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ガバ歴初めてのどノーマルミリガバにチャレンジ(1)
〜マルシンキットの1911A1と実銃のガバメントモデルついて…

fourty-five

ガバ歴初めてのどノーマルミリガバにチャレンジ(1)〜マルシンキットの1911A1と実銃のガバメントモデルついて…

時々思い出したように古いモデルガンを引っ張り出してくる…の第45弾

釣りはヘラブナ釣りに始まりヘラブナ釣りに終わる…とかいう言葉がある。

最初の入門編が実は極めても極めきれない奥の深さという意味らしい。

テッポ好きにとってのヘラブナ釣りはガバメントかもしれない。

私個人的には、最初のモデルガンとの出会いはセンチニアルとワルサーP38とガバメントだったことは以前も書いた。

まだ金属モデルガンが黒かった時代の話。

その後私の興味はリボルバーとヨーロッパ系のオートに向かったのでガバメントにはそれほど入れ込んだわけではなかったが、ガバアパシーの私でさえこの前数えたらモデルガン、ガスガン合わせて4丁のガバを持っていた。
好きな人はそれこそ何十丁と持っている人もいるし。


それ以外にもこれまで何丁か持っていたが、考えたらどノーマルのミリガバを持っていなかった。
それでマルシンのダミーカートモデルのキットも見つけていたことだし、1941年ごろからベトナム戦争ごろにかけて米軍で使用されていたミリガバを作ってみたくなった。





今回取得したのはマルシンのキットモデル「Colt M1911A1」通称ガバメント
マルシンからは民間向け市販モデル「シリーズ70」と軍用の「M1911A1」のキットモデルが
それぞれ発火モデル・ダミーカートモデル、
HW・ABS・メッキシルバーのバリエーションで発売されている
今回はあまり見かけないダミーカートモデルのHWを選択した




米軍で第二次大戦から朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、ソマリア介入まで
使用された後期モデルM1911A1はベークライト製のサービスグリップが付いた状態で支給された
ガバというと木グリというイメージだが実際はベークライト付きが使用された
このベークライトグリップパネルのアメリカ製復刻モデルが永いこと欠品になっていて
入荷を待っていたのだが今回やっと入ったので本体のガバも購入を決めた
きっかけはこのグリップパネルなのでした…




マルシンの組立キットのがっかりポイント…
サブシャーシが樹脂製になっている(泣)
昔はここは亜鉛製だったのに…
ジュラコンかもしれないが見た印象はABSのような気がする
そういや箱にも「発火モデルは『発火することも可能なモデル』と理解せよ、
火薬を使えば破損はあり得る」
という趣旨のことが書いてある
このインナーフレームが樹脂製であることもあって
ヘビーウエイトであるにもかかわらず完成重量は重くない
そのことは後で触れる




マルシンのM1911A1モデルは実はかつてのスズキのガバが元になっている
スズキはM1911A1やワルサーPPK、ベレッタM92SB(FSではない)など
できのいいモデルガンを作るメーカーだったが廃業してしまった
その金型をマルシンが引き取ったということらしく部品の多くは互換性がある




このスズキのガバのがっかりポイントはマズルがマズルブッシュから2ミリ以上突き出ている点
実銃でもこういうモデルがあるのかもしれないが寡聞にして私は知らない




このスズキのガバは当時珍しかった軍用ガバのモデルアップでM1911A1が再現されていたが
1980年代はWAなどのカスタムガバや某コン◯ットのボ◯チャウカスタムの特集記事のせいで
カスタムガバが大流行していてこの1911でさえもパックマイヤー風のグリップが付属していた
だから当時軍用ベークライトグリップパネルは超入手難だった
この写真も妥協の産物でWAのエアガン(Mk IV)から持ってきたグリップに
付け替えて旧タイプの木グリっぽくしている
本当は軍用ガバにはコルトのメダリオンは付かないんだけどね…




スライドの右側には実銃にないスズキの刻印がある




このモデルはメッキ仕上げでブルーっぽい色で塗装コーティングされている
この塗装が経年変化で剥がれてフレームシルバーモデルみたいになっているが元は全体が黒かった




カートリッジはキットには5発しか付いてこなかったので
マルゴーの45ACPダミーカートリッジを今回入手した
カートもマガジンもマルシン向けのものがスズキにもそのまま使える
エジェクションポートからマガジンにセットされたカートリッジが見えるのはぐっとくる




このスズキのガバはショートリコイルメカをある程度リアルに再現した最初期のモデルガンだった
それ以前のモデルガンはバレルが固定式だったしMGCのガバもGM4までは固定だった
ほぼ同時期のGM5でやっと擬似ショートリコイルになったばかりの時代だった
ホールドオープンした時にはっきり銃身が上を向いているのを見て
「おお、すげ〜〜!」と思ったものだ…今では当たり前だけどね




