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映画に登場するプロップガン
〜サイドバイサイド…いわゆる水平二連散弾銃が登場する映画2

Sidebyside

映画に登場するプロップガン〜サイドバイサイド…いわゆる水平二連散弾銃が登場する映画2

水平二連散弾銃が出てくる映画の話を続ける。

銃器には使用目的別に大きく二つのジャンルに分かれる。

言うまでもなく軍用銃と猟銃。

銃を発明して以来、人間はそれを何に使ったかというと弓矢の代わりに戦争で人を殺す、あるいは制圧するという目的に使ったのが軍用銃で、この種別はそういう目的のために合理的に進化していく。

もうひとつの種別はこれは旧石器時代からの人類の道具の主な使用目的にもなるのだが、動物を狩りそれを食料とするために使用した。
これが猟銃になる。

猟のための武器はまさに人が食うために使用されたが、近代に入ってくるにつれて「食うため」ではなくスポーツとして猟を楽しむというジャンルも発生してきた。

鳥を撃って狩り食用にするために開発されたのが散弾銃で、その中でもカモなど飛行速度が速くて警戒心が強い鳥を一の矢で失中しても二の矢で仕留められるように開発されたのが二連銃。

現在主流の上下二連銃は1930年代に開発されたもののようで、それ以前は二連銃といえば水平二連銃しかなかった。

もとは猟のために開発された銃だが、散弾の強力な威力から他の目的でも使用されることが多くなってきた。
これが映画でもこの銃が登場する故になってくる。


余談だがいくつかの犬種はこの鳥撃ちの猟のアシスタントとして品種改良されポインターなどが有名だが、じつはプードルなんかも猟犬としてチベタン系から品種改良された犬種だった。

プードルカットという足と腰周りを短くして胸の毛を長く伸ばすトリミング法は可愛いからああなったのではなく、猟果の撃ち落とした鳥を探すために冬の水に入っても足腰の毛が水を吸って重くならないように、なおかつ防寒のために胸や頭はふんわりと長く伸ばすという実用本位のカットだった。

のちに愛玩用としてプードルやトイプードルの飼育が流行った時に、この猟犬カットも一緒に流行ったということだ。

荒野の七人

ショットガンは猟銃としてヨーロッパで普及しマタギ用だけでなく貴族のスポーツ銃としても発達していくが、その猟銃は開拓時代の新大陸にも持ち込まれて猟以外の目的にも使用された。

西部劇でよく見かける水平二連の散弾銃はコーチガン(Coach gun)というアメリカ独特の呼び名のジャンルの銃として普及した。

コーチというのは駅馬車の御者席のことで、駅馬車の御者が自衛のために持ち歩く散弾銃をコーチガンという。

だから使用目的は鳥を撃つためではなく、インディアンや駅馬車強盗から積荷や乗客を守るための銃だった。

鳥を撃つための散弾銃は一般的に26インチから30インチの長い銃身を使うが、コーチガンは20インチ程度の短い銃身を使用する。
最初からコーチガンとして作成されたものもあるかもしれないが、ヨーロッパ製の猟銃の銃身をのこぎりでぶった切った銃も多く使用されたようだ。


ジョン・スタージェス監督、ユル・ブリンナー、スティーブ・マックィーンら主演の「荒野の七人」でも、村人とブリンナーらガンマンが出会う冒頭のシーンで コーチガンが印象的に使われている。





黒人の埋葬に反対する町民に義憤を感じた旅人の依頼でガンマン二人が霊柩車を繰って墓地に棺桶を運ぶシーン
マックィーンは駅馬車の御者から散弾銃を借りて武装するがこれがちゃんと18インチの有鶏頭二連銃なのはさすが
マックィーンはショットシェルを耳元で振って音を確かめてから散弾銃に籠める
ブランクと実弾は持った時の重さの違いでわかるから意味はないのだがカッコイイので思わず真似したくなる
マックィーンはこういうさりげないガンアクションが上手い俳優さんだ




