Previous Topへ Next

日本のテッポ2〜二十六年式拳銃を組み立てる(前編)
〜独自のメカに感心

26

日本のテッポ2〜二十六年式拳銃を組み立てる(前編)〜独自のメカに感心

時々思い出したように新しいモデルガンなども引っ張り出してくる…の第36弾

ニューナンブに続き日本のテッポ第二弾。

私自身はそれほどミリヲタではないと思っているが、どこかで見かけた「エアガンよりモデルガンの方が好き」「オートよりもリボルバーの方が好き」「日本の軍装に凝りだしたら末期症状」というミリヲタ重症度分類でいくと、数えで役満ということらしい。

別に日本軍の軍服を着てゲームフィールドや靖国神社を歩き回る趣味はない。

でも日本のテッポは好き。

日本のテッポは優秀かというと、そこは評価が分かれる考え方の齟齬というかニュアンスがあるのでなんとも言えないのだが、そういうこだわり方は好き…という評価になる。

それでまさに「優秀かどうかはともかくそのこだわり方が好き」と前々から惚れ込んでいた二十六年式拳銃のハートフォード製の組立キットを入手した


【実銃の二十六年式について】

実銃は年式の通り、明治26年に陸軍の正式拳銃に採用された。

明治26年はiPhoneの元号早見アプリによると1893年になる。

1893年というと日清戦争の前の年、日本の軍装はまだ村田銃を主力火器としていて世界史的には列強帝国主義、植民地主義の圧力にほんの二十数年前まで刀を主力兵器にしていた日本人がまだ怯えきっていた時代。

銃器の発達史的にいえば、火縄銃をいち早く見切ったヨーロッパで発生したフリントロックマスケット銃の時代が200年以上続いたが、戦場では一発撃ったらあとは棍棒の代わりにしかならないフリントロック銃の不便さをいいかげんなんとかせなあかんと、ようやくパーカッションライフル、金属薬莢が次々と実用化されてやっと銃は連発性能と全天候性を手に入れ始めた時代だった。

主力火器の村田銃も元々はパーカッションライフルだったものを金属薬莢対応に日本人が改良した銃だった。

その過渡期にこの国産制式拳銃も生まれた。
最初から金属薬莢を使用する連発銃として企画された。

同世代の拳銃というとボーチャードということになり、モーゼルC96は3年あと、ルガーP08は15年あと、ウエブリーアンドスコットMk1中折れリボルバーは6年前、西部劇に登場するコルトのシングルアクションアーミーのサードジェネレーションが3年後に登場するという時代だった。

日本の拳銃というと二十六年式、九十四年式、十四年式、そしてニューナンブとどれも「欠陥拳銃」みたいな言われ方をすることが多いが、少なくとも二十六年式のこの登場年の時代背景を見ると「欠陥拳銃」でもなければ時代遅れの旧式銃というわけでもない。

それどころか二十六年式にしかないユニークな先進的メカもあるし、考え方も当時としては先進的だったと思う。

なお二・二六事件の時に叛乱軍将校が当時の鈴木貫太郎侍従長を至近距離で数発撃ったにもかかわらず、鈴木貫太郎は生存し太平洋戦争の幕引きをした最後の内閣総理大臣になったことを挙げて「威力不足」とかいうのは言わない約束である。





実銃の二十六年式(上)とハートフォードのキットを組み立てた二十六年式(下)
ハートフォードはプロポーションは素晴らしいと思う
実銃は写真では結構綺麗なブルーフィニッシュのように見える
今残っている実銃展示品や写真はどれも傷だらけで錆び付いたコンディションが悪いものばかりだが
実銃を触った人からは「仕上げは案外綺麗でスムーズな銃だった」という話も聞く




二十六年式の最大の特徴はブレークオープントップ、
つまり中折れ銃で6連発のダブルアクションリボルバーである点
中折れ銃は19世紀に流行したメカだがこれをハンマー露出式ながら
ダブルアクションオンリー(DAO)で実用化したというコンセプトが
当時としてはなかなか先進的だったと思う




二十六年式の刻印は実にシンプル
右サイドに年式とシリアルナンバー、製造元マークだけという質実剛健さ




左プロフィールショット
同じ中折れのウエブリーアンドスコットやエンフィールドの
ごちゃごちゃしたメカメカしさと比べるととってもスッキリしている
バレルの閉鎖メカやシリンダー脱落防止メカに工夫があるためだが
この工夫が信頼性を高めた反面軍用銃としては良し悪しの結果となった




