Previous Topへ Next

今日の下げ方はすごかったよね
/Fallin' Down

数字だけみたら「大恐慌」という表現は大げさではないかも


今日の下げ方はすごかったよね、数字だけみたら「大恐慌」という表現は大げさではないかも

今日の株、為替の動き方はすごかったよね。
数字のことになると素早く調べる人がすぐにいるから、便利なのだけどいくつか上げてみる。
日経平均は15273円68銭、前日大引け比874円81銭安
これは単日ではジェイコムショックやライブドアショックの時も突き抜けて、7年ぶり、ITバブル崩壊のとき以来の下げ幅なのだそうだ。
東証の開所以来日経平均では、歴代16位の下げ幅、TOPIXでは11位の下げ幅だ。
週間ベースではTOPIXで歴代5位、日経平均で12位ということだから、一過性の突風であるはずがないと思う。
為替も東京で一時112円台に突入してほぼ一方向的な円高方向に向かっている。
こちらは1年2ヶ月ぶり。

今後どうなるかなんてことを予想するのは専門家の仕事で、私のような素人は『あと講釈』専門なのだが、これは一過性ではないということに関してはほぼ確信を持っている。

今回の現象の大きなドライブになったのはやはり為替だと思う。
為替は2006年の5月以来この2年3ヶ月、ほぼ一方向に円安ドル高で進行してきた。
ユーロに対してもオージードルに対しても円安で進行してきた。
だからこの2年というもの、投資のとの字も知らないような人達が猫も杓子も「FX」「為替証拠金取引」に狂奔して「為替証拠金取引は買えば絶対儲かる」なんて熱に浮かされたように口走っていた。
今でもそういう人が大勢いて、この何週間かの相場でほぼ焼き鳥になっているんじゃないかと思う。


私が自分の言葉で書いてもあまり信頼感がないだろうから、これについては最近聞いてきた専門家の話をそのまま引用する。
6月15日に若林栄四さんの講演会を聴いてきた。
この6月15日という日付には意味がある。委細後述。

若林栄四さんという名前は、為替取引に興味がある人だったら知っているかもしれない。
この方は面白い人材が揃っていた三菱との合併前の東京銀行の中でもひときわユニークな人で、東銀の為替ディーラー時代のニックネームは「マッドドッグ」といわれていた。
市場が売り一色になるとそこに買い向かうようなことをするのでそういうあだ名がついたらしい。
この若林さんという人材を発掘した経団連の本田敬吉さんにお会いする機会があったので、どういう人物だったのか聞いてみた。

本田さん曰く
「若いやつですごく鼻っ柱が強くて生意気なんだけど、面白いことを言うヤツがいるからやらせてみようということで、私が抜擢した。
どういうものか、彼の場合はよく相場を『当てる』んですよ。
それでどういう根拠で当ててるのか、彼と徹底的にディスカッションをしたことがあるんだけど、相場観ということでいえば、どう考えても私の言う事の方が理屈が合っているのに、結局相場は彼の言う通りに動くんだよね。
あれはどういうんだろ?」

ということだった。

面白い話だと思うし、相場というのは元々合理的な動きをするとは限らないということなのだろうと思う。
しかしその必ずしも合理的に動くと限らない相場でも、全く無意味にデタラメに動いているわけでもなくてやはりそこには法則性、合理的理由らしきものが存在する。

若林さんはどちらかというと材料とかファンダメンタルズとかをあまりみないで、テクニカルな方法を駆使してそうしたものを割り出していくという方法論をとる人だが、その方法論はテレビなどでよく見かけるテクニカルアナリストというような人とは全く違う。
例えば、下げ相場で天井のピークと、下げ戻しのピークを線で結んで
「上値抵抗線」
とか言っているチャーチストをよく見かけるが、これは若林さんに言わせると
「何の意味もない、何の根拠もない」
ということになるらしい。
若林さんに言わせれば、一目均衡表も窓理論も何の意味もないということになる。

かわりに何を使っているかというと「相場のリズム」としてチャートの形をみる方法だ。
相場は常に一定のリズムでピークをつけたり、ボトムをつけたりしながら全体で上げトレンド、下げトレンドを見せる。
そのリズムを見ていると、どこかでそのリズムが狂うときがある。
リズムが狂う時がトレンドが変わる時なのだという。
これは為替だけでなく、株でも、債券でもコモディティでもどんな相場でもそうなのだそうだ。

