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ジャッカルのカスタムライフル〜一点物の文鎮モデルガンの
カスタムライフルであの名作の気分を味わってみる

Jackal

ジャッカルのカスタムライフル〜一点物の文鎮モデルガンのカスタムライフルであの名作の気分を味わってみる

テッポが好きな人は大抵そのきっかけになった映画というのが何本かあって、私もそうなんだけど「ジャッカルの日」という映画もそのうちの一本だった。

この映画はフレデリック・フォーサイスの同名小説の映画化で、原作本も映画も夢中になるほど面白かった。

要は要人暗殺を金で請け負うプロの暗殺屋の物語で、こういうテーマって荒唐無稽になりがちなんだけどフォーサイス自身のインタビューで
「このジャッカルに近い実在の暗殺請負人を知っており、その取材に基づいて小説を書き上げた」
と語った通りすごいリアリティだった。

イギリス映画だったこの映画はのちにハリウッドでリメイクされたが、ハリウッド版は全然別物でこのオリジナル版のすごい緊張感が全くなくありがちな荒唐無稽のアクション映画になってしまった。
観るならリメイク版ではなく是非ともオリジナル版をお勧めする。

このコードネーム「ジャッカル」という暗殺請負人の仕掛け、準備がいちいちなるほどと思わされる周到さなのだが、仕掛けの一つ・得物の狙撃銃がまた画期的なカスタムライフルだった。

このカスタムライフルが個人カスタムガン製作者の一点物で出ていたので、長年の憧れの銃だしBB弾も飛ばないし発火もしない文鎮モデルだけどつい手を出してしまった。





今回の得物はこれ
ジャッカルのカスタムライフル
映画「ジャッカルの日」でエドワード・フォックス演じる暗殺請負人が使用した狙撃銃
見ての通りボルトアクション・単発銃でハンドガードもなくストックも肩当てだけという
超無駄のない暗殺狙撃だけに特化した実用一点張りのデザイン




ジャッカルのライフルはカスタムパーツメーカーさんから文鎮モデルが
個人カスタムメーカーさんからBB弾仕様の畜気式カートガスガンが販売されていたが
これはどちらでもなく金属パイプと3Dプリンタで作成された一点物で
BB弾も飛ばないし発火もしないがスタイルは過去のどの製品よりもリアルだと思う…
一点ストックバットの形状と仕上げを除いて…



ジャッカルの日

この銃が登場するのは映画「ジャッカルの日」

以前にも取り上げたが再度ストーリーを…

時は1960年代のフランス
世界の趨勢の抗えずフランスも植民地だったアルジェリアの独立を認めざるを得ず、ナチスからのフランス解放の英雄にして時の大統領ド・ゴールも反対の声を押し切って植民地独立を強行した。

しかし退役軍人中心の右翼組織OASはこのド・ゴールの政策に不満を爆発させ、自動小銃や機関銃まで持ち出して大統領公用車を襲うなどの暗殺事件を起こすがいずれもことごとく失敗。

追い詰められたOASのメンバーたちはイタリアの山荘に立てこもり、トルヒーヨ暗殺にも関与したとの噂のあるプロの殺し屋を雇うことにした。

「半金をスイス銀行の口座に振り込んだら仕事を開始する」
「君の名前を知らないがなんと呼んだらいい?」
「ジャッカルでどうだ?」
「OK、ジャッカル」

こんなビジネスライクな会話で物語は始まる。

そこからのジャッカルの暗殺準備が実に周到。

イギリスの田舎で死亡者の戸籍を調べる、空港でデンマーク人のカバンを盗む、ロンドンで染髪剤を購入する、イタリアで証明写真をとってビザ、身分証を偽造、パリの夜店で勲章を買い漁る…これが何の役に立つのかは後半だんだんあきらかになる。

そして使用するライフルを注文する。

「銃身はできるだけ短く、減音器、照準器をつけてできるだけ軽く」
「狙撃距離は?」
「400フィートほど」
「狙うのは頭か、胴か?」
「多分、頭」
「税関で見つからないようにしないといけないな?」
「組立式のアルミチューブに隠して持ち込む」

このカスタム職人も目的は察しているがどこで何に使うかとかは一切聞かない。

こうして使用する狙撃銃のスペックが決まっていく





2週間後に職人が仕上げた狙撃銃は驚くべき姿をしていた
ハンドガードもない、ストックもほぼ棒、引き金もねじ込み式の単発銃
一撃必殺の超無駄のない設計の銃だった




人気のない森に入って銃を木に縛り100メートル先にスイカを吊って銃を調整する
ウインデージ、エレベーションを一つずつ調整して最後にダムダム弾の威力を確認する
実に無駄のない、いちいちなるほどと思わされる手順で準備を進めていく




周到に準備したにもかかわらずフランスのパリ市警も超優秀な
エース刑事を専任にしジャッカルをだんだん追い詰めていく
しかしその追跡の手をすり抜けるように間一髪でターゲットに接近するジャッカル
その狙いはパリ解放記念日、革命広場のパレードに臨むド・ゴール大統領だった




