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映画に登場するプロップガン〜殺人マシンは
実用本位の必要最小限カスタムを愛する「ターミネーター2」

Terminating Gun

映画に登場するプロップガン〜殺人マシンは実用本位の必要最小限カスタムを愛する「ターミネーター2」

映画監督さんという人種は、ガンアクションを撮るような人でも基本的にテッポそのものにはあまり関心がない人が多い。

だから銃撃シーンもエフェクトばかりにこだわって、見た目のインパクト勝負でウソが多い映画は見ていても「あっ、そう」という感想しか出なくなってくる。

「映画というのは人間を描くものなのだ、銃を描くのではない」ということなのかもしれないけど、あまりにウソが多いと鼻白んでしまう。

邦画がそうならまだわかるが、ハリウッド映画や香港映画が結構そうなんだよな


そんななかジェームズ・キャメロン監督は、割とコンバットシューティングなんかに関心を持って実銃の射撃の知識があるんだなと見て取れる監督さんだった。

ターミネーターの一作目でもすでにその片鱗があって、当時話題になっていたAMTハードボーラーなんて渋いテッポをターミネーターに持たせていた。(コルトのパテント期限が切れてガバのクローンモデルが出はじめた時代だったのでオールステンレスのロングスライドガバのハードボーラーは当時テッポ好きには話題になっていた)

ターミネーターの獲物のUZIサブマシンガンとAR-18というチョイスも渋いと思った。





WikiPediaよりアーマライトAR-18アサルトライフル
板金プレスの手軽な製造法とガスピストン方式のロッキング解除
という枯れた技術の動作方式で安くて確実に動作する銃だった
制式ライフルに採用した国はほぼなかったがAUGやL85などの
各国のライフルのメカに与えた影響は大きかった


警察署をターミネーターが襲撃するシーンで、AR-18の30連マガジンをガムテープで2本逆向きに括って撃ちまくっている。(Wikipediaには40連マガジンと書いてあったが、あれは30連です)
1本目が空になったらマガジンを抜いてクルッと回して2本目を差す射撃テクニックもさりげなく見せていた。


銃と射撃に詳しいキャメロン監督だからターミネーター2ではさらにテッポにこだわった演出を見せてくれた。

アーケードギャラリーのゲームコーナー通用口で、新型ターミネーターが少年を襲う時に、ベレッタM92FSのラピッドファイアを見せてくれた。

ベレッタの15連マガジンをマグチェンジをしながらわずか数秒で30発撃ちきって弾幕を張る様子を観て、まだ当時は動画が少なかったから
「なるほど制圧射撃のラピッドファイアってあんな感じでバカスカ撃つんだな」
と関心して観ていた。

その新型ターミネーターに対して旧型ターミネーター(アーノルド・シュワルツネッガー)が持つ獲物は酒場でチンピラから巻き上げたオールドガバのコンバットカスタムとランドールタイプにストックを切り詰めたM1887ガーズガンというクラシックな組み合わせなのが、やはりこの監督はプロップガンが登場人物の性格を表現しているという原則がよくわかっていると感じた。





ターミネーター2のワンシーン
街外れでターミネーターがジョン少年の命令に服従することを
知った時にもう少しで街のチンピラを殺しそうになった場面
取り上げた銃を拾う時にこのコンバットカスタムガバの
プロフィールがやっとはっきり映る
アンビセーフティとパックマイヤータイプのグリップパネルが
確認できるがそれ以外は割とノーマルなMk IV / Series70だ




以前にもチラッと見せたWAのガスガンのガバ
いろんなガバのパーツを寄せ集めてデッチあげたニコイチというかヨンコイチぐらいのガバ
ところで上のT2のカットはカメラを地面に直置きして長玉(望遠レンズ)で被写界深度を
思いっきり浅めにとってさらに色温度を高めに青い色合いで撮っている
キャメロンというとクリーチャーやタイタニック復元とかCG部分ばかり注目されるが
夜のシーンは色温度を高めで青く、昼のシーンは色温度低めで赤く撮るなど
撮影の技術や色彩設計、構図などなかなか学ぶところが多い監督だと思う
同じ構図を再現するのは実は結構苦労する




キャメロンがシューティングに詳しいなと思うのは出演者にも
ちゃんとトレーニングをさせているからだ
母親役のリンダ・ハミルトン の射撃スタイルは綺麗なアイソセレススタンスで
しっかり腰を落として体重をつま先にかけて反動に耐える構えを見せている
ステージガンしか撃ったことがない役者さんにはなかなかできない構えだ




