この銃の来歴は、これも以前取り上げたSmith & Wesson Model No.2 別名「坂本龍馬の銃」というこれもフランクリンミント企画、マルシン製造請負、のちにマルシンから販売された銃の後継モデル。
この銃の来歴から…
アメリカのオークションサイトよりSmith & Wesson Model 3のAmerican 1st Modelの写真
これがModel 3の最初のタイプでワイアットアープの銃とはディテールが違う
こちらはリファレンス写真
(上)はSmith & Wesson社のホームページから1870年に販売を開始したModel 3 American Model
(下)はフランクリンミントのModel 3
上のモデルはハンマーがバレルラチェットに噛んでいるなどの特徴から
American 2nd Modelで下のモデルとディテールが一致する
アメリカのオークションサイトの出品に添付されたメーカードキュメントの情報から
Model 3の初期モデルのAmerican 2nd Modelは1872年から1874年に製造されていることが判明
ワイアットアープの銃といういわれる個体は2nd Modelの最初の方のロットなので
1872年頃に製造されたというところまで特定した
Model 3(上)はその名の通りModel 2(下)の後継モデルとして開発された
Model 2は中折れ式で金属薬莢を使用した世界初のモデルで装填の素早さから空前のヒットになった
予約2年待ちというヒットにはなったがS&Wが夢見たアメリカ陸軍制式拳銃の座は結局射止められなかった
そこで今度こそ制式拳銃となるべくModel 2を大型化しさらに排莢、再装填を素早くできる改良をした
Model 2は銃身を上に跳ね上げるチップアップ方式の中折れ銃で
その形状からシリンダーを固定するシリンダーストップはフレームの上にある
そのためにシリンダーの回転タイミングに合わせてロックを解除するために
複雑な形状のメカを持つ
Model 3(上)と日本陸軍の制式二十六年式拳銃(下)
Americanモデルは結局アメリカ陸軍の制式採用を得られなかったが
ロシア皇帝から依頼を受けて改良されたラシアンモデルがロシア陸海軍に採用された
同モデルは日本海軍にも「壱番型拳銃」として採用されて日本にも入ってきている
そして日本初の国産拳銃の二十六年式に若干影響も与えている
(左)二十六年式のバレルロックメカを上から見たところ(右)同Model 3
二十六年式のページでも触れたように二十六年式自体は
フランスのFAGNUS拳銃のメカをほぼそのまま踏襲している
しかしこのバレルをフレームにロックするメカの部分だけは
Smith & Wesson方式そっくりに作られている
Model 3(右)も二十六年式(左)もバレルラチェットのロック機構はバレル側にあって
フレームの上端を抑え込むような構造になっており
さらにハンマーの切り欠きでロックの突起を噛むところまで一緒
このために二十六年式はModel 3と共通の弱点を持つことになった
このロックが頑丈でないために強装弾が使用できないという問題だ
そして20世紀中庸のS&Wの代表作M66Combat Magnum(下)との比較
Model 3は悲願の軍制式拳銃の座を射止めたが結局成功しなかった
S&Wは軍相手のビジネスを諦めたのか1880年に38口径ダブルアクションを開発
Model 3をほぼそのままダブルアクション化したような拳銃だったがその後
1899年にハンドエジェクターというダブルアクションリボルバーをリリースした
これがのちのミリポリの原型になりこのM66はミリポリの直系の妹ぐらいの親族