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なんちゃってなIT用語辞典2

多分何の役にも立たないIT用語辞典
How that IT term sounds funny


ブルートゥース

Bluetooth

このブルートゥースという技術も一般には誤解を受けているんじゃないかと感じることがある。
あるコンピュータ技術展で、ブルートゥースと一部の無線LANが混信してデモがスムーズにできなかったというニュースが流れた時、

「無線LANがこれだけ普及しはじめているのに、なんでブルートゥースなんていう無線規格が別に必要なのか」

という批判を書いていたサイトをいくつか見かけた。
このふたつは一見似た物のように見えるが、実は機能も目的も全く違う。

無線LANは結局は有線のイーサネット、つまり会社で使っているようなLANを無線化するだけのことでそこでできることは、LANと同じだ。
ファイルの共有、プリンタ共有とか、ネット接続とかそういうことはできるがそれ以上のことはできない。


3年前にこのブルートゥースを開発した、スウェーデンのエリクソン社を取材するチャンスがあった。
エリクソンは今でこそ携帯電話事業をソニーエリクソンに身売りしてしまったが、当時は世界第3位の携帯電話メーカーで、基地局などのインフラ機器では世界1位のシェアを持つという携帯電話の巨人企業で、ストックホルム郊外にはモバイルバレーと呼ばれる街があり、そこでも建物の半分はエリクソンのマークをつけていた。

このブルートゥースという新技術の開発チームは、ストックホルムではなくスウェーデンの南の端のマルメという街の郊外にあった。
海峡を渡ってコペンハーゲンに繋がった大橋が見える小高い丘の上だった。

そこで見せられたデモは、携帯電話にヘッドセットをワイヤレス接続して相手の名前をいうだけで電話がかけられるという物だった。
しかしこのデモを撮影したテープを持ち帰って、国内で人に見せたところ返ってきた反応は

「音声で自動ダイヤルするという機能は俺のドコモにもついているぞ」

ということだけだった。
これではブルートゥースのすごさが判らないのだ。
ブルートゥースは単なる無線マイクではない。
機器レベルで音声情報や操作情報をやり取りしているんだと説明しても、無線マイクは取材班だって持っているじゃないかというぐらいのことなのだ。

ブルートゥースはポテンシャルがありながらも何がすごいのかということを今までなかなか見せることができなかった。
今無線キーボードや無線マウスという形でブルートゥースが普及しはじめているが、これだってアナログの無線と比べてメリットは何なのか判りにくい。(消費電力の差ぐらいか?)


アナログのラジコンは受信機に向かってその製品間だけに通じる信号を送るだけだから、無線化をどんどん進めようとすると機器の数だけリモコンが必要になる。
これは今大抵の家庭のリビングの机の上に、リモコンが4つから6つぐらい並んでいる状態を思い浮かべればいい。
4つならまだいいが、家庭の機器を全て無線化することを考えてほしい。
机に20個、30個のリモコンが並んだら、リモコンを探すよりも立ち上がって直接操作した方が速いということになってしまうだろう。


話を戻して先ほどのデモなのだが、このエリクソンで見たデモは携帯電話の本体に全く触らずに電話がかけられたということが実はすごかったのだ。
耳にかけているのは簡単なイヤホン付きマイクにブルートゥースのチップが内蔵されているというだけの機械だ。

ところがブルートゥースで繋がったので、このタダのイヤホンマイクには電話機能が付加された。 さらに他の機器と繋がればもっと別の機能が付加されることになる。
パソコンとつなげばワープロ機能やメール機能が付加されるかもしれない。
車と繋がれば渋滞情報を受信する機能が付加されるかもしれない。
自宅のホストコンピュータと繋がれば、自動的にお風呂を湧かす時間を決めるリモコンになるかもしれない。

タダのイヤホン付きマイクがだ。

このただのイヤホン付きマイクにあらゆる機能が付加されるかもしれないというのがこの技術の肝なのだ。


電話に全く触らなくていいということは、携帯電話本体は鞄に入れっぱなしでイヤホンで電話をかけたり取ったりできる。
電話がかかってくる度に鞄の底をごそごそやって電話を探さなくてもいいというだけでも、この技術は利用価値がある。


ちなみにこのブルートゥース、つまり青い歯という気になる名前の由来も聞いてきた。
IT用語って大抵はUSBとかWANとか無味乾燥な略語か、アプリケーションとかブラウザとか意味不明な概念語が多いのだけど、この言葉は確かに毛色が変わっている。

