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プロというのなら...2
/If you were me, would you call you PROFESSIONAL? II

世の中一体どこまでアマチュア化していくんだろう?(続き)

この稿の続きを書くつもりは無かったが、なぜかこういうことを気にしはじめると似たような体験が続くことがある。
今回も書かずにはおれない感じだったので、つい続きを書いてしまう。


先日引っ越したことは前に書いた。
その時にリフォーム屋さんがなかなか話が通りにくい人たちだという話は前に書いた。
門柱灯が表札を兼ねているようなそういうタイプの門柱灯だったので、交換をしてくれというと
「電気屋に持っていけばすぐ替えてくれる」
というようなことを言う。

それで自宅から徒歩2分のところにあるM電化にいって物を見せて、名前を新しくした門柱灯用のプレートを購入できないか訊いてみたが、

「製品の型番が判らないからメーカーに問い合わせができない」

の一点張り。
メーカー名は判っているのだから、メーカーに問い合わせて関連商品の資料をファックスしてもらうことぐらいできるはずなのに、全く動く気無しという感じなのだ。

さらに後刻、廊下の天井灯が切れたのでやはりこのM電化で買ってくると口金の径が合わないことが判明。(20Wという今時珍しいソケットだったので)
さっそくM電化に行って交換してもらおうとしたら、

「レシートが無いと駄目です。」

の一点張り。
さっき顔をあわせたところなのにと憤慨しながらも、自宅に折り返してレシートを見せると、
この交換の手続きがなかなか面倒だった。

レジでかなり長いこといろいろ操作をして、返品申請書のような4枚つづりのカーボン紙に、署名捺印しろと言い出す始末。
勿論印鑑なんか持ってきていないから、署名だけでもということになったが結局住所、電話番号、緊急時の連絡先まで書かされた。
たかが950円の白熱灯のためにだ。

ここの社員は全てマニュアルで仕事をしているようだ。
どうやらいかなる裁量権も与えられていないらしい。
そのせいか全く自分の頭で物を考えようとしないというのもここのカラーのようだ。

例のレジの「申請書」も結局社員がレジの不正操作をしていないということの証明のために書かされているのだろうが、それ以前に社員にレジを不正操作して会社の金を盗むことは常識外の行為なのだという良識や帰属意識を植え付ける教育をした方が良いんじゃないだろうか?

結局そういうところを経営側が手抜きして、そのしわ寄せは950円の電灯を交換するために数十分の時間と手間を浪費させられる客のところに行くわけだ。
うちの奥さんや親爺も言っていたが、このM電化の社員はかなり質が低いらしい。

最近じゃY電気などの安売り攻勢に押されて、価格競争をしないといけないので結局社員教育とか人材確保とかの部分でお金をけちっているのだろう思われる。
しかしその結果店頭で見かける社員の質はどんどん低下していって、お客の評判も下がり結局客は逃げる、さらにコストダウンを迫られると言う悪循環に陥っているように思う。

うちの奥さんもせっかくうちから徒歩2分の近さだけど、ここでは切れた電球を買いにいくだけにすると言っている。
(しかし切れた電球を買いにいっただけだった私もひどい目に遭っているのだが)


これはしかし今、日本中の会社が抱えている問題じゃないかと思う。
景気はまだまだ本格的に回復したという状態からはほど遠いし、どこの会社もコストの切り詰めを取引先から要求されて厳しい状態なのだろう。
私の会社も勿論そうだ。

しかしここでその切り詰めたコストを社員にしわ寄せすると、結局は仕事の質の低下を招き、質が低い仕事ならもっと安くしろという客の要求をさらに招くという悪循環が相当蔓延している気がする。

私の会社は放送業界なのだが、ここでも制作予算がカットされるということが起きている。
それでカメラを従来のカメラマンが肩に担いでいたカメラから、家庭用のデジカムに毛が生えたようなハンディカムに換える話が出ている。
そうすれば今取材に3人態勢でいっているが、一人で行けるしコストダウンになるという発想だ。

しかしこの発想はもうかなり前に破綻しているということにどうして気がつかないのだろうか?



この発想は10年前に「米オレンジカウンティケーブルテレビの成功」という美談で「ビデオジャーナリズム」というもっともらしい言葉とともに紹介された。
オレンジ郡のこの弱小テレビはテレビカメラを廃止して、社員にデジカムを持たせて機動的にニュースを集めているという話だった。
しかしこれは結局経費節減のもっともらしい口実になっただけだった。
デジカムならテレビカメラに近い画質で撮影ができるから機動性で有利なはずだと言い張った人たちは、みんなテレビの現場を知らない人たちばかりだった。

フルサイズのカメラで映像を撮る時には様々なテクニックがある。
しかしピントやズームを動かして撮影するような微妙なテクニックは民生機に毛が生えたようなデジカムには不可能だ。
しかしこの話の根底にはどうせそんな撮影のテクニックなんてテレビを見ている人は皆素人なんだから判るわけがないという客をなめきった発想がある。
M電化の顧客対応と一緒だ。

しかし実際は客というのはそういう人たちが考えるよりはるかに多くのことが判っている。
ケーブルテレビというのはどこもこういう民生機で撮った映像をろくに編集もしないで垂れ流しにしているというイメージがもう定着してしまっている。
だから客はケーブルテレビは割高だと感じているのだ。

私自身前の家で数カ月ケーブルテレビを入れていたが、ブースタが入っていなかったせいか画質が非常に悪かったのでクレームを入れたことがある。
その時のケーブルテレビの社員の対応は、

「こんなものですよ」

の一点張りだった。それで解約してしまったのだ。
ケーブルテレビは客をなめきってるという偏見がそれ以来私には植え付けられてしまった。

今自分の会社でもそういう客をなめたコスト削減が検討されているわけだ。
どうせフルサイズカメラでもろくな映像を撮っていないんだから、民生機に置き換えたって大した違いはないということかもしれない。
それだったらフルサイズカメラの映像の活用法を社員に徹底してスキルアップをするという発想にどうしてならないのだろうか?

結局M電化の社員教育と同じ発想で、そんなことに労力とコストをかけても費用対効果が判らないから、そんな物切ってしまえということなんだろう。
(民生機のカメラを機動的に活かしたいのならフルサイズカメラとは全く違う発想が必要だ。
テレビカメラの代わりに使うという発想では、客をなめきった映像しか撮れない。
そしてその全く違う発想を生かすには高いスキルが必要だ。
どのみち経費節減のために民生機を導入するという発想の現場ではそういうスキルは育ちようがない。)


結局このビデオジャーナリズムという言葉は放送業界に大量のアマチュアを作っただけで、このデジカムという新しい機材を本当に活かせているのは、ごく一握りのプロフェッショナルたちだけというのが現在の状況ではないだろうか。

そして経費節減のためにデジカムを導入したところにはそんなプロを雇う金なんて無いから、ますますどうしようもないアマチュアを拡大再生産しているだけの話だ。


ちなみに引っ越しした新しい家では奥さんの意見で、ケーブルテレビに加入することにした。
私はそういうことが有ったので、月3980円の契約料は高いと思っていたのだが奥さんの

「台風の時にアンテナが倒れないか心配せんでええから、ケーブルの方が良いんちゃう?」

という言葉で一決してしまった。
お客の価値観というのは、プロたちには図り知れない物がある。
しかしそういうものなのかもしれない。


2003年12月19日











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