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ネット集団ヒステリー
/Net people beyond all help

知的後退はもはや常軌を逸したところまで逝っている


最近ブログの炎上が感覚的にも多いなと感じていた。
ブログだけでなく2ちゃんねるとかサイト付属のBBSとかもチョットしたことで炎上するというケースを見ている。
それは私の主観なのかと思っていたが、最近お仕事をするエコノミスト、経済評論家いろんな人と話していると彼らも「ブログなどの炎上が多い」ということを皆異口同音におっしゃっているので、どうやらこれは単に私に主観というわけではなさそうだ。

ここでも何回か書いたけど最近ではソニーのICウォークマンのユーザレビューのブログ炎上や通産省の谷部長のブログ炎上なんてのがあったが、そうかと思えば市民記者の女性のブログがやられ乙武さんのブログがやられ、渡辺淳一のブログがやられとその対象は大企業や官公庁からだんだん個人のプライベートなブログまで見境無しになってきている。

しかしこれらのやられたブログやサイトが、本当にそんなにひどい内容だったのか検証が必要だと思うのだが、当該の現在炎上中のブログなどでそんなことを書くと
「自作自演 乙」
とか書かれてまた袋だたきにされるだけでとてもじゃないけど冷静な議論なんかできるような状況ではない。


最近私のお知り合いの間で話題になっているのが
「ぐっちーさんのブログ債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら  いかにもな話
というところで、要するに
「植草一秀容疑者と長年の親友であり拘置所に面会に行ったが、反省が足りないので深く反省してほしい。長い付き合いなのでこれからも応援はするが」
というような趣旨のエントリが着火点になった。
これに対して
「植草に面会に行ったというのはウソだ」
という趣旨の
AAA植草一秀氏を応援するブログAAA
というブログの主催者の書き込みをきっかけに、ここのコメント欄が荒れて現在では書き込みに制限がかけられている。

この「ゆうたま」という方のブログでは
「弁護士ならびに本人に確認したが、あなたは面会に行っていない。こういうウソを書いて『長年の友達』を陥れるようなことをするな」
ということが趣旨だ。
この方の書き込みに便乗して、無数の「キモイ」「ウザイ」「氏んでほしい」というようなレベルの書き込みが殺到しているわけだ。

この「ぐっちー」さんが本当は友達思いな人であえて苦言を書いたのか、それとも「植草一秀と友達だ」というウソを書いて自分をエラそうに見せているのか真相は知らない。

しかしここに殺到している「ぐっちー」さんを批判している書き込みが唯一その根拠としているのはこの
「弁護士と本人に確認した」
という「ゆうたま」氏の書き込みだけだ。
これはものすごい思考力の停止状態ではないだろうか。

大体拘留中の被疑者の弁護人が例え本人の「友達」を名乗る人が問い合わせても「誰が面会に来たか」なんてことは守秘義務中の守秘義務なので明かすはずがない。
もしもそんなことをしたら弁護士資格が停止されるような問題なのだ。
また
「本人にも確認した」
というが、外の世界がどうなっているかわからないに、突然誰かに「◯◯は面会に来たか?」なんて訊かれて拘留中の本人が本当のことを言うとも思えない。
弁護士などから
「たとえ知り合いでも不用意な発言をしてはならない」
という注意は受けているはずだからだ。

そんな常識も知らないのか知っていて無視しているのか
「ちゃんと訊いたけど面会に来たなんていってないから、オマエの書いていることはウソだ」
なんて簡単に断定して、それで検証した気になっている。
そして
「こうして事実を検証しているのに反論も謝罪もしないで無視している不誠実な態度をいつまで続けるのだ」
と『追求』を続けている。
しかも他の連中もその尻馬に乗ってヒステリックにこのエントリを批判している図はかなり常軌を逸している。

あれだけ数多くのコメントがついているのに、そのことに疑問を呈している書き込みが一つもないというのが、異常なほどの書き込み手の質の低下を示している。

もちろんそんなことを書こうものなら
「自作自演 乙」
とか書かれて流されるのが落ちなのだが。

かの「ゆうたま」氏は常軌を逸してはいるが、ちゃんと自分のブログを開いて自分の所在を明らかにした上で批判記事を書いているからまだマシな方だ。
問題はこのコメントに便乗して「キモイ」「ウザイ」「氏んでほしい」とか書き込んでいる連中の方だ。

