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あのゲイツが「これからはクリーンエネルギーだぜ」といったのは本気だったらしい

Atomic age


あのゲイツが「これからはクリーンエネルギーだぜ」といったのは本気だったらしい

昨日の朝の日経の朝刊の一面トップが日経の抜きの「ゲイツと東芝が原発で提携するかも」という見出し。

昨日は日経の電子版の発刊日なのでこちらの記事にリンクを張ってみる。

ゲイツ氏、東芝と次世代原発 私財数千億円投入も :日本経済新聞

日経の電子版は実は有料webニュースメディアとして日本では最初の試みなので、各メディアからも注目を集めているそうだ。
それで従来の新聞メディアと違ってパーマネントリンクは認めるのかどうか、質問するよりもリンクしてみる方が速いのでさっそくリンクしてみた。
どうなるだろう。


それはともかく「注目の」というのは、4大新聞を筆頭に凋落傾向がはっきりしているペーパーメディアが、webで有料コンテンツでビジネスモデルが成り立つのかどうかというのがどこのメディアも自信がないので日経が失敗するか成功するかを重大な関心をもって見守っているそうだ。
要するに日経がうまくいったら自分のところもマネしようと思っているし、失敗したら何か他に知恵がないか考えようということらしい。

日経も注目されていることは分かっているし、これが成功するかどうかは結構社運がかかっているので電子版初日のトップはスクープを準備していたということか。

確かにゲイツと東芝が提携ということなら驚くような話だ。
よく読むとはっきりした書き方でもないが、もしこの資金提供話が本物だとするとゲイツと東芝のジョイントベンチャーが実現して、原子力の新技術開発に弾みがつくというのはありそうな話だ。

ビル・ゲイツが前々から原発を含むクリーンエネルギーに関心を持っているという話は聞いていたが、どの程度本気なのかよくわからなかった。
でもこの記事のサイドストーリーの東芝の神奈川の工場にゲイツが見学にきたという話を読んでいると、ゲイツは本気だったんだと思える。

がんばれ!ゲイツ君」さんあたりだと
「原発までフリーズされては大変困るんで、お手柔らかにお願いしたいと思う今日このごろですがいかがお過ごしでしょうか?
いや、フリーズではなくメルトかも」

なんて書き方をされるのかもしれないが。


でもこのニュースの肝は、この原発というエネルギーはそろそろ節目に来ているということをこの提携話が象徴しているかもしれないということだと思う。
ビル・ゲイツという男は利益を生まない話には乗らない筈だ。
OSの開発事業に青春をかけてきたにもかかわらず、WindowsVistaの出来を見て、もうこのビジネスに見切りをつけてしまったのかもしれない人物だ。
あのBASICのビル・ゲイツだ。
プログラマーとして一流かどうかはよく知らないが、金儲けは一流の人物だ。
だからWindowsで世界を征服できたわけだし。

その人物が注目しているのだとしたら、また日本がこの分野で後塵を拝さないために
「原発とは何ぞや」
ということをそろそろちゃんと伝えてちゃんと考えられるカルチャーを醸さないといけないかも。

原発はしばらくは悪の権化だった。
マスコミが原発を取り上げる時は、必ず「六ヶ所村」とからめてその問題点を語らないといけないという文化が何十年も続いた。
原発の有用性なんて話をすると
「東京電力のビデオプロモーションじゃないんだから、いい加減にしてよ」
てなもんだ。

しかし「原子力」というのは僕らが子供時代には善の象徴だった。
鉄腕アトムやエイトマンは原子力で動いていたのだ。
20世紀の中盤までは少なくとも「平和利用される原子力」は科学が保証する明るい未来の象徴のような存在だった筈だ。

どこかの時点で「原発」という言葉は悪の象徴のようになってしまった。

それは実験船の「むつ」の彷徨、高速増殖炉「もんじゅ」の迷走、繰り返される臨界事故、しかもその情報を隠蔽するわ、めどが立たない六ヶ所村再処理プラント、東海村JCO臨界事故のように原子炉だけでなく燃料処理のプロセスまで隠蔽体質が見え隠れするなど、原子力そのものがいいか悪いかというよりも原子力を運営している連中が信用できないという不信感が、原子力をダーティなイメージにしてしまっている。