これが一番劇的だったのが2004年の12月の円高の時だった。
この時に1ドル100円に迫ったチャートを見て、ほとんど全てのメディアが1ドル90円台は必然という論調だった。
しかし若林さんは一人、この時に
「1ドル90円台はあり得ない。」
と主張した。
しかし一般には「アメリカの双子の赤字がドル売り、円買い圧力になり」90円台はおろか、80円台も避けがたいというのがこの時の論調だった。
結果どうなったかというと、04年の12月にドルは大底を打って、以降は周知の円安、ドル高のトレンドに転じた。

後から理屈を付ければ、この時に日米の金利差は決定的になり円をほとんど無金利で借りて、円売りドル買いをする円キャリートレードの流れができたという分析はできる。
しかしそれは後から分かる事で、若林さんはこの時のボトムのつけ方のリズムが、完全に裏打ちになった事に注目してこう断言していた。

ドル円は結局1ドル=100円を突破しなかった。

後はお馴染み円キャリートレード、円安のトレンドが定着して「FX」「為替証拠金取引」の大流行になった。

昨年若林さんに会った時には若林さんは「購買力平価」に注目して近々円高の大転換が起きると予言していた。
この論は実は若林さんのオリジナルではなく、多くのエコノミストが注意していた話なのだが概要を説明するとこうだ。

1996年にドル円の水準は1ドル=110円だった。
もしこの水準が適正だったとすると、ここから2006年までの10年間、アメリカのインフレ率は平均2%、10年累積で20%、日本のGDPデフレーターは平均-0.9%で10年累積でマイナス9%。
これを単純に物価に当てはめると96年に
一杯1ドル=110円のコーヒーがあったとして、
日本のデフレーターを当てはめると
一杯=100.1円
アメリカのインフレ率を当てはめると
一杯=1ドルは
一杯=1ドル20セントに

これを為替相場に当てはめると(実質レート)単純計算で06年の適正為替水準は
1ドル=83円41銭
ということになる。

ところが実際には1ドルは06年夏で115円、07年6月で123円台の後半をつけていた。

この乖離は何が原因かというと、そもそも96年の水準が適正値かという問題もあるが、それを考慮に入れてもやはり円キャリートレードが生む円売り圧力が想像以上に強かったという事も言える。
つまり円ドルは一方的な円売りドル買いポジションにエネルギーがかたよっていたということだ。

これがどんどん続いたらどうなるだろうか。

地下のマントル層の表面にたまった一方的なエネルギーは、あるレベルを超えるとそのエネルギーを解消しようとして火山になったり、地震になったりする。
そうして一方的になったエネルギーを解消しようという方向に必ず動く。
相場も同じで極端に一方向にポジションがかたよると、いつか必ずそのエネルギーを解消しようとそのエネルギーを噴出することになる。

そういう簡単なことも知らないで、あるいは知っていても理解したがらないで
「為替証拠金取引は買えば絶対に儲かる」
なんて無邪気に言っていた日本の個人投資家が哀れだ。

問題はそのタイミングがいつ来るかということだ。
残念ながら若林さんは、ここしばらくはそのタイミングを外している。
昨年いっぱいが円安トレンドの臨界点で年初には大きな転換点が来るという予言は外した。

それで上述の6月15日講演会になる。

「私のチャートを駆使するとどう考えても、為替の大転換点は07年の夏、しかも6月の第3週目ということになる。
つまり今日なんです。
これがいい加減なエコノミストでしたら『向こう2〜3ヶ月のうちに変化が起こるでしょう』なんて適当なことを言ってお茶を濁すところでしょうけど、私の考えをどうまとめてもそういう言い方はできない。
もう、今すぐ講演を止めてそこの窓から飛び降りたいような気持ちでこんなことを言っているんですが。
前回もタイミングを外したのは『ほぼ絶対』の確信があったのだが相場の神様が『人間ごときが予想をするのは、おこがましい。ちょっと外しといてやれ』と意地悪をしたとしか思えない。
今回もそんなことになる気がしないでもないが、来週開けに一ドルが123円の60銭台より上をつけていたら、『若林の奴どうする気なんだ?』とちょっと気にかけてやってください」

