ドイツの精鋭Walther PPK/Sをリニューアルする6〜ディテールとそのデザインコンセプトについて
最終調整をしたスズキのPPK/Sの最終完成形がやっとできたのでディテールを紹介。
PPKでこんなに続ける気は無かったのだが、なかなか出来上がりが気に入ったのと気に入った出来上がりになってみると色々細かいことが気になり始めてメカの細かい調整や塗装のタッチアップなどこだわりだしたら際限がなくなってきた。
スズキのモデルガンはもともとメカの調子は良かったし、実銃のスタイリングやメカを比較的正確に再現した素質は良いモデルだった。
いかんせんABSテカテカの仕上げとそのABSの成形技術の当時の限界もあって盛大に肉引きしているのが、素質が良いだけに悲しいモデルだった。
三十数年ぶりにディテールアップして、元々個人的にはこのデザインやメカが気に入って購入したモデルだけに宝石のような輝きを放ち始めた…という気がしている。
ダミーカートモデルに改修したPPK/S
マガジンのダミーカートは単なる飾りではなく装填排莢ができる
最近はガスガンのガスもモデルガンの火薬も全く使わない鑑賞派になってしまった
なら発火ブローバックなんて意味がない…ダミーカートを使って
メカを可能なかぎり実物に近づける方が「実用的」だ
そして今回の塗装の仕上がりの色目のニュアンスはこんな感じ
ヨーロピアンオートのブルーイングはコルトなどと違ってしっかり黒い
黒テカだが光の加減で時々うっすらと青く見えるというニュアンスが再現したかった
左プロフィールカット
実はセーフティ周りにまだ気になっている部分が…
右プロフィールカット
グリップ、スライド後端、ハンマーなどの仕上がり
下地塗りのステンレスシルバーが透けて見えて金属感が
あるという雰囲気を今回は抑え気味にしてみた
グリップ前面の磨き込みはこんな感じ
スライド上の特徴があるグルーブ
射撃の時にサイトのシルエットとコントラストがつくように
白っぽく見える細かい溝が山形に彫られている独自のスタイル
スライドの黒は光を受けると青く反射する
トリガーガード、トリガー、ハンマー、セーフティも光の加減で虹色に光る
なかなか写真で捉えるのが難しいが…
平面出しをして完全にフラットになったスライド側面とフレーム側面
気になっているのはこういうこと、上がワルサー実銃のPPK/S、下がスズキのPPK/S
スライド左のセレーションにセーフティレバーを取り付けた時の傷がまだ残っていること
それと発火ポジションを示すセーフティの赤丸の発色が実銃と全く違うのが気になっていた
そこで銃IIの塗料を取り出して再度残っている傷に面相筆でタッチアップした
それと実銃のこのレッドインレイは発色の感じからして下塗りを
しているに違いないと判断して一度剥がして下塗りの白を塗ってみた
この下塗り白が完全乾燥した後に赤の塗料を塗り直した
なんとも手間がかかるがドイツ人のことだからこれぐらいの手間はかけているかもしれない
その出来上がりがこんな感じ
左のセレーションがずっと気になっていたので
やっとアップに耐える見てくれになってきた
実銃との比較
(上)ワルサー社のPPK/S(下)スズキのPPK/S
マズル周りのアップ
アップの写真をあまりあげていなかったので何枚か
スライド後端の微妙なカーブ
バレルのヘアライン
ところで先日調整に失敗して泥沼にはまったスズキ純正のマガジンだが
苦労の甲斐あって最終弾もしっかり排莢してホールドオープンもかかるようになり
しかもマガジンキャッチボタンを押すとマガジンもストンと落ちるようになった
1日潰したが苦労した甲斐があった…モデルガン趣味ってこれが真髄なんだよね…
ちょっとマゾヒスティックだけど…
PPKのメカについて前回ダブルアクションメカとセーフティメカに
ついて書いたがこのカートリッジインジケーターも面白いデザイン
チェンバーにカートリッジがロードされるとインジケーターの先端が
押し上げられバレルに当たってスライド後端から飛び出す
ビジュアル的にもっと目立つデザインが良いのではないかと思っていたが
このインジケーターはまっ暗闇でも親指の先でカートリッジが
ロードされているかどうかが判別できる優れたメカだ
これはP38にも引き継がれているがメカの概要を引き継いだベレッタでは
エキストラクターの赤いサインで表示するデザインに改変された
確かに赤いペンキは目立つが暗闇でも確認できるという便利さはない
これはオリジナルの方が優れている
ところでPPK/Sは小型拳銃だろうか中型拳銃だろうか
同じようなクラスの拳銃と並べてサイズを比較してみた
日本警察の先の主力拳銃だったニューナンブM60との比較
リボルバーの中では比較的小型のニューナンブだがPPKと並べるとかさばるのがわかる
皇宮警察がPPKを採用しているがPPK/Sなのかどうかまでは知らない
SPと同型だとするとPPK/SではなくPPKの筈だからこのツーショットは実現してない
中型拳銃のマスターピースのベレッタM84と…
サイズ的にはPPあたりがM84と同じクラスで
PPK/Sは中型拳銃と小型拳銃の中間サイズといえる
小型拳銃というとポケットというジャンルがある
ポケットピストルの代表選手コルトの25オートとの比較をすると
やはりPPK/Sは小型拳銃というには大きいように思う
そして大型拳銃の代表格といえば45オートのガバメントモデル
ベレッタのM92あたりを持ち慣れるとガバなんて細くて小さく感じるが
こうしてPPK/Sと並べるとやはりでかい
ベレッタM84と右側面の比較
M84はワルサー式のダブルアクションを引き継いだがカートリッジインジケーターは
エキストラクターに塗った赤い塗料が上から見えるかどうかで表示する
インジケーターが後ろに突き出しているPPKと比較してみた
M84の評価が高いのはデコッキングメカを廃してコックアンドロックという
ハンマーを引き起こした状態でロックできるメカを搭載したところ
これは装填状態で常時携帯するヨーロッパの私服警官には評価が低く
常に抜き打ちのシチュエーションがあるスポーツコンバットマッチの選手には逆に評価が高い
実際に火薬を入れたモデルガンを持ち歩けばわかるがコックアンドロックは
持ち歩きには不安なのでこれは使用目的による違いだと思う
PPKのマズルからトリガーガードまでは流麗な流線型で構成されている
ここらのデザインセンスは上の各種拳銃と並べたツーショットで確認できる
これはホルスターや背広の襟などに銃の突起が引っかからないように
という実用的な配慮なのだがそのおかげでこの優美な線が生まれた
MFG.SUZUKIの刻印はほぼ消えた
バレルはストレートブローバックなのでフレームに固定されている
リコイルスプリングガイドを兼ねているのでスプリングと擦れて
リング状の細かい傷があるのも再現している
光量が少ない曇りの日の光でも少し青いニュアンス
ドイツ製のPPKはバナーの下に「MADE IN W.GERMANY」という刻印がある
これはインターアームズなどアメリカの代理店の製造したPPK/Sのスタイル
PPKはその出自はドイツの警察用拳銃だが
PPK/Sは警察用・軍用に採用された実績は実は非常に少ない
日本のSPや皇宮警察が採用したのはPPKだしドイツ軍も戦後はPPKを採用しなかった
PPK/Sの主な用途はやはり民間向けの護身用拳銃がメインの用途だった
ハウスキーピングガンのイメージでマグライトと並べて撮ってみた
2019年4月24日
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