マルシンは古い金型だけどこのスズキのガバそのまま…弱点も知りつくしている
ダミーカートモデルなんだからバレルは実際にスライドの
ロッキングラグに噛んで固定されても支障はないはずだが
発火モデルと部品が共通化されていて実際にロックしていない
ロッキングラグをスライドの内側に盛り付けた




今回入手したアメリカ製の実銃用サービスグリップの復刻モデル
実物はさすがに品薄になってきているようでこれもレプリカではある
1911年に米軍に制式化されて以来1940年ぐらいまで米軍も木製グリップを使用していたが
第二次大戦が始まったあたりから作成に手間がかかる木製グリップは
廃止されてガバのグリップはベークライトになった




仮組みをしてみてヘビーウエイトモデルであるにもかかわらず
重量不足だと感じたのでグリップパネルに金属ウエイトをつけた
モノは部品取り用のMGCボーリングピンガンからジンク製グリップウエイトをもらってきた




これを安直にアロンアルファでグリップに接着
これでもフレームにぴったりはまる




盛り付けたロッキングラグとバレルのロックグループがちゃんと噛み合うのを確認




とりあえず動作確認のために仮組みしたマルシンのミリガバ
パーティングラインはしっかり残っていたのでこれを消したり
表面を磨くなどの作業で丸一日…組立は30分ほどで完成
組立については勝手知ったるガバである




組み上がったガバの右プロフィール
ヘビーウエイトのいいところは磨くだけで微妙に金属感が出てくること
昔は塗装でもなかなかこの感じが出なかったので苦労した




アマゾンのレビューで組立が難しいとかうまく動かないとかの書き込みも見かけたが
仮組みなのでグリスもオイルも差していないにもかかわらず組立はスムーズで
動作も問題無し、カートも装填・排莢共に確実でジャムも全くない
ガバの組立キットがうまく作れないなら組立キットには手を出さないほうがいい…
というぐらいの入門キットだと思う




スズキのガバの弱点だったマズルの突き出しはマルシンでは修正されている
マズルの突き出し量は1mm程度でほぼ実銃通り




ウエイトを仕込んだベークライトグリップパネルもぴったりはまる
セーフティレバーのシャフトに傷が入っているのはディスコネクターが
切れなくなりセーフティが抜けないので分解で焦ったため
グリスをさせば問題ないのだがこの後ブルーイングをかける予定なので
油は一切使用したくなかったからだ
シャフトも磨いてリブルーするので問題ない




グリップパネルの左側は残念ながら少し削り合わせが必要だった
セーフティスプリングハウジングとパネルが干渉するのでここを削らないといけない
セーフティレバーが銀色になっているのはツールマークを再現するためにヤスった結果
部品類も後々ブルーイングをかける予定なので今は磨きに専念している




スライドを少し後ろにずらすとカートのヘッドが見える
オートの拳銃で問題なのはチェンバーに初弾が装填されて
いるかどうか外からわかりにくいことだ
そういう時にスライドを少し引いてカートが見えるかどうか確認する
「ターミネーター2」などの映画でサイボーグ達やジョン少年が
少しスライドを引く仕草をしているのを見て感心したものだ
実銃を手にとってチェンバーの確認もしないでいきなり撃ち合いの
現場に飛び込んでいくなんてありえないからだ




そしてホールドオープンのエジェクションポートから見えるカートの風景




ショートリコイルで上を向いた銃身も健在
ショートリコイルスプリングを組み込まないで組み立てることも考えたが
ロッキングリセスのかみ合いが浅く完全に後退しないので結局スプリングは組み込んだ
もっと噛み合わせを深くすれば実銃と同じくスプリング無しに後退してくれそうだが
リセスを樹脂で作らないといけない関係で強度が不安だったので諦めた




完成した全景
後は表面仕上げに取りかかる予定




フィールドストリッピング状態まで分解したガバ
分解法はほぼほぼ実銃と同じなのだがリコイルスプリングブッシュが前に抜けないとか
バレルリンクがスプリングのテンションで上に上がりっぱなしなので
スライドストップを刺す時に工具が必要になるとか若干違う部分もある




今回のグリップウエイトの部品取りをしたMGCのボーリングピンガンと2ショット
このモデルガンの金型が開発された1985年当時はこういうカスタムガンが全盛期だった
今はどノーマルのミリタリーガバを愛でている




今回のリファレンス写真
上はこちらのサイトで紹介されている「1942年製のパーカライズド仕上げのコルト製M1911A1」
この前後からグリップパネルは木製からベークライトに変更された
表面仕上げもブルーイングからパーカライズ仕上げに変更され全体にグレーっぽい色に変わった
いずれも戦時用に生産過程を簡略化する目的での変更




