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FN Browning High Powerをリフレッシュ〜強化シアレバーに付け替えて
お気に入りになったのでグリップも換装

Hi-Power2

FN Browning High Powerをリフレッシュ〜強化シアレバーに付け替えてお気に入りになったのでグリップも換装

タナカのハイパワーの強化シアレバーを見つけて換装したので、すぐに潰れるタナカハイパワーの汚名を返上(したんだと思う…多分)のでいじってみたくなった。

手持ちのタナカハイパワーはベルギーFN製造のM1935でおそらく戦時モデルを再現したもの。

その略歴をまとめると…
1926年ジョン・ブローニングによって基本デザインがまとめられるがブローニング自身はハイパワーの完成を見ることがなかった
1934年ブローニングの後継者たちによって設計の細かい部分も追加されて正式モデルとして発表
1940年ナチスドイツのベルギー侵攻によりFN社の工場もドイツ軍に接収されハイパワーはドイツ軍制式拳銃「P35」として採用される
1944年ドイツの敗戦とともにFN社としてのハイパワー生産再開
その後イギリス軍を筆頭にNATO各国軍の制式拳銃として採用される

という流れになる。

前回撮った写真では黒ABSのプラグリップをつけていたが、タナカのハイパワーは戦時モデルを再現しているようなので、グリップパネルはむしろウォルナットの木製グリップが一般的。
それで手元にやはり20年前に購入した木製グリップがあったので付け替えてみた。





前回も撮っていたがリファレンス用の写真も撮りなおした
(上)FN Browning 1935, おそらくP35モデルの実銃(下)タナカ ハイパワーガスガン
タナカはMk IIIモデルも出しているがこれを手に入れた時にはこのモデルしかなかった
戦時モデルをベースにしているようなのでグリップをウォルナットグリップに付け替えた




(上)FN Browning 実銃と(下)タナカ ハイパワー
上のモデルをP35と推測したのはこのドイツ軍仕様のホルスターとセットで写っていたから
ドイツの軍装は世界中の軍の装備に影響をもたらしこのドイツ式ソフトシェルホルスターも
戦後の共産圏の軍のほとんどがこれを真似していた…それだけ優秀だということかも
今回同型のソフトシェルホルスターを入手した




(上)実銃と(下)タナカエアガンの右側プロフィールの比較
スライドやフレームのフライスのカットラインはMk IとMk II以降では結構変化するので
タナカがこのMk Iモデルをベースにしているのは明らかだ
Mk Iでドイツタイプのソフトシェルホルスターとなるとナチス占領時代のP35ということになる




こちらは先の写真よりコンディションは悪いがナチス時代のP35(上)とタナカ ハイパワー(下)
ナチス時代にFNの作業員がサボタージュを起こしてワザと欠陥ハイパワーを生産した
というような逸話をどこかで聞いたがこの仕上げを見るとそうでもない気がする
戦時だろうが納品先がナチスだろうが自分たちの製品はきちんと作るというほうが
ベルギーのような工業国のマインドのような気がする




このホルスターは海外製のレプリカのようだ
ダミーカートと一緒に並べてみた




折り合わせた銃身グローブにトリガーガードを支えるフラップを
縫い合わせる構成がP38やPPKのソフトシェルホルスターと全く同じ
フラップの後ろには刻印がある




cgu 1940とナチスドイツの国章があるので1940年製のホルスターを模している








前回カスタムショップで入手した金属アウターバレルを使っていたが
ショートリコイルのロックがちゃんとかかっていないようなのでオリジナルに戻した




ハイパワーの野戦分解の分解手順
スライドをいっぱいに引いてセーフティでスライドをロックする




右側のフレームにスライドキャッチレバーのシャフトが突出しているのでこれを押す
Mk Iは押しやすいようにスライドのこのあたりに丸く切り欠きがはいっている
この切り欠きはMk II 以降の後期型では省略された




