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GoogleのASP戦略の本当の狙い
/Are they bound for Seattle?

地味なニュースだったが、実は大きなインパクトがあったはずのこと


先週末に『Google、YouTube買収で合意 - 総額16億5000万ドル (MYCOMジャーナル)』というでかいニュースが飛び込んできた。
このニュースは、あの著作権的にはグレーゾーンだったYouTubeがGoogleに買収されることによって、いよいよアメリカではビジネスストリームの中核に躍り出るのだなということを感じさせるニュースだったし、なによりも16.5億ドルという金額が「久しぶりにでかいな」と思わせる景気がいい話だった。

しかしそのでかい花火に隠れてこちらの『米グーグル、ネット上で無料ワープロ・表計算インターネット-最新ニュース-IT-PLUS』という話題には、あまり注目が集まらなかったかもしれない。
しかし私的にはこちらの方がでかい話のように思える。

どういうことかというと、これで昨年聴いたシュミット会長のプレゼンテーションの
「あらゆるサービスを全てのクライアントにオンラインで提供可能にする」
という言葉の本当の意味が明らかになってきた気がするのだ。

昨年聴いたシュミット会長のプレゼンテーションは、ここでも何度か書いているがGoogleEarthのデモで始まった。
そしてこの3Dな衛星写真ベースの地図サービスを、単なる地図検索ではなくプッシュ・プル型の情報サービスとして提供したいということだった。
このアプリのグラフィックのスムーズさには驚かされたが、その狙い自体は他のIT企業でも聞かされたような話なのであまり驚かなかった。
ところがこの時にシュミット会長は
「あらゆるサービスがオンラインで提供されることでコンピュータやインターネットの利用の仕方が変わるかもしれない」
というようなことをチラっと語った。

この言葉の意味をこの時は私は割と常識的にGoogleのサービスの先進性への賛辞と受け取ったが、どうやらシュミット会長はそんな抽象的な意味でこの言葉を使っていたわけではなさそうだと思うようになってきている。

このプレゼンテーションを聴いた直後にGoogleはMITと組んで100ドルパソコンを販売すると発表した。100ドル、つまり12000円?13000円程度の実際使えるパソコンを供給するというのだ。
「そのパソコンはワードやパワーポイントを使えるのか?」
とあるご老体に質問されて、しかし私もよくわからなかったので
「さぁ、メールをやり取りしたりネットを見たりはできるでしょうけど、あとはどうでしょうねぇ。OpenOfficeなんていうタダのワープロソフトはありますが・・・」
と言葉を濁していた。
だんだん内容がわかってくると、そのパソコンはLinuxをOSとして(多分Fedora。だから一応MacやWindowsのようにGUI化はされている)、ブラウザにMozilla(多分FireFox。でも大概のMozillaはLinuxにも対応しているので、あと付けでSeaMonkeyなども使用可なはず)だけを搭載しているというシンプルきわまりない構成になっているらしい。

つまりソフトウエアのライセンス料は限りなく無料に近いわけで、大手パソコンベンダーがWindowsやMSOfficeのライセンス料をMicrosoftに支払わなくてはいけないために、青息吐息で赤字パソコン事業を維持しているような苦しみからは解放されているわけだ。

しかしこれではやはりできることはメールとネットだけで、『メールとネットができたって開発途上国の子供たちしかユーザはいないだろうし、開発途上国では使い道がないんじゃないのか』というような見当違いな分析も出てくるわけだ。

しかしGoogleの本当の狙いは開発途上国の子供たちではなく、先進国のビジネスユーザやブロードバンドヘビーユーザではないだろうか。
だからYouTubeの買収なのだ。

Googleはオンラインでwebサービスだけでなく最終的にはオペレーションシステムやワープロ、表計算ソフト、メールもそういうスタンドアローンなパソコンがやってきたこと、あるいはビジネスユーザがやってきたことをサービスとして提供しようとしている。 Googleの株価が急成長した時に
「Google対Yahooどちらが勝つか」
というような揶揄的な記事を随分マスコミでも見た。
しかし実際にはGoogleの本当のライバルはYahooではなくMicrosoftなのだ。
いつかシュミット会長がそういうようなことを言っていたのを見た気がする。
昨年のプレゼンテーションの時だったかどうかははっきり覚えていないが。

そしてこのオフィススイートを無料でオンラインで提供するというサービスは間違いなくビジネスユーザにはインパクトがあるに違いない。
これまでMSOfficeを使い続けたビジネスユーザが、なぜオープンソースのオフィススイートに興味を示さなかったかというと、その理由は「互換性に不安がある」ということと「知名度がないものは使いたくない」という2点に尽きる。
しかし、このGoogleのオフィススイートはこの2点の問題を解消してしまう可能性があるのだ。
こうなるとMicrosoftのソフトウエア支配は本当に永遠に続くのかというテーマに立ち返りたくなる。
なぜならMS社の収益のほぼ全てはWindowsOSとMSOfficeのライセンス料収入で、それ以外の事業で、それに匹敵する利益を挙げた成功例はひとつもないからだ。

来年のWindowsVistaはかなり苦戦をするだろう。
なぜならWindowwsVistaのRCバージョンを触った印象は
「Macのようなキレイなデスクトップ」
という以外にはほとんどメリットがないからだ。
だからプリインストール以外のユーザがやはり200ドルもの現金を支払ってこのOSを買うかというとかなり難しいものがある。
Vistaでできることは全てXPでもできるからだ。
おまけにMSOfficeにはこのような足下をすくわれかねない強敵が登場しているのだ。
それは100ドルのパソコンとともに拡大するかもしれない。

Googleは世界最大のASPという立場を狙っているのではないだろうか。そしてそのターゲットにしているマーケットはYahooやExciteが持っていたそれではなくMicrosoftが押さえていたマーケットのような気がする。
なんとなくファクトをつなげてみるとそういうGoogleのシナリオが見えてくるのだ。

このニュースはなかなか面白いんじゃないかと思った。




2006年10月6日













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青木さやか