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「炎上させる」ネット世論の無効性
/No responsibilities, no rights

「谷みどり」ブログ炎上事件が明示したネット世論の自壊の過程


今日の日経新聞の朝刊の一面の記事で「谷みどり」ブログの炎上事件について取り上げられている。

ことの次第をかいつまんでおくと、経産省の谷みどり「消費経済部長」が役所の公式サイトではどうしても伝えきれない情報やニュアンスがあるので、個人でブログを開設して自分の言葉で自分の仕事について書いてみるという趣旨でブログを書き始めた。

ところが時節柄今ネットではPSE法について良くも悪くも世論が盛り上がっており、有名ミュージシャンのPSE反対署名運動などが進行しているにもかかわらず、経産省が明確な説明をしないでPSEはもう既定事実のように進むので、相当のフラストレーションというか「またか」みたいな閉塞感が漂っているタイミングだった。

そこでこの谷みどり氏がまさに経産省の「消費経済部長」であるというこの問題には発言権がありそうなポジションだったので何人かがこのコメント欄に
「PSEはどうなっているんだ? 世論を無視して強引に進めるつもりか?」
というような趣旨の質問をした。
これに対して谷氏は
「PSEは消費者の安全を保護するのが目的の法律なのでその主旨をご理解いただきたい」
という通り一遍の説明をしてしまったところ、ここに火がついてしまい一晩で600以上のコメントがついて、しかもその大部分が
「公務員が就業時間中に国有のネットワークを私用に使ったので損害賠償請求させていただきます」
とか
「谷みどりは即刻辞職しろ、ネットで署名を集めて谷みどりを辞職させてやる」
というようなどちらかというと2ちゃんねるの出張所のような状態になってしまい、とてもPSEについて冷静に議論できるような状態でもなくなり、数日後にはこのブログは結局閉鎖されてしまった。

谷「部長」を擁護する気はない。
このお方は経産省のお偉いさんというポジションにありながら、ネットで実名をさらしてオピニオンを発表するということがどれだけ大変なことなのかを、全く理解していなかったというのがまず同情に値しない。

またPSEについてのこの通り一遍の役所式説明文も気に入らない。
こんな「お役所文書」を書くんだったら「自分の言葉でブログを書いてみたい」なんて力まなくても経産省の公式ページに書けば良かったと思う。
「自分の言葉で」なんて書き方をされると、ここでは「自分の言葉で書かれた経産省谷部長の本音が読める」と期待してしまうではないか。

だからこの人が炎上事件で心の傷を負おうがそんなことはどうでも良いのだが、しかしこのブログを荒し回って、2ちゃんねるだけでなく共同通信のサイトにまで
「谷みどりのコーナー」
なんてBBSを作って執拗に谷氏を攻撃し続けた連中の粘着質というか、品性の下劣さは目に余るものがあった。
このBBSを作った人物は
「なぜそんなに谷氏を攻撃するのか、逆にオマエのブログに興味があるが」
という質問に対しこういうやり取りをしていたと記憶している。
「オレは個人でバンドのブログを持っているが、ここでは公表しません」

このやり取りにこの人物の品性の卑しさがにじみ出ている。
他人のブログは好き放題攻撃するが、自分は攻撃されたらイヤなので公表しないという論理はネットの匿名性を思いっきり享受しているが
「そういう環境でないとオレはものも言えないんだ」
と自白しているようなものだ。
そういう自分の言動に一切責任を感じる気もない奴に、冷静で責任ある議論ができるのだろうか?

日経がどういう捉え方を表明してこの谷ブログ炎上事件を連載特集に取り上げたのかはまだ判らない。
今回掲載文は単に事実関係を描写しただけだ。

しかし新聞社を代表とする既存マスコミにはネットやブロガーに対して未だに強い差別意識があるということは知っておいて欲しい。
「どうせそんなところに書かれているのはほとんどがガセネタだ」
「匿名性に隠れて検証もされない情報に何の価値があるのか?」
既存マスコミの人間はネットの中だけでやたら元気で高圧的な内弁慶に対して、こういう蔑む感情を持っている。
そしてネットの中の人間もそういう差別をされても仕方がないような卑しい行動を繰り返している。

マスコミだけではない。
役人だって
「ネットの中での意見は世論とは言えない」
として今回の件は完全に無視するつもりだ。
感情に任せて卑しい行動をとった代償が、またこの世界への差別意識を助長しただけだ。

「谷みどり」を執拗に攻撃するのも結構だが、そういう自分の姿をもう一度客観的に見つめ直した方が良いと思う。

谷みどりのブログ (ちなみにコメントは全て削除済み、トップページは閉鎖済み)


2006年3月7日













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