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S&W Model 3『.44ワイアットアープの銃』の系譜と
その末裔について調べてみた

No.3

S&W Model 3『.44ワイアットアープの銃』の系譜とその末裔について調べてみた

Smith & Wesson Model No. 3 American 2nd Modelについて再び。

フランクリンミントが企画販売し、マルシンが製造をOEMで請け負った「.44ワイアットアープの銃」を細かく特定して、これが上記のモデル名であることは前に触れた。

この銃の来歴は、これも以前取り上げたSmith & Wesson Model No.2 別名「坂本龍馬の銃」というこれもフランクリンミント企画、マルシン製造請負、のちにマルシンから販売された銃の後継モデル。

この銃の来歴から…





アメリカのオークションサイトよりSmith & Wesson Model 3のAmerican 1st Modelの写真
これがModel 3の最初のタイプでワイアットアープの銃とはディテールが違う




こちらはリファレンス写真
(上)はSmith & Wesson社のホームページから1870年に販売を開始したModel 3 American Model
(下)はフランクリンミントのModel 3
上のモデルはハンマーがバレルラチェットに噛んでいるなどの特徴から
American 2nd Modelで下のモデルとディテールが一致する
アメリカのオークションサイトの出品に添付されたメーカードキュメントの情報から
Model 3の初期モデルのAmerican 2nd Modelは1872年から1874年に製造されていることが判明
ワイアットアープの銃といういわれる個体は2nd Modelの最初の方のロットなので
1872年頃に製造されたというところまで特定した




Model 3(上)はその名の通りModel 2(下)の後継モデルとして開発された
Model 2は中折れ式で金属薬莢を使用した世界初のモデルで装填の素早さから空前のヒットになった
予約2年待ちというヒットにはなったがS&Wが夢見たアメリカ陸軍制式拳銃の座は結局射止められなかった
そこで今度こそ制式拳銃となるべくModel 2を大型化しさらに排莢、再装填を素早くできる改良をした




Model 2は銃身を上に跳ね上げるチップアップ方式の中折れ銃で
その形状からシリンダーを固定するシリンダーストップはフレームの上にある
そのためにシリンダーの回転タイミングに合わせてロックを解除するために
複雑な形状のメカを持つ




これに対してModel 3は銃身を下に折るブレークオープントップ式の中折れに変更された
そのおかげでシリンダーストップはフレームの下に移動
シリンダーのロックの解除はトリガーがシリンダーストップを
引き下げるというシンプルなメカになった




(上)コルトのシングルアクションアーミィのキャバルリー(騎兵)モデル(下)Model 3
こうして並べると各部の寸法がぴったりなのは偶然ではない
SAAは1873年に陸軍に制式採用されているが44口径、7.5インチ銃身、6連発という諸元
に従った結果こういうサイズに自ずとなったと思われる
Model 3はSAAと同時期の制式拳銃を狙って開発されたが制式採用はコルトに軍配が上がった




コルトは創業者のサミュエル・コルト大佐が陸軍と太いパイプが
あったのかテキサスパターソン以来制式拳銃の座を次々射止めてきた
S&Wの金属薬莢のパテントが切れて満を侍してコルトが開発したのがSAA
今度こそ陸軍制式拳銃の座を射止めようとして開発されたMdel 3




中折れメカで再装填が実にスピーディになったModel 3に対して
SAAはローディングゲートという再装填が不便な方式を採用している
それでも軍がコルトを採用した理由は一つだけ「頑丈だから」に尽きる
頑丈なフレームの構造のおかげでコルトは.45Long Coltという強装弾を発射できた
Model 3の.44S&Wは同じ口径だが薬莢が短いので装薬量もColtよりかなり少ない
このモデルにSAAのモデルガン用のカートリッジを使おうとした時に口径はぴったりだが
カートリッジの全長をかなり削らないといけなかった理由はここにある




