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ドイツの精鋭Walther PPK/Sをリニューアルする2
〜ABSだからね塗装するよ…それと実銃PPKについて

Gun loved by spy

ドイツの精鋭Walther PPK/Sをリニューアルする2〜ABSだからね塗装するよ…それと実銃PPKについて

先日取り上げたスズキ製のWalther PPK/Sの続き。

スズキのオリジナル金型なのだが、スズキ廃業後はマルシンに金型が引き継がれ現在マルシンのPPKモデルガンの元になっているという話は前回書いた。

だから問題点もマルシンのPPKとほぼ同じなのだが、ヘビーウエイト樹脂がまだなかった当時ABSの金型抜きは難しい技術だったらしくこのスズキPPKも優れた設計であるにもかかわらず盛大に肉引きしている。

この肉引きのおかげでプラ地肌のテカテカの表面仕上げと相まって見た目もとてもおもちゃくさかった。

しかし筋がいいモデルガンで未だにPPKのメカを一番正確に再現しているのはこのスズキ/マルシンのPPKだと思うので、手を入れればとても良いモデルガンになるに違いない。

それで前回は大汗をかいて平面出しをした顛末を描いた。

肉引きが深かったので結構大事になったが、やってみるとPPKのシャープなフォルムが復活するような感じで、なかなか期待が膨らんできた。
それでインディのブライトステンレスをスプレー塗装したところまで紹介した。





前回ブライトステンレスを吹いたPPKのフレーム、スライド、バレルに仕上げの黒塗装
仕上げにはG.スミス.S 銃 スチールブルーカラー(2)、いわゆる銃IIを使う
下地のステンレスの乾燥は三日ほどで十分だったのだが先週雨が降ったために延期した
スプレー塗装には雨は大敵で天気が悪い日に強行していい結果になったためしがない
本当は今日は風が強かったので今日も延期しようかと思ったけどギリギリやれる風速と判断した




塗装はこの発泡スチロールに串焼きスタイルでやるのが最も安定している
せっかく塗装したパーツが転がって表面仕上げ台無し〜一からやり直し…という悲劇を防ぐため
銃IIは金属感が強い塗料ではないがワルサーの黒テカブルーイングの雰囲気を出したかったので
龍馬の銃を仕上げた時に下地の銀色が透けたら結構金属っぽくなることが判明したから使ってみた
これがうまくいったらS&Wの黒テカブルーイングにも応用できる気がする




アメリカのガンエクスチェンジサイトから実銃のPPK/Sの写真
目指すはこの感じでワルサーのブルーイングは青いというより黒い
セーフティ、トリガー、トリガーガードがケースハードゥンぽいのも参考にした


とりあえずステンレスシルバーの上から銃IIを吹いて本日の作業は終わり。

このあとパフがけで光沢出しと下地のシルバーが透けるまで磨く予定だがそれは3日後に塗料が完全硬化してからの作業になる。


【実銃のPPKについて】
ワルサーPPKという銃が気になっている理由は幾つかある。

ここでは主にメカ的な興味でテッポを取り上げているが、PPKという銃もエポックメイキングな銃だ。

リボルバーでは19世紀に実用化されていたダブルアクションを、オートマチックに取り入れた最初の実用拳銃がこのPPKシリーズの原型になったPPだった。

PPはPolizei Pistoleの略で警察用拳銃というストレートな名称だ。
そしてPPKはPolizei Pistole Kurz、またはPolizei Pistole Kriminal、つまり「小型警察用拳銃」または「刑事局用警察拳銃」の略とのこと。
(Wikipediaには後者が正しいような記述があるがブンデスクリミナルアルトに直接取材した床井雅美がどちらとも断定していないのでどちらの説もありではないかと思う)

この警察拳銃としてスタートしたというのが、この銃の性格を決定付けた重要な要素になっている。


軍用拳銃というのは案外即応性を求められない。
最近はそうでもないかもしれないが、少なくともPPKが登場した1930年代は拳銃はあまり重視されていなかった。

基本的には主兵器のライフルや機関銃が弾切れになったり故障して反撃を受けた時の護身用なので、スライドを引いて初弾を送り込むくらいの余裕はあるはずだし、それもないほど追い込まれていたら拳銃を持っていても持っていなくても結果はあまり変わらない。

むしろ命令違反をした兵を脅したり処刑したりする目的で下士官や将校、政治委員に持たせるというのが軍用拳銃の主目的だから即応性は二の次、三の次ということになる。


しかし警察はそうはいかない。

特に私服の刑事は囮捜査任務中に、緊急逮捕或いは身バレして緊急制圧が必要になった時に初弾を送り込んで…なんてことをいっている暇はない。
銃を抜いてすぐに引き金を引いて発砲・制圧が必要になってくる。





映画「空軍大戦略」より ワルサーPPKを装着したドイツ軍装の一例
エースパイロット達はPPKのホルスターをみんな左の腰の後ろに付けている




同じ映画のお仲間エースパイロット達もみんな左の後ろにPPKのホルスターを付けている
こんなところに付けたら実際の射撃の時に体を左にすごくひねるかベルトを回さないと銃を抜けない
つまり空軍のパイロット達は「拳銃は持てと命令されたから仕方なしに持っているだけ」で
実際には護身用としては拳銃をアテにしていないしただの邪魔な腰の重しとしか思っていない
これを使う羽目になった時点で自分は死んでいると思っていた節がある




