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ディスティングイッシュド・コンバットマグナムの写真を撮り直す

Distinguished Combat Magnum

ディスティングイッシュド・コンバットマグナムの写真を撮り直す

時々思い出したように古いモデルガンを引っ張り出してくる…の第41弾

しばらくはテッポの塗装やブルーフィニッシュの話から離れて本来のテッポそのものの来歴や写真の話を。

表題の「ディスティングイッシュド・コンバットマグナム」とはなんぞやと思ったかもしれないが、これは前にも取り上げたSMITH & WESSONのM686のこと。

直訳すれば「コンバットマグナム特別版」ぐらいの意味。

コンバットマグナムとはルパン三世の次元大介の愛銃M19の愛称としてファンが多いテッポだが、これの特別版とS&Wが名付けたのはちょっといわくがある。

いわくM19などのKフレームのリボルバーは357マグナムという強装弾を撃つにはフレームやシリンダーが華奢すぎるからもうワンサイズ大きいLフレームに改修されたのがM586/686だというような解説があちこちで見かけられるが、それは後から付いてきた話でS&WがこれをM19の特別版と呼ぶのは当時人気を博したスマイソンに業を煮やしたからだ。

スマイソン(Smython)またはアメリカのテッポ好きにはスモルト(Smolt)という名称の方が馴染みがあるかもしれないが、これはコルトのPythonのバレルをS&Wのコンバットマグナムのフレームに強引にねじ込んだアメリカのガンスミスのカスタム品のことで、これが1980年代に話題になって、日本でもMGC、コクサイなどモデルガンの競作になったりで人気になった。

要は元は個人のカスタムガンショップのニコイチカスタムガンなのだが、これがあまりにも人気になったので本家のS&Wがこの人気がオモシロくないとばかりに出してきたのがM586『特別版コンバットマグナム』ということだ。





アメリカのテッポ好きの掲示板サイトで紹介されたSmoltの実銃
S&WのM19のフレームにコルトのPythonの6インチの銃身を組み合わせている
要はコルトのバレルウエイト、ベンチレーターリブ付きのバレルが好き…
だけどコルトのダブルアクションはクソ…S&Wのダブルアクションが好き…
だけどS&Wのバレルはクソ…というテッポ好きの要望に応えて
いいところだけくっつけたニコイチガン
この筆者は「地方の質屋で見つけたスモルトを紹介する」とエントリに書いているが
これもおそらく1980年代に作製されたもので錆も浮いてかなり傷んでいる
もう今じゃSmoltカスタムなんて誰も作らないだろうしそんなもんなんだろう




そしてこちらは日本のマルシン工業製のS&W M686「特別版コンバットマグナム」
以前リペアした時に撮った写真がいい加減だったのでちゃんと照明当てて撮り直した
Smolt人気にイラついたS&Wが「そんなボッタクリカスタムガンなんか買わなくても
S&Wオリジナルでバレルウエイト付きの銃のラインナップがあるよ」とばかりに出してきた「特別版」




しかもSmoltではフレームやシリンダーが弱いために357マグナムを撃つと
へたったり破損するという弱点はコンバットマグナムと同じなのに対して「特別版」なら
ワンサイズ大きいフレームで357マグナムも安心して撃てるという付加価値をつけてきたというのが真相




「特別版」にはスチール製のM586、ステンレス製のM686があってそれぞれ2 1/2、4、6、8インチバレルがある
これはM686の6インチをモデルガンにしたもので本当はサンドブラスト仕上げのつや消しシルバーなのだが
サビ落としのために金属磨きで磨いていたらピカピカになってしまった
実銃もマットシルバーなのでリアルではないのだがこれはこれで気に入っている




前回のリペアでピカピカになったシリンダーの輝きを見よ!
マルシン製のM686はダブルアクションのシアが切れるタイミングがリアルで
ダブルアクションの時にシリンダーが回りきってから半ミリほどトリガーを引いた時にハンマーが落ちる
そのアクションのリアルさに加えてサイドプレートがフレームに全く隙間なくぴったりとはまっているのもリアル
実銃は髪の毛一本も入らないくらいにこの合わせ目はぴったりなのだがマルシンはかなりいい線いってる




