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ロシア、中国、日米企業の差の話など
/The fact I heard lately

現場を見ている人からはやはり面白い話が聞ける


最近聞いたすごいな、あるいは面白いなという話をとりとめもなくいくつか。

昨日中国問題に詳しい国際問題評論家の宮崎正弘さんの勉強会に参加してきた。
この方は机上の中国通ではなく、これまでに何十回も中国に渡って中国全土を踏破したという筋金入りの知中派であり、筋金入りの反中国論者だ。

宮崎さんのお話を聞いていると、中国共産党幹部や党から派遣された銀行幹部が持ち逃げした横領金の総額は中国のGDPを上回るとか、途方もないデータがポンポン飛び出してくる。
この方はネットなどにあふれかえっている、中国のことなんか何も知らないくせに中国の反日感情のニュースだけに反応して
「中国を再び植民地にしろ」
とか言っている観念的な嫌中論者とはわけが違う。
なんせ全部自分の目で確かめてきて、全部現地で当事者から聞いてきた話を基に
「中国は必ず衰退します」
といわれるので説得力がある。

昨日の驚きは中国の環境破壊の話だ。中国では工業化が進んで大気汚染がひどいとか、工場排水などの公害が日本では話題になる。
確かにそれも問題なのだが、もっとすごいのは
「中国には2万2000のダムがあって、そのうちの2000が決壊しています」
なんて宮崎さんがこともなげに言ったことだ。
2万2000!?
2千200の間違いじゃないの?
と聞き直すと宮崎さんは
「いや、2万2000です」
とまたこともなげに繰り返す。
そのダムの数にも驚いたが、そのうちの一割に近い2000のダムが決壊しているという事実がすごい。
これが中国の河川沿岸部に深刻な洪水被害をもたらし、自然破壊、砂漠化などの問題を引き起こしているそうだ。
同じ工業化の公害でもやはり日本とはケタが違う。

かの有名な三峡ダムもダムの躯体に亀裂が発見されており決壊が近いという説もあるという。このダムを運営している法人て香港かどこかに上場していなかっただろうか?


またロシアは旧ソ連のスターリン時代を彷彿とさせるような恐怖政治が甦ってきていて、プーツィンは政敵をほぼ全員暗殺または投獄してリンチにかけてしまい、ロシアではプーツィンが死ぬまで政権交替はないとういうことらしい。
それだけでなくロシアはベラルーシ、ウクライナ、タジキスタン、ウズベキスタン、グルジア、カザフスタンなどの旧ソ連だった周辺国に対して恫喝的な外交と経済制裁を繰り返し、ガス油田資源を完全に押さえ込んでガスOPECというようなものを作ろうとしているらしい。
例のチェチェンのテロリストが小学校を爆破して大勢の子供を殺した事件を見て
「なぜあんなひどいことをするんだろうか?」
なんて事情を知らないと思ってしまうのだが、彼らにはあんなことでもやらないと納まらないような理由がちゃんとあるのだ。
(もっともあの事件自体がロシアの自作自演ではないかという疑いもあって、簡単に決めつけはできないのだが)

その圧力をもっとも感じているのが中国であり、だから中国は日本と外交問題になることは承知の上で東シナ海のガス田の盗掘を急いでいるのだという。

こういう向こう側の事情を知ると全てが理にかなっているというか、国際関係で起こっている問題がちゃんと「理由があって起こっている」ということがわかって非常に面白い。
ただこのことから導きだせる結論は、もはやロシアはゴルバチョフやエリツィンの時代のロシアとは別の国であり、アメリカや日本にとっては同盟国でも友好国でもない立派な敵国であるということになる。
だから「北方領土についてロシア政府の理解を得て地道な交渉をもって解決する」なんて世迷いごとではないかとも思ってしまう。彼らはもうそんな問題には何の興味ももっていないのだ。
面白がってばかりもいられないのだが。