全体的にすらっとしたプロポーションで側面図などの
図面を見ているだけでは気がつかない美しさがある
ヘビーウエイト樹脂で成形されているハートフォードの二十六年式は
ブルーフィニッシュをかけるととても綺麗なルックスになった
その制作過程と手を加えた部分を以下で解説する




組立キットパッケージ外観
箱絵には当時の用語で部品名の解説図が印刷されている
なかなか雰囲気がある箱だ




大抵の組立キットは箱がでかいので作った後箱が邪魔になって捨てることになる
ハートフォード組立キットの箱がいいのは モデルガンケースとして組立後も使用できる点
あと部品がバネ類、ピン類、部品類に仕分けされているのも作りやすい




最初からブルーフィニッシュを掛けるつもりだったので
組立を始める前に黒染めを剥がす作業から始める




ハートフォードの二十六年式のキットの組立自体は他の
組立キットと比べてもとても容易なので初心者向けだと思う
ただ組み立てるだけなら30分かからないかもしれない
しかしまずパーティングライン消し、バリ取り、
ブルーフィニッシュ下地磨きなどで数日を要した
パーティングラインは樹脂部品、金属部品それぞれにあるのでとにかくこれを消す
これを徹底的にやるかやらないかで仕上がりが全然違う




二十六年式は実はダブルアクションリボルバーとしては最高にスムーズなトリガーと
評価するガンリポーターもいるし同封のハートフォード社長の解説を読むと
「綺麗なハンマーのブルーフィニッシュに感激した」という旨が書いてある
だからトリガー、トリガーガード、ハンマーの仕上げには特にこだわった




パーティングライン消し、バリ取り、黒染め落としをしたら
ヘビーウエイト樹脂部品のヘラがけをして金属感を出した
カスタムメーカーのブルーフィニッシュカスタムは数万円と
かなりお高いがこの作業のしんどさを体験すると
7〜8万円は取るのは当然ではないかと思うほどしんどい作業




例によってヘラがけはケーキフォーク、ティースプーン、栗の皮むき器の食器セットで




グリップは木製グリップを探しているが手に入らないため付属のABS製グリップを使用する
そのままだとテカテカ光っていかにもプラチック製丸出しなのでカッターで木目の彫刻入れ
ダイヤモンドチェッカーの目を荒らして黒のアクリル塗料を思いっきり薄めてなんとなく木目を表現
マホガニーやウォルナットなどの木目がはっきりした木材を使う西洋の銃と比べて
日本の銃はブナのような木目がはっきりしない木材を使用する傾向があるようだ




重量感があるヘビーウエイト樹脂製なのだがそれでも
まだハートフォード製は重量が足りない気がする
そこでせっかくプラグリップを使用するので以前チーフの
ページでも取り上げたハンダウエイトを仕込んだ
二十六年式はグリップが左右対称ではないので左のパネルだけに
仕込んでも左右のバランスが崩れることはない




丸二日かかった磨き作業が終わった樹脂部品、金属部品




仕上がりで金属感が出るかどうかはこの磨きとヘラがけにかかっている
組立は難しくないがバリ取りが不十分だとハンマーヘッドの差込が異常に硬かったり
シリンダーの回転や銃身、トリガーガードの固定が硬かったりする
基本的に組立には力は要らないはずなので固くて入らない場合は
どこかがおかしい・バリが残っていると考えたほうが良い




トリガー、トリガーガードもここまで追い込みました




今回使用したのはこの二種類
バーチウッド製のスーパーブルーとアルミニウムブラック
名前とは裏腹にスーパーブルーは茶色っぽい黒でクラシカルなブルーフィニッシュ
アルミブラックは青っぽい光沢があるブラック
反応が早くムラなく塗れるのはスーパーブルーなのだが
色にこだわるならアルミブラックも必要
今回金属部品とヘビーウエイト部品の色を揃えるために
ヘビーウエイトをアルミブラック、金属部品をスーパーブルーで仕上げた




ブルーフィニッシュ仕上げた部品




組立を始める
二十六年式のメカは組み木細工のようにそれぞれの部品が
お互いを固定し合っている職人芸のような部品構成になっている
基本パネルのようなフレームに部品を置いていくだけ




組立キットの良いところはメカを理解しながら作業を進められること
ダブルアクションのメカは基本的にウエブリーアンドスコットやエンフィールドと同じ
トリガーがシリンダーハンドでシリンダーを回しながらハンマーを起こし始める
メインスプリングはハンマーを引き上げる方向にテンションをかけており
スプリングのもう一方の端がかかっているトランスファーバーがシリンダーハンド、
トリガーにテンションをかけている部品数を節約するメカが採用されている




