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日本のテッポ〜ニューナンブM60を入手したので細部を検証する

Police Revolver

日本のテッポ〜ニューナンブM60を入手したので細部を検証する

時々思い出したように昔愛用していたモデルガンなどを引っ張り出してくる…の第30弾

予告通りことが運んだの初めてのことなので強調しておきたい
『予告通り』前回のシルエットの主、新中央工業ニューナンブM60を取り上げる。

ニューナンブM60というテッポについてはWikiPediaにも書いてあるし、その来歴、どういうテッポかはそこを参照願いたい

普通の日本人にとって日常最も目にする機会が多い実銃はこのニューナンブM60だと思う。
なんせ全国、都道府県警の警ら中の警察官がほぼ全員腰に吊っていた拳銃だから。

「吊っていた」と書いたのは警視庁や府警を皮切りにS&WのM360 SAKURAやM37への換装が始まっており、私服警官の一部はSIG/Sauer P230JPなどオート拳銃への換装も始まっているので、自衛隊の六四式小銃と同じくやがては警察学校ぐらいでしかお目にかかれない銃になる日も近い。

このM60については「身近であるにもかかわらず謎が多い銃」とか言われるが、そうは言っても公開されている情報も多いので知っている範囲で幾つかのことを書いてみる。





今回はマルシン工業のガスガンの「ポリスリボルバー」を入手した
モデルガン派の私がなぜあえてガスガンを入手したのかといえば
トータルでいえばこのマルシンのニューナンブが一番実銃に近いと感じたからだ




一番近いと言いながらいきなり実銃と違う部分の話…
実銃はこの左サイドに納入番号とミネルバ工業の刻印が彫られているはず
しかしマルシンには「POLICE REVOLVER」と刻印されている




フレーム右にはマルシンとメードインジャパンの刻印があるが
実銃はS&Wのレジスターマークと同じ位置に「NEW NAMBU M60」とモデル名の刻印がある
マルシンはスタイルはかなり正確だが刻印はかなり嘘
なおグリップパネル上端にセーフティレバーがあるがこれをつけないと
エアガンの協会の承認を得られないのでこれも嘘だけどこれは仕方がない




同じマルシンのガスガンのオリジナル版の写真(WikiPediaより)
今入手できるモデルは6mmBB弾仕様だがオリジナルは
8mmBB弾を使用していたのでここに8mmと刻印されていた




6mmBB弾に変更されたのでインナーバレルは肉厚になり
シリンダーのチェンバーからも弾頭が見える雰囲気になった




一応ライブカートリッジ方式でカートリッジにBB弾を詰めてシリンダーに装填する
カートリッジのリムが丸く面取りされているのはシリンダーギャップやカートリッジの
後ろからガスが漏れないようにバレルからテンションをかけて
カートリッジの前後をガスルートのパイプで挟んでいるため
回転時にガスルートがカートリッジに引っかからないように工夫されている
なかなかよく考えられている




シリンダーのチェンバーは素通しなのが実銃と見た目が同じでグッとくる
実弾を入れて悪用したりされないように安全対策としてチェンバーの中はくり抜かれている




このマルシンの38スペシャルカートリッジだがなぜか一回り大きいようで
コクサイのモデルガンのカートリッジを入れると
ズボッと入ってしまいカウンターボアみたいになってしまう




試しにコクサイのチーフスペシャルにマルシンのカートリッジを入れてみたが弾頭しか入らない




コクサイカートリッジを6発入れたがこんな感じ
ニューナンブはチーフスペシャルと同じくノーカウンターボアードなので
カートリッジのリムが真横から見えないとリアルではない




ただし素通しのチェンバーの前から弾頭はしっかり見えるのでそこはリアルかもしれない




カートリッジサイズの比較
全長でいえばマルシンのカートリッジはコクサイの357マグナムよりちょい長いぐらい
だが径が太いので41マグナムという雰囲気




ニューナンブに関してはマルシンのガスガン、HWSのモデルガン、
大友商会のディスプレイガンが販売されているが
プロポーションでいえばマルシンが一番リアルだと思っている
実銃と比較するとサムピース、グリップの形状が初期型・後期型の違いがあるが
それ以外はほぼ一致しておりプロポーションは正確だと思われる
初期型はピカピカのブルー仕上げだが後期型はパーカライジング仕上げが多いので
このヘビーウエイトのつや消し黒の仕上げもリアルといえる




ニューナンブはS&WのM36チーフスペシャルの部品替えしただけの
丸パクリ銃のようにいわれることもあるが手に持ってみると大きさがチーフとはかなり違う
コクサイチーフと並べてみてもサイズ感がかなり違う




ニューナンブはチーフのJフレームとミリポリのKフレームの
中間サイズなどという資料もどっかで読んだが実際に握ってみて
サイズ感だけでいえばコルトのディテクティブスペシャルやローマンクラシックに近いと思った
80年頃の日本の刑事ドラマのプロップガンはほとんどローマンだった話を以前にも書いたが
ローマンクラシックとニューナンブは実際似ているかもしれない




コクサイのコンバットマグナム(上)とニューナンブの比較
さすがにこれよりは小さいが…




ニューナンブ(上)はメカ的にはチーフ(下)をかなり参考にしている
しかし形状は細かく見るとかなり違う
ニューナンブはシリンダーの上のフレームもかなり太くなっており
バレルのテーパーのつけ方、サイトリブの有無、サイトの形などからむしろ遠目には
コルトの旧型ディテクティブあたりにかなり似ている
トビー門田がなぜ旧型ローマンをドラマに使いたがったかがなんとなく理解できた




