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Walther P99〜マルゼンのCQCカスタムセットと
メカのディテール〜Glockフォロワーはどうなったか

P99

Walther P99〜マルゼンのCQCカスタムセットとメカのディテール〜Glockフォロワーはどうなったか

PPKとP38でダブルアクションオートという機構を確立して、自動拳銃の一つの源流になったワルサー社のその後の話。

ワルサー社にとってもドイツの敗戦は大きな影響があった。

戦後は東ドイツからの脱出、仏マニューリン社の接収など様々な試練に遭いながら西ドイツのウルムに本拠を移したワルサー社は戦後西ドイツ軍や警察の信頼も厚くP38の生産を再開しドイツ軍にP1という名称で採用されて再スタートを切った。

P1は名前が違うだけでそのままP38だったが、先進的なメカだったP38もさすがに1960年代になるとアップデートが必要になってきた。

P5はP38のオープンタイプのスライドをやめてブローニングタイプのクローズドなスライドに変更、セーフティ兼用だったデコッキングレバーを専用にレイアウトしなおしたが、全般的にはP38からあまり代わり映えしなかった。

P88ではロッキングブロック方式のワルサー独自のショートリコイル方式をやめて、ブローニング方式のティルトバレルロックのメカに変更するなどますますブローニングに似てきて「後追い」のイメージは拭えない。

ハンドガンに関してはワルサーは泣かず飛ばすで、どちらかというと競技用のラピッドファイアピストル、ライフル競技用銃、CO2ピストル、エアライフルなどのジャンルで高級高精度の製品を作るメーカーというイメージに変わっていった。

そこにグロックショックというような変革が銃器の世界で起きた。

HKが製品化して大失敗に終わったVP70の先例で、ストライカー方式+ポリマーフレームの9mm強装弾の銃は必ず失敗するというセオリーはグロックが打ち破ってしまった。

一旦突破口が開くと世界中の銃器メーカーがグロックのコピー、影響を受けた製品を作り始めた。

グロックがアメリカの司法機関に浸透し始めた1996年にP99は発表された。

かつては画期的なメカニズムを開発して銃器の革命をリードしたワルサー社はグロックフォロワーの一つになりストライカー方式、ポリマーフレームのスタイルを継承する。

グロックのショックがいかに大きかったかというとS&WがグロックG17をほぼ丸コピーしたSIGMAで知財裁判を起こされ和解金を払ってもまだグロックとほぼ同じ構成のM&P9を発売するという一例でもわかる。
S&WにはM39以来のダブルアクションオートのラインナップがあるにもかかわらずだ。

丸コピーすれば裁判を起こされるのはおそらくわかっていただろうけど、それでも思い留まれなかったということだろう。

S&Wですらそうなのだが、ワルサーはさすが老舗のイノベーターだからグロックそのままはやりたくなかったという矜持がP99に看て取れる。

P99のデザインが好きなのは、さすがエルゴノミクスのワルサーだと思わされるからだ。





Walther P99のCQC(近接戦:クロスクォーターコンバット)カスタムセットフル装備
P99にはデフォルトでバレル下にアタッチメント用のレールがあるが
ここに拡張マウントをつけてライトを装着している
銃身はサイレンサーが装着できようにネジ山が切られたアルミバレルが装備されている




このセットにオープンドットサイトのTrijiconのRMRを載せてみた




このセットのマウントライトはMT-1、マズルサプレッサーはMS-1、
マウントフレームにもワルサーマークがありワルサー純正品ということになる
マルゼンはP99開発の時にドイツワルサー社から実銃設計図の提供や
メカニズムのアドバイスも受けておりワルサーマーク使用権も正式に
ライセンス供与されているのでこれはコピーというよりワルサー純正品ということなのかも




スライド左には「CARLWalther ULM/ドイチュラント」の刻印




フレーム右側には「MADE IN JAPAN」とエアソフトガンの刻印もある
「使用する前に安全マニュアルを読め」の刻印は実銃にもある
せっかくサイトマウントもあるのでここにTrijiconのRMRを載せてみた
以前AUGに載せていたACOGの上に乗っていたサブサイトの
RMRだけを別マウントに載せてここに固定してみた