開発担当者によると、これは古代バイキングの領袖の名前なのだが、
このブルートゥースというのは実は誤訳が一般に広まったもので、古代ノルド語では

「青いひげ」

という意味の名前の人だったそうだ。
(今のスウェーデン人で英語が解らない人は一人もいないそうだが、古代ノルド語つまり元々の母語が解る人もほとんどいないそうだ)
古代のスウェーデン人は皆金髪碧眼の人ばかりで、髪もひげも黒い人というのは珍しかったので「青いひげ」と呼ばれたそうだ。
日本でも黒い髪を
「みどりの黒髪」
というがノルドの古語では黒いことを喩えて「青い」というそうだ。


この青ひげのバイキングはイギリスでいえばアーサー王のような、日本でいえば多分ヤマトタケルのような神話化された民族草創の象徴ということらしい。

「このネーミングは、家電製品をこの技術で統合するという意気込みの現れか?」
と質問すると
「違う。統合するとかそんなことではない」
とこのエンジニアは控えめに答えた。

エリクソンはこの技術を無償で世界に公開した。

当時世界中から数十社集まった家電製品メーカーがフォーラムを組んでこの応用技術を開発していくという。
かつてのVHSやCDがその規格を無償公開したために世界中のスタンダードになった。エリクソンもこの技術を一社独占するよりも世界中のメーカーに使ってもらい、自社製品とシームレスに通信ができるという環境を作ったほうがメリットがあると判断したようだ。
この技術は世界中で使われることになるだろうが、そのルーツは実はスウェーデンなのだということをいつまでも残しておきたいということでこのネーミングになったらしい。

いつか日本から輸入されたテレビ、DVDなどに

「ブルートゥース」

というシールが貼ってあったとしたら、
「あっ、これはスウェーデンの技術が入っているんだ。」
とスウェーデン人ならすぐにピンと来るはずだ。
ITのことを全く知らないおばあちゃんでも、スウェーデン人なら誰でもピンと来る名前。
それがこのネーミングの本当の狙いのようだ。


将来日本で例えばIPv6等の規格が完成したら、これには是非とも
「ヤマトタケル」
という商品名をつけてもらいたい。
そうすれば皆これが日本の技術なのだということをいつまでも忘れないはずだ。




ウエアラブル

wearable

この言葉の意味は辞書によると、身に着けることができるという意味だ。
そしてIT現場でも身に着けることができるコンピュータというふうに使われる。
実に判りやすい。
これだけなら話はもう終わりだ。

しかしこれだけで話が終わらないのが、この世界が一筋縄ではいかないところなのだ。

コンピュータという機械は研究室やオフィスの真ん中でドーンと鎮座している存在から、ノートサイズで持ち歩くまでに変化した。
携帯電話だって、今の最新の携帯電話は数年前のオフコンと同じくらいの能力を持った巨大なコンピュータなのだ。
今では車にだって、洗濯機にだって、トイレの便座にすら組み込み型のコンピュータが仕込まれている。

そういう機能する場所が決まっている物はいいが、問題はノートパソコンや携帯電話などの持ち歩く物は困った問題が起きる。
紛失するとか使いたい時になかなかとっさに使えないという問題だ。

電車内の忘れ物のダントツのNo.1は傘だが、今すごい勢いで携帯電話がこれに迫っているそうだ。 なぜ忘れるのかというのと、とっさに使えないというのは実は同じ不便さが原因になっている。
電車の中でメールを打とうとして眠くなりウトウトして握りしめた電話を落とす。
降りる駅に着いた時、とっさに電話を鞄にしまったかどうか思い出せないで慌てて降りる。
そして降りて暫くして電話を失くしたことに気がつく。
電話の忘れ物って大体こういうパターンじゃないだろうか。
使いたい時にとっさに使えないから手に握りしめるが、手に持った物は不意にどこかにおいてなくすということが多いのだ。

それなら電話もモバイルPCも体につけてしまえば良い。

体に着ける物で見なれている物は、眼鏡、腕時計、ベルトのバックル等ということになる。
3年前にスウェーデンのエリクソン本社で、開発の女性に

「これはウエアラブルと呼んでいる未来の電話だ」

と腕時計のような形の電話のモックアップを見せられた。
なるほどこういう形になれば忘れ物は減るだろうし、使いたい場所で使える。
またこれからのセキュリティはクレジットカード機能も家の鍵も携帯電話がその機能を負うようになるだろうとセキュリティ企業の人が語っていたし、重要なのは電話を体から離さないデザインにしてしまうということだ。

このウエアラブルモバイルフォンはすぐにも実現しそうな気がした。
しかし実現は3年かかったしそれを出したのは日本の時計メーカーで、しかも開発した動機はかなり違っていた。

