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マルシン工業・ワルサーP38の垂れっ鼻を修正〜思ったよりも大工事に…

Nose Up

マルシン工業・ワルサーP38の垂れっ鼻を修正〜思ったよりも大工事に…

時々思い出したように昔愛用していたモデルガンなどを引っ張り出してくる…の第10弾

美人の唯一の欠点のわし鼻を修正するんだが、こんなに大事になるとは思わなんだ…

マルシンのワルサーP38のことだ。

P38についは知っている人も多いと思う。

1938年にドイツ軍の正式拳銃として採用されたP38は初めてのダブルアクション、つまり初弾さえ装填していればわざわざ撃鉄を起こさなくても引き金を引くだけで発砲が可能なメカを搭載した事実上最初の実用拳銃。
いまではこのメカは自動拳銃の条件というくらい当たり前のメカになっているが、何事も最初に取り組んだ人は偉いものだ。

拳銃というのは内部にスペースの余裕がほとんどなくて余計なメカを入れるとすぐにグリップやフレームが分厚くなってしまい握りにくい銃になってしまう。

ワルサーはこの問題をフレームの右側外にメカの主要部分を置いて、グリップパネルの中のデッドスペースでこれを収めることで銃がゴツくなるのを防いでいる。
そのためグリップを薄くしてスペースを稼ぐために試作時の木製グリップを止めて、ABSのプラスチック製のグリップを採用した。

そのグリップデザインはワルサー伝統のエルゴノミクスデザインになっている。
一度握ったら手が吸い付くように馴染み、ずっと握っていたくなるような人間工学的なデザインをエルゴノミクスデザインという。

このデザインのおかげでワルサーP38は馬鹿にかっこいい拳銃になり、モデルガンの世界でもずっと人気があるモデルだった。
いまキャプチャを見ながら、この銃を歌い込んだ有名なアニメの歌を口ずさんでいる年配者も多いと思う。

あるいは0011ナポレオンソロとかダーティハリーのスコーピオンとか、戦争映画以外でもこの銃を使った登場人物がすぐに数人思い浮かぶはずだ。


その美人さんをわりかし忠実なスタイルと、まあまあツボを押さえたメカで再現した最初のモデルガンがこのマルシン工業製のワルサーP38だった。

まあまあツボを押さえた…というのはこのシリーズは実銃のショートリコイルロッキングシステムの雰囲気を再現した最初のモデルだったからだ。
雰囲気…というのはもし本当に忠実に再現したらバレルがスライドにロックしてしまい火薬を入れてもブローバックは起こらないので、あくまであたかもロックしているかのごとくバレルが後退するが実際はロックではなくバネの力で後退しているだけという擬似メカだったら。

でも擬似でもなんでもそのメカを再現してくれただけで、実銃のメカがどうしてこうなっているのか興味が湧いてくるしそれがきっかけでメカについて調べてみるというのが私の銃のメカへの興味の最初だったから、このシリーズの影響は絶大だった。

(簡単に解説すると9mmパラベラム弾のような強装弾は発射時のガス圧や弾丸を打ち出した反動でそのままブローバックすると高圧ガスと鉛片などが排莢口から噴き出して射手に危険が及ぶので、銃身とスライドをロックしたまま後退して、薬室内のガス圧が充分下がってから排莢を始めるというメカがこのショートリコイルロッキングメカ)

そういえば当時通っていたガンショップの常連さんに歯科技工士がいて、このマルシンのP38の擬似ロッキングブロックを外して白銀か何かから削りだした本物そっくりのロッキングブロックを作って、実銃通りのロッキングメカを再現していた。
当然火薬カートリッジは使えないので、ダミーカートリッジ専用のディスプレイモデルだったが、それでもメカが本物そっくりということでかなりグッと来た。

そんな風にみんなスタイルの良さとメカの忠実性に惚れ込んでいたマルシン製P38なんだが、唯一の不満点が
「鼻が垂れてる」
という一点だった。

いや細かいことをいうとテークダウンレバーだけで分解できずピンを抜かないと分解できないとか、レシーバーに盛大な肉引きができているとかいろいろあるんだけど、そんなこと全部細かい問題にしてしまうくらい重大な問題がこれだった。

銃身が垂れてる…

いや、そう見えるだけだ、実際は垂れていない…と何度も思い込もうとしたが、どう見ても垂れてる。

誰か「垂れていない」と言ってくれ!!!…
と叫んだところで垂れている。





P38コマーシャルモデル(戦後にワルサー社が市販用に製造したモデル)のプロフィール
この銃はスタイルの良さから実銃も本国以外のアメリカとかでも絶大な人気があったそうだ
その美人さんのプロポーションを忠実に再現してくれたのがマルシン製なのだが銃身が下を向いている
最初気のせいかと思ったが見れば見るほど下を向いている




