日立のパソコン事業撤退に思う
今朝の新聞一面トップ(日経)は日立のパソコン事業撤退のニュースだった。
日立は家庭用パソコン(ブランド名プリウス)や業務用パソコンからも完全撤退して、家庭用パソコンは既売品のサポートのみ継続、業務用パソコンはヒューレットパッカードからOEM供給を受けて継続するとのこと。
現状でもすでにヒューレットパッカードに依存した事業だったので、自然な流れかもしれない。
驚きというよりは、むしろ「いつ決断するのだろう」という見方をされていたから、「ついに見限ったか」という感じの受け止められ方をされているようだ。
でもこの日立って日本のパソコン開発史では日電(NEC)としのぎを削った先駆者だったのだということを思い出せば何か感じるものはある。
なんちゃってなIT用語辞典19 /1)PC:Personal Computer/Portable Computerというページでも書いたが、実は最初のパソコンというアイデアを思いついたのは日本人だった。
その証拠に「パソコン(Personal Computer)」という言葉は和製英語で、英語圏ではほぼ通じない。
ここでも書いたように秋葉原のビジコンという電卓の企画販売をやっていた企業が最初にパソコンを発想したが、結局この会社はこのビジネスをものにすることなく倒産してしまった。
そのアイデアを引き継いだのがインテルであり、このカテゴリーに次々参入してきたのが、アップルコンピュータだったり日電だったり、日立だった。
アップルコンピュータはマイクロソフトという会社からBASICの供給を受けてソフトウエアの開発にかかる手間とコストを圧縮したが、日電や日立は最初は独自言語で開発をしていたと記憶している。
当時は私はパソコンアパシーだったのであまり詳しいことを知らないが、日本から萌芽が出てきた
「パソコン」
という新カテゴリーのビジネスに日米の企業がしのぎを削ったのが今日のパソコン市場の黎明期だったと思う。(当時はマイコン〜MicroComputer〜という言い方をしていたが)
そのパイオニアの一角の日立がついに膝から崩れ落ちたというのが今回のニュースだ。
撤退の理由は
「これ以上収益性を維持できない」
という理由に尽きるらしい。
つまりこのパイオニア企業にして、日本を代表するモノづくりの企業でも収益を維持できないくらいパソコンビジネスというのはもう「儲からない」事業になってしまっているということだ。
この問題は日立の特殊な問題だけでなく、Windows/intelを採用するパソコンベンダーには全て共通する問題だ。
日立以外にも国内の大手ベンダーでは、パソコン事業は皆不採算事業になっていて会社のお荷物になっている。
シャープにしても富士通にしてもNECでさえそうだ。
IBMがThinkPadをレノボに売却してしまったのも、結局この事業には大きな飛躍が期待できないというIBMの見切りウリだった。
DELLは企業業績の悪化に伴い経営陣が入れ替わり、ますます「イノベーティブ」な「コストカット」に励むと明言している。
日立の救済を買って出たヒューレットパッカード自身だって、コンパックを買収したことが重く足かせのように負担になっている。
考えたらパソコンの完成品のベンダーでそこそこ業績がいいのはエイサーのようなアジア系の企業を除くとAppleくらいしかないということになる。
AppleはこれらWin-tel傘下の企業とは全然ビジネスモデルが違うので比較の対象にならない。
これらのハードウエアベンダーがこれほど青息吐息になっているのに、マイクロソフトは相変わらず好決算の連続を続けている。
しかもこの会社はWindowsOSとMSOfficeのライセンス事業以外は全て不採算事業という、超不振企業であるにもかかわらず、この二つの事業で空前の利益を叩きだしているために相変わらず超好業績企業の座を明け渡していない。
intelはひところの神通力が消え始めているが、MSのWindows、Officeは相変わらずだ。
そして量販店で話を聞いているとパソコンはブームという時期は過ぎたが、やはり今でも売れ行きは好調ではあるとのことだ。
このことは何を表しているのだろう。
少なくとも利益構造に大きな歪みがあるということはいえると思う。
そういえば今朝のNECの広告を見ると液晶と一体型のPCを打ち出している。
プロのデザインなのだそうだ。
この企業は白いノートブックを「独自のデザインコンセプト」なんてぶち上げて面の皮の頑丈さに感心していた。
iMacが液晶一体型の、今のシネマスクリーンみたいなタイプに変わった時に「きっとNECがマネするぞ」と思っていたが本当にそうなったのがなんだか笑えない感じだ。
それだったらMacのデザインなんか気にもしていないソニーのVAIOやレノボのThinkPadの方がまだデザイン的には好感が持てる。
実際「Windowsの実機を一台買いたいな」とかねがね思っているのだが、その時に目がいくのはやはりVAIOやThinkPadだったりする。
いまだに実現できないのだが。
日立といいNECといいパソコンの歴史を見れば、この二社こそ日本のパソコン史を黎明期から支えてきた企業なのだけど、誠に残念なことではある。
とここで、PCのハードソフトのビジネスのバランスについて論を展開しようと思っていたのだが、信じられない知らせが飛び込んできたのでこれ以上続きを書く気力を失った。
その知らせについては後刻詳述。
2007年10月23日
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