サイレンサーを外して正面からRMRのルビーコートの赤いレンズを見る




マウントライトはCR123Aというカメラ用の電池を2本使いかなり明るい




オープンドットサイトはスライドに直接固定するタイプもあるがRMRは衝撃に弱そうなので
こういうマウントレールがフローティングになっている方が向いていると思う




RMRのレンズは赤い
だからなのか視界は青い




RMRのアイレリーフは10〜15cmというところなので腕を伸ばして
射撃するハンドガンではポイントを見失いやすく使いやすいとは言えない
むしろひじを曲げて顔に近づけた方が実用的かもしれない
アウトドアならウイーバースタンスにしろアイソセレススタンスにしろ
ひじを伸ばして射撃するのが基本だがCQCなら腕が届くような接近戦になる可能性もあり
基本通りの腕を伸ばした射撃は逆に腕を取られたりする危険があるので
ひじを曲げて射撃するというテクニックもある
そういう状況ではオープンサイトよりも使いやすいサイトと言える




CQCセットをすべて外して素のP99にしてみた
グロックと比べてもコンパクトなサイズにまとまっている




スライドは高硬度鋼、フレームはポリマー、トリガーセーフティ、
マニュアルセーフティ無しという構成はまさにグロッククローン








ショートリコイルのロッキングメカはエジェクションポートにチェンバーがはまり込むSIGやGlockと同じタイプ
バレルが前進してロックがかかった状態ではチェンバーとスライドはほぼツライチになる




スライドが少し後退するとチェンバーは下に落ち込み
エジェクションポートからチェンバーは外れてロックが解除される




スライドがホールドオープンすると結構はっきりと銃身が
上を向くのもブローニングタイプのショートリコイルの特徴




ワルサーはPPKで優れたローディングインジケーターを開発したが
ベレッタ方式の赤いペンキが見えるエジェクターの方が評判がいいのは心外
ならばコッキングインジケーターを装備するには突き出し式インジケーターに
赤ペンキを塗るという両方の良いとこどりをやったということなのか
赤で目立つうえに暗闇でも親指でコッキング状態を確認できる優れたデザイン




スライドの上のデコッキングボタンでコックされたストライカーはコック解除される
最初この位置は使いにくいのではないかと思ったがこれは誤って
デコックしたりしないようにこの位置にレイアウトされているらしい
明確な意思がないとこの位置ならデコックされない確実性を重視したようだ
デコックされるとインジケーターはスライド内に引っ込む




ワルサーが単なるグロックコピーに終わらなかったのは独特のトリガーメカからわかる
トリガーはお尻から落としても暴発しないトリガーロックメカがあり
慣性では暴発しないが意思を持ってトリガーを引けばロックは外れるという安全機構になっている
トリガーガードの山よりも前にトリガーが出ているのがセーフティポジション




トリガーにロックがかかっていない通常のダブルアクションポジションは少し後退している




さらにストライカーがコックされているシングルアクション状態でも
トリガーをダブルアクション位置に戻せるアンチストレスポジションも用意されている




これは通常のシングルアクションのポジション
シアが切れるまでわずかの距離引き金を引くと発射ができるが
この状態は緊張を強いられるためシングルアクション状態を維持した警戒態勢のまま
一旦シビアなトリガー位置からトリガーを戻すと先ほどのアンチストレスポジションになる




スライドを引いてコックするとデコックしてもダブルアクションポジション
シングルアクションポジションからデコックするとセーフティポジションまでトリガーは戻る
慣れないと頭がこんがらがってきそうだが要は引き金に不意に触った時の危険度を
意図的にコントロールできると考えると面白いメカではあると思う




これは実銃とは違ってマルゼンのガスガンの独自メカだがテークダウンボタンが
クロスボルトセーフティになっていて右から押し込むと発射しないセーフティポジションになる




テークダウンボタンを左から押し込むと発射可能になる




アンチストレスポジション並びに通常のダブルアクションのトリガーポジションはこの位置
セーフティポジションは少し前進した位置




それに対してフィールドストリッピング(野戦分解)の時にテークダウンボタンを
引き下げ位置に固定するポジションはもう一段トリガーが前進した位置に固定される
これでスライドのロックが外れる