チーフ(左)とニューナンブ(右)のハンマー周りの形状の違い
このハンマースパーの形状、ハンマー周りのフレームの形状、そしてサムピースの形状などから
ニューナンブは遠目にもS&Wのリボルバーと見分けがつく




ニューナンブ(左)とチーフ(右)のシリンダー周りの形状の違い
シリンダーフルート、シリンダースタッドの形状の違いも正確に再現されている




ニューナンブのもう一つの違いはグリップの後端の形状がスクエアという出っ張った形状になっていること
S&Wの2インチのスナブノーズリボルバーのグリップはラウンドと呼ばれる丸い形をしている




ニューナンブ(左)はチーフ(右)と比べてバレルを支えるフレームがかなり分厚い




シリンダー径はチーフ(右)の32mmに対してニューナンブ(左)は36mm




フレーム幅もチーフ(右)の14mmに対してニューナンブは16mm
コクサイとタナカのJフレームの差はいずれも半ミリ以下なので
実銃の公差もこの範囲内と思われる




銃身固定ピンの位置のフレーム上下幅はチーフ(右)の46mmに対してニューナンブ(左)は51mm
こうしてみるとニューナンブはチーフを補強するために多少肉を盛ったとかではなく
最初からチーフよりもひとまわり大きい銃として設計されていることがわかる
持った感じはローマンやディテクティブと同じくらいのサイズ感というのは気のせいではなかった




ニューナンブ(上)のバレル長は公称通り51mm
チーフスペシャル(下)は48mmで2インチバレルという公称だが
実際には2インチ(50.8mm)より少し短い




エアガンなので少しリアルでない部分もある
フレームは銃把の底で切れておりランヤードスイベルが付いている部分はガスタンクの底部になる
ここからガスを注入してグリップの中に溜めるのでリアルなライブカートリッジになったが
そのスペースを確保するためにハンマースプリングはグリップの中ではなくハンマーのシャフトに移動した




バレルの根元にはバレル固定ピンが刺さっているがモデルガンはこれはただのモールドだが
マルシンニューナンブは本当にピンが刺さっていてこれを抜くとバレルがフレームから抜ける




エジェクターロッドキャッチはS&Wよりも付け根が細くなっており
S&Wは削りだしでこれを成型しているがニューナンブはろう付けかもしれない
ハンマーシャフトが貫通している形状なども合わせて製造を簡略化して
強度を確保する工夫があちこちにされているように感じる




ハンマーノーズの形状がリアルでないのはガスガンだからしかたがない
ガスガンならばここでBB弾の集弾性能を計測するところだがそこは余り期待できないと思う
ダブルアクション時にシリンダーが回りきる前にハンマーが落ちてしまうので
バレルとチェンバーの中心線は合っていないと思われる
ただしシリンダーギャップを密閉して塞ぐメカから
シングルアクション時はそこそこ期待できるかもしれない
ダブルアクションはきついがシングルアクション時の命中精度は
一流というニューナンブの性能をリアルに再現しているかもしれない




ニューナンブで推奨されているグリッピングの形
かつては警察、海保は拳銃は片手射撃としていたからサムピースに親指をかけて反動を抑えていた
これは日本独特のスタイルでだからサムピースは指をかけやすいようにS&Wと違い半月形に改良された




熊本県警の警察学校の射撃訓練風景
つまりこういう感じ
しかし今では警察でもツーハンドホールドを推奨しているようだ
そのためサムピースに親指を掛けるというスタイルも
守っているところとそうでないところまちまちのようだ




WikiPediaより)奈良県警の本部点検風景で確認されたM60
今月撮影された写真だが旧型グリップを装備し仕上げも
パーカライジングではなくブルーフィニッシュになっている
トリガーに暴発防止の安全ゴムが挟まっている




WOWWOW連続ドラマW「石の繭 殺人分析班」よりM60を構えて突入する捜査員
二人ともツーハンドホールドで発砲時以外は人差し指を安全鉄の外に出してまっすぐにしている
こういうところをちゃんと再現しているドラマの考証に好感が持てる
ただし使用しているのはランヤードスイベルが無いタイプで
これって新宿鮫の映画で使用されたプロップガンの使い回し?




WOWWOW連続ドラマW「水晶の鼓動 殺人分析班」より
殺人現行犯を地下道に追い詰めた主人公の女性捜査員
木村文乃の手の大きさと比較してM60の大きさが確認できる
またバレルやサイトの形状からニューナンブであることが確認できるが
これもパーカライジングではなくツヤツヤのブルーフィニッシュだ
このドラマは警察機構の内部事情や警察独特の用語など非常にリアルに考証されており
また事件の真相に天才的なプロファイリングで迫っていく主人公たちのサスペンスも
非常に面白いのでまだ観ていない人にはお勧めできるドラマだ




総評は以下の通り
刻印以外は極めてリアルな形状
安全のためかカートリッジはデカめ
集弾性能は期待できないがひょっとしたらシングルアクション時はわりといいかも(未テスト)
ダブルアクション時シリンダーが回りきってからハンマーが落ちるメカを再現できなかったのは
M686で業界初でそういうメカを再現したマルシンも衰えたなという感じがしないでもない
でも例によって美しいバックショットだ




このハンマーの後ろが盛り上がったようなカーブになっているのが
S&Wのリボルバーとは決定的に違う特徴だ




そして新型のグリップパネルはダブルカラムのオート並みに分厚い
グリップアダプターをつけると小指が余ってしまうのがS&Wの握りだが
ニューナンブはグリップパネルが延長されているので全部の指でしっかりグリップできる
射撃の反動の制御しやすさではS&Wより優れているかもしれない
逆にいうと更新が進んでいるM37はチーフそのものだから日本の警察官は持て余しているかも



2018年7月16日
















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