なぜかいまでは原子力に反対する者も賛成する者も冷静には議論できないという状況かも。

しかしそんなことをやっているうちにビル・ゲイツだ。

原子力の技術に関しては今のところ世界一のアドバンテージを持っている日本だが、いつの間にかおハコ技術をビル・ゲイツ主導で営業されて、太陽光発電や半導体事業の二の舞なんてことはないのか。
この分野こそイニシアティブを持っていなくては、今まで多くの人の反対を押切って原子力を推し進めてきた意味が分からなくなってしまう。


ただ原子力についてはよくわからんことも多いが。
高速増殖炉「もんじゅ」が事故を起こした時に
「原因は熱交換用のナトリウムの配管の破断によるナトリウム漏出、そのナトリウムが空気と反応して爆発的な火災を起こした」
という事故原因を聞いた時に
「なんでナトリウムなんていう危険な物質を熱交換に使うのか?
水とか熱にも酸化にも強い安定物質を使うのが常識なんじゃないの?」

と非常に疑問に思ったのだが、これは「高速増殖炉」という設備の目的に照らすとナトリウムしかないということらしい。

高速増殖炉は核反応を起こす時に放出される中性子線で、使用済みウランをプルトニウム燃料に変化させる。
この中性子線を通常の原子炉で熱交換に使われる水は吸収してしまう。
高速増殖炉はそもそも、使用済みの燃料を核反応炉のすぐ外側においておくことで、プルトニウム燃料に変化させ、燃焼すればするほど、燃料が減らないで逆に増えるという成功すればエネルギー問題を永久に解決するような
「夢の核燃料リサイクル」
を目標にしている。
そのためには水は安全なのは自明だが、それでも中性子線を通すナトリウムを使わざるを得ない。

しかし熱交換を液体金属であるナトリウムにやらせることは、その経路の工作技術が数十倍難しくなって、しかも事故が起きた時に危険性もはるかに大きくなる。

そういう高速増殖炉はナトリウムを使わなくてはいけない理由を、つい最近知った。
誰も平たく解説してくれる人がいなかったから、
「なんでナトリウムなんて危ないもん使ってんだ?
そんなことしてるから事故が起きるんじゃないか」
なんて単純に思っていた。


今回の提携話の話題に上がっている「高速炉TWR」も「もんじゅ」と同じように
「夢の原子炉」
というタイトルがついている。
劣化ウランという燃料を取り出した後の今までは廃棄物とされていた精製カス・ウランを燃料にし、燃料も一度運転を始めれば100年は交換の必要がないという新型の原子炉なのだそうだ。

そんなにいいモノならすぐにでも実用化して、普及させればいいのにと思うが、やはり高速増殖炉と同じで、その夢の技術には乗り越えがたい隘路があるらしい。

その炉心を構成する100年の核反応に耐える材料を何で作ったらいいのかが見えていないのだそうだ。
つまりこれは理論だけで誰も実際にそんな運転をしてみたわけではない。

でもそこが解決すれば、高速増殖炉よりはよほど安全な原子炉になりそうではあるが。
原子炉は実はクリーンなエネルギーではあるし、温暖化ガスを大量に排出する火力発電所や、水系の生態系を著しく破壊する水力発電と違って、自然環境にほとんど負担をかけない。
勿論風力や太陽光発電は核廃棄物も出さないのでもっとクリーンではあるのだが、残念ながら発電効率が低くコストが高く今の電力需要をすぐに風力や太陽光に置き換えることはできない。
20年後でも多分無理だ。

そうするといつまでも火力、水力と言ってられないのだから原子力はどうしても通らなくてはいけない道だということになる。
そこで軽水炉もどんどん作るには限界があるので、こうしたローコストな原子力が実用化するのは非常に意味がある。
精製ウランも化石燃料とそんなに持ち堪える年数が変わらないということを聞くと、やはり新技術はどうしても必要だとのことだ。

そういうことをそろそろ話してもいい時期に来ているというのが、ビル・ゲイツの顔を見ていて、最初に思い浮かんだことだ。




2010年3月19日
















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