だいたいこの「ぐっちー」さんが本当に植草一秀に会っていようがいまいが、他の大部分のコメント欄を荒らしている連中に何の利害があるでもないのに、そんなことでヒステリックに騒いでいる姿が非常に小児的だと思う。
要するにナイーブな正義感で義憤にかられて「ネットの悪を討つ」とかいうような、「攘夷討ち」とか名乗っていた食い詰め浪人の辻斬りみたいなもんだ。

この連中は完全に大脳皮質が剥落して脳下垂体だけで反応しているようにしか見えない。


薫のハムニダ日記
というブログのこの「質の低下が著しい・・・」というエントリもなかなか象徴的だろう。
この方のブログも在韓の日本人で
「日常見ている韓国の社会と日本のネット世界で見る嫌韓の人たちが描く韓国は全く別の世界」
ということを書いておられて面白いのだが、これに対して
「これで広島の売国左翼もおしまいだなw
原爆ドームなんてぶっ壊せ!
日本は一万発の水爆を保有すべきだ!中国を震え上がらせろ!」
なんていうようなコメントが数多く寄せられるということを書いておられる。

これはもうネット右翼なんていうレベルを超えている。きちんとした右翼思想の人間がみても目玉ひんむいてひっくり返るような荒唐無稽な妄想ばかりだ。

それではこういう連中が世界の大部分かというとどうなんだろうか?
かめ?:とってもコマメな、嫌韓・嫌中の人たち
というエントリを見ると
「韓国と仲良くすべきか」
という質問に対して4割がすべきで6割がすべきでないと答えている。
これは私が実感する「バカ、気違い比率」とほぼ一致している。
しかし若い男性に絞り込むと
7割近い連中が「韓国と仲良くすべきでない」と答えている。
どうやら集団ヒステリーを起こしているのは、ここいらの層らしい。

このエントリの結論で私が快哉を叫びたいのは
「で、何に感心したかというと。
嫌韓・嫌中の人たちのマメさ。

だってさ、こんな毒にも薬にもならんようなコーナーにまで
せっせとご意見を寄せるのよ。

この人たちの韓国・中国の悪口を言うチャンスならどんな小さなものでも逃さないコマメさには、ホント脱帽ですわ。」
という部分だ。

実際炎上しているブログの書き込みのホストを調べてみると、数百件書き込みが殺到しているようなブログでも実際には数十人程度が書いているだけで、中には一人で百件も書き込んでいるという「粘着君」が多いという。

つまり批判が殺到しているように見えるが実はそれは少数意見なのだ。
しかし彼らは驚くべき「根着気質」を発揮して反対意見の書き込みをことごとくつぶすような素早い反応をして、良識的な意見を書き込もうとしている人たちをうんざりさせてしまうというのだ。
まさに「グレシャムの法則」の通りだ。
このことは多くのブログ運営者が言っている。
実は当サイトも同じような批判をごく一部で受けているのだが、このことは私個人も実感した。

何か大企業や官公庁が陰謀のために風説を流布しようとしているのを嗅ぎ付けて、これを正義の鉄槌で批判するというのならまだしも、個人が主催するボランタリーなサイトまで、驚くべき粘着気質でストーカーして憂さを晴らしているというふうにしか見えないのだ。
しかもいっていることは、箸にも棒にもかからないような根拠のない妄想ばかりだ。
こんなことだから

「ネットの世論は実際の世論とはかけ離れている」

なんて政府担当者に一蹴されてしまうのだ。


こういう炎上中のスレ、ブログで書かれる論理は非常に相似形なものが多い。
「◯◯は▼▼もしらない厨房」
「◯◯は政治家と結託して利権むさぼりほうだい」
「マスゴミはこれを金儲けの種にしている」
「◯◯は政治家とマスゴミの犬」

この「政治家」と「マスゴミ」を利権の権化とするのは「考えるのがメンドクサイからとりあえず悪者にしやすいヤツをあげつらっておけ」という一種の思考停止の典型的なパターンだ。

最初のお題は何でも良いのだが、これをきっかけにあとは「◯◯ウザイ」「◯◯キモイ」「◯◯氏んでほしい」の大合唱。
たまにこれに反論する書き込みがあると
「必死になって擁護しているやつがいる」
「自作自演 乙」
と続く
「ここを見ろ
〜リンク〜
やっぱり氏ね」
と何か関連記事を書いているようなサイトをリンクして「これが根拠だ」式の書き込みがたまに入るが、このリンク先も根拠にも何にもならないような個人の妄想記事だったりする。
こういうコメントが延々続くというパターンだ。

