2次産業も第3次産業も空洞化していったら日本には何が残るのだろうか。

先のGDPのグラフはたまたま為替の水準がそうなったから、GDPが成長していないように見えるのではなくもっと深い何かを示しているように思う。
特に先進国で唯一日本だけがグラフがフラットだというところに危機を感じてしまうのは私だけだろうか。




2009年12月17日
















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青木さやか