するとスライドグループが抵抗もなく前に抜けるはずだ
抜けないのはマガジンを抜き忘れた時ぐらいだろう




アウターバレル、インナーバレル、リコイルスプリングユニットが分解できる
ホップ調整もこの状態でやるちょっとめんどくさい構造




実銃はストライカー方式だがマルゼンP99はガスブローバックなのでピストンを
スライド内にレイアウトしないといけない関係上ストライカー方式というわけにはいかない
なのでハンマー方式となるので実銃とはレシーバーの構造も少し違う
レシーバー側の主要部品の名前でそれぞれの役割がほぼ分かる




ハンマーがコックされるとハンド経由でコッキングインジケーターが引き起こされる
ハンマーの左にシア直結のデコッカーがありスライドボタンを
押すとこれが前に押されてデコッキングが起きる
トリガーバーが右にあるのはワルサー伝統のメカでその上の突起がディスコネクターの働きをして
引き金を引きっぱなしでも機関銃のような連射は起こらず一発ごとに発射は止まる




トリガーを戻すとディスコネクターは干渉しなくなり
トリガーバーは上昇して再びシアに連結する




マルゼンのブローバックモデルは組立に少し要領が必要だ
まずテークダウンボタンを下に下げた解除位置で固定する
固定はトリガーを固定位置にすればいい




ハンマーが落ちていることを確認してスライドグループをレシーバーに
はめていくがハンマーダウンしているとコッキングインジケーターハンドが
スライドに干渉するのでこれを押さえながらスライドをはめていく








リファレンス写真(上)がWalther社のP99初期型実銃(下)マルゼン P99
さすがに実銃の図面を提供されているだけあって外観で違いを見つけるのは困難




これはワルサー社ホームページからWalther P99現用型(上)とマルゼンP99(下)
現用型はマウントレールが汎用性を広げたデザインに変更された
トリガーガードのデザインも変更されスライドセレーションの目も荒くなった
変更点はそれぐらいか




エアガンの刻印はスライド右側にあった
カール・ワルサーGmbHのライセンス表示とエアソフトガン協会刻印
6mm口径表示がエジェクションポートの9mm口径表示と並んでるのが面白い




ワルサーの金字塔のP38(上)との比較
9mmルガー弾を8発装填するP38と16発装填するP99




ワルサーP38(左)とP99(右)
どちらもエルゴノミクスデザインが美しい




ワルサーP38(左)とP99(左)
チェンバー位置を揃えて並べてみるとP99のバレルの短さが際立つ
ワルサーはP38のショートバレルバージョンを試作するなど
バレルは短い方がいいと考えている節がある
一般にバレルは長い方が銃口初速は稼げるが長いバレルはかさばるし
接近戦のみに特化した銃は大きな銃口初速は必要ないという考え方なのかもしれない




チェンバー位置を揃えるとP38(左)よりもP99(右)の方が
グリップの位置がかなり前についていることがわかる
ブルパップ的というかこのデザインでサイズを抑えることに成功している




サイレンサーを単独でつけたP99
サイレンサーと日本で言われることが多い銃口アタッチメントは
昔「サイレンサー殺人部隊」という映画がヒットした影響で
こう呼ばれることが多いが英語では普通マズルサプレッサーという
発射音をアタッチメントで完全に抑えることは不可能で映画の「ブシュッ、ブシュッ」
という発射音は音効さんの創作、実際にはサプレッサーではあんな音にはならない
音を消すのではなく発射炎と音を抑えて距離感を錯覚させるとかの
効果の方が主目的なので特殊部隊向きであるのはその通りかもしれない








グロックG17(上)とワルサーP99
P99はグロッククローンの一つなんだけどさすがに老舗ワルサーだけあって
グロックをただ真似するだけではなく独自のメカも組み込んで
ワルサーらしいカーブを持ったエルゴノミクスデザインも相まって面白い銃になっている
メカ的に好きかどうか好みは分かれるところだがメカ好きにとってはそそるのは間違いない



2019年8月20日
















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