早速町の荒くれ者の襲撃を受けて葉巻を吹っ飛ばされるブリンナー
マックィーンはスイーピングしながら警戒し襲撃者にしっかり反撃する
後ろをついて歩く若造のチコ(ホルスト・ブッフホルツ)が
二人の豪胆さと早業に感激するシーンも織り込まれている


この冒頭のブリンナーとマックィーンが霊柩車を墓地に運ぶシーンで、マックィーンが駅馬車の御者から借りた銃が、まさに有鶏頭水平二連銃でしかも銃身を18か20インチぐらいに切り詰めたソウドオフショットガンだった。
こういうところは、スタージェスさんわかってらっしゃる

ソウドオフの散弾なので窓を撃つと窓ガラスが丸ごと吹っ飛ぶのだが、あの弾着はどうやって撮影したのかな。

今なら窓ガラスを広い範囲吹っ飛ばす弾着の技術もあるだろうけど、この映画のあのシーンだけは案外実弾を使って撮影したのかもしれない。


これも余談だけどユル・ブリンナーはこの映画で男気溢れる熱いリーダーを演じて人気を博したが、後年この映画と全く同じ黒ずくめのガンマンの姿で「ウエストワールド」という映画に登場した。

「ウエストワールド」は実弾を使ってロボットを撃ち倒していく殺人ゲームを売りにしたテーマパークだったが、このロボットたちが不具合を起こして逆に人を殺し始めるというSF映画だった。

ユル・ブリンナーは荒野の七人と同じイメージで出てくるのに冷酷な殺人ロボットになっていたという演出。

荒野の七人を観てからウエストワールドを続けて観ると怖さ倍増という映画だった。


アザーズ

アメリカで駅馬車のコーチガンとして使用された水平二連散弾銃は、ほとんどヨーロッパからの輸入品だったそうだ。

その銃身をぶった切ってアメリカ人は取回しよくし対人兵器として威力を増すようにしたが、ぶった切る前の姿はこの映画で確認できる。

ヨーロッパのお屋敷に住むような貴族は大抵趣味で狩りもなさるので、どこの家にも猟銃として有鶏頭水平二連銃があった。

有鶏頭とはハンマー外装式のことで、今民間に頒布されている水平二連散弾銃はハンマー内蔵式だが、クラシックな猟銃はハンマーが外についていて、撃つ時に手で起こしてから撃つ仕組みになっていた。


この映画の舞台はイギリス領のどこかで、出征した夫の帰りを待つ妻と子供達が広い屋敷で恐ろしい体験をするという物語。

どこかヘンリー・ジェームズの「ねじの回転」に通じる古典的なスリラー映画だ。

夫が第二次大戦に出征しているということなので1940年より後の時代の話だ。

この家の女主人(ニコール・キッドマン)が使用人たちや日光アレルギーの子供たちの不審な振る舞い、そしてポルターガイストなどに悩まされて怯えながら夫の帰りを待つがやがて異常に気付き猟銃を持ち出してその原因に迫るという物語。

キッドマンが持ち出す猟銃がまさに鳥撃ち用の猟銃だった。





キッドマンが夫の猟銃を持ち出して家の異変を引き起こしている何かに迫る
その取り出した猟銃は有鶏頭(ハンマー外装式)の28インチ前後の長銃身の水平二連銃
古典的な銃だが20世紀中庸のイギリスの領主の家のハウスキーピングガンならこれしかないという銃だった
ニコール・キッドマンは鶏頭状のハンマーを引き起こしてから射撃するスタイルをちゃんと見せてくれた
この映画はモノクロ映画時代を彷彿とさせる抑えた色調のクラシックな映画だった


水平二連銃は浪漫なんだな。

出てくる映画もその背景に関連するような使い方をされていて、一発命中すると戦車も吹っ飛ばすような破壊力もなければ1分間に1000発以上もぶっ放せるミニガンみたいな派手さはないんだけど、でも画面に出てくるとグッとくる。





先日ハドソンと華山のニコイチで作成した猟銃風の水平二連
映画をいろいろ拾っていたらなんだか中途半端な気がしてきたので
サイトを削り落として銃身を延長する、ブルーイングをかけるなどの
カスタマイズをそのうちやってみたくなった



2019年6月15日
















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