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ドイツの精鋭Walther PPK/Sをリニューアルする4
〜黒テカPPKのディテールをも少し…それとPPK/Sの来歴についても

Gun loved by spy

ドイツの精鋭Walther PPK/Sをリニューアルする4〜黒テカPPKのディテールをも少し…それとPPK/Sの来歴についても

先週スズキのPPKを全面的にリフレッシュして、「見られるPPK」に修復した。

そのタッチアップを今週末やる予定だが、その前に実銃のPPK/Sについていくつかのこと


【実銃のPPK/Sについて】

実銃のWalther社のPPKは警察からの要請で開発されたPPが原型になっていることは前々回の実銃についてのところでちょっと触れた。

じゃ、今回のリニューアルしたスズキのPPK/SのモデルになったWalther PPK/Sってどんなテッポなんだろうか?

というよりそもそもこのPPK/SのSって何?という話から。


原型になった警察用拳銃のPPはPolizei Pistoleの略であることは触れた。
これは英語に訳すとPolice Pistol、警察用拳銃というそのまんまのネーミング。
PPKはPolizei Pistole Kurz、またはPolizei Pistole Kriminalの略でこれも英語に訳すとPolice Pistol ShortまたはPolice Pistol criminal investigationsということで小型警察用拳銃または刑事部仕様警察拳銃という意味になる。

さすがドイツ、糞真面目なネーミング。

じゃこのPPK/Sは何の略かを調べた。
ワルサーの海外フォーラムやら本場の銃解説などを読み漁って諸説あるもののこれが定説ではないかというのが
Polizei Pistole Kurz / Speziale
つまりPolice Pistol Short / Special、小型警察拳銃特別版ということになりそうだ。


時は1968年のこと。

小型拳銃のジャンルで当時急激に人気が出はじめた銃がPPKだった。
1964年の「007は殺しの番号、ドクターノオ」という第1作でジェームズ・ボンドが上司の勧めで銃をベレッタからワルサーに持ち替えるエピソードでこの銃は突然人気が出た。

警察用拳銃であるにもかかわらず「ナチスの銃」というイメージが強かったPPKだが、そういう銃だからこそ英国の特殊工作員であるジェームズ・ボンドが使用するというのが当時は逆にリアリティがあったのかもしれない。

以降007シリーズでボンドは時々銃をリボルバーやルガーもどきの謎の銃に持ち替えたりしていたが、結局「ボンドの銃はやっぱりPPK」ということでPPKの使用が続き、映画のヒットと相まってPPKは世界中で人気を博した。


この007シリーズはイギリス映画だ。

イギリスではPPKが売れたし手続きを踏めば所持できた。

映画はアメリカでもヒットした。
だからアメリカでも護身用にPPKを所持したいという希望が殺到し、バージニアのインターアームズ社が輸入代理店になってワルサーのPPKをアメリカに輸入していたが、ここで輸入を止めざるをえない問題が起きた。

突然U.S.Gun Control Act of 1968 (GCA68) 、つまり68年の米国銃規制法が成立してしまったからだ。

ケネディ大統領やキング牧師の暗殺事件以来、アメリカでは誰もが登録もせずに通販やドラッグストアで実銃を買えるような状況はよろしくないのではないかという議論が続いていた。

そこに1968年の民主党の大統領選候補だったロバート・ケネディの暗殺事件が発生した。

この事件は衆人環視のなかテレビカメラの前で発生したので、その状況が映像で確認できる。
犯人は支持者を装ってケネディ上院議員に近づき隠し持った小型リボルバーで至近距離から数発発砲、ケネディ上院議員は搬送先の病院で死亡した。

その映像はテレビでも繰り返し放送されたので、この事件は兄大統領の暗殺事件よりも大きな衝撃をアメリカ国民に与えたようだ。

これがきっかけになってそれまで反対が根強かった銃規制法案が議会を通過し、特にロバート・ケネディ暗殺事件で使用された小型拳銃の規制が厳しくなった。

海外からも輸入できる銃の最小サイズ、最小重量が規定されそれ以下の小型拳銃は輸入できなくなった。

この規制にワルサーのPPKが引っかかってしまった。





(上)Walther PPKの実銃写真(Wikipediaより)(下)スズキのPPK/S
PPK/SはPPKと比べて把手(グリップ)が長く、その分装弾数も1発増えて8発になった
重量も規制をクリアできる重さまで増えている
輸入元の米インターアームズ社がPPKのスライドをPPのフレームに
組み合わせてでっち上げたニコイチガンでなんとか輸入規制をクリアした