Model 3 Schofield(上)とModel 3 Americanの比較
Americanモデルで軍制式拳銃の座を射止め損なったS&Wはコルトがウォーカー大佐など
現役軍人の意見を取り入れているのに習ってスコフィールド少佐の意見を取り入れて
スコフィールドモデルを開発し今度こそ制式拳銃の座を射止めた
最大の改良点はバレルの固定ゲートをバレル側からフレーム側に移して固定強度を増したことだ
このおかげでSAAと互換性がある.45Schofield弾という装薬量を増したカートリッジが使えるようになった
ただし.45Long Coltはやはり使用できないので結局軍では普及しないまま退役となってしまった




余談に近いがこの見事なエングレービング(蔦模様の彫刻)は
18世紀のヨーロッパの拳銃をイメージしている
(下)はベルギーの決闘用のペア拳銃の模造銃
フリントロック拳銃のこの単発銃は紳士の決闘専用に製作されたものらしい
18世紀の銃はだいたい装飾がされているが決闘は紳士の華だから飾りもゴテゴテ




Model 3(上)と日本陸軍の制式二十六年式拳銃(下)
Americanモデルは結局アメリカ陸軍の制式採用を得られなかったが
ロシア皇帝から依頼を受けて改良されたラシアンモデルがロシア陸海軍に採用された
同モデルは日本海軍にも「壱番型拳銃」として採用されて日本にも入ってきている
そして日本初の国産拳銃の二十六年式に若干影響も与えている




(左)二十六年式のバレルロックメカを上から見たところ(右)同Model 3
二十六年式のページでも触れたように二十六年式自体は
フランスのFAGNUS拳銃のメカをほぼそのまま踏襲している
しかしこのバレルをフレームにロックするメカの部分だけは
Smith & Wesson方式そっくりに作られている




Model 3(右)も二十六年式(左)もバレルラチェットのロック機構はバレル側にあって
フレームの上端を抑え込むような構造になっており
さらにハンマーの切り欠きでロックの突起を噛むところまで一緒
このために二十六年式はModel 3と共通の弱点を持つことになった
このロックが頑丈でないために強装弾が使用できないという問題だ




そして20世紀中庸のS&Wの代表作M66Combat Magnum(下)との比較
Model 3は悲願の軍制式拳銃の座を射止めたが結局成功しなかった
S&Wは軍相手のビジネスを諦めたのか1880年に38口径ダブルアクションを開発
Model 3をほぼそのままダブルアクション化したような拳銃だったがその後
1899年にハンドエジェクターというダブルアクションリボルバーをリリースした
これがのちのミリポリの原型になりこのM66はミリポリの直系の妹ぐらいの親族




(上)Model 3と(下)M66
S&Wは1899年のミリポリから別系統のリボルバーを作り始めた
メカ整備のために開くサイドパネルは左側から右側に移された
それに伴いシリンダーの回転方向も時計回りから反時計回りに変更された
メカがちょうど左右真逆になったのはコルトの特許を回避するためだという説もあるが定かではない




内部のメカはハンマーを引き上げるリーフタイプの
スプリング以外全く共通性がないのだが
それでもS&Wの系譜のようなものは並べてみると感じる




これがそのメインスプリングの構造の比較
Model No.1より最新のリボルバーに至るまで全く変化ないのが
板バネがハンマーについているブランコのようなスプリングアームを
上に引き上げるようなテンションを掛けるレイアウト
そして板バネにテンションをかけてバネの強さを調整するネジが
グリップの前についているのもModel3から現在まで全く変わらない




Coltに比べて.45Long Coltのような強装弾を使用できないという弱点を持つModel 3と
357Magnumが撃てるColtのPythonと比べるとMagnumといいながらマグナム弾が撃てないM66…
やはり血筋は争えないのかもしれない




ローディング法がブレークオープントップのModel 3(右)に対してシリンダーを
左に振り出すスイングアウト方式にミリポリ以降のダブルアクションリボルバー(左)は変わった




ちなみにこのタイプのリボルバーを初期の頃「ハンドエジェクター」と呼んだのは
Model 3の排莢が自動だったのに対してこのタイプはエキストラクターロッドを
手動で押して排莢するのが起こりだという
自動だったのが手動になりました…ってあまり進歩のイメージではない気がするが
S&Wってレモンスクイーザーとか時々変なネーミングをする癖があるようだ



2019年6月17日
















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