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人気のあるS&Wのダブルアクションメカを
一番忠実に再現したリボルバーS&W686

686

人気のあるS&Wのダブルアクションメカを一番忠実に再現したリボルバーS&W686

時々思い出したように昔愛用していたモデルガンなどを引っ張り出してくる…の第7弾

マルシンのS&W686の6インチリボルバーのブラッシュアップ、分解と修理

今から35年前のモデルガン。
S&Wのダブルアクションリボルバーは、人気があってこれを再現したモデルガンやエアガンはたくさんあるのだが実銃のアクションを正確に再現したモデルは意外に少ない気がする。

そのうちのひとつがこれ。
マルシンのS&Wモデル586(686)。

実銃については以下の通り。
S&Wのダブルアクションリボルバーの原型は実は1900年代にはほぼ現在の形にまとまっていた。
ダブルアクションのメカ、つまり引き金を引くだけで自動的にシリンダー(回転弾倉)が回転しハンマーも引き起こされて6発の弾を連発で撃てるメカ構成の大部分はすでにこの時代に完成していた。

この旧式なメカが1930年代にアメリカの陸軍用のサイドアーム用に採用される経緯は、エンフィールドのNo.2Mk1と同じような流れだ。
エンフィールドはさすがに時代遅れのメカのためかその後が続かなかったが、S&Wはその後もメカを磨き上げて100年以上も経った現在でも生き延びている。

特徴はメカのモジュール化、ハンマーブロック、シリンダーロックセーフティなど安全対策を次々盛り込んだこと。
しかも使い手にセーフティの解除を意識させずに自動的に射撃時に解除されるオートマチックセーフティになったことが大きいと思う。

一連のS&Wのダブルアクションリボルバーの流れの中にあって、このModel586(686)の特徴は以下。

バレル下にバレルに近い径のウエイトがついた
M19などS&Wの主力銃のKフレームと44マグナムの名前で有名なM29のNフレームの中間のLフレームを採用したこと

銃身の下に金属の塊のウエイトがついたことで、重心が前に移り射撃の反動を抑えやすくなった。
357マグナムに対応したというKフレームのM19、M66は対応といいながら357マグナムを撃ち続けるとシリンダーにヒビが入るなど強度に不安があったが、それより大きいフレームを採用したModel586はシリンダーにも十分な肉厚があり、マグナム弾を撃つのに不安はなくなった。

反面ウエイトがついた分だけ銃自体は重くなり、警察などの銃を使用するプロは敬遠していた。
どちらかというと競技用の銃というイメージが強い。
護身用にもマグナム弾の需要はそれほどなかったかもしれない。


マルシンのモデルガンは、このS&Wのダブルアクションのメカをかなり忠実に再現していた。
このモデルガンを通じて「S&Wのメカはこうなっていたんだ」と気づくことがいくつもあった。

例えばダブルアクションの時、トリガーをゆっくり引き絞っていくとシリンダーハンドがまず回転弾倉を回しきってカチッとシリンダーストップがロックする。
そのあともう半ミリトリガーを引いたところでシアが切れてハンマーが落ちる。
こういうところがカチッとしているのがS&Wの特徴だが、これを正確に再現したのはこのマルシンの586(686)が初めてだった。

さらにハンマーを引き起こしてシングルアクションでコックすると、シリンダーストップがロックする音、シアがハンマーのくぼみに落ちる音など
「カチッカチッカチッ」
と音がするなど、映画では見知っていたけどこういうメカでこの音がするのだということがこのモデルガンでわかった。

秀作なのだがさすがに25年以上も前に入手したので、痛み始めているのを修理した。
また発火用モデルガンなので真鍮無垢のカートリッジが付属しているが、このカートリッジがモデルガンにしてはなかなか本物の357マグナム弾に近い形をしているので、これをホローポイント弾に近い色にするカスタマイズもやってみた。

以下その手順。





スミスアンドウエッソン モデル586(686)のプロフィールショット
モデル名の数字は586が鉄製スチールブルーモデル、686がステンレスモデル
写真は銀色の686ということになる




686の一番の特徴はこのバレルの下についたウエイト
実銃はこのオモリのおかげでフロントヘビーになり357マグナムの反動でも
銃口の跳ね上がりが少なく正確な射撃が容易になった
反面バレルが2本ついたような重さで一日中銃を
携行しないといけないプロの評価はあまり高くなかった




ところでこのモデルガンだがメカの再現と外観の再現優先のためウエイトはかなり軽い
同時期に発売されたMGC製の586(686)はバレルウエイトの中に鉄芯をモールドして
それなりの重さを再現していたがそのために銃口の形があまりリアルではなかった
個人的にはメカや外観のリアルさでこのマルシン製の方に軍配が上がった
ただしプラガンの軽さはいかんともし難い




インナーフレームの刻印
ここにモデル名が刻印されるのがS&Wの決まりだが、ここはプラスチックの
肉引きを防ぐためにあまり肉厚にできないというモデルガンの事情がある
型を分割して肉引きを防ぎながら刻印も忠実に再現したのもマルシンのこのモデルが初だった
ちなみにAAE3891は1983年の1月に設計が完了したというモデルガンメーカーの型番
実銃はここにシリアルナンバーの末尾が刻印される