PPKと並べるとPPK/Sはやはりバランスが悪く見えてしまうが単独で見ると
目が慣れてしまいPPKと同じような黄金比に見えてくるから不思議




これはPPK/SでしょうかPPKでしょうか?
さあ貴方の目ももう慣れてしまって区別がつかない…


この規制を乗り切るために急場しのぎで輸入元は中型拳銃のPPのフレームに小型拳銃のPPKのスライドを組み合わせて、ワルサーPPK/Sなる新しい銃をでっち上げた。

ジェームズ・ボンドが使用した銃はあくまでPPKであってPPK/Sではない。

だがもちろんスライドもフレームもワルサー社の純正品なのでニセモノではない。あくまでホンモノだ…ということで輸入元のインターアームズ社は
「あの007シリーズでショーン・コネリーが使っている(かもしれない)実物の銃」
ということで販売を続けたようだ。

それでこの輸入規制対応版にインターアームズ社がつけたネーミングが
PPK/S、Polizei Pistole Kurz / Speziale 小型警察用拳銃・特別版
というもの。

さすがアメリカ、ザクッとしたネーミング。


当初このPPK/Sというカテゴリーはアメリカにしかなかった。

しかしアメリカ仕様のPPK/Sがいつの間にかスタンダードになり、日本でも各メーカーが最初にモデルガン化するのはPPK/Sと相場が決まっていた。

そしてこれをインターアームズ社よろしく「007の銃」というタイトルをつけて販売するので、いつの間にかPPK/Sがジェームズ・ボンドの銃であるかのような誤解が定着している。


【モデルガンのPPK/Sについて】

今でこそマルシンからはPPK/SだけでなくPPやPPKが販売されている。

いずれもこのスズキのPPK/Sの金型を修正して作成したバリエーションだ。

しかし日本のモデルガンメーカー、エアガンメーカーはやっぱりPPK/Sからリリースする。
スズキがそうだった。

マルゼンなんかはガスガンのPPK/Sにサイレンサーをつけられるアウターバレルセットも出しているが、あれなんかもはっきりとは言わないけど「ジェームズ・ボンドの銃」というイメージで販売しているんだろうなあ。

だけど繰り返し書くけど「ジェームズ・ボンドの銃」あくまではPPKで、PPK/Sじゃありませんから…残念

ちょっと検索してみたけどネットにもこのPPK/Sを「007の使用銃」として解説しているブログがたくさんヒットして、
「おまえら本当に007が好きよのう」
と思った。





「007は殺しの番号、ドクターノオ」よりPPKを吊ったショーン・コネリーのスチル
この映画オリジナルと思われるベージュとブルーのツートンカラーのショルダーホルスターを使用している
銃を固定するストラップもフラップもないただの袋のような構造で走ったら銃を落としそう
今見るととてもじゃないが実際の工作員が使用するはずがないおもちゃ臭い構造のホルスターだが
小学生のガキの頃紙でこのボンドタイプのホルスターを作成して銀玉鉄砲をぶち込んでいたのを突然思い出した
当時の小学生のガキどもにはアストンマーチンとPPKは憧れの的だったから
このタイプのホルスターを作った記憶がこの写真を見て突然蘇った




今回修正してスズキのPPK/Sは概ね狙い通りの仕上がりになった
心残りはやはりセーフティレバーを取り付けるときにできてしまった
スライド左側面のセレーションの傷でこれを今週末修復する予定
あと赤いインレイが若干薄いので追加塗りかな








このつやあり黒ブルーイングの雰囲気が塗装でも再現できることが判明したので
ABSテカテカモデルガンの塗装に希望が湧いてきた
とりあえずコクサイのチーフの仕上げをやり直したいと思っている




スライドの映り込みはこんな感じ
銃IIはスプレー塗装のセオリー通り離して吹くよりも近めで
回数少なく吹いたほうがもっと顔が映る光沢が再現できたかもしれない
次回の参考のために…To自分




マルシンの予備マガジンは問題なく使用できている
ダミーカート仕様に改造したがジャムもなく快調に回転している
塗装後やや動きが渋くなったがそこらも修正する予定








エジェクションポートから見えるダミーカート




最終弾をエジェクトするとしっかりホールドオープンがかかる
エジェクターがスライドストップを兼用している面白い構造
この構造は今のSIG P230あたりにも引き継がれている




トリガーガードなどの虹色のケースハードゥン仕上げ








そしてやっぱりスライド側面やフレーム側面の肉引きがなくなったのが大きい




先日マルゼンのガスガンでお茶を濁していたトリガーバーの片持ち構造の写真を撮りなおした
このトリガーバーのスライドと噛み合う突起がグリップパネルから少し覗いている
スライドがこの突起を押し下げることでトリガーとシアはディスコネクトして
引き金を引いたままでも次弾は連続発射されず発射待機状態で止まる
トリガーバーを押し上げるテンションはトリガースプリングが兼用するなど
部品数を極力抑える工夫があちこちに散りばめられている




トリガーとセーフティレバーの位置関係の写真







2019年4月20日









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