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イノベーションをやたら口にするCEOってどうよ?
/Innovative account

DELLのCEO交代劇に思う〜ナカヌキ屋は世界を救うか?


昨日の新聞のトップ項目だったと思うが1月31日付けで米Dell、Rollins CEOが辞任、Dell会長が復帰というニュースが流れた。

これはなかなか青天の霹靂なニュースだが、アメリカ企業は業績などで問題が起きるとすぐに簡単にCEOの首を切っちゃうので、それ自体は驚くに値しない話かもしれない。
この人事の理由の説明は一切されていないが、HPにパソコン出荷首位の座を奪い取られたとか、会計問題でSECの調査を受けているとかそれで詰め腹切らされたんじゃないか、というようなマスコミが挙げている理由が大体正解なのだろうと思う。

問題はDELLという会社が何をしたいかということがよくわからないということだろう。
昨年の世界経営者会議にこのロリンズCEOが出てプレゼンテーションをやっていたが、正直非常に退屈なプレゼンだった。
要約すると
「DELLという会社はますますイノベーティブにアグレッシブにチャレンジしていく。そのためにリソースの選択と集中をやっていく。これからDELLはますますの飛躍を遂げるだろう」
というもので
「そのイノベーティブというのは具体的にはどういうことか?」
という質問に対し
「開発の人員を大幅に削減する。他社と同じような技術を個別企業がバラバラに開発するのはコストの無駄だ。だから開発を減らして、世間でオーソライズされた技術をバンドルしてますます安定した製品を目指す。
これで製品コストはますますカットされイノベーティブな業績が実現できるだろう」

ということだった。
要するにこの人が「イノベーティブ」と言っているのは「革新的な決算内容」のことでパソコンの性能とか技術が革新的というわけではないという意味だった。
それどころか
「新しい技術を自分で開発するのは無駄だ、そういうものは全部他人が開発したものをいただけば良い」
ということらしい。

一昨年の世界経営者会議の時にはグーグルのシュミット会長が来て、そのプレゼンを見てちょっと興奮してしまったのだが、それと比べて私がこのDELLのCEOのプレゼンの時間いかに退屈したか想像いただけるだろうか。


もともとこの会社はシリコンバレーから生まれてきたHPやAppleのような会社とは成り立ちが違う。最初から「ナカヌキ」の安売りで成長してきた会社だ。
だからカットできるものは徹底的にカットする。
奥さんのお友達がウチとインターネット電話を使って無料通話をしたいといっていたので、Skypeをお奨めしたところ彼女から
「ウチのパソコンはマイク端子がないのでSkypeが使えない」
と言ってきた。
今時マイク端子がないパソコンなんかないだろう?と怪訝に思いながら調べてみると彼女の自宅で使っていたDELLのDimensionシリーズはなんとマイク端子を実装していないことがわかった。
「なんじゃこのパソコンは?」
という私の驚きは理解いただけるだろうか。
この会社は例えばApple辺りの対極のような考え方らしい。

Appleはなんでもかんでも自分で開発した独自技術でないと気がすまないし、新しいアイデアをあれこれごちゃごちゃくっつけたがる会社だ。そのおかげで時々役に立たない余計な機能がついてきたり、結局どこも規格に乗ってくれないでApple製品同士でしか使えない変な規格がスタンダードだったり、いつも「イノベーティブ」であることは必ずしもユーザにとってはうれしいことではないということを思い知らせてくれる。

Appleの革新性は時にはありがた迷惑だったりするのだが、DELLのこの超後ろ向きな「コンサバティブ」はユーザに何の魅力も感じさせないのではないだろうか。
事実私の職場ではデスクトップはほとんどDELLのDimensionシリーズだが、このパソコンを何か遊びに使ってみたいとは思わない。
昨年WindowsVistaの評価版をDELLのデスクトップにインストールしてみてみたが、正直な感想は
「う〜ん?」
という一言しかない。
それこそ東芝やレノボのPCなら少しは楽しいかもしれないが、DELLでは「必要最小限の機能が動くだけ」という感じだ。

しかし、それは仕方ないかもしれない。
どうせOSはWindowsだ。どうせCPUはintelかAMDだ。
他に何を工夫しろというのか?
それだったら全ての技術をOEMで取り込んで、できるだけ安いチップセットとストレージを乗せて他社製品よりも何百ドルも安いですよという売り方をした方が良いではないか。
どうせユーザもIEとOutlookExpressとMSOfficeしか使わないのだ。この3つのアプリがちゃんと動けばあとはどーでも良いではないか。
WindowsVista対応だってグラボのコストが100ドルほど上がるだけだ。それでウインドウがぐりぐり動いたらユーザも納得するだろう。
他に何が要るというのだ?
一般ユーザがパソコンを使ってビデオ編集をするとかそんな時代が来ると本気で思っているのか?
大部分のユーザはアーティストではないし、アートそのものにも何の興味も持っていないじゃないか。

こういうことなのかなぁ。
少なくとも昨年このCEOのプレゼンを聴いた印象はこんな感じだった。
この人が「イノベーティブ」といっているのはDELL社の財務諸表のことだけだ。
他は何も考えていない。
それは怠慢だからではない。そういう「戦略」だからだ。

このCEOこそ、DELLの哲学をもっとも体現した戦略的なCEOだったのに、その首を切っちゃったということは何か戦略的転換があるのだろうか?
なんだか今から10年前のスカリーCEO時代のAppleを見ているような気分だ。

しかし、戻ってきたのは変人イノベーターのジョブズではない。
「ナカヌキ屋」のデル会長だ。
何が変わるんだろうか?
それとももっと激しく
「チップセットのコストを抑えろ! 3回に1回くらいは起動に失敗してもかまわないからとにかく安く作れ!」
という新戦略が発表されるのだろうか?
その動向が注目される。(私は興味ないけどね)




2007年2月2日













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青木さやか