するとスライドキャッチレバーがフレームから抜ける




スライドグループが前に抜けてフレームと分解できる
ここまでの手順は実銃も同じ




ボーチャードやモーゼル、ルガーは複雑な構造でショートリコイルロッキングを実現したが
ブローニングはガバメントでバレルにリングをぶら下げてスライドキャッチレバーの
シャフトに固定してスライドが下がったらバレルが下に落ち込みロックが外れるという
あっけないほど単純なメカでこれを解決してしまった
ハイパワーではさらにリングも省略してバレルに斜めのガイドレールを彫って
フレームの突起に沿ってバレルが落ち込むようにするという一層単純化したメカに改良した
コロンブス、どこまで卵を割り続けるんだというあっけなさで
以降のSIGやGlock、HKなどの銃器メーカーはみんなハイパワー方式を踏襲している




バレルが前進するとチェンバーは上に上がってバレルの
ロッキングラグがスライドの内側の溝にはまり固定される




バレルが後退するとチェンバーは下に下がってバレルの
ロッキングラグはスライドの溝から外れる
部品点数も極限まで抑えられるし故障のしようがないほど単純なメカ




このハイパワーのロッキングメカはグロックや他の最新のオートマチックにも引き継がれている
元を正せばジョン・ブローニングがM1911のために考案した20世紀初めのメカが
100年経った現在の最新のハンドガンのメカにも踏襲されているというのはすごいことだと思う
優れたアイデアは生き残るということなのかもしれない




先日交換した強化シアレバーの後端がこのフレーム後部の
シアを上から押してハンマーが落ちて撃発が起きる
ここには実銃にはないガスガン独自のメカもある
シアの左横にあるバルブロックリリースはハンマーダウン時の暴発防止メカ




シアがリリースされるとハンマーが落ちてノッカーを叩き
このノッカーがマガジンのガスバルブを叩いてガスブローバックが起きる




ハンマーが落ちた状態でマガジンを装填するとバルブロックがかかっていて
誤ってハンマーから銃を落下させても暴発は起きない




スライドを引いたりしてハンマーをコックするとバルブロックリリースが
シアと逆方向に動いてバルブロックを上から押さえバルブロックが外れる




マガジンはガス充填時はロックをかけているので気化室にガスは入らない
この状態でバルブを叩いてもガスはバルブから吹き出ない




バルブロックリリースがバルブロックを抑えると
バルブは一度復座して気化室にガスが入る
これでバルブを叩けば発射が始まる
スライドを引いていないのに不意に暴発が
起きないようにするガスガン独自のメカ
部品数が少ない優れたメカでタナカのメカデザイナーは
なんとなくブローニングのテイストに近いものがある




(上)FN P35実銃と(下)タナカハイパワー
実銃はかなりコンディションが悪くエジェクションポート周りの
ブルーイングが完全に剥がれているがエジェクションポート後ろの
シアレバシャフトカバーがスライドセレーションと完全に面一になっていて
工作はものすごく丁寧で綺麗だ
パルチザンのサボタージュ説はこの仕上がりからすると眉唾に思える




P35ホルスターは予備マガジンのポケットが深く13連発の複列弾倉を収めることができる
これにP38が入るかやってみたがマガジンはともかく銃は入らない
逆にP38ホルスターにハイパワーは入らない
微妙に互換性がないようだ
それだけタイトに作ってあるということか








こちらはMk IIIタイプの実銃(上)とサンプロジェクトのハイパワーガスガン(下)
サンプロジェクトは旧JACのハイパワーでメカは全然リアルではないが
外観はかなりMk III ハイパワーの特徴を捉えていると思う
実銃は旧タイプのグリップパネルをつけているが下のタイプがデフォルトだと思う




Mk IIIはメカ的にはオートマチックセーフティを装備したことぐらいが違いだが
外観的にはMk I とは大きく変わっている




左プロフィール(上)タナカのハイパワー1935と(下)サンプロジェクトのハイパワーMk III
左でわかることはセーフティレバーが延長されサイトがMk IIIでは大型化されてホワイトが入ったこと
グリップパネルには親指をかける突起が追加されスライドの肉抜きのカーブがかなり変わった
Mk IIIの方が工作が少し簡略化されたようだ