そのガバだがフレームシルバーでスライドはブルーフィニッシュでサイドの平面だけポリッシュ、
上部のカーブ部分はサンドブラストのようなつや消しになっているのがわかる




このガバはWAのMk IV / Series70をベースにA.D.Swensonの本物のアンビセーフティ、
ステンレスアウターバレル、MGCのモデルガンから持ってきたロングトリガー、
スズキのガバについてきたパックマイヤー風のグリップパネルなどを
組み合わせてT2のガバのイメージで構成した寄せ集めガバ




マグチェンジをしてスライドを解放し次弾を装填するシーン
バレルがステンレス製なのはSeries70以降の民間モデルの特徴




女性の手にはガバは大きいのでスライドキャッチを外す時にわずかに握りを変える
スライドキャッチのエクステンションカスタムパーツは使用されていないので
男性でもスライドキャッチにはなかなか指が届かない
エクステンドスライドキャッチはカスタムガバブームの当時には流行ったが
そういうものを使わないノーマルっぽいガバなのがなかなか男前だと思った




おなじみ「アスタラビスタ ベイビー」 のショットのシーン
上のリンダ・ハミルトンのシーンもこのシュワちゃんのシーンも
やはり長玉で被写界深度浅めで撮影されているのが銃の歪みの少なさでわかる
CGばかり話題になるキャメロン監督だが撮影のテクニックにはこだわりがある




この長玉被写界深度浅めの構図はなかなかiPhoneカメラや
デジカメで再現するのは苦労する
色も青めに撮ってみた




以前紹介した時にはこのヨンコイチはスムーズウッドグリップパネルをつけていた




T2はそういえばパックマイヤー風のグリップだったなと思い出して付け替えた




T2のガバはストーリーでは20世紀に降り立った旧型が酒場にたむろするゴロツキに
「お前のブーツと服とバイクが要る」「『お願いします』を忘れてるぜ」というやりとりの上
ボコボコにして巻き上げた銃だがその割には洗練された銃だった気がする
ひところのカスタムパーツてんこ盛りのカスタムと違って最低限のカスタムで
エジェクションポートも少しだけ拡げているのが実用の銃としてリアリティがある




T2モデル右プロフィール




T2はリコイルスプリングガイドをつけていなかったがここもノーマルではなかった気がする
映像からはディテールがわからなかったのでこれは重量を稼ぐためにガイドをつけた
ガズガンなのでバレルの中にはエアガンのインナーバレルが見える




コンバットシューティングで使用する場合ガバの
最大の欠点は左手でセーフティの操作ができないこと
その弱点を改善するアンビセーフティはたくさん種類があるが
これは80年代に人気があったA.D.Swensonの実銃用パーツ




パックマイヤー風グリップに燦然と輝くスズキのロゴ
スズキのガバは今は金型はマルシンに引き取られ
パックマイヤー風グリップは絶版となった


新型ターミネーターは液体金属で誰にでも姿を変えられる新機能を持っており、人の社会に深く潜入できるようになっている。
警官から奪ったベレッタM92FSや警備員から奪ったブローニングハイパワーなどのダブルカラムフィードの大火力の銃を使うのに対し、旧型ターミネーターはチンピラから奪ったほぼノーマルのカスタムガバと西部劇時代に使用されたショットガンM1887のソードオフという旧式銃で立ち向かう。

新型に対して旧型は性能でも劣る不利な戦いだという説明が物語の途中で語られるが、使用している銃もそれを象徴している。

M92はこの映画が封切られた年の3年前に米軍の制式拳銃に採用された新式の銃だ。
それに対してガバはこの80年前に米軍に制式採用された旧式銃。
この対比が意図的でないはずがない。

M92は米軍に採用されるまでは紆余曲折があり、途中S&Wの泣きが入ったりで採用されないかもしれないとも言われたがテッポ好きの下馬評は
「SIGはコストがかさむしロビー活動も弱い、それ以外のブローニングやS&Wは性能からして問題外だから制式拳銃はベレッタで決まりだろうな」
という観測がもっぱらだった。

キャメロンはそういう下馬評もよく知っていて、新型ターミネーターが最初に奪う銃をベレッタにしたのかもしれない。


それとキャメロン監督はやはり長玉を多用した被写界深度浅めの構図や、色温度でシーンを分けるなどの色彩設計など映像の質が高いと思う。
これについてはターミネーター、ターミネーター2のキャメロン作とターミネーター3以降の他の監督の画風が全く違うので確認できると思う。

テッポの話とは関係ないけど、こういうことを見比べるのも映画の楽しみだ。




2019年3月24日
















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