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キング牧師の暗殺事件について疑問に思ったこと
〜陰謀説・身代わり説いろいろあるけどテッポ好きはここに疑問を感じる

First shot

キング牧師の暗殺事件について疑問に思ったこと〜陰謀説・身代わり説いろいろあるけどテッポ好きはここに疑問を感じる

先日テレビの某地上波の池上彰さんがアメリカの公民権運動を解説する番組をやっていて、なんとなくそれを見ていた。

池上彰さんという人はNHK教育のこどもニュースを担当していたキャストだったので、難しい政治、国際問題などの話を小学生にも理解できるようにやさしく話す練達ではある。
ただやさしく話そうとするあまり、時々ニュアンスや物事の意味合いを大きく間違えて解説してしまったりなんてこともないではない。
この方は経歴を見るとサツ回りの経験が長い方なので、事件報道、政治報道には強いのだろうけど、いくら記者経験が長いといっても一人の人間が国際政治から、経済、文化、環境問題、エネルギー政策何でもかんでも得意というわけにはいかないだろうから、そこは仕方がない。


問題はそこではなく、アメリカの人種差別と公民権運動のくだりで「キング牧師暗殺事件」のエピソードが出てきたところでちょっと驚いたことがあった。





キング牧師暗殺事件といえばこの写真がつとに有名だと思う
テネシー州メンフィスのロレインモーテル(現在は公民権運動博物館)で狙撃された直後のキング牧師
踊り場に倒れているのがキング牧師で取り巻きが銃声がした方角を一斉に指差しているという生々しい写真だ




この暗殺事件に使用されたという銃も公民権運動博物館に展示されているそうだ
それで驚いたのがこの銃のチョイスだ
この番組を見るまでどういう銃が使われたのか見たことがなかったので
知らなかったのだがショットガンが使用されているのが驚きだった



私にとって驚きだったのは、キング牧師暗殺犯はショットガンを使用していたという事実だった。

それがなぜ驚きだったのかはおいおい話すとしてまず、この写真をショットガンと断定したポイントがいくつか。
先台がスライド式になって、ここを左手で前後して銃弾を送り込んで装填する、いわゆるポンプアクションの銃なのが写真でわかる。
ライフルでポンプアクションはないことはないが、相当珍しい方式でこの写真は、12ゲージか410ゲージのショットガンにハーフライフルのバレルをつけてその先にさらにカッツコンペンセイター、光学スコープを付けたアッセンブリーに見えたことだ。





銃は多分これだと思う
例によって銃砲店の広告写真からレミントンのM870に21インチのハーフライフルバレルを装着した状態
銃身に照星と照門がついているスラッグ弾専用のハーフライフルで
イノシシやクマなどを撃つのに使う組み合わせだ
上の展示されているライフルにも照星と照門が確認できる




展示の写真は銃身が細いように見えるので410ゲージかとも思ったが
12ゲージの実銃も写真の角度ではこんな感じに映るので12ゲージスラッグ弾専用の
ハーフライフルバレル装着のポンプアクションショットガンでほぼ間違いないと思う
鹿撃ち用のスコープを載せるとこんな感じでかなり展示の写真に近くなる




今度はWikiからスラッグ弾とはこんな銃弾
通常のカモ撃ち用などに使われる12ゲージ8号装弾が左で
仁丹のような細かい鉛玉がたくさん入っている
それに対してスラグ弾は大きな鉛の塊が一個だけゴロンと入っている
装弾にも銃身にも浅いライフリングが切ってありこれが
噛み合って回転しながら鉛玉が飛んでい行く
クマやイノシシなどの大型獣を撃つ時だけに使用される装弾で
8号弾よりも遠くを狙えるがそれでもライフルと比べると限界がある




さらに展示の写真を見ると銃口に外装式の可変チョークかカッツコンペンセイターのようなものが見える
この写真はカッツコンを装着した猟銃だが雰囲気的にはこちらが近い気がする



この銃を見たら気になって、キング牧師の暗殺事件を使用銃の観点から分析しているようなリポートがないか探してみたがあまり見つからなかった。
でも不思議。

なにがそんなに気になっているかってこの銃は要人暗殺の狙撃銃として使用するのはあまり向いていない銃のような気がしたからだ。

このスラグ弾の12ゲージハーフライフルは実銃で鹿狩りをする人たちからは結構不評を聞く。

遠距離の狙撃に向かない、弾着が安定しないのでどうしても狙撃距離が近くなるため鹿のような警戒心が強い獲物は逃してしまう、鹿を撃つならスラグ弾じゃなくて断然ライフル銃だよね…こんな感じかな。