右側のプロフィールショット
これを見てもまだ鼻が垂れていないというもののみが石を持てこの女を打つが良い
誰がそんなことを言えようか…




好きな銃であるにもかかわらずこのモデルがもひとつお気に入りにならなかった理由はこのわし鼻につきる
長年不満を持ちながら眺めていたが気に入らないなら整形しちゃえばいいじゃないと思い立った
早速バラしを始めるが実銃はテークダウンレバーを下げるだけでバレル・スライドユニットが
スッと前に抜けるのに対してこのモデルは丸で囲んだピンを抜かないといけない




スライドをいっぱいに後退させて隠れているピンを露出させポンチか精密ドライバーでこれを抜く




これでやっとスライドグループが前に抜ける
ショートリコイルメカを擬似再現するもっとスマートな方法が今ならあるが
当時は試行錯誤の途上だったんだろう




ワルサーP38のバラシの最初のはまりポイント
スライドを抜くとP38に慣れていない人は必ずスライドレール内に仕込まれた
リコイルスプリングをピョ〜〜んと飛ばしてしまいしばらくその捜索に時間を取られる
スライドを抜ききる前にスプリングを抉りだして飛ばないようにするのが正解




スライドユニットとフレームユニットをバラした状態




計算では薬室口面で0.5mmほど銃身を下に沈めれば銃身はほぼ水平になるはず…
ならば削って水平にしてしまえば簡単じゃない…と削り始めたがやり始めて気がついた
実際には削り取らなくてはいけない面が非常にたくさんあって面積も少なくない
しかもリコイルロッキングブロックは亜鉛合金製なので削りだしも半端でない手間だ




削るだけでは銃身にガタができてしまうので銃身の下のレールに
銅製の圧着端子を熱してプラに埋め込む手法でかさ上げのレールの歯を増設した
これで銃身後端が下がり銃口が上を向いてワシっ鼻が解消されるはず




こうして修正された銃身
実際にやってみるとチェンバーの位置も下がるので
100%装弾不良になってしまうなどの問題が起きた
結局スライドも完全バラシでエキストラクターも
薬室に合わせて0.5mmほど下に曲げないといけない
削りだしと調整に驚くほど時間がかかってしまった




銃身とスライドのハメ合わせもピタッと来るようになった
実際にやってみて思ったのはこれは凸型を抜くときに失敗して曲がったとかではなく
設計図の図面の段階から銃口が下に垂れていたに違いないということ
最初から下に垂れていたのか何かの問題を解決するために
すでに出来上がっている銃身を0.5mm前さがりに変更するよう図面を書き直したに違いない
新たに設計図を引き直している時間がなかったのでこうしたのかな?
そう思わせるくらい見事にすべてのスライド面が斜めになっていた
元々ハメ合わせはカチッとしていたということでもある




背景を変えてプロフィールショット




銃身が下を向いていない…たったこれだけのことでフレームの樹脂のヒケが治ったわけでもなく
リアルでない分解法も改善されたわけでもないのに急にシャープなイメージに見えてきた
チェンバー側で0.5mm下げ、銃口側で0.7mm程度銃身を上向きに変えて
角度からしたらせいぜい1度か2度程度なのにずいぶん印象が変わる


修正した角度はおそらくせいぜい1度程度。
なのに長年不満を感じるほどはっきりと銃口が垂れていることが感じられていた。

人のこういう平衡感覚は絶妙なのかもしれない。

そういえばコルトガバメントM1911はスライドの上端が実は前下りに1度テーパーがついているのが正しい姿らしいが国産のモデルガン、エアガンでそこまで再現したモデルは非常に少ない。
というより1社しかないんじゃないかな…

国産のガバのモデルガンやエアガンのどれを見てもオモチャくさく感じるのは、案外このスライドのテーパーの再現の有無のせいなのかもしれない。


ところで最近このページで、モデルガンのことばかり書いている。
ここは元々最近関心のあることや、今やっている趣味、仕事がらみで知ったことなどの関心事を書くつもりで開設したが、銃の話題が続いている。
これが今の自分の関心事ということなのかな。
そのうち飽きたら別のことを書き始めるかもしれないし、まだまだ続くのかもしれない。
自分でもわからない。
行き当たりばったりに書く。
これが唯一のこのページのサイトポリシー。
本家がMacオンリーのガチガチのサイトだからね。




2017年11月23日
















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