若林さんの講演はまさに汗が吹き出すのが分かるような内容だった。
結局今回も『相場の神様』は意地悪をして、およそ1ヶ月若林さんのタイミングを外したようだ。
しかし投資顧問業としては、それはどうでもいい問題ではないかもしれないが、経済はどうなるのだろうかという視点で見ている私から見れば
「タイミングの問題はいつも多少のずれがある。それよりもどちらの方向に向かっているかが重要だ」
と割り切っているから、この若林さんの論は非常に興味深い。

これで分かることは、
1)この為替の動きは一時的な調整なんかではないということ
2)円高、ドル安の圧力は実は想像以上に非常に強いこと
3)円キャリトレードなどという一時的な圧力弁が壊れたら、相当な水準まで為替は戻すことになること
などが言えると思う。

若林さんは結果的にタイミングは外したが、123円台の後半が為替の天井という水準は見事に的中させている。
しかも5年のチャートを見てみると今回の円高ドル安は、この5年の円安トレンドのガイド線を一気に突き抜けてしまった。明らかにリズムも変わっている。
若林さんのメソードを敷衍するなら、7月後半以来のこの下げが転換点になってこれからはしばらく円高、ドル安のトレンドが続くということになる。
しかもひと月ふた月なんてレンジではなく、最短でも4ヶ月、あるいは1年半とか2年とかそういうレンジのトレンドになるかもしれない。


ここでもうひとつ若林さんが面白いことを言っていた。
アメリカのサブプライムローンのことだ。
このサブプライムという言葉は、この数ヶ月急にアメリカでも浮上してきた言葉だった。
それまではあまり聞いたことがない言葉だったが、問題になっていなかったわけではない。
というよりも昨年も一昨年もその話は実は聞いたことがあった。
当時は「クリエーティブローン」という言い方をしていたと思う。

この「クリエーティブローン」というのはすごい言葉だなと思った。
まさに「金融を創造」するのだという。
「クリエーティブ」という言葉には前向きなポジティブな響きがあるが、このクリエーティブローンの業者たちがあまりにも「創造的」過ぎたために「クリエーティブ」というポジティブな言葉を使うのは止めて「サブプライム」つまり「副次的な」あるいは「二義的な」という言葉を当てはめるようになったようだ。

アメリカの住宅がバブルになっているというのはかなり前からいわれていることだ。
「これはバブルではない、フロス(小さな泡)だ」
という意見もある。
それはともかくアメリカの都市部で住宅価格が一気に上昇したことは間違いない。
その時にこのクリエーティブな業者たちは何をしたかというと、この含み益でふくらんだ住宅ローン契約者にさらに追い貸しをするということを始めた。
住宅を100%ローンで買っても、200%に値上がりすればそれを担保にして100%ローンを組み替えることができる。
しかしアメリカ人はこういう時に繰り上げ返済なんかしない。
その含み益を担保に車を買ったりセカンドハウスを買ったりする。

その営業も「家を担保に車を買ってはどうですか?」と戸別訪問するなんて穏やかな方法はとらない。アメリカの業者というのはもっと荒っぽいのだ。

若林さんによるとNYのマンションに住んでいると、こういうローン業者から封書でいきなり「小切手」が送られてくるそうだ。
これは模造品なんかではない。
50000ドルという額面の小切手がいきなり送りつけられてきて、そこに自分の名前を裏書きして銀行に持っていくと本当にその額面の現金に換金できるんだそうだ。

最初は500ドルとか1000ドルとかの小切手だったのが段々エスカレートしてきて、10万ドルとか20万ドルの小切手というケースもでてきているそうだ。
そういうすぐに現金に換金できる小切手が、ポストに投げ込まれていたらどうなるだろうか。

金融について知識がある人だったら、こういうものをうかつに使ったら後が大変だと思うだろうけど、アメリカはあらゆるレベルの人達が雑多に住んでいる国だ。
あまりリテラシイが高くない人がこういう10万ドルなんて額面の小切手を突然手にしたら、もう一族郎党で喰って呑んで車買って、別荘買ってそれで結局返済ができなくなってしまう。