ついにスコープにド・ゴール大統領を捉えたジャッカル…
しかし予想外の出来事が起こり初弾は外す…
追っ手が迫り来るなか、第二弾を装填して暗殺は達成されるのか…
というような内容のストーリー




(上)映画のカスタムライフル (下)今回入手のジャッカルのライフル
ボルトを引けて引き金にスプリングテンションがかかっていて
文鎮モデルに近いメカだがスタイルはこの通りかなり忠実




(上)映画のライフルは分解してアルミパイプに収納し
車の排気管に隠したり松葉杖に隠したりできるようになっている
(下)文鎮版ジャッカルのライフル
発火もBB弾の発射もできないが実物と同じように分解組み立てができる




(上)映画版ジャッカルライフル(下)文鎮ジャッカルライフルそれぞれのボルトを引いた様子
映画では1発で仕留める前提でボルトノブをつまんで回して引いて装填する単発銃
文鎮版もボルトも回転してロックもちゃんとかかる




22LRダミーカートリッジをエジェクションポートに入れて装填風景を再現
バレルやボルトは金属製ではなくABSの一本竿を削ってそれらしい形にしたダミー
なのでチェンバーがないため残念ながらカートリッジの装填はできない
エジェクションポートにカートを入れて雰囲気を楽しむだけ




ボルトは90度回転してロックするようになっていて
装填はできないんだけどこういうところが再現されてるのがうれしい




トリガーの前にトリガー・シアスプリングが再現されている
エキストラクターは真鍮製、レシーバー・スコープリングは3Dプリンターかな




スコープマウントは映画のシーンと同じく
前側からスライドして固定できるなど再現度は高い




スコープはレディメードの似たような雰囲気の4×20mmタイプ
レティクルはこんな感じだがジャッカルが使ったタイプに似ている




(上)映画の森の試射シーンと(下)同アングルのジャッカルライフルモデルガン




かねてより手に入れていた22LR(Long Rifle)弾のダミーカード
これを並べて雰囲気を楽しもうと思っていたが実は映画で使用されているのはこのカートではない




(上)手製のカートリッジをジャッカルに渡す映画のシーンと(下)22LRダミーカート
映画のシーンを見ると明らかに22LR弾より全長が長いカートリッジを使用している




(左)22LR弾と(右)22WRF(Winchester Rimfire)弾の比較(via Wikipedia)
誰かが「ジャッカルは22Magnumを使用している」と解説していたが多分この22WRF弾が正解
この弾は19世紀にレバーアクションやスライドアクションライフル向けに作成されていた
古めかしいカートリッジで今では作っていないのかダミーカートリッジは手に入らない
主にウサギやプレーリードッグの猟に使用されたカートリッジだそうだ




左から22Short弾、22LR弾、22Winchester Magnum Rimfire弾、22 Hornet弾(WIkipedia)
このWinchester Magnumも近い気がするがどっちなんでしょう
いずれにしてもこのアモを使っている人自体が珍しいのでダミーカート入手は絶望的




仕方がないので22LRのダミーカートでこんなことして遊んでます
初弾を外して慌てて次弾を装填するラストシーンを再現したりして…




素晴らしいプロポーションだし実物と同じ分解組み立てもできるんだけど
ひとついただけないのがこの木製ストックバットの仕上げ
ラフに削ったなりのようなザクザクの表面で大きさも少し変
松葉杖の肩当てに偽装するシーンが出てくるのでそれらしく
削って亜麻仁油などで仕上げ直したい




あとバレルがプラスチック製なためか重量バランスがかなり後ろになっているのも気になる
どうせ文鎮モデルなのでサイレンサーに鉛のウエイトを入れてインサート兼用でバランスをとった




これでトリガーのあたりに重心が来た
映画でもこんな風に手のひらに乗せてバランスを見るシーンがあったので
この重量感と重心でかなりリアルな雰囲気になった




猟銃を飾っていた壁のラックに載せてみた
猟銃化カスタムのマルゼンM1100とかなり雰囲気が違う変な組み合わせw



【追記】

「ジャッカルの日」についていろいろ書いていたら、またビデオを最初から最後まで観たくなって観てしまった。

ハリウッドのド派手な演出にすっかり慣れてしまった今の観客が見たら、淡々とドキュメンタリーのように進行するこの映画は退屈なのかな。

しかしやっぱりリアリティが半端ないし、当時世界最高の警備体制と言われたフランス大統領にどうやって接近するのか、狙撃を成功させるためにどんな準備をするのか…といった手順を見ていくと今でも唸ってしまう。

当時は思わなかったけど、今観たらラストで
「ジャッカルは英国人と言われ我々もそれを信じたが、実際はジャッカルが英国人であるという証拠はどこにもない。
デンマーク人にもフランス人にも化けたので正体は全く不明」

とイギリス政府がコメントするシーンが実に「非情な世界」だと感じた。



2023年9月2日
















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