もうひとつは仕事をする服装の話だ。
先日イベント進行をやったシンポジウムで
「日本ではクールビズだのウォームビズだの、仕事をする時にネクタイをするべきかとかそんな太平楽な議論が起きているが、アメリカでは東海岸ではほとんどの人(経営者)がネクタイにスーツだが、西海岸では一人もネクタイをした経営者に会わなかった」
という話がでてきた。
それは企業文化なのか、プラグマティズムなのかということが話題になったが多分パネラーのお一人が信越化学の社長から聞いた話が結論だった。
その社長はこういったそうだ。
「シリコンバレーの連中はなぜジーパンにTシャツみたいな格好をしているかわかるか?
彼らはあの格好がカッコいいからそうしているわけではない、それは彼らの仕事の仕方を見ていたらわかる。何かひとつ仕事に集中し始めたら彼らは2日でも3日でもいくらでも徹夜をする。そして疲れたら、その辺のソファに突っ伏したり、中にはそのままデスクの後ろの床で寝たりする。
そんな時にスーツにネクタイではしんどいだろう?
だからあんな格好をしているのだ」

これは金融などのサービス業中心の東海岸と、ITなどのものづくり、ソフト作りが中心の西海岸とのワークスタイルの差だということだ。

そういえば6年前だったか、クアルコムのサンディエゴ本社にジェイコブズ会長を訪ねた時に、やはり服装のことを質問したことがある。
「クアルコムでは社内での服装は自由なんですか?」
ジェイコブズ「われわれは結果を求めているのであって、ここではドレスコードは一切求めない。
実際ネクタイをしているのは私を含めて数人しかいないだろう。ここでは圧倒的に少数だ。
何を着ようと服装は自由だが、せめてクツだけは履いてくれよとはお願いしているけどね。
また出勤時間も基本的には一切チェックしていない。
求められた期間に求められた以上の成果を上げてくれれば、何時に出勤したかとか何日出社したとかも一切問わない」

日本の企業はなかなかここまでは割り切れないんじゃないだろうか。
技術者だろうが専門職だろうが毎日朝礼をしてその時間には必ずいないといけないとか、「社内連絡会議」だの「経営企画会議」だのやたら「企画」の会議が多くて、その資料準備で日常業務なんかやっている暇がないとか、変な矛盾が多いと思う。
しかし会社が社員に求めるアウトカムは常に非常にシンプルであるべきだ。

「今月末までに◯◯の基盤設計を完了してテストして要求仕様をクリアしていること」
とか、常に具体的で明確であるべきだ。
何か観念論を持ち込むことで結局現場は混乱し、その混乱は無秩序が原因だとか言ってやたら会議をして「ハッパをかけ」たり服装などの勤務態度をチェックする・・・
どちらが合理的な企業文化なのだろうか。



あまり関連があるのかないのかよくわからないが、今日本のメーカーのものづくりが世界で称賛されていて、もう耳タコな話なのだがトヨタの看板方式だの「改善提案」などGMやフォードの幹部連中が工場見学しにきて感銘を受けて帰っているとかいう話を良く聞く。
(その割にはGMやフォードのものづくりはいっこうに改善されないので、これらのアメリカ車のメーカーの問題点はもっと違うところにあるように思うのだが)

ただそのトヨタの改善提案だが、実はこれは今から30年前トヨタ自動車の幹部が、アメリカのフォードの工場を見学しに行った時に
「サジェスチョンボックス」
なる箱が各職場に必ず置いてあるのを見て
「これは良い制度だ、是非取り入れよう」
ということで始まったというエピソードを聞いた。
実はUSスティールと新日鉄などについても同じような話を聞いたことがあるのだが、要するにアメリカ人が日本のものづくりには到底かなわないといっているその「日本のものづくりのプラグマティズム」は実はかなりアメリカから学んだものが多くて、それを今頃になってアメリカ人が
「日本方式だ」
とか言ってありがたがっているという話が結構多いらしい。

やはりこういうものは循環するんだろう。
日本だっていつか衰退して海外で見つけた技術を称賛していたら、実はその源流は日本だったなんてことが出てくると思う。


いくつか本当に取り留めないことだが、書いておかないと忘れそうなので書き留めておく。




2007年2月14日













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