発火モデルガンなのでカートリッジは当然真鍮無垢なのだが
もう火薬を詰めて遊ぶこともないのでこれをもっとリアルにしようと思い立った
弾頭部分にガンブルーをかけると真鍮は鉛のような黒い色になる
さらにその上にAUGのマガジンリアル化の記事で紹介したカッパーのスプレーを吹いた




ミリタリーボールならこれだけでも結構リアルなカートリッジになる
塗料の食いつきは弱いので火薬を使ったら一発で剥がれるだろうから展示専用になる




発火モデルガンのカートリッジは先がくぼんでいて
この形はミリタリーボールというよりはホローポイント弾に近い
ならば色もホローポイント弾にしてしまおうということで
マスキングテープを巻いて先の塗料をジッポーオイルで剥がした




先端に鉛の弾芯が剥き出しになったホローポイント弾風のカートリッジ
ホローポイント弾は鉛の弾芯を先だけ露出させそこにくぼみを作って
着弾後マッシュルームのように潰れる効果を狙った弾頭
銅で完全に覆ったミリタリーボールよりも貫通力で劣るが
体内に入った後潰れて大きなダメージを人体に与える
一時的に相手を足止めすれば十分な軍用弾頭と違い
相手を一発で止めて反撃を防ぐ警察用として普及した




このカートリッジを6発シリンダーに装填したところ
686の特徴はカウンターボアードと呼ばれる薬莢のリムがハマるくぼみを
廃したため薬莢のヘッドがシリンダーとツライチになっていないこと
そしてシリンダーの直径がM19(66)よりも大きくなったために
カートリッジ間に余裕ができてシリンダーも肉厚になったこと




カウンターボアードでなくなったために横から見ても薬莢のヘッドが見えるようになった
この銃でロシアンルーレットをするとズルができてしまいそうだ




マルシンのリアルさはこんなところにも
照星に赤い樹脂のチップが埋め込んであるのがS&Wの特徴だが
このチップは本当は台形の形をしていてクサビのように横から打ち込まれている
これをちゃんと表現したのもマルシンが最初だった
銃口は銃身の基底部を円心とした同心円でつながっている
鉄芯を埋め込んで重さを稼ごうとしたMGC製はこれを再現できなかった点が
大きなポイントダウンだった




S&Wのカートリッジエジェクト機構
シリンダーロックを兼ねたエジェクターロッドを押し込むと貼りついた薬莢も引き出せる
自動排莢機能のエンフィールドより一手間だがここが詰まって再装填ができなくなる不安も少ない




実銃は当時人気があったコルトのパイソンの 影響を受けて
銃身下にウエイトをつけたモデルを開発したという噂があった
事実かどうかは知らないが性格的にはパイソンに近い銃になったかもしれない
芸術的な工作のパイソンと勿体なくて撃てないというほどでもない686
カジュアルなパイソンとしてそこそこ需要があったのかもしれない
モデルガンの方は実銃と違ってなかなか人気があった
北野武の「HANA-BI」でもモデルガンとして登場した




実銃の686は従来のS&Wのリボルバーよりも頑丈なモデルとして登場したが
残念ながらマルシンのモデルガンは頑丈なモデルとは言い難い
今回分解し木グリップの陰に隠れていたクラックを発見してしまった




これを修復するために完全分解する羽目になった
S&Wのサイドパネルはコルトやエンフィールドとは逆で右側が開く
パネルは3本のスクリューで固定されている
前のスクリューはシリンダーヨークの固定ネジを兼ねている
真ん中のスクリューはトリガーストップ固定ネジを兼ねている
部品の点数を少なくする工夫がいたるところでされている




S&Wのダブルアクションメカ
コルトと一番大きな違いは各部品がユニットごとに分化されていること
特にトリガーユニットのモジュール化が大きな違いとなる
20世紀初の古いメカがベースだがハンマーブロックが
二重にハンマーをブロックする安全策が施されている
ハンマーもシリンダーラッチがロックしていないと
引き起こせないなど何重にも安全策が施されている
ところで今回のクラックだが亜鉛合金のインナーフレームが
円内のところで切れているためなかなか深刻な問題ではある
これはモデルガン規制をクリアするため必要以上の強度を持たない
という設計で仕方がないのだがここは差し込まれているだけなので
ABSフレームが割れるとグリップがぼろっと取れてしまう可能性がある




ほぼ完全分解した様子
プラのフレームの内側に亜鉛合金製のインナーフレームがあるが
これを抜いてひび割れを補修する




このクラックに瞬間接着剤を流し込んだ
スチレン系の接着剤はこういう強度を求められるところには効果がない




接着剤を流し込んだところ
瞬間接着剤はどうしても外にはみ出してしまう
はみ出したらすぐ固まるのでどうしても外観が汚れる
ここはオーバーサイズグリップで隠れる場所だから問題ないのだが
それよりもこのインナーフレーム固定用のネジの位置が問題のような気がする
どうしても経年変化で強度が落ちるABSだがこの位置は
特に肉薄になるので割れるのは仕方がない気がする
設計ミスか?




