一本かぶりという言葉を思い出したのでつい... |
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最近のニュースで気になっているのが三菱自動車、三菱ふそうのことだ。
報道でも大きく取り上げられているので詳しく解説するのも意味がないと思うが、ふそうトラックの欠陥で死亡事故が起きたということを三菱ふそうが最近になって認めたということだが、内容的にはリコール隠しにも繋がりかねない三菱の体質が問題になっている。
その親会社の三菱自動車も数年前にリコール隠しがばれてまさに経営危機というところまで追い込まれていたが、コルトなどの社運をかけた新型車を投入しても今にいたっても危機を脱したとは到底いえないような状態が続いている。
そこで先日のニュースでは三菱の親会社のダイムラークライスラーの縁でメルセデスベンツが直接経営再建に乗り出すことが発表され、市場はこれを好感して三菱自動車が高値をつけているということだ。
こういう株式市場の関係者の感覚というのはよく解らないところがあるのだが、メルセデスが再建に乗り出すから日産のような再建劇が織り込まれるということで値が上がるのだろうか?
逆にそうまでする必要があるほど危機的状況だという読み方はできないのだろうか?
これとよく似た値動きをする株にアメリカのシアトルにあるマイクロソフトという会社がある。
この会社は主力商品であるWindowsに重大なセキュリティホールが見つかる度に株価が上がるという不思議な会社だ。
セキュリティホールが出たら悪材料が出尽くしたということで買われるのか、そういう機械的な買い方がもう市場関係者の習い性にまでなってしまっているのか、よく解らないが基本的に投資家という人種はハイテク音痴だと思うことがよくある。
Windowsのセキュリティホールはひとつ出れば「悪材料は出尽くした」なんていう生易しいものじゃなくて、ひとつ出れば二つ見つかる、二つ出れば四つ見つかるというように際限なく出てくるものだということを皆さんご存じないようだ。
そのうちのいくつかにひとつは重要度「緊急」の重大なセキュリティホールで、しかも御本家はそれを半年以上黙ったまま放置してしかも謝りもしない。
「対策に時間がかかったんだから仕方ないだろ」と開き直っているわけだから、三菱ふそうよりもある意味たちが悪いかもしれない。
それでも投資家がこの会社に魅力を感じるのは、空前の好決算だのキャッシュフローだのということなのかもしれないが、そのキャッシュの源泉は一体何かということを考えるとやっぱりこの会社に投資する人たちの考え方がよく理解できないのだ。
マイクロソフトの事業で黒字を生み出している事業はひとつしかない。
WindowsOSのライセンス事業とそれにのっかっているMSOfficeだ。
それ以外の事業は全て失敗または、停滞状態になっている。
しかしこのMSOfficeが莫大な金を生むのだ。
なんせ原価数百円のものを4万5千円で売るのだ。
金にならないはずがない。
ダンピングしたり、競合製品をバンドルしようとした販売店やベンダーは
「今後Windowsを一切卸さないぞ」
と脅せば価格維持やシェア維持なんて簡単だ。
今頃になって公正取引委員会がマイクロソフトには公正競争妨害の疑いがあるとかいって立ち入り調査をしているが、今さら何を寝ぼけたことをいっているんだろうかと逆に思ってしまう。
このMSOfficeの詐欺的な利益構造がこの会社の収益の大部分を占めるということは、確かにキャッシュフローという指標だけ見ていればこの会社は大変内容の良い会社のように見えるが、利益構造を考えると大変危うい会社だということが解る。
(これだからアメリカ式のキャッシュフロー経営は企業経営の実体を反映していないと思ってしまうのだ)
ましてやEUではマイクロソフトの基本戦略であるバンドル商法は違法という判断が出てしまった。
これからこのピンチをどう切り抜けるつもりなのかが見物だが、そういう外的要因で急激に業績が悪化するということがあり得る会社なのだ。
かつてITバブルでアメリカの株主は大きな教訓を学んだといわれているが、マイクロソフトの株価を見ているとあまり学んだとは思えない。
この会社の株価はITバブルならぬひとりバブル、まさにマイクロソフトバブル化しているといいたい。
ところで書きたかった本題は先の三菱自動車の方だ。
この会社は今でこそ鳴かず飛ばずの会社になってしまい、三菱グループだけでなく日本の自動車産業のお荷物になりつつあるが、かつてはそういう会社ではなかった。
GDIなどの先進的なエンジン技術を持ち、新しい車種のマーケットを切り開くイノベーターだった時代がある。その象徴がパジェロだったり、ミニバンだったりするわけだが、そういう先駆者的な新しいものを開発してもすぐに、大手メーカーに真似されてしまう。
そして生産力で圧倒的に勝る大手メーカーが三菱の切り開いたマーケットを結局占拠してしまうという構造が続いていた。
この構造もなんだかよく似たものを連想させる。
前にも書いたがマウスとアイコンを発明したのはゼロックスのパロアルト研究所だが、それを製品としてまとめたのはAppleのMacが最初だった。
Appleは階層的なディレクトリを視覚的にユーザに理解させるためにウィンドウという操作インターフェイスを体系化した。これでアイコンを使ったいわゆるグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)が実用的なものになった。
マイクロソフトがやっとMS-DOSにたどり着いた時代の話だ。
マイクロソフトはすぐにこれを真似してWindows3.0までの一連のシリーズを出した。
しかしこれは当然発明者のAppleと権利訴訟になったわけだが、結局マイクロソフトは和解してしかもその和解案を踏みにじってナシクズシ的に、ウィンドウというアイデアをいただいてしまい、しかも堂々と自社製品にWindowsと名付けて売り出してしまった。
それだけでならまだいいがLindowsというLinuxのネーミングがWindowsと紛らわしいので著しく商標権を侵害しているという訴訟まで起こすというものすごさだ。
ここまで来ると盗人猛々しいというのはこういうことをいうんだろうなと思ってしまう。
商標権侵害だというなら、その前に意匠権を侵害したことをどう説明するんだと聞いてみたくなる。それにLindowsがWindowsの商標権を侵害しているというのなら、WindowsはX-Windowの商標権を侵害していないのだろうか?
