WAのSIGMA〜これも長年欲しかったS&W刻印のシグマ…なんだけど例によってWA製品のヒケの多さに呆れて手を入れた
S&Wのオートマチックが4桁モデルナンバーのサードジェネレーションになってその頂点の製品のパフォーマンスセンターM4006を前回仕上げ直したけど、その4桁ナンバーをやめて次の方向転換したのがこのSIGMAだった。
4桁のモデルナンバーの付け方が混乱してディーラーもよくわからなくなっていたのを止めて9ミリルガー対応をSW9F、40S&W対応をSW40Fという型番に変えた。
とてもシンプルでわかりやすい。
でもこれをフォースジェネレーションと呼ばないのはなぜだかわかる気がする。
このSIGMAの実銃については極めて評判が悪く、さらに知財裁判でグロックから訴えられ事実上敗訴といえる高額の和解金を支払う羽目になってS&W自体外国資本に身売りするまでに経営状態を悪化させたという因縁までついてしまった。
実銃がそんなだから、WAのこのエアソフトガンもそんなに売れなかったのかな。
このエアガンのレビューを読んでいると「駄作だった実銃の駄作ぶりを忠実に再現した駄作」というトーンの批評が多いのがちょっとゲンナリするんだけど実銃もこのWA製品もそんなに駄作ではないと思っている。
WAというといつも口を極めてけなすのだが、今日は何故かWAを思いっきり擁護してしまう。
たまたま家にあったSIGMAの特集を掲載したGUN誌とWAのSIGMA SW40F
実銃はスライドとフレームの隙間から向こうの世界が見える…とまで酷評された
この写真でもわかるがカートリッジやマガジンリップがはっきり写っている
比べてみるとWAのSIGMAはとてもよくできているがそこまでスキマを表現してくれなかった
さすがに実銃に忠実に再現するのはダサいと思ったからかな…
実銃のSIGMAが印象が悪いのはこのスライドとレシーバーの隙間の広さと、開けてみたら中のメカがGLOCKそっくりということで
「これってパクリじゃん!」
と評判を落としたという2点に尽きると思う。
実際写真のGUN誌でもGlock G17と比較テストをした結果
「テストした全員が10ヤードの近距離ではGlockよりも命中率が高かった」
とリポートされている。
SIGMAとGlockを比較すると、グリップデザインが寸胴のGlockに比べてSIGMAはエルゴノミクスデザインになっていて明らかに優れているし、半分セミオートのGlockのセーフアクションに比べるとSIGMAは単純なDAO(ダブルアクションオンリー)で、リボルバーに慣れた射手には撃ちやすいということも関係しているかもしれない。
そしてWAはそのDAOアクションを再現してくれているだけでなく、中を開けた時に
「あ、SIGMAのメカの雰囲気をすごく再現してる」
と感心する作りになっている。
WAのSIGMAはあまり売れなかったかもしれないがそれは実銃のレピュテーションのせいで、エアソフトガンとしてのSIGMAはよくできているし個人的に好きなテッポでもある。
しかし毎度のWA製品共通の弱点もある。
WA製品のアカンところは金属部品の劣化、ABS部品のヒケ、パーティングライン…
金属の劣化はこまめに注油する以外に防ぐ方法がないがABSのヒケはなんとかなる
SIGMAは平面が多いデザインなので一見問題なく見えるがスライドはやはり大きなヒケ
平置きあるいは板に巻いた耐水ペーパーで面出しをするだけでもかなり見栄えが変わる
実銃の写真を見るとサンドブラストっぽい仕上げのGlockに対してS&Wはヘアラインっぽい仕上げ
さらにスライドのマズルフェイスと後端はミーリングマシーンで削った刃跡のような縞模様になっている
その感じを再現するためにスライド全体は1000番、前後端面は360番のペーパーで擦りこんだ
ブラッセンを吹き付けたらスポンジで細かいヘアラインを入れて組み立てる
ちょっと感心したのがスライド後端のプラグの形状が実銃そっくり
外からは見えないところだけどこの当時のWAはいい仕事をしていたと思う
しかしチェンバーも引けがあってしかもこんな目立つところにパーティングラインが…
もう少し割型のデザイン工夫できなかったのかなぁ…こういうところがWAのあかんところ
ヒケは目立たないようにヘアライン加工したがパーティングラインはメッキ部品なので
どうにもならない…アルミシートを貼ることも考えたがスライドの肉厚がギリギリなので
ちょっと工作に自信が持てないのでこのままにした…
チェンバーには不満は残ったがこうしてSIGMA SW40Fリアル化バージョン完成
スライドマズルフェイスのパーティングラインはしっかり消した
完成したSIGMA右プロフィール
ホールドオープンするとバレルがはっきり上を向くのは
Glockと同じブローニング式ロッキングメカのため
スライド側面はスポンジで入れた細かいヘアライン
スライド前面は工作機械の刃跡を表現するために
360番のサンドペーパーでざっくり擦ったそのまま
こんな表現はGlockではできないので逆に面白い
スライド後端も360番の荒い目のヤスリ
サイドは細かいヘアラインで樹脂製のプラグにはヘアラインが入らない
単調な黒い色だけどこんな変化が面白いと思って再現してみた
スライド右面には実銃は「マガジンを抜いていても発射されるので注意」と刻印されているが
WAは「マガジンを抜いていると弾が出ないので注意」と微妙に書き換えられていて洒落てる
Glockは優れたメカデザインだと思うけどどうもあの寸胴みたいなグリップデザインが好きになれない
SIGMAは人差し指と親指のポジションがカーブで構成されていてグリップ感がいい
この一点だけでも実はGlockよりもSIGMAの方が好きだったりする
スライド左側には40S&W口径のモデルナンバーのSW40Fの刻印
WA.ASGKだけがエアソフトガンの刻印になる
ヘアラインを入れてチェンバーのヒケは誤魔化せた気がするが
やっぱりチェンバーのパーティングラインが目立つなあ…
バレルはメッキしたままのピカピカだったのでヘアラインを全面に入れた
実銃はマットなヘアラインなのでもっと大袈裟にやっても良かったかも
マズルの比較で(右)が実銃のSW9F(左)がWAのSIGMAエアソフトガン
クラウンはフラットで内側だけすり鉢状になっている実銃の雰囲気をよく再現している
リコイルスプリングガイドのフルートの雰囲気もリアル
どっちが実銃かわかるかな?