そういう本来貸してはいけないような人にも貸金をする市場を「創造する」というのが、「クリエーティブ」なローンであり、そういうクリエーティブな業者に資金を貸し付けるのがサブプライムの市場ということになる。
こういうところに資金を用意するのは、大手の金融機関は直接貸し付けができない。
信用格付けの問題があるので、ジャンクボンドにはお金を貸せないとかの制約があるからだ。
しかし別の投資ファンドを通じれば資金を流入させることができる。

こういうところにお金を貸していたのは、少なくとも一昨年までは「オイルマネー」だった。
オイルマネーは主にヨーロッパの投資ファンドを通じて、こういうところにどんどんお金を入れていた。
だから一昨年には
「住宅バブルが破裂しても損をするのはアラブの石油王でアメリカの経済には影響がない」
なんてたかのくくり方ができた。
しかしこれが空前の利益を上げていたので、実はこれを見たアメリカの金融機関も相当足を突っ込みはじめていた可能性がでてきた。
これがアメリカ発の信用不安の正体だ。


しかしヨーロッパとアメリカはそういう不安を持っているが、日本株にはそれは関係ない話だ。 アメリカのクリエーティブローンが破裂しても、日本の企業には何ら影響はないはずだ。
円高不安で日本株が売られたという解説も見かけたが、それは違うと思う。
日本企業はもうアジアの各エリアに充分生産拠点をヘッジして、円安でも円高でも利益が出せるという仕組みを相当作り上げている。
これは以前、日本貿易振興会の統計ということで、幹事社の双日総研の吉崎さんの話として紹介したことがある。今や日本の最大の輸入品目は、機械と機械部品なのだ。

だから円高になるということは一概に日本経済にマイナスではない。
むしろ前述の通りここのところの円安が行き過ぎた水準だとしたら、日本企業はそのヘッジをしているはずだからあまりこの円安ポジションが続くとその仕組みを維持できなくなる。だからこの円高はマイナスではない。

なのに日本株は売られて一日で874円という久しぶりの大型崩落を経験した。

どうやらこれは円キャリトレードを解消する必要が出たり、サブプライムの広がりが思ったよりも広く深いということが微妙に明らかになってきたりで、世界中で同時多発的に資金がショートしているということが原因のようだ。
その時にとりあえず一番処分しやすい、しかもその流動性ゆえに一番先行きがよくわからない株からとりあえず処分しようという圧力が強かったようだ。
特に方向感が一番分からない日本株から順番に処分しようということが、今日のウリだったようだ。

でもそういう理由だとなんだか短期の調整のように見えるけど、ヘッジファンドが売り浴びせるとこんなに下がる市場だということも明白になってしまった。
ヘッジファンド以外の外国人投資家が、これからしばらく日本の市場で買い向かうということはないんじゃないだろうか。
今はみんなそんなに余裕がないから、そんな鉄火場で喧嘩はしたくないというのが正直なところだろう。
そうだとすると、これからしばらくのトレンドはどうだろうか。


私はあくまでこの分野については素人なので、『あと講釈』だけに留めてここから先の見通しなんて話は書かないことにする。
そんなことができるとも思わないし。
ただ一部の「一時的な調整」という見方にはあまり賛成できない。
なんとなくいろいろなトレンドの方向性が変わった節目だったんじゃないかなという気がする。
それは多分1年半くらい経ったらはっきり分かることなんだろうけど。
その頃になったらまた今を振り返って『あと講釈』することにしよう。




<後日追記>
先日書いた記事がちょっと悲観的すぎたかなと思っていたのだけど、週が変わって月曜日に戻したことで逆に確信を持ってしまった。
日経平均で一時期600円以上の上げ幅になり、「安堵感が広がる」なんて解説まででてくるが、逆に今日も一直線に株価が下がってくれた方が「短期的な現象かもしれない」という可能性を考えたかもしれない。
しかも戻して半値の430〜440円にあたりだろうなと思っていたらキッチリ458円のところにきた。
これってどうなの?
外国人は7月から売り越してたんだって。これもどうよ?




2007年8月17日













Previous Topへ Next





あわせて読みたい
site statistics
青木さやか