右プロフィール(上)タナカ(下)サンプロジェクト
Mk IIIではセーフティはアンビになってハンマーもリングタイプからホーンタイプに変わった
フィールドストリッピング用のスライドの円形の切り欠きはMk IIIでは省略されている




(上)タナカと(下)サンプロジェクト
エキストラクターもMk Iでは内蔵式だったが
Mk IIIではスライドの右側に露出している




タナカ(左)はホールドオープンするとエジェクションポートがぽっかりあくが
サンプロジェクト(右)はメカが古いのでエジェクションポートはメカで埋まっている



ボディガード

誰が言ったのか知らないが、ハイパワーは玄人好みの銃だとのことだ。

メカとしては古い。

なんせジョン・ブローニングが1926年にまとめた構想がベースで1934年に完成された銃だ。

ダブルアクションでもないし装弾数13連発は今となっては多い方でもない。

それでも玄人が好むとしたら、メカが単純だからだろう。

部品点数からいえば第一次大戦から実績があるガバメントとほとんど変わらない。
ダブルカラムのマガジンを装備するためにトリガーバーのレイアウトを変更してスライドの中を通したが、そのメカのおかげで独立したディスコネクターを省略することができた。

部品点数が少ないということは、それだけ故障が少ないということだ。

本職の銃器に命を預けなくてはいけない玄人が、銃を選択するときに何を重視するか…
これもテッポ好き達が好んで議論していたテーマだった。

一撃でバリケードも粉砕し車のドアも貫通するようなインパクトか?
狙った獲物は絶対に外さない命中精度か?
瞬時に数十発の弾幕を張れる連射能力、火力か?

実際にはそれらもないよりある方がいいだろうけど、一番重要なのは引き金を引けば確実に弾が出て、引かないときには絶対に暴発しない信頼性ではないか?

そういう意味ではジョン・ブローニングもその作品のハイパワーも実績がある。

ほぼ同じ理由でダイハードの映画の原作小説の主人公は、ハイパワーを使用しているという設定だった。
映画では米軍制式拳銃トライアルで採用決定直後で話題になっていたベレッタM92Fを使用していたが、ベレッタよりもハイパワーを使う方がやはり渋くて玄人っぽい気がする。


元シークレットサービスの雇われボディガードが、人気絶頂の女性歌手の身辺警護を依頼されるという物語の「ボディガード」では主人公を演じるケビン・コスナーはまさにハイパワーを選択していた。

まさに警護のプロという設定なので、玄人っぽい選択としてハイパワーが登場した。





元SSのボディガード(ケビン・コスナー)が人気歌手の
レイチェル(ホイットニー・ヒューストン)の警護を依頼される
警護についたコスナーが早速用意した銃器がH&KのP7M13と
ブローニング・ハイパワーMk IIの二丁だった
P7とハイパワーというのは面白い取り合わせだ




ほぼ同アングルのタナカハイパワー
映画に登場したのはエキストラクターが露出しているがセーフティが
まだアンビになっていないMk IIだがこれはオリジナルの1935




レイチェルを狙う殺人者から警護するために山荘に潜むがそこにも殺人者の手が…
フランク(コスナー)は片時もハイパワーを傍から離さない




同アングルのタナカハイパワー1935
こうしてみるとエキストラクターの形状の違いがわかる




銃器の扱いに慣れた玄人という設定だが残念ながらケビン・コスナーは玄人には見えない
殺人者の気配に気がついたコスナーがレイチェルの姉に「そこでじっとしていろ」というシーン
彼女に銃口を向けている
さすがにトリガーに指はかかっていないがそれでも撃つつもりがない相手に
銃口を向けるのは玄人っぽいとは言えない
銃の選択は面白いんだけど出演者にちゃんとトレーニングをして欲しかった




ハイパワーとCz75については本当はエアガンではなくモデルガンが欲しいんだけど
残念ながらどちらもいいモデルガンがないんだよね
できればダミーカート仕様に改造できて実銃のメカを忠実に
再現できるモデルガンをどこかのメーカーが作ってくれないかなぁ











2019年8月11日
















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