右側のプロフィールカット
スズキの金型が優れているのはピン類や各シャフトのRなどが
実銃と比べてもかなり正確に再現されている点
スライドストップシャフトが押し出して抜く関係でほぼ球形に飛び出していて
シアのシャフトがフラット、ハンマーシャフトが少しRがついているなど忠実に再現されている


【実銃について】

まずこの「ガバメント」という名前について。

「Government」という中学英語でも習う単語は普通「政府」とか「行政機関」とか訳される。

1911年に合衆国陸軍の制式拳銃に制定されたので「政府の銃」と公認されたニックネームだろうと誰でも推測がつくが、実際には政府や軍の公式記録には「コルト社製モデル1911」という正式名称で記載されておりどこにもガバメントなんてニックネームは記載されていない。

「ガバメント」というニックネームは政府の公式名称ではなく、軍用制式拳銃に採用されたM1911とほぼ同型の銃をコルト社が民間向けに市販したのが始まりだ。





これは1929年に民間向けに市販されたモデルの右側側面
フレームに「GOVERNMENT MODEL」という刻印が見て取れる
この名称が一般に広まりこの拳銃は「ガバメントモデル」と呼ばれるようになった
「ガバメントモデル」は1970年代には「Mark IV Series70」80年代には「Mark IV Series80」
90年代からは「M1991A1」などと名称を変えてきたがこのオールドビンテージコルトの
刻印の名称がその後も定着して今でもガバメントと呼ばれている
アメリカのシューターなら「フォーティファイブ」とだけ言っても通じる


【実銃の変遷】

有名な話だがガバの設計の元になったのは天才的な銃器デザイナーのジョン・ブローニングのM1900で、ブローニングの最初の設計で今日の自動拳銃の主流になる要素がほぼ出尽くしていた。

時は1900年で世界初の自動拳銃のボーチャードが1893年に開発されてから7年しか経っていない。

この7年のうちに板バネをコイルスプリングに変更して、しかも銃身の下に配置しバレルがスライドとロックした状態で後退が始まりリンクで引き下げられてロックが外れるショートリコイルメカも完成している。

この後100年にわたる自動拳銃の基本的な形を、この時代にほぼ完成させていた。

ジョン・ブローニングが天才銃器設計者と呼ばれる所以だ。
(同時代のルガーはボーチャードの板バネをコイルスプリングに改良するまでは進んだが、結局トグルジョイントによるショートリコイルメカを継承していた)





WikiPediaより「コルトM1900.Cal.38」
発射ガスが直接排莢口から吹き戻る危険を避けるために「ショートリコイルメカ」を搭載した
ボーチャードやルガーが尺取り虫のような複雑なブリーチメカでこの問題に対処したのに対して
ブローニングはバレルにぶら下げたリング一つでこの問題を解決してしまった
またリコイルスプリングを銃身の下に置いたレイアウトも100年以上経った今日でも継承されている




先のコレクターのサイトの写真をお借りした
こちらは1918年ごろに製造されたM1911でいわゆる「ニュースタイルスライドマーキング」モデルというタイプ
スライドの銃身下の切り欠きやスライドの刻印はM1911A1と同じモダンタイプになっているが
フレームは引き金の後ろの三日月型の切り欠きがないとかメインスプリングハウジングが
丸く突き出ていないまっすぐなタイプとかM1911時代の旧タイプのまま
映画「ゲッタウエイ」でスティーブ・マックイーンが使用していたまさにあの型
映画ではすごく銃が青く映っていたがこの時代は綺麗なブルーがかかっていた
この銃をM1911A1のスライドとM1911のフレームを組み合わせたニコイチガンだ
という解説もどこかで読んだがそれは間違いでこういうモデルも現存する




軍用銃のモデルが改修された1940年ごろのM1911A1
まだブルーフィニッシュでグリップパネルも木製だがフレームの切り欠き、メインスプリングハウジングの形
短くなってチェッカーグルーブが彫られたトリガー、延長されたグリップセーフティなど細かい改良がされている


そして今回入手したM1911A1の1942年以降のモデルの形になって、この形式のまま太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、ソマリア内戦までを戦い抜いたということらしい。

なおブライアン・デパルマ版の映画「アンタッチャブル」ではエリオット・ネスはガバメントモデルを使用していたということになっているが、もしこれが本当なら上記の1920年代のニュースタイルスライドマーキングモデルを使用していたはずだ。





軍用銃にはフレーム右側に「合衆国資産」「M1911A1合衆国陸軍」の刻印が打たれている
もしエリオット・ネスがガバを支給されて使用していたならここには
「U.S.Treasury(合衆国財務省)」と打たれていたはずだ
それはそれで面白いな


さて次回はそのミリガバの仕上げの報告になると思うが…いつのことになるやら…




2019年1月21日
















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