坂本龍馬のテッポを作ってみた(2)〜完成したModel2 Armyの情景とそのメカニズム
先日取り上げたSMITH & WESSON Model 2 Armyの組立キットが完成した。
前回仮組みして、メカのすり合わせをしてもう一度バラしてホームセンターのメッキシルバーのスプレーを下塗りしたところまで紹介した。
今回はブラックスチールを吹いた後数日完全乾燥させて、スポンジの硬い方を使ってブルーイングが剥がれた雰囲気を表現してみた。
せっかくの「坂本龍馬の銃」なのでそれなりの情景写真を撮ってみた。
その前に前回の記述の誤りを訂正。
高知の龍馬記念館にはマルシンのモデルガンが展示されていると勘違いして書いてしまったが、それは記憶違いで龍馬記念館の展示品のModel 2は実銃だ。
この展示品は市内の篤実家が寄付した古式銃で、坂本龍馬が実際に使用したModel 2ではないが同型の実銃だった。
そもそもの勘違いのもとは、この実銃展示について警察がクレームを入れたためだった。
銃刀法の規制に鑑みて実銃の展示は宜しからずというクレームだった。
しかし銃刀法は博物館での実銃の展示を認めているはずだが、小銃と違って短銃は例外との判断から一時期この実銃の展示が撤去された。
寄付以前も模造銃を展示していたので、確かこの時にマルシンのモデルガンに差し替えられたはずと思っていたがその後実銃の展示が認められたとのことだ。
ただし警察側の条件は
1)記念館は民間団体が委託を受けて管理しているが実銃の管理者は公務員でないといけない
2)銃の発射機能を破壊して展示専用とすること
ということだった。
文化財団の管理はダメで公務員ならなぜOKなのかという結論も当時議論を呼んだが、せっかくの実銃をハンマーの撃発機能を破壊して、いわゆる文鎮にして展示は許可となったというのもどうか。
坂本本人が使用した銃ではないといってもModel 2のメカも含めての歴史資料のはずだが、メカをぶっ壊してただのテッポの形をした文鎮にするなんて資料価値もクソもない。
だったら実銃は展示品ではなく所蔵資料として、展示はマルシンのモデルガンを使用した方がずっとマシだったはずだ。
全くどうにかならなかったのだろうか。
先週下地仕上げしたABS主要部品に塗装を施してパフ掛けのイメージで
スポンジの荒い方でブルーが剥がれたイメージに仕上げた
サイドパネルは樹脂成形の時に盛大に肉引きして波打っていたので平面出しをした
金属部品は黒染めを剥がしてアルミブラックでケースハードゥン調にブルーイングを掛け直した
そして完成したSMITH & WESSON Model 2 Armyの姿
背景に使った日本刀は居合の練習刀で本身ではありません
念のため
リファレンスブック用に実銃と比較写真を作成した
上が実銃のSMITH & WESSON Model 2 Army
下がマルシン製の「坂本龍馬の銃」という名称のmodel 2
右サイドのプロフィールカット
坂本龍馬の銃ということだから今回は畳の上に袱紗を敷いて日本刀と並べて撮ってみた
Model 2 Armyの蒐集家のサイトの実銃写真を見ていて
実銃は結構傷があちこちにあるという印象を持ったので
その雰囲気を出してサイドパネル、シリンダーに擦り傷を作ってみた
フレーム下側、バレル下側のパーティングラインばっちり、
バリばっちりだったところもこの通り
「もでるつー」には袱紗が似合う…かな?
鞍馬天狗もテッポを持っていたしね…
アメリカで発見された「日本での展示を示す刻印があるmodel 2 Army」は刀傷かもしれない傷があったとのこと
それが坂本龍馬の実際に使用した銃だという証拠にはならないがもしそうならこんな深い傷もあったかもしれない
なおハンマーヘッドの下側が切り取られているはダミーカートモデルだからで
本当はここがカートリッジのリムを打つはずだが火薬を使わないダミーカートモデルだから
実際にリムに当たる必要はないため削り込まれてる
個人的なリボルバーへのこだわりポイント、バックストックの光もこんな具合
Model 2 Armyのそれまでの拳銃との決定的な違いはこの貫通型のシリンダー
といっても今日リボルバーといえばみんなこの形なのだがこれを世界最初に
実用化したのがSMITH & WESSONでその製品がこのModel1、Model2シリーズ
使用弾はリムファイアの32口径だ
カートリッジの後ろがのっぺらぼうなのはマルシンの手抜きではない
このカートリッジはリムファイアという発火方式のため実弾もこんな感じののっぺらぼうだ
金属薬莢を実用化したピンファイア式とリムファイア式の構造図(WikiPediaより)
先込め銃だった時代は火縄銃の時代から基本的には銃の使い勝手は改善されていなかった
ドライゼ銃などで「紙カートリッジ」の後装銃で改善を試みたが
本当に改善されたのは金属薬莢が発明されてからだった
その金属薬莢2方式の構造図だがこのうち生き残ったのはリムファイア方式
現在の22LR弾と同じくカートリッジ底のヘリ(リム)をハンマーで叩いて潰し
ここに塗り込められた衝撃だけで発火する雷汞という発火薬が点火する仕組み
ハンマーヘッドはシリンダーのヘリを叩く
ここにちょうどカートリッジのリムが来るのでハンマーの打撃力でリムが潰れる
パーカッションキャップや推進薬を別々に装填しないといけないパーカッション式と比べても
はるかに空薬莢を捨てて次の6発を装填するのが速い
このメカのおかげで飛躍的に拳銃の火力は増大した
坂本龍馬はこの6連発のシリンダーに5発だけ弾を込めていたと手紙に書いている
この時代のリボルバーの欠点はハンマーをブロックするメカがないため
常時ハンマーヘッドがカートリッジにコンタクトしていて危険だという点だ
ハンマーがカートリッジに当たっているから落としたら暴発することが考えられる
最初の一発は抜いておくという知恵を知っていたとしたら龍馬はちゃんと
安全な銃の取り扱いについてレクチャーを受けていたのかもしれない
背景の日本刀は居合の練習用の刀で本身ではない(繰り返し強調します)
本身ではないがモデルガンショップで売っているオモチャの
模造刀よりは本物っぽいこしらえや刀身でなかなか雰囲気
銃口の雰囲気
銃口にはライフリングの表現がある
このライフリングをしっかり弾頭に食い込むほど
タイトに工作できるようになったのも金属薬莢のメリットのひとつ
このおかげで命中率も飛躍的に改善したはずだ
まだ後世のリボルバーのようにクラウンの工作はされていない
ハンマー、サイト、トリガーはケースハードゥン調のブルーイングをかけているのだがわかるかな
平面出しをした左サイドはABSむき出しの時は波打っていかにも模型っぽかったが
平面に削ったことで金属加工っぽい雰囲気になった
2019年3月3日
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