シアが切れるとハンマーはファイアリングピンブロックに衝突するまで前進する
ブッシュからファイアリングピンの先が突出している
この時トランスファーバーはトリガーによって上に押し上げられている




トリガーを離すとトランスファーバーもスプリングのテンションで下に押し下げられる
この力でハンマーもわずかにコックされた位置まで押し戻される
これが二十六年式の唯一の安全装置となる




角度を変えるとトランスファーバーが下がるとハンマーの下端をバーが押しているのがわかる




これはエンフィールドやSMITH & WESSONのハンマーブロックと違って
ハンマーをバネの力で押し戻しているだけなのでハンマーを押すと
ファイアリングピンはカートリッジにコンタクトしてしまう
つまり落としたら暴発することがあり得るということだ
日本軍はシェルのついた硬いホルスターに拳銃を入れてしかも
ランヤード(吊るし紐)で銃を上衣に固定することを義務付けている
落とすなどもってのほかということだ




中折れ拳銃の特徴的なメカ
エキストラクターカムのツノ




エキストラクターカムの全体像
偏心カムになっておりこれが前後にずれてエキストラクターを押し出したり
リリースしたりというメカはエンフィールドやS&Wなんかと共通
19世紀のデファクトスタンダードメカだ




この偏心カムが前進している時はヒンジの前の部分に爪が突出していて
銃身を折り曲げるとここがフレームに引っかかってエキストラクターを押す仕組みになっている




銃身をいっぱいまで折り曲げると爪はフレームの中に押し込まれてエキストラクターは解放される
ここでエキストラクターがシリンダーの中に戻る




次回銃身を折り曲げた時にまたエキストラクターがせり出してくるように
偏心カムの位置を元に戻す爪がヒンジの反対側に突出している
ところで中折れ銃は全体的に構造がひ弱という印象があるが
この二十六年式はヒンジの厚さや径がエンフィールドの1.5倍はありそうでがっしりしている
使用弾は同じような弱装弾なのを考えると二十六年式は強度面では信頼できそうだ




二十六年式でもう一つ面白いのはシリンダーの脱落防止の独立したメカがないこと
シリンダーシャフトに反時計回りのネジが切ってあり
通常のシリンダー回転は時計回りなので脱落しないという工夫
エンフィールドのようにこのために3つも別の部品を用意するのに比べたら
部品点数削減や信頼性に大いに貢献しているがエキストラクターシャフトのケースに
こんな逆ネジを切るのは工作の手間が増えて戦時生産には向かない気がする
職人芸的で面白いメカなんだが短期間に量産できないといけない軍用としては
どうなんだろうという疑問もちょっと残る




こうして下地仕上げ丸二日、組立30分で完成した二十六年式拳銃
例によってまずは外光ベタ明かりの写真から




そして照明を入れて撮ってみた
メカの解説でも触れたが軍用として泥まみれの戦場で戦う兵器としては
少し洗練されすぎている気はするがある意味日本刀のような美しさがある拳銃と思っている




右サイドパネル周辺の仕上げ




実銃のガンレビュワーが「世界最高のスムーズなダブルアクショントリガー」
と評したトリガーとトリガーガード周りの仕上げ




そしてハートフォードの社長が「美しいブルーフィニッシュのハンマー」と惚れ込んでいたハンマーの仕上げ




ブレークオープンすると薬莢がせり出してくるエキストラクターメカ








ハンマーは露出しているがシングルアクション用のノッチを切っていないので
ハンマーを引き起こしてシングルで打つことはできない
陸軍も海軍もSMITH & WESSONのモデル3などのシングルアクションオンリー銃を
採用していたが騎馬や艤装に捕まって片手で撃つ時にシングルオンリーでは
不便なのでDAO仕様の二十六年式に更新したと付属の解説に書いてあった
その面では世界で最も先進的なリボルバーでありダブルアクションリボルバーの
スタンダードのS&Wミリポリよりも6年も先行していたわけだから
日本の銃器技術は決して遅れてはいなかった
よく言われる独立したシリンダーストップがないためにシリンダーがオーバーランして
不発が起きるというのは後年メンテナンスがおざなりになってきた結果のことで
現にこのモデルガンではそんなことは起きない




例によって私が好きなバックショット



2018年8月7日
















Previous Topへ Next





site statistics
青木さやか