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ハゲタカ、黒船神話のウソ
/Fictional reputation

iTMS参入の遅れは日本の後進性の結果以外の何ものでもない


昨夜のニュースで、AppleがiTunes Music Storeを8月に日本でも開始するという報が流れた。
これ自体は歓迎すべきニュースだが、このニュースには本当に複雑な思いをさせられている。

どういうことかというと、要するに日本という国はまだ著作権などの知財に関しては低開発国なのだということを思い知らされるということだ。

2年前にアメリカでこのダウンロード音楽ショップがスタートした時に、当然Macにはすぐにそれを利用できそうなiTunesというソフトがバンドルされていた。
しかしこれは日本では利用できないのはAppleの手抜かりではないかと思ったが、実はAppleもアメリカ本国に次ぐ市場である日本でもできるだけ早くiTMSをスタートさせたいという意向を持っていた。
持っていたが、それを許さなかったのは日本のレコード会社とその業界団体、それに音楽著作権協会、音事協などの権利団体などで要するにAppleという「外資」が入ってきて好きなように音楽の販売をはじめたら自分達の権益を侵されるという判断が働いたらしい。

表向きは「音楽作者の権利を守るため」なんて言っているが、こいつらが著作者の権利なんか毛ほども考えたことは一度もなくて、心配なのは自分達の権益だけだ。

もし著作者の権利を尊重するのであれば、とりあえず消費者に音楽を利用させてそれでお金を取るしくみを工夫すればいいのだ。
Appleがそのお金を取る肩代わりをしてくれるというのなら、どんどんそんなものを利用してお金を取って著作権者にも配当を廻せばいい。
ところが日本のレコード会社と音楽著作権団体は「禁止」することばかりに躍起になって、ビジネスに持ち込もうという発想がない。
あれも駄目、これも駄目で音楽をどこでも使えないようにしてしかもCCCDなんていうCD規格の紳士協定も踏みにじったインチキ音楽メディアを勝手に作って、それで消費者のCDプレイヤーやパソコンが壊れても補償するどころか「現状では致し方ない」と開き直るばかりで、こういう奴らに著作権の何たるかを語る権利はない。

それでCDの売り上げが落ちているのは「ファイル共有ソフトにより違法な音楽ダウンロードが普及しているため」だと言い張り続けている。

そんなことは絶対にあり得ないと思うわけで、そういういい加減なことを言うおっさんらは一度自分でファイル共有ソフトを使ってみろよと思うわけだ。

もしiTunesを使って150円程度で音楽を瞬間的にダウンロードできるんだったら、誰が好き好んでファイル共有ソフトなんか使うかと思うのだ。
手間も時間もかかって、しかも希望の曲がなかなか落ちないファイル共有ソフトと、1曲150円、10曲買ってもたった1500円で好きな曲をあっという間に選べてダウンロードできるiTMSとどちらを利用するかというともう明らかではないだろうか?

それで違法ダウンロードが絶滅してもCDの売り上げは絶対に回復したりはしないと私は確信しているが。

(これについてはいつか書こうと思っているが、要するに消費者の行動様式がもう変化してしまっていることにレコード会社はいつまでたっても気が付いていないということだ)

アメリカやヨーロッパではiTMSはもうすでに4億曲の配信実績があるそうだ。
むこうでは一曲99セントだから、約4億ドル、460億円を売り上げる音楽ショップが2年で出現したことになる。

この99セントという価格設定が安いか高いかということだが、私はとても安いと思う。
10曲買っても1100円、20曲で2200円というのはCDの流通価格を考えればかなり割安だ。
(日本での価格設定は1曲150円程度になりそうなので、為替換算で考えるとアメリカやヨーロッパよりもちょっと割高だ。日本という国は何をするんでも新しいことは割高になってしまう。
おそらくこの価格の中にはレコード会社に対する補償金などの調整費用が乗せられているのだろう。何もしないくせに金だけはきっちり要求するのが、漁業補償などを含めたこういう日本の補償交渉の常態だからだ)

この価格設定ではAppleは売り上げほどの利益を上げていないんじゃないかと思うが、Appleの狙いはiTMSユーザがどんどん増えてiPodやMacをどんどん買ってくれればいいんで、利益構造の中心はむしろそっちだからいいのかもしれない。

こんなに音楽著作権者にとっても、音楽流通業者にとっても、消費者にとってもAppleにとっても良い、要するに「皆が得をするWIN-WINな解決法」が日本で受け入れられない理由は、「外資が黒船のようにやってきて日本市場を荒らす」という思い込みがはびこっていることにつきる。

ついこの前まで「Windowsにシェアを食われて倒産する」とか言われていた会社が「黒船」とは恐れ入るが要するにそういう理由なのだ。

ライブドアが日本放送を買収した時に、そのバックにリーマンブラザースという外資系の金融がついていたことが問題になった。
リーマンがライブドアを通じて日本のマスコミ支配を狙っているなんていう話が流れたこともある。
しかしこの話がいかに荒唐無稽かというと、リーマンはMSCB(要するに株券を担保にお金を貸すという取り決めで、株券は時価で決済するという意味では借り手のライブドアがリスクを引受けるという貸し金の方法)で数百億という金をライブドアに貸し付けたが、その合間にもライブドア株に空売りをかけてその価格をどんどん引き下げたという、右手で握手をしながら左手の拳骨で相手の頬を殴るようなことを平気でやっているわけだ。

要するにリーマンはフジテレビはもちろん、ニッポン放送もライブドアも支配するということには最初っから全く興味がなく、このリスキーな融資からどれだけ金を搾り取れるかということにしか興味がなかったのだ。

こういう話が出るとすぐに「日本の言論機関を黒船の支配から守れ」という極論が流れるが、そういうのは思い上がりというかうぬぼれというか、外資は日本の言論機関にそんなに魅力を感じていないということに気がつくべきだ。

レコード会社も同じことで、「日本の音楽著作権を外資に支配されていいいのか?」なんていう飛躍した議論がiTMSをなかなか受け入れない理由だと思うが、Appleがそんなに日本の音楽著作権を支配したいという魅力を感じているのか、一度聞いてみればいい。
Appleのことだから「iPodの販促のためにそれは必要なことなのだ」という程度の答えしか帰ってこないだろう。

あんたらが思っているほど、自分達の世界はたいしたもんじゃないということに気がついてほしいな。




2005年6月7日













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青木さやか