最近のネット小児症の思考パターンの特徴のその2は、こういうネットでググッた記事にリンクを張って「これが根拠だ」式の論理展開ばかりで自分の頭で考えて構築した論理体系が何も無いということだ。ここにもネットに思考を預けてしまっているネット小児症の思考停止ぶりが伺える。


ほんの数年前私が夢中になって書いていたBBSには、もっと良質な書き手が多かったように思う。
その当時でもコメントが荒れるということがあったが、お互いにウイットのようなものは多少あった。
だから
「オマエの意見は断じて受け入れられないが、オマエの突っ込みはオモロいな」
というような会話は成り立っていた。
2ちゃんねるにだって草創期にはそれなりの書き手がいたように思う。
しかし今の「ウザイ」「キモイ」「氏んでほしい」という書き込みからはどういう種類のウイットも感じない。
知的水準の後退しか感じられないのだ。


それで実はいくつかのスレッドで意図的に書き込みをしてみた。
上記リンクに上げたブログではない。
他人のブログを荒らすようなことはしていないことを断っておく。
そのリンクはあえて掲げないが、その結果こういう集団ヒステリーは簡単に世論誘導ができるということが判った。

ある炎上中のスレッドにわざと批判の対象を擁護するようなことを書き込んでみる。
そうすると沈静化しかけていたスレッドがまたガソリンが注ぎ込まれる。
逆に尻馬に乗って批判しているようで、その根拠にわざと破綻した理屈を書いてみる。
すると論点が変わってくるのだ。
もちろんコメント欄が炎上したブログは沈静化させるのはひたすらこれを無視するしかない。
しかし悪意があればその論調は結構コントロールできてしまうように思う。

そこで例えばあるサイトの評判を意図的に落としたい時には、炎上中のコメントに
「そういえば〜リンク〜ここのサイトも同じような香ばしいことを書いているぞ。一緒に氏ね」
というようなコメントを書いて、すぐに今度は逆にこれを擁護するようなことを書くというような悪意ある攻撃法も考えられるだろう。
「いや、あそこのサイトは良心的だ。なぜなら・・・」
このなぜなら以下にわざと矛盾したようなことを書けば一気に突っ込みが入って、この関係ないサイトの評判もがた落ちになる。
そのサイトが実は良心的なサイトかどうかは関係なくだ。

かなりの確率でこれはできてしまうと思う。集団ヒステリーは冷静な検証なんか必要としていないからだ。

またこういう荒れたスレッドの連中のパターンその3は、なぜかすごく「偉ぶっている」という特徴も挙げられる。
「知らないようだから教えてやる」
なんて文章を平気で書く。
なぜか非常に無礼な物言いを知り合いでもないのにいきなりしてくる御仁が多い。
多分書いている方は相手の神経を逆撫でしているということにあまり気がついていないのかもしれない。
ここいらあたりの想像力のなさは最近のいじめの問題を見事に連想させる。
言われた方は一生心に残るくらいの強い印象を持っているのに、言った方は軽い気持ちで言っているのだ。
実に軽い気持ちで「尊大」に「無礼」に「人を見下した」物言いをする。

これは逆に自信の無さの現れだと思う。
実生活でも人から尊敬されていないし、ネットでもちょくちょくボロを出しているから、すごく虚勢を張った調子で人を見下したようなことを書くのだ。

だからこういう連中をいらつかせるには、もっとエラそうな文体でそいつらが知らないような事実を突きつけてやれば良い。
「何がいいたいんだ?」
「話題すり替えの必死な擁護者ハケーン」
なんて書いているが苛ついているのが手に取るように分かる。
結局彼らは落としどころが
「キモイ」「氏んでほしい」
でないと安心できないのだ。


結論からいえば本当にネットは身近になって、底辺が広がっている。
底辺が広がるということは誰でも利用できるということだが、そこで発信される情報の質は加速度的に低下するということだ。
10年前には知的水準に問題がある人はネットに入って来れなかったが、今はそういう人がどんどん入ってきている。
これは必然なのかもしれない。

先に挙げた「薫のハムニダ日記」さんの「質の低下が著しい」書き込みをいくつか引用させてもらうと

Commented by 新生大日本は at 2006-10-31 23:15 x

朝鮮半島、満州、北方四島を回復し、更に台湾を友邦として迎える。
親日的なパラオを併合し、更に東南アジア諸国を傘下におさめるのだ!
アメリカとの同盟関係を保ち、アジアの大国として中国、ロシアと対峙する、これが日本の進むべき道だ!


