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日本のテッポ3〜自衛隊、海上保安庁の
かつての主力火器・六四式自動小銃

Sixty-four

日本のテッポ3〜自衛隊、海上保安庁のかつての主力火器・六四式自動小銃

時々思い出したように古いモデルガンを引っ張り出してくる…の第44弾

押し入れの奥に眠っている古いモデルガンやエアガンを最近取り出してきて、リフレッシュできそうなものは手を入れている。

最近ニューナンブや26年式を日本のテッポとしていじっていたが、そういや日本のテッポがもう一丁眠っていた。
自衛隊や海上保安庁がかつて主力個別火器として使用していた六四式自動小銃は、かつてホビーフィックスから無発火のダミーカートモデルのモデルガンが、それとTOPから電動エアガンが発売されていた。
今手に入るものは中華製の電動エアガンしかないと思う。

今回のものはそのTOPの電動エアガン。

本当はホビーフィックスの無発火モデルガンが欲しかったのだが、当時若造だった私にはあの価格はあまりにも高かった。
なので妥協してTOPのエアガンを購入したのはほろ苦い思い出。

HFの六四式小銃は本当によくできていた。
当時自衛隊出身者のお仲間テッポ好きも
「すごくよくできている」
と感心していたぐらいだから実際実銃を持った人も納得するような出来だったのだと思う。


TOPはエアガンなので再現度はHFほどではないにしろ、これはこれでよくできていた。
噂ではHFと提携して一部金型を共有していたとのことなので、これもかなりの再現度なのだと思う。
少なくとも今の中華電動ガンよりも再現度は高い。

電動ガンだから当然撃ってみたのだが、残念ながら弾道はかなり酷いものだった。

チェンバーの工作に問題があったのかなぜか逆向き、つまり下向きにホップがかかる。
野球のドロップボールというか縦のカーブというか、あんな感じで「ギュン」と下向きに弾道が曲がる。
どうやら通常のホップとは逆向きの高速回転がかかっているらしい。

これを補正するためにホップを思いっきりかけるとやっと無回転ぐらいの軌道にはなる。
しかし上下方向からホップをかけるような抵抗があるせいか、パターンは数メートルで数十センチに散って散々だった。

目の前に現れたゲーマーに対しても当たる気がしない。

エアガンとして実用性ゼロなら、やはりよくできたディスプレイガンとしてしか価値はないわけだが、だったら確かこれの3丁分の値段はしていたが無発火モデルガンを手に入れるべきだったかなぁ…と悔恨の日々のうちに押し入れにしまいこんで最近まで忘れていた。

最近昔のモデルガンを引っ張り出してきていろいろ手を入れてリアルにするということを始めたので、この六四式も写真資料を集めて教導隊で長年使用された使い古された訓練用実銃というような雰囲気に仕上げ直すことを考えている。

とりあえず手を入れる前の現在の姿を記録しておく。





六四式のプロフィールショット
1960年代に各国で主流になり始めた直銃床をもちガスピストンにより
ティルトロックが解除されて遊底が後退する信頼性が高いメカを持っていた
何よりもロックタイム(引き金を引いてから激発が起こるまでの間の時間)に
動く可動部分が全て前後運動だけなので射撃精度が非常に高いという特徴を持っている
デザイン的な特徴はアルミ製のフォアハンド(先台)の下部の線がマガジンスペース、
トリガーまでツライチの直線で見た目もカッコいいということかな
マガジンを外してみるとよくわかる




ストック(後台)とピストルグリップに木製を残しながら
先台の下部は放熱性が高いアルミ、上は強化プラスチックという独特の構成
TOPのピストルグリップとストックはABSがスタンダードだが
別売でこの木製グリップ、ストックも販売されていた




六四式は日本人の体型に合わせて同世代のFALやG3よりも全長が短い
にもかかわらず重量は世界トップクラスの重さなのはその工作法による
フレーム、レシーバーを始め主要部品はほとんど鍛造鋼インゴッドからの削りだし
プレス部品はアルミの先台くらいでこの工作法のため防衛庁の調達価格は平均1丁30万円とのこと
これは米国防省のM16調達価格の6〜7倍になる世界でも最も高額な銃
もっとも防衛省の武器調達価格が高くなるのは工作法の問題だけが理由ではでなく
国産兵器は原則輸出が禁止されているため量産効果が期待できないという事情も関係している




日本のテッポはみんなそうなのだが世界に抜きん出た優れた面と
「どうしてこうなった」という弱点が同居していてその端的な例が六四式の銃口部分
4つ穴があった制退器(マズルブレーキ)は戦車のバズーカのように
反動を殺す大きな効果があった反面、銃身はカフでカバーされその後ろに
制退器止めバネ座金があって制退器にテンションをかける設計になっていて
一度バラしてみればわかるが制退器を固定するだけの意味だったら全く無意味な設計
ネジで固定されている制退器にテンションをかけることに
どういう意味があるのか誰か知っていたら教えてほしい




