昨日、元IBMのパソコン事業部の弟がうちに遊びにきたので雑談していたのだが、そこで聞いた話を総合すると
AppleはPPCを止めてintelに乗り換えるというのは実は大正解ではないかという気がしてきた。
弟はパソコンの液晶事業にいたわけで、この4月にパソコン事業がレノボグループという中国企業に売却されたのに伴ってレノボ転籍を拒否して退職してしまった。
そのレノボがIBMに乗り込んできて何を言ったかというと
「従来の五倍の多品種モデルの開発」
ということを言い出したらしい。
しかし五倍金をかけるかというと金のかけ方がかなりいびつなようで、コストは悪化ししかも五倍増したモデルのうち五分の四は
「売れるわけがない」
という代物らしい。
要するに中国企業にありがちな見かけのラインナップの立派さだけはすぐにdellやHPに追いつきたいということで、その中身が本当に資本市場の市場原理の洗礼に耐えられるかなんてことはどうでもいいという方針らしい。
新日鉄の援助を受けて世界最大の動かない溶鉱炉を作った中国らしい話だ。
そういうことを敏感にユーザや小売店は感じ取っているのか、今秋葉原ではIBMのパソコンがすごい安値で売られている。
もっとも感情的なものもあるのでThinkPadのTシリーズは価値以上に安く売られ過ぎているようだ。今はThinkPadのTシリーズはお買得みたいだが、この年末から出てくるレノボの最初のオリジナルシリーズには注意した方が良いということだ。
当然こういう経営方針だから、心ある1%の先を見通せる人材はどんどん流出しているそうだ。
今のレノボは10万円のものを販売継続するのに、原価はいくらで押さえて利益をいくら出さないといけないかという計算を全くやっていないらしい。12万円で10万円のパソコンを作って、それで工場も維持して社員の給料も払えるという計算をしているそうだ。
信じられない話だがそれが事実らしい。
しかもIBMという企業も大企業病が極まっていて、そういう状況であることは周知なのに社員がレノボ転籍の時に経営側にした質問は、
「福利厚生はどうなりますか?」
という質問ばっかりだったという。
「キャッシュフローの計画はどうなりますか?」
という質問をした弟に対して経営側は
「今まで通りだよ」
とだけ答えたという。
(弟は思わず内心「今まで通りではあかんやろが!」と突っ込みを入れたそうだ)
どうやらIBMという企業をコントロールしていた1%の天才的人材はもうネズミよろしく船から飛び下りてしまい、跡に残ったのは99%のカスのような人材ばかりらしい。
パソコン事業もことほど左様にさんたんたるもので使い物にならないものを中国人に売り付けたという構図だが、中国人の方もこれでどうビジネス展開していくかということよりも世界最高級ブランドを手に入れたということで満足しているようだから、だます方もだまされる方もどっちもどっちというところだ。
問題はMacも採用していたPPC事業で、このチップは本来サーバ、パソコン用MPUとして開発されたはずだが、IBMは「今後はゲーム機用チップとして利用されるだろう」ということでAppleのintel乗り換えは別に気にしていないというコメントを出した。
しかしPPCを採用しているゲーム機ってあのX-boxだったんじゃなかったっけ?
もう小学生の間ではX-boxの名前を知っている子もまばらなこの最先端ゲーム機にIBMはいったい何を期待しているんだろうか?
どうやらIBMの大企業病はかなりの重症らしく弟は
「一部の軍用部門のサーバ以外は生き残れない」
と言っていた。
かつて、マクナマラ時代に全盛期を迎えていた軍用飛行機メーカーが今は見る影もなく衰退しているように IBMはかなり厳しいことになっているようだ。
GMやフォードなどアメリカを代表する自動車メーカーの格付けが「ジャンク債並」に落ちてしまったことに最近では大きな驚きを感じてしまったが、これにIBMが続くのかもしれない。
そうだとするとAppleがIBMに見切りを付けてintelに乗り換えたのは大正解ということになる。
ここいらの話は外からはなかなか分かりづらい話だし、それでも私などには腐っても天下のIBMという先入観があるので、「PPCからPentiumに乗り換えたって何もメリットがないだろう」と思ってしまうのだが、実際にはそういうものではないのかもしれない。
<後日追記>
このIBMのPPCについてはBBSでも指摘をいただいたが、X-BoxだけでなくソニーPSなども採用しておりゲーム機のCPUとしてはメジャーらしい。
だからゲーム機と大型サーバに特化したいというIBMの戦略自体はまるで合理性がないというわけでもない。しかしフリースケール(旧モトローラ)のPPCとの関係が今ひとつ私にはよくわからないのだが、組み込み型のCPUをフリースケールに抑えられてしまって、サーバとゲーム機に特化するというのはジリ貧ではないかなという気もする。
いずれにしても、現場に一切の権限も持たせず判断もさせずトップダウンでラインナップを決めてきたジニアス企業がパソコン事業を斬り捨ててしまったということは事実として残るわけだ。
2005年6月20日
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