実銃もマルシン製もステンレスモデルはサンドブラスト仕上げの
つや消し銀なのだがサビ落としで磨いた結果こんなにピカピカに…
「特別版コンバットマグナム」は今でもS&Wから販売されているみたいだが
1980年代製のステンレスモデルはかなり傷んでいるだろうからポリッシュしたら
実銃もこんな風にピカピカになっているに違いない…というリアルさを追求した(嘘




マルシン製はフレームやサイト周りの強度が他社製品ほどないので
火薬をバカスカ撃つようなモデルガンではない
飾って時々動かして感触と雰囲気を楽しむモデルだと思う




木グリップはウオルナット製のS&Wオーバーサイズグリップ
余談だがこの左の切り欠きは弾込めの時スピードローダが当たらないように切ってある
なので切り欠きは左だけにあるのが正解なのだが映画のスチルが裏焼きになっていて
これが右にあったりコミックで左右とも切り欠きがあるように描かれているのを見ると
「映画会社や出版社の人ってテッポのことを知らないんだなぁ」と思ってしまうのです




ステーブン・ソダーバーグの「アウト・オブ・サイト」
のDVD/BRジャケット写真より
これが裏焼きバレバレの例だがスピードローダの切り欠きが銃の右側にある
ジョージ・クルーニーとジェニファー・ロペスのお顔の向きの構図から
どうしても銃口を右に向けたかったんだろうけどだったら右側の写真を撮ればよかったのに
無理に銃の写真を裏焼きにして構図に合わせてしまった結果と思われる
「コマケーことはドーでもいいんだよ」と映画会社の人は言うのかもしれないが
テッポ好きとしてはこういう細かいことが気になるんだよなぁ…
ジャケット写真は気になるがこの映画自体はとっても面白い内容だったのでオススメ


直訳すると「特別版コンバットマグナム」と書いたが「コンバットマグナム」が訳されていないではないか…というくそリプに備えて全部直訳すると「特別版戦闘用大瓶弾の銃」…そう律儀に全部日本語に訳すとますます意味がわからなくなる。

マグナムとはもともとはワインやシャンパンの特大瓶のことで、通常の容量の750mlのBouteille(ブテイユ・フルボトル)に対して倍の1500mlのものをMagnum(マグナム・2倍ボトル)、4倍の3000mlをDouble Magnum(ダブルマグナム・4倍ボトル)という。

F1などのカーレースの表彰台でシャンパンファイトといって、入賞した3人のドライバーがシャンパンのかけ合いをするあの大瓶はこの4倍ボトルのダブルマグナムを使う。

マグナムとはこうしたお祝いの大盤振る舞いというような景気のいい意味合いもあるのかもしれないが、本来は大きいボトルの方がワインの酸化による劣化が防げるために美味しいということもあるらしい。
だから表彰台でダブルマグナムを使うのは「特別な美酒で祝う」という意味もあるようだ。

このワインの大瓶の等級名をいただいてテッポの世界でも。薬莢を長くして「火薬マシマシ」にした装薬をマグナムと呼ぶ。
357マグナム、41マグナム、44マグナム、45マグナムあたりが有名どころ。

SMITH & WESSONではそれまでは38スペシャル弾というこれも38口径の38SMITH & WESSON弾よりも火薬マシマシ弾にしたものを標準としていたが、その38スペシャル火薬マシマシ弾よりさらに火薬マシマシにしたのが357マグナム。
そしてこの357ダブルマシマシ弾を撃てる戦うテッポという売りで「コンバットマグナム」M19というモデルをリリースした。

この「コンバットマグナム」という名称は、いかにも威力信仰が強いアメリカ人にアピールしそうなニックネームということになる。
そこにスモルトのカスタムガンのヒットが起こって、コンバットマグナムが霞んできたので、「特別版コンバットマグナム」を満を持してぶつけてきたというのが真相。

もともとS&Wのコンバットマグナムは「名前はマグナムだが実際はマグナム弾は撃てない」という定評があったので「そんなことはない、この特別版ならバカスカ撃てる」というためにLフレームを採用して全体的に強化も併せてやったというのが流れだった。

にしても「特別版」とは直接的なネーミング。




2018年8月25日
















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