ピストルグリップはモーターを内蔵している関係で実銃より少し太め
ストックもバッテリの関係なのか付け根は若干実銃より太めだ




六四式は遠距離射撃精度を重んじる陸軍の伝統を引き継いだのか
連射の時の反動対策なのかストックに肩当パネルが付いている
二脚を標準装備したことと合わせて銃の制御には相当気を使っている




照星(フロントサイト)、照門(リアサイト)ともに可倒式になっていて
ジャングル戦では倒したまま腰だめ射撃、遠距離射撃では起こして照準するという仕組みになっている
これも固定じゃダメだったのかと疑問になるところだが固定式に頑丈に作ると当然重くなるし
重量オーバーが気になっていたんだろうなぁ




フレームの左には防衛庁の桜の刻印と型式名、納品番号、
納品日時とメーカーの豊和工業の刻印が入っている




右側には実銃にはないエアガン協会の安全認定マークとエアガンメーカーのTOPの刻印
全体的に亜鉛合金部品が錆びが浮いているので近日中に手入れをしようと思っている




二脚は先台の左右のくぼみに収納される…というマニア心をくすぐる仕組みなのだが
これも中途半端で実銃ユーザーの自衛隊員には評判がいまひとつだったらしい




二脚を開いたところ
訓練の伏せ撃ちでは二脚を使うが実戦で二脚を使う場面がどれくらいあるかは不明
今では廃止する国が多いところを見ると役に立たないのではないかという気がする




排莢口(エジェクションポート)は真上に開いているが
エジェクター位置の関係で実銃の薬莢は右斜め前に飛んで行くそうだ
ここにホップ調整ネジが内蔵されているのだが上述の通りチェンバーの工作が変なため
ホップを最強にしてもやっと無回転に戻るだけという逆回転ホップがこの銃の特徴
チェンバーを削ったりいろいろやってみたが触れば触るほど事態が悪くなるので
この銃を撃てるようにするということについては諦めてしまった
この銃の中身をくりぬいてマルイの電動ガンをそのまま移植したカスタムを
作っていた人もいたがそうでもしないとどうにもならないテッポだった
排莢口のすぐ前に「ピストン桿用ばねピン」があるべきなのだが省略されている
そんなちっこい部品の一つや二つ省略されていても外観にほとんど影響はないが
六四式時代に自衛隊に勤務した経験がある人は真っ先にここに目が行くんだそうだ
先の制退器固定ネジとこの「ピストン桿用ばねピン」を紛失して
泣きながら探し回った新入隊員は数知れずとか…多くのリクルートの恨みを買ったピンなのだ




自衛隊独特の「アタレ」とかいてあるセーフティ兼セレクター
これも安全のため時計の竜頭のように一度引っ張り出して回さないと回らないようになってる
安全装置を解除したり単発・連発の切り替えの時にいちいち右手を銃把から外さないといけない
確かに安全性は高いが室内戦やブッシュなどの接近戦で役に立つんだろうかという疑問はある
当然現行の89式小銃ではこの安全対策は廃止されている




日本語版Wikipediaより実銃の写真
TOPのエアガンは購入以来20年以上ほったらかしにしていたので金属部品にかなり錆びが浮いている
それならむしろ黒染めを剥がして磨き上げ実戦で使い込まれた六四式の雰囲気にしたい
実銃の写真を見ると新装備になってからも訓練では使用されているようだが
かなり黒染めが剥がれて二脚などはもう銀色になってしまっている
さらに部品脱落防止に黒のビニテを巻いていたりいろいろ面白そうなので再現の参考にさせてもらう




そして実銃にはステンシル(識別記号)がいろいろ書き込まれている
同じWIkipediaの写真でバヨネットスキャバードとスリングの金具に同じ番号が書かれている例




これは個人ブログからの写真で懐かしの伊丹駐屯地の六四式
駐屯地でも主力火器は89式に更新されているが狙撃用に何梃か六四式も残されているそうだ
これも銃把の右側に白塗料でステンシルが書かれている




個人のインスタグラムから
ステンシルは大体2桁から5桁の数字アルファベットで一行の例と二行の例がある
すべてに共通しているのはどれも手書きで米軍のように型抜き紙でスプレーする例はないようだ




こちらは航空自衛隊の航空学生儀仗の六四式
やはり二桁ないし三桁のステンシル




これは元自衛官と思しき方の個人ブログより雑誌SAPIO表紙に載った婦人自衛官教導隊の写真
これも隷書体っぽい手書きで「婦教」と書かれている
以前見かけた教導隊の訓練銃も「教」と書かれていた記憶がある
これもおもしろいかもしれない
そしてこれはまだ旧装備の時代の写真だがすでに黒染めはハゲハゲ
これを再現してみたくなった



2018年10月2日
















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