映画「大脱走」よりSSの歩兵のホルスター装着位置
これはPPKではなくP38のハードシェルホルスターだが左腰の真横に
付けていて空軍兵のように背中につけるほど邪魔者扱いはしていない
でもやはり素早く抜き撃ちできるポジションではない
軍が拳銃の重要性をどの程度に思っていたかがこの装着位置でわかる


警察用に開発されたワルサーのPPはこれまでの自動拳銃にない画期的なメカを持った。

ひとつは銃を抜いてすぐに発砲できるために、常に初弾をチェンバーに装填した状態で安全に持ち歩けるセーフティメカ。
もうひとつはこのセーフティメカのおかげでハンマーをコックしていない位置でも銃を持ち歩けるようになったが、今度はセーフティを解除した時にすぐに発砲できるダブルアクションメカ。

坂本龍馬の銃の項目でも少し触れたが、19世紀の銃は初弾を装填したままだとハンマーがつねにカートリッジにコンタクトした状態で落下時に暴発するなどの危険性があった。

だから安全のために初弾はチェンバーに装填しない。

オートでも事情は同じで、初弾を装填すると常に暴発の危険性を意識しておかないといけない。

そこでPPはセーフティをスライドに付けてファイアリングピンを直接ブロックするメカを装備した。
これなら落下しても安全装置がかかっている限り暴発はあり得ない。

さらにコックしたハンマーを安全装置をかけることで落としておくデコッキング機能もセーフティに兼備しトリガーもブロックした。

これなら落下時だけでなく何かがトリガーに引っかかって、アクシデンタルに引き金を引いた状態になった時も暴発の危険がない。
とにかく安全装置を解除しないと何も起こらない。

しかし安全装置を解除すると、引き金を引くだけでハンマーを引き起こし最終的にハンマーを落とし発砲できる。
これがダブルアクションのトリガーメカ。

このメカをオートマチックに組み込んだ最初がワルサーのPPだった。





ただいまスズキのPPKは完全分解状態なのでマルゼンの
ガスガンのPPK/Sでダブルアクションメカを解説
引き金を引くと引き金がフレーム右に埋め込まれたトリガーバーを前方に引いて
これがシアを兼ねたコッキングピースを引っ張りハンマーを引き起こす
オートはリボルバーと違ってフレーム内に空きスペースがほとんどないので
フレームの右側に迂回させた片持ち式のメカでこの問題を解決した




PPKのトリガーとセーフティの関係
トリガーはダブルアクションになったのでトリガーガードの
スペースのほぼ中央にぶら下がるような形で配置されている
セーフティはファイアリングピンブロックとデコッキングメカ、
トリガーブロックなどを兼用しているので試作初期型で90度
実用生産型でも75度以上回転するレバー式になった


オートはフレームの中央にチェンバーがあってグリップの中にマガジンを装着する形が一般的になっていたので、フレームの中にはコルトやS&Wのリボルバーのようなダブルアクションメカを組み込むスペースはとても確保できない。

そこでワルサーが考案したのは鍛造鋼板で整形したトリガーバーで、フレームの外側にダブルアクションメカを這わせるというスタイル。

これはのちにワルサーP38にもそのまま踏襲され、ベレッタのM92、現在の米軍のM9ピストルにもそのまま引き継がれているので優れた発想のメカであったことは間違いない。





日本版WikipediaよりベレッタM92FS のフィールドストリップ状態のフレーム
トリガーがフレーム右側に露出しているトリガーバーを引っ張りコッキングピースを
引っ張ってハンマーを引き起こすメカはほぼワルサーPPKやP38のメカを踏襲している


ドイツの軍装は実は戦後の世界の兵器に大きな影響をもたらしており、ソ連のAK47は装弾の口径選択もメカもスタイル的にもナチスドイツのStg44をほぼそのままコピーしているし、マカロフ拳銃はワルサーPPKのほぼデッドコピーだ。

米軍のM60軽機関銃(ランボーでシルベスター・スタローンが振り回していたやつだ)はドイツのMG42軽機関銃の影響がかなり濃厚だし上記のようにベレッタM92はワルサーPPKやP38の影響がかなり濃厚だ。

ワルサーP38はテッポのメカ的には、ダブルアクションオートにショートリコイルメカを組み合わせて大口径強装弾にもこのメカが対応できる可能性を示したという意味では重要なメルクマールだし、そのダブルアクション、セーフティブロッキング・デコッキングメカを実用化したPP、PPKはさらにその源流として最重要なメルクマールだといえる。


この銃が昔から人気がある理由はメカが優れているということだけでなく「007ジェームズ・ボンドの愛銃」だという要素が非常に大きくて、実際今でもアメリカで売れている理由はそれに尽きる。
だがそういうことだけでなくよくよく見ると火縄を時代遅れにしたフリントロック、先込め銃を時代遅れにした金属薬莢、連発機能を実用化したリボルバーの発明、リボルバーを片隅に追いやった自動拳銃の発明と並ぶ新しい時代を作った歴史的メカの銃として評価されていいと思う。


さて次回は大きなトラブルがなければスズキPPKの仕上げと組み立てという流れになるはずだが、どうなりますやら…




2019年4月14日
















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青木さやか