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ロケフリ代行サービスを「自動公衆送信装置」として違法と判断した最高裁は
この後のつじつまをどう合わせるつもりなんだろうか?

guilty located free

ロケフリ代行サービスを「自動公衆送信装置」として違法と判断した最高裁はこの後のつじつまをどう合わせるつもりなんだろうか?

最近の面白いニュースはこれだと思う。

一審、二審の判決を破棄して最高裁が「まねきTV」のロケフリサービスは著作権の侵害に当たり違法と判断した。
この判決のポイントをまとめた記事がこちらにあるので、興味のある方は見てもらいたい。

1対1通信のロケフリは「自動公衆送信装置」になりうるか 「まねきTV」最高裁判決の内容 - ITmedia News

一審、二審の判断を覆し一転違法と判断するにはいくら最高裁といえども恣意的にそういう判断ができるわけでなく、下級審の判断を尊重した上で違う判断をするならその間違っている部分を指摘した上で判断の根拠を示さなければいけない。

今回の最高裁の根拠は
1)自動公衆送信は違法アップロードと同じ違法行為
2)機器にコンテンツを入力して送信する行為は1対1であろうが自動公衆送信に当たるなら違法
3)装置に継続的にコンテンツを入力するなら自動公衆送信と判断できる
4)ベースステーションを事務所に置いて入力し続けている「まねきTV」はベースステーションの管理者
5)ユーザは不特定多数なので行為は公衆送信にあたる
6)アンテナからベースステーションまで、ベースステーションからユーザ端末は「まねきTV」が主体なので公衆送信にあたる

アメリカでは、逆に業者がテレビ局を相手に「著作権不侵害の確認訴訟」を起こしたそうだ。
米国における「まねきTV」的サービスについて(続き) | TechVisor Blog

面白い。
そこでこの判決が妥当か不当かという批判はとりあえず置いておいて、こういう思考実験をやってみたい。





ロケフリとかスリングメディアとかはインターネット、つまり公衆回線を通じて映像を流すが
自分の自宅に設置し自宅で受信したテレビ番組、つまりコンテンツを
自分だけで鑑賞するので違法にはならない・・・最高裁判決もこういう前提になる
つまり公衆回線にコンテンツを流す行為そのものは違法ではない・・・まずここを押さえて次へ




このアンテナの設置とロケフリの管理、公衆回線への接続を業者がサービスでやったとしたら
たとえロケフリがユーザの買い取り品だとしてもそこにコンテンツを流し込む行為が違法である・・・
これが最高裁の違法判断の根拠だということになる
つまりアンテナとロケフリの接続、ロケフリと公衆回線の接続、ロケフリの管理が主体を決定し
主体がユーザではないなら「自動公衆送信」に当たり違法ということになる




ならばもしこういうことができたらこれは違法だろうか?
ユーザの家に設置されたユーザ所有のアンテナのケーブルを伸ばして
業者の建物に設置されたロケフリに公衆回線で接続されて送信される・・・
「違法にコンテンツを流し込み続けている」という部分はクリアできそうだ
しかし技術的にこれは不可能かもしれない




ならばこれはどうだろう?
ユーザ所有のユーザが受信契約をし受信料・ペイチャンネルフィーを
支払っているアンテナを業者管理の建物に設置しロケフリにつないで送信
「違法にコンテンツを流し込んでいる」という法的根拠はこれで揺らがないだろうか
電波は誰の頭上にも均しく降り注いでいるので実質は誰が結線しても同じことだ




ならばアンテナは業者所有でもユーザが受信契約をし
受信料を支払っているアンテナなら同じことだ
ロケフリの所有者が誰かは違法・合法の判断の根拠に
ならないならアンテナの所有者も業者でも良いことになる




さらにロケフリを業者が管理しているから「送信の主体は業者になり自動公衆送信にあたる」なら
ロケフリの設定画面をVNCなどでユーザにコントロールを渡し、最終段階まで設定をやって
最後の「Enterキー」だけユーザにクリックさせたら管理した主体はユーザになるのか?
その前のステップまでなら認められるのか・・・一切認められないというのなら
ユーザのロケフリを誰か他人が触った時点で違法になるのか? 家族ならOKなのか?
などここも踏み込むと面倒な判断がいくらでも派生する




物理的に業者の建物でロケフリやアンテナを
設置しているのが「管理」に当たり違法だというのなら
業者の建物内にユーザに貸した賃貸スペースを設定し、そこにロケフリを置いて
賃貸スペースのアンテナと繋いだら「違法な管理」に当たらないのか・・・
もしこれも違法だというのならユーザ名義の所有物件に置かれたら違法なのか



この思考実験は別に屁理屈をこねるためにやったのではない。
最高裁判決のアラを探すためでもほとんどない。
言いたかったのは、こういうものは一種のクラウドサービス、SaaSサービスのようなものでネットの向こう側にリソースを預けてしまうという方向にどんどん進んでいるのに、そこに
「ネットの向こうに機器の本体があったら違法」
なんていう足かせがあったら、著作権が絡んでいようがなんだろうが整合性がとれないのではないか、大体こんなことが新たな規制になるなら不便ではないか・・・ということが言いたかったのだ。

クラウドサービスの考え方はネットの向こうにリソースを預けてしまう。
ということは、ユーザは何でもかんでも自分で所有しないということで、ユーザの所有と業者の所有というのが境目が段々曖昧かつ無意味になってくるということだ。

要は電波なんて誰の頭の上にも均しく降ってくるわけで、それを業者がつないだら違法で家族がつないだら合法って変じゃないだろうか・・・ということが言いたかっただけだ。

こういうバカらしい判断に踏み込まないように注意していた一審、二審判決はクレバーな内容だったというべきだし、変にモラリストなところを見せようとした最高裁判決は、これからその辺の話をどうつじつまを合わせようとしているのか見物だと思う。

きっとこういう次の段階の判断を迫られるアイデアは出てくると思うから。
その度に恣意的判断をしているとそのうち破綻する。
最高裁はこういう問題には踏み込まない方が賢明だったと思う。


それにしても日本のコンテンツホルダーはなんでフェアユースという方向性を考えないのかなと思ってしまうのだが。




2011年1月22日















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