そうか三菱自動車は自動車界のAppleだったのか....
三菱は新しい自動車マーケットを開拓してきたが、結局トヨタなどの大手メーカーの生産力に負けた。
Appleは新しいGUI環境に先鞭を付けたが、結局マイクロソフトのバンドル商法、DOS-Vパソコンの安値攻勢に負けた。
かつて映画興行の世界で一本かぶりという言葉があるという話を思い出した。
一本かぶりというのは、興行の世界で一番人気の出し物に人気が集まり過ぎて2番以下が総崩れになってしまう現象のことだ。
この現象は映画だけではなく、10年ほど前からあらゆる業界で見られる現象になった。
液晶テレビはソニーや松下がいくらがんばろうが、シャープの独り勝ちになっている。
カメラはキャノンの独り勝ちだ。
車はトヨタの独り勝ちだし、クライアントPCのOSはWindowsの独り勝ちだ。
どうしてそうなるかというと消費者(ユーザ)が冒険をしなくなったからだ。
車なんて走って曲がりゃ何でも良いわけで、そこに微妙な違いがあるなんていわれたって大部分の消費者には解りゃしない。
それよりもそこそこ安い値段でそこそこ走る車が皆欲しいわけだ。
それをいちいち調べるのも面倒なので皆持っている車なら間違いないだろうということで、皆同じ車に乗るようになる。
不思議なことに個性化の時代、個の時代と言われてからの方が、そういう現象がはっきり出てきているのは皮肉な話だ。
時代は実は個の時代でもなんでもない。
そこそこの時代だ。
パソコンだって、高級な美しい均整の取れたOSなんてユーザは必要としていないのだ。
そこそこ安くてそこそこ動くOSを皆欲しがっているということだ。
だから一本かぶりが起こってくる。
何が良いのかは理解できないが、取りあえず
皆使っているから安心だ。
そうか三菱自動車は自動車界のAppleだったのか....
となるとリコール隠しなんかやってないのかなというのが疑問だ。
Apple製品というのはどういうわけか、数年サイクルで製品の質が良くなったり悪くなったりする。97〜8年頃のApple製品って、品質的には最悪だったんじゃないだろうか?
それが改善されて3〜4年ぐらい前のiMac等のシリーズは非常に高品質だったように思う。
実は私が使っている自宅iMacも手もとのiBookもこの時代のものだ。
どちらも故障知らずで、(システムレベルのクラッシュは実に多かったが。これはOSの世代の問題だから仕方がない)今だに十分実用に耐える性能を持っている。
しかし問題は最近のMacだ。
どうもお知り合いのトラシュー系BBSなんか見ていると、特にeMacとかiMacなんかにトラブルが集中しているようだ。
それもシステムとかソフトウエア絡みのトラブルではなくて、モニターが死んだのマザボが死んだのというトラブルだ。システムが死んだら最悪でも再インストールで生き返る。
初期化再インストールで買ってきた時と同じ新品同様の状態に戻るのだが、モニターが死んだらどうしようもない。
トラシュー系BBSというのは先輩たちが知恵を出し合って、トラブルを解決してあげようというBBSだが先輩の知恵が役に立つのは、システムとかソフトウエア面のトラブルだけで、
「モニターが死にました。どうしたらいいでしょう?」
という相談を持ちかけられても、
「修理に出したら?」
という知恵しか浮かばない。
これはMac一年生も15年の年季の入ったユーザも同じことだ。
マザボが死んだらうんともすんともいわないから、検証のしようがない。
だから
「マザボが死んだみたいです。どうしたらいいですか?」
と聞かれても
「そうですか」
としか答えようがない。検証のしようがないからだ。
結局1年生だろうが15年生だろうが
「修理に出したら?」
という答えしかないことになる。
最近こういうトラシュー系BBSでは手に負えないようなトラブルを相談してくるMacユーザが増えているような気がするのだ。
またしてもMacの品質が落ちているんじゃないだろうか?
Macは欠陥があっても人が死ぬわけではないけれど、こういうマイノリティが欠陥なんか抱えていたら致命的だという点はMacも三菱ふそうも同じことだと思うのだ。
コストダウンのせいと思われる初期不良が多いというのは、DOS-Vパソコンの専売特許だったはずだ。
今やiBookG4は下手なWindowsパソコンを買うよりも割安なパソコンになってきた。
そのこと自体は良いことだと思う。
しかしそれが無理なコストダウンの結果で、そのために数々のトラブルを引き起こしているんだったらむしろMacの将来に暗雲立ちこめるという気がしてしまうのだ。
ジョブズさん、本当に大ジョブ?
2004年4月6日
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