修理が完了したので組み立てを開始
各ユニットごとに組み付けていく
写真では順番を間違えているがシリンダーラッチユニットを組み付けたら
次にハンマーユニットを組んで、その次にトリガーユニット、
ハンマーブロックユニットという順番が手順的に合理的だ




ハンマーを何重にもブロックしているメカ
シリンダーラッチユニットが後退しないとハンマーを引き起こすことができない(左の円内)
トリガーを引き切らないとハンマーブロックユニットが後退しないので
ハンマーはカートリッジに接触できない(右の円内)
あとこの上にハンマーピンをブロックするハンマーブロックアームが
載ってこれもトリガーを引き切らないとハンマーをブロックする
トリガーやハンマーを服に引っ掛けたり落下したりなど
あらゆる状況でも安全を確保できるように工夫されている




S&Wのシングルアクションのコック状態
トリガーの上端がハンマーの一番先の下側のふくらみに引っかかって固定される




ダブルアクションのコック状態
この時はハンマーの前についたレバーをトリガーの上端が引き起こしてハンマーをコックする
引き切ってレバーがトリガーから滑り落ちる直前にシリンダーハンドが
シリンダーを回しきってシリンダーストップに「カチッ」と固定される
このシビアなタイミングを初めて再現したリボルバーのモデルガンがこのマルシンのモデルだった




S&W式のトリガーストップをサイドパネルの2番目のスクリューを差す前にはめ込む
シングルアクションの時にシアが切れたあともトリガーが
下がり続ける遊びが多すぎると狙いが下にぶれたりする
そこでシアが切れる角度でちょうどトリガーが止まるようにするのがトリガーストップ




トリガーストップの位置を決めたらサイドパネルのスクリューを締めて固定する
トリガーストップは実銃ではKフレーム以上のオプションだが
モデルガンでこれを再現したのもマルシンのモデルが初めてだった




ハンマーのテンションはこのメインスプリングでかける
発火させるならこのネジを結構締めないといけないが
もう発火させることもないのでここは最も緩めにした
フレームが割れる方が怖いからだ




修理とカートリッジの仕上げが完了した686
このカートリッジの長さは本物の357マグナム弾より4ミリほど短いだけでかなり近い
発火機構をカートリッジ内に持ってくるなど
オートマチックで培ったノウハウが活かされている




シリンダーオープンでカートリッジをスピートローダーにマウントした様子
マルシンのメッキはややサビに弱いので金属磨きでちょっと磨いた
おかげで顔が映りそうなくらい光っている
もう少しマットな方がステンレスらしいが…




反対側からテカテカステンレスの様子をお楽しみください




一緒に写っているのは旧MGC製の6インチリボルバー用のビアンキ風ホルスター
6インチリボルバーとしか書いていないがバレルの下に
スペースがあるので586(686)用と思われる




スピートローダーで6発一気に装填する様子
リボルバーの最大の弱点は再装填に手間がかかることなので
こういう道具を使ってその欠点を解消する工夫もされた
しかしこれも私服のポケットに入れるにはかさばりすぎるので
コンシールキャリーには向いていない
今ではエンフォーサーでリボルバーを使う人がアメリカですら
いなくなったのはこういうことかもしれない




マルシンのカートリッジは実銃の357マグナム弾に近いプロポーションを再現している
それはシリンダーのインサートを薄くして発火機構をカートリッジ内に収めた成果だが
シリンダーインサートはしっかりモールドに食い込んでいるので
モデルガンとしての安全性もちゃんと確保している




マルシンが初めて再現したもう一つの特徴がシリンダーがスイングアウトする角度
実銃は90度ではなく100度前後まで開くがそれまでの国産モデルガンはなぜかみんな直角だった
実際はここまで開くというのはマルシンのモデルガンで初めて知った事実だ




刻印は実銃にかなり忠実
実はトレードマークの下にMARUSHIN.CO.LTDとなっているのがモデルガンとして唯一の刻印
シリンダー下の刻印に「合衆国製、スプリングフィールド、マサチューセッツ、スミスアンドウエッソン」
と書いてあって本家からのクレームが心配になりそうなくらいリアルだ




同じS&WのM66との比較
ルパン三世のジゲンの愛銃M19のKフレームとダーティハリーの
愛銃44マグナムM29のNフレームの中間のサイズのLフレームが686
フレームサイズは似ているがやや大きいのでシリンダーの直径はかなり686が大きい
グリップサイズが調整してあるので握った感じはあまり差がない




同じ357マグナムの6インチだが太いシリンダーでマグナムの高圧に耐え
銃身に重りをつけてセミワイドトリガー、トリガーストップ標準装備など
割とスポーツシューティングの需要を狙った銃なのかもしれない



2017年10月25日
















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