(上)が実銃のSW9Fで(下)がWAのSIGMAのレシーバー下面
ここのバーコードがインレイではなくシールなのが
なんだかなぁと思っていたが実銃もシールだった
実銃とWAはシールの向きが逆だがそれ以外はリアルと言える
どっちが実銃かわかるかな…その2
(右)が実銃のSW9Fで(左)がWAのSIGMA
口径が違うんだけど40口径は実銃もこんな雰囲気
フロントサイトの比較で(右)が実銃(左)がWAのSIGMA
フロントサイトは斜めにカットされていて白い樹脂の
インレイが楕円形になっているのも再現されている
(上)Smith & Wesson SW9F実銃と(下)WAのSIGMA SW40Fエアソフトガン
エアソフトガンは最初ウエスタンアームズの刻印で発売されたが
リファイン版でS&Wの刻印に変更されたように記憶している
(上)Smith & Wesson SW40F実銃と(下)WAのSW40Fエアソフトガン
よくできていると思う…実銃とエアソフトガンの外観上の違いは
スライドとフレームの隙間が大きいか小さいかの差しか見つけられない
ASGK刻印がないとちょっと見分ける自信がないかも…
WAのSIGMAの実銃にはないギミック
グリップボトムのスペーサーを下に引き出すとトリガーバーと
ハンマーの連結が切れて引き金を引いても発射しなくなる
実銃にはないASGKの規定準拠のエアガンセーフティ
強く引きすぎるとトリガーバーのフックが外れて動かなくなるので注意
実用性はほぼゼロの本当に協会規定に合わせるためだけのアリバイセーフティ
実銃にある物理的なセーフティは2分割のトリガーのセーフティのみ
このトリガーフィーリングが嫌だという人は多いが個人的にはGlockよりいいと思っている
レシーバー側のメカのレイアウトはSIGMAの雰囲気をかなり捉えている
実銃はトリガーバーに連結したシアがスライド内のストライカーを引くダブルアクション
エアガンはシアの位置にそっくりな見た目のハンマー(バルブノッカー)が配置されている
(右)Smith & Wesson SW9F実銃のトリガーバー周りと(左)WAのSW40Fエアソフトガン
SIGMAにはGlockには無いトリガースプリングがあってトリガーに常にテンションをかけている
SIGMAは見た目Glockそっくりだと言われるけど実は結構いろいろ独自性を盛り込んでいる
グロックのセーフティアクションを止めてDAOにしたのも独自性だが
それでグロックの特許権、意匠権を回避するということはできなかったようだ
WAのこのトリガー周りのメカは実銃そっくり
実銃にないメカはマガジンのバルブロッキングを解除するロッキングリリースや
バルブノッカーがあること…ぐらいでパッと見は実銃そっくりに見える
このWAのハンマーはSIGMAのシアそっくりの形をしていてスライド側には
シアが引っ掛けてストライカーをコックするフックも再現されている
ただしスライド側の突起はモールドだけのダミーだがこれも見た目そっくり
(左)WAのショーティ40ことM4006パフォーマンスセンターと(右)WAのSIGMAエアソフトガン
(左)WAのSIGMAエアソフトガンと(右)WAのショーティ40ことM4006パフォーマンスセンター
サードジェネレーションで一番美しいと思う4006からどこをどう跳躍したらSIGMAになるのか
似ても似つかないがまごうことなきS&W直系の子孫
(左)東京マルイのM&P9と(右)WAのSIGMA SW40Fエアソフトガン
(左)東京マルイのM&P9と(右)WAのSIGMA SW40Fエアソフトガン
SIGMAの知財裁判で事実上敗北して「パクリ認定」されたSIGMAだが
ほぼ同じメカのM&P9はどうやって特許権・意匠権を回避したのかなと思っていたら
グロックの権利が2005年に時効になったので満を持してSIGMAの焼き直しをしたらしい
S&Wのシリンダー貫通型リボルバーの特許が切れた1872年にコルトや各社から
カートリッジ式リボルバーが相次いで発売されたのと同じことが2005年に起こったようだ
因果はめぐるんだな…
SIGMAを醜悪な駄作という人もいるが個人的には結構好きなデザイン
カーブで構成されたグリップ周りはS&Wの血統を感じる
WAはちゃんとSIGMAのDAOのトリガーフィーリングや
メカの外観を再現してこれはこれで楽しいトイガンだと思う
トーンを変えたマズル周りの仕上げ
スライド前端もパーティングラインが浮き上がって
WAグレードだったがしっかりサンディングして消した
ブラッセンにヘアラインを入れると少し金属っぽい雰囲気になる
キャロムのスティールブラックほど鉄色でもない黒いニュアンスで重宝している
モダンなハンドガンの黒はブルーイングや黒染めと違って塗装なのでこういうニュアンスが必要
WAがSIGMAを発売した当時からずっと気になっていた
25年ぐらいになるかな…S&W刻印なら欲しいかなと思い続けて老いらくの恋かな
ヒケやパーティングラインなどの欠点を解消すれば結構お気に入りになった
2024年12月23日
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