もちろん12ゲージのスラグ弾で狙撃が絶対不可能とは言わないけど、どうせ仕留めたいならもっと30口径のライフル銃とかベターな選択があるんじゃないのか、なんでわざわざ命中精度の低いポンプアクションのショットガンを選ぶのだろうかという疑問を感じた。

それにこの暗殺犯とされているジェームス・アール・レイという人は本当に、スラグ弾でも狙撃が出来る自信を持ったシャープシューターだったのだろうかという疑問も。





もう一点気になったのは狙撃の距離
「向かいのビルから狙撃された」というからすぐ近くかと思ったら
向かいの建物とモーテルの間はかなり離れている




向かいの建物の狙撃位置から見たロレインモーテル
間にはモーテルのロータリーと道路、芝生の前庭などを挟んで
80〜100メーターというような距離になると思う
この距離で鹿を撃つとしたらライフル銃とスラグ弾どちらを選ぶと聞かれたら
大抵のハンターは規制がないならライフル銃を使いたいと答えるに違いない



犯人とされるジェームス・アール・レイという人は、軍籍の経験はあるようだが経歴はどちらかというと強盗と出所を繰り返したようなタイプの人で事件当時も脱獄中だったとのことだし腰を据えて狙撃事件を起こすようなタイプには見えない。
そしてあえてショットガンを選択して狙撃をするほどの射撃の腕なのかもどうもよくわからない。
この事件は結局凶器のこのライフルにこのレイの指紋がついていたというのがほぼ唯一の物証なのだが、スラッグ弾はライフリングマークの照合が困難なのでこの銃が間違いなく凶器なのかどうかは推測の域になる。
現場近くで発見された銃器はこのショットガンだけなのでこれが凶器と断定された、その銃器に指紋がついていたので犯人が特定された…こんな流れだ。


ここからはもう陰謀論者大好きな「真犯人は別にいる」「犯人とされている人物は巨大な権力の陰謀に利用されたスケープゴート」という妄想に直結しそうな話だけどいろいろな憶測が可能になってしまう。

凶器にショットガンを使用するメリットは何かを考えてみる。
あえて命中精度よりも取るとしたら旋条痕鑑定を難しくするというメリットが浮かんでくる。

スラッグ弾は拳銃弾や小銃弾よりも弾頭が潰れやすく、変形して旋条痕鑑定が困難になることが考えられる。
ましては命中弾から銃器を割り出すのは困難になるに違いない。

あえてショットガンを使用したのは旋条痕鑑定を難しくするため
使用銃器の特定を困難にすれば別の人物が狙撃して、犯人を仕立て上げることも可能

例の暗殺直後の取り巻きの指差している方向を見ると、向かいの建物の窓よりももっと上を指差しているように見える…銃声は上から聞こえたのではないか…真犯人は屋上から狙撃し、同じビルに泊まっていたレイの指紋がべったりついた銃を建物内に隠し警察に発見させることは可能

発見された銃にはスコープやカッツコンが装着されていて、いかにも銃器に精通したユーザーが使っている銃のように装っているが、そもそもこの距離でシカを撃つのもハンターは嫌がるのに人を撃つのにショットガンをわざわざ選択するか…実際は別の銃で狙撃されキング牧師の遺体の大きな傷は死後つけられた(?)というというような工作も可能


このショットガンの写真を見た途端、こういう陰謀論も成り立つんじゃないかとふと思った。
それぐらいこの銃の選択は不自然だ。
日本みたいにライフル銃の取得が厳しく制限されている国ならまだわからないでもないけど、1960年代のアメリカのしかも南部なら、ライフルもショットガンも自由に取得できたはずだしどう見たってこの選択は不自然。


そこまで考えていたらかなり前にどこかで読んだ話を思い出した。

曰く「過去の要人暗殺事件でスコープ付きのライフル銃の狙撃が行われたのも、それが成功したのも『ケネディ大統領暗殺事件』と『キング牧師暗殺事件』の2件だけ」

つまり大体暗殺事件に狙撃銃を選択すること自体がとても不自然だということだ。

過去の暗殺事件はいずれも非常に至近距離で、使用凶器はナイフ、剣、拳銃あるいは毒殺、撲殺が大部分で遠距離から狙撃したというケースは稀らしい。


これもかなり前から検証したいと思っていた。
それでWikiPediaから主要な暗殺事件の凶器について調べてみた。
剣で暗殺されたジュリアス・シーザーのような時代は他に暗殺手段も少なかっただろうから、銃器が普及した19世紀以降から主要なものを集めてみた。
重要なのは暗殺犯と被害者の距離感。