セイコーインスツルメンツが今年ネットで限定販売を始めたPHSのリストモは思わぬスマッシュヒットになっている。
毎回売り出せば数時間で売り切れてしまうという。
腕時計としても機能するがリストバンドを開けばPHS電話として使える。メールは使えるがパソコンとの接続はできないのでほとんど腕に付ける電話というだけの機能だ。
開発したデザイナーは

「そろそろ技術的にできるんじゃないかな、できれば楽しいな」

という動機で作ったそうだ。値段は4万円ほどでおそらく国内ではもっとも高いPHSだ。
売れているのは楽しいからだ。実用的だからではない。
こういうスタイルの時計型あるいは眼鏡型携帯電話やモバイルPCがこれからの主流になっていくのかというとちょっとよくわからなくなっている。


このウエアラブルとよく似た言葉で前項で書いたユビキタスという言葉がある。
どちらも個人が身に着けた物でネットワークと通信して情報社会にアクセスする。
一見似ている。

しかしウエアラブルは眼鏡や時計に姿を変えた携帯電話、PCを身に着けているのに対して、ユビキタスという考え方は身に付ける物はそんなに大きな情報を扱える物でなくても良い。
間違いなくその人だと特定できるようなセキュリティさえ確保できれば良いので、それが特定できれば0.2ミリ角の無電源のICチップでも良いわけだ。 その人が触った机や壁がすぐに電話になったりパソコンになったりするからだ。

この概念の違いは実は大きいのかもしれない。
完結した情報装置を身に着けるウエアラブルという考え方は、実はあまりユビキタス的な考え方ではないのかもしれない。
そして未だに腕時計型の第3世代電話が出ないのは、技術的にリスキーだということもあるけど、そういう物を開発しても本当にそれが本流になるのか判らないという思いもあるのかもしれない。

まずウエアラブルが来て、2020年頃には背広そのものが携帯電話機能を持つようになって、やがては0.2ミリ程度のチップだけを身に着けて、電話機能やメール、インターネット接続は壁が担当するというふうに順番に進歩は来るだろうという話を聞いたことがあるが、案外一足飛びに順番飛ばしが来るのかもしれない。




リソース

resource

「資源」と訳すのが普通のこの単語だが、資源というと石油やウランのような物を連想する。
この世界で普通リソースというと、人的な資源、マシンの処理能力、コンテンツなどかなり広い意味で使われる。

ホームページのアドレスと一般に呼ばれているものを正しくは

「URL」

と呼ぶ。

(ホームページというのはwebに入る時に最初に表示するページのことで、ブラウザで設定する。
たいていはExciteとかyahooとかのポータルサイトをホームページに設定することが多いが、別にポータルサイトでなければいけないという決まりはない。
Appleのサイトでも良いし自分の勤務先の自社サイトでも良いわけだ。
Windowsユーザの場合はMicrosoft社のWindows Updateのページなんかをホームページにしておけば合理的かもしれない。
だから「ホームページを作ったから見て下さい」という言い方は本当は間違っている。またメールアドレスという言い方はするが、ホームページのアドレスという言い方もおかしい)

この略語は
Uniform Resource Locator
つまり「ネット上のリソースの場所を表示する書式」というくらいの意味合いだ。
世界のweb上にたくさんある、文献、画像、音楽他あらゆるコンテンツを
「資源」(リソース)と呼んでいるわけだ。


アプリをたくさん起動したまま重い作業をやらせているとMacの場合は、
「メモリ不足のため動作が不安定になります。アプリケーションをいくつか終了して下さい」
という警告が出る。
これがWindowsの場合
「リソースが不足しています」
ということになる。
リソースって一体何のことなのか、ハードディスクが小さいといっているのか、メモリチップを足せといっているのか、ペンティアムではこの作業は手に余るといっているのか見当が付かない。
全く親切なコンピュータだと思う。

IT企業の場合は社員をリソースと呼んだりもする。

「我々の企業の開発リソースも無限にあるわけではないので、効率的なR&Dが課題だ」
というような使い方をする。
社員の能力の総和というような意味合いで言っているようだ。
こういう言い方をする時には、会社に置いてあるコンピュータのリソースをさしているということはまずない。
コンピュータのリソースは商品だし、実際にはイメージよりもずっと人海戦術だったりするIT企業にとって、リソースというのはコンピュータではなく人だということらしい。
これはベンチャー企業でも大企業でも同じことみたいだ。



2003年12月25日













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青木さやか