Commented by 朝鮮は日本固有の領土 at 2006-10-31 23:20 x

よって南北朝鮮は日本に併合されるべきだ、南北統一も叶うから朝鮮人にとっても最良の選択だ。
どうだ俺の遠大にして深遠なるプランは、貴様のような売国左翼にこのような国家百年の計は思いつくまい!


こんな感じで書いていることは勇ましいが、この人物はネットではなくリアルな世界で実際に中国人や韓国人を相手にこんなことが言えるのだろうか。
議論が上手い中国人相手にこんなことを言おうものならこの10倍の反論が返ってきて「日本人は幼児的だ」という烙印を押されるのが関の山だ。

そしたらまたネットの世界に戻って「中国を植民地にしろ」なんて書くんだろうか?
大体これじゃまともに議論もできないだろう。
だから便所の落書きとか言われるのだ。


今日聞いてきた面白い話を書き留めておく。
これは日中の安全保障対話という国際会議で、実際に中国政府のお抱え日本研究者と論争した日本のエコノミストのかんべえさんから聞いた話だ。かんべえさんのホームページにもでている話なので実名を出しても問題ないだろう。

その会議は中国の日本研究者との交流を目指した国際的な勉強会の場だったのだが、中国の代表は「中国共産党」の看板を背負っているから言うことはいつも「公式声明」通りなのだそうだ。
曰く
「日米安保協定はアジアの最大の不安定要因である。このような協定があるからアジアの平和は常にかく乱されるのだ。日本はこれを破棄すべきだ。」

これに対してかんべえ氏はこう答えたそうだ。

かんべえ「日本はアメリカの核の傘の基で平和を維持しておりますが、それを破棄しろということは中国は日本に核武装をしろとおっしゃっているのですか? それとも中国の核の傘を貸していただけるのですか?」

中国「もちろんそうではない。しかし日本で核武装の論議が起きていることが心配である」

かんべえ「日本は核保有の議論を始めようとしているだけヴァーチャルな核である。それに比べて北朝鮮の核はリアルな核である。中国はどっちを警戒すべきとお考えなのか。」

中国「北朝鮮の核はまだ地域の不安定要因ではない。日本は解釈が柔軟すぎるので、非核三原則もいつ変わるか分からない。日本の軍国主義勢力にこうした軍事力が悪用されないか心配が残る」

かんべえ「私は寡聞にして日本の軍国主義勢力というのが誰のことなのかを知らないのだが、もしよろしければその軍国主義者というのは具体的に誰のことを言っているのかご教授願えまいか?」

この問いかけに中国の研究者は言葉に詰まって何も答えられなかったそうだ。
(もちろん「石原慎太郎だ」なんて馬鹿な答えはできないだろう。東京都知事は軍備を持つことを許可されていない)

当意即妙というか、議論というのはこういう風にやってもらいたいものだと思う。

こうして話として聞いても面白いし、この話で中国の公式的なコメントと日本側の個人の自由な発言力で議論をすればこんなにも日本の方が有利だということにも気がつく。
靖国問題や教科書問題で何も中国や韓国にイライラすることなんか何も無いのだ。
(でもかんべえ氏のこの会議の率直な感想は
『ぶっちゃけ、「止めやめ、貧乏人と喧嘩すると服が汚れるざんす」てな感じ』
だったそうだが)


ネットに蔓延する妙にイライラした雰囲気は実はこうした議論をすることへの自信の無さから来ているように思う。

主張したいが議論に勝てる自信もないし、何よりも何を主張すべきかがよくわからない。だから他人の論調の尻馬に乗って、あまり考えもせずに罵詈雑言を書いていれば頭は使わないので楽だ。
しかも「ネットの悪人」をやっつけたような充実感は味わえる。
しかしリアルな世界で議論はできない。
そのこともなんとなくうっすらと自覚しているので、この擬似的な正義を体感しても逆にイライラが募ってしまう。
だから必要以上に攻撃的になってしまう・・・・

なんとかスパイラルという言葉が一時期はやったが、このネット小児症スパイラルの心情もこういうことじゃないだろうか。
でもネットって元々知を分かち合うという場所なんだぜ。
そう思ってお互いを尊重すればきっと楽しい場所だと思うのだがいかがだろうか?




2006年11月13日













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青木さやか