1865年4月15日 - リンカーン大統領暗殺事件

至近距離から短銃で射殺

1869年2月15日参与横井小楠暗殺

斬殺

1869年10月8日 兵部大輔大村益次郎暗殺

斬殺

1878年5月14日 - 内務卿大久保利通暗殺

斬殺

1881年3月13日 - ロシア帝国皇帝アレクサンドル2世暗殺

爆殺

1881年7月2日 - アメリカ合衆国大統領ジェームズ・ガーフィールド銃撃

至近距離から拳銃で射殺

1860年3月3日大老井伊直弼暗殺(桜田門外の変)

斬殺

1864年7月11日佐久間象山暗殺

斬殺

1867年11月15日- 坂本龍馬、中岡慎太郎暗殺(近江屋事件)

斬殺

1901年9月6日 - アメリカ大統領ウィリアム・マッキンリー狙撃

至近距離から拳銃で射殺

1909年10月26日 - 初代内閣総理大臣を務めた伊藤博文暗殺

至近距離から拳銃で射殺

1914年6月28日 - オーストリア帝位継承者フランツ・フェルディナント大公夫妻暗殺(サラエヴォ事件)

至近距離から手榴弾と拳銃で暗殺

1928年6月4日 - 張作霖爆殺(張作霖爆殺事件)

爆殺

1932年5月15日 - 首相犬養毅暗殺。犯人は三上卓以下の海軍青年将校ら(五・一五事件)

至近距離から拳銃で射殺

1936年2月26日 - 大蔵大臣高橋是清、内大臣斎藤実、教育総監渡辺錠太郎、首相秘書官松尾伝蔵暗殺(二・二六事件)

至近距離から拳銃で射殺、斬殺

1940年8月21日 - レフ・トロツキー暗殺

撲殺

1948年1月30日 - マハトマ・ガンディー暗殺

至近距離から拳銃で射殺

1960年10月12日 - 浅沼稲次郎 社会党委員長暗殺

刺殺

1963年11月22日 - ケネディ大統領暗殺

遠距離よりスコープ付き小銃で狙撃

1965年2月21日 - マルコムX暗殺

切り詰めたショットガンで至近距離から射殺

1968年4月4日 - キング牧師暗殺

遠距離よりスコープ付きショットガンで狙撃

1968年6月5日 - ロバート・ケネディ司法長官暗殺

至近距離から拳銃で射殺

1979年10月26日 - 韓国・朴正煕大統領暗殺

至近距離から拳銃で射殺

1980年12月8日 - ジョン・レノン暗殺

至近距離から拳銃で射殺

1984年10月31日 - インド首相インディラ・ガンディー暗殺

警護警官に至近距離から射殺される


こうして並べてみると、暗殺を決意した犯人は自分が逃げのびることよりも確実に仕留めることを優先して、至近距離で射殺、斬殺、爆殺などの手段を取るケースが圧倒的に多いことがわかる。

そして前にどこかで読んだ御説の通り、遠距離からスコープ付き狙撃銃で狙撃したケースは後にも先にもケネディ大統領暗殺事件とキング牧師暗殺事件の2件だけだ。

つまり政治信条から暗殺を試みるような暗殺犯は、大体は銃器などの扱いは素人だろうから至近距離で確実に…ということになるし、素人が狙撃銃を選択するというのはとても不自然だということになる。

そしてこの2件の暗殺事件は「真犯人は他にいる」という陰謀説が絶えないことも共通だ。

ロバート・ケネディ暗殺事件も兄大統領の暗殺に絡めて陰謀説があるが、この事件は犯人はその場で取り押さえられているので真犯人がどうのこうのなんて話はない。

テキサスタワー事件のように誰でもいいから通りがかるやつを次々狙撃するというなら狙撃銃が使用された例はあるが、特定の要人一人だけを狙う暗殺事件では狙撃銃は不利な面しかない。

有利な面は「誰が撃ったか即断できない」という点だけだと思う。

そういえばケネディ大統領暗殺事件に使用されたといわれるカルカノライフルも狙撃銃としてはあまり評価が高くない欠陥銃だった記憶がある。
車で移動する人の頭のような小さな的に数秒で3発も命中させるのはかなりのシャープシューターのはずだが、そのシャープシューターが選択した銃が装填、排莢に問題があり精度が低いカルカノというのも奇妙な印象がある

こういうところがケネディ暗殺事件とキング牧師暗殺事件の陰謀説が絶えない原因だと思う。





2018年12月2日
















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