KSC/ベレッタM8000Fクーガー〜BERETTAマークを外した時期のガスガンをジャンクコンディションで入手し動くように整備
モデルガン・エアガンの楽しみ方として、箱出しでそのまま撃って遊んだり、部屋に飾ったりというのもひとつのあり方だと思う。
というか普通そういう楽しみ方をするんだと思う。
映画を観ながらテッポを振り回して登場人物になりきったり、サバゲなどに参加してエアガンで撃ち合いしたりというところかな。
そういう楽しみ方もあるけどテッポのメカそのものにはまるという楽しみ方もあると思う。
例えばモデルガンの発火機能を殺して実銃そのもののメカを再現するとか、エアガンの調整やチューンナップを楽しむとか…
かくいう私自身も後者に当たると思う。
中古のエアガンを入手した時にそれがまともに動かないジャンクだったら普通がっかりするんじゃないかと思うが、私の場合は「これをなんとかするぞ」とわくわくする。
ジャンクの修理がうまくいかなかった時は結構愕然として「カスを掴んだかな…もうジャンクあさりはやめよう」と反省するのだが、うまくいった時の気分の良さったらもう病みつきになる。
昔から気になっていたベレッタのM8000通称「クーガー」がジャンクコンディションで手に入ったのでこれをなんとかした。
【実銃について】
クーガーに関して。
この銃は今から25年前、1995年にM92FSの後継機種としてベレッタ社から発表された。
Wikipediaやどこを見ても「CADで設計された初めての銃」という解説がされているがなぜそこが強調するポイントになったのかよく分からない。
1995年当時のCADなんて今のように工作機械との連携もそんなにスムーズにできていたわけではないし、構造計算ともそんなに連携できていなかったに違いない。
Windows95が発売になる前の時代のCADなんて、いわばワープロに毛が生えたようなものだった気がする。
銃器の世界で1995年製といったら現代の最新銃に近いという印象になるが、PCの世界では1995年といえばやっと石器時代から文明期に入ったような大昔の話だ。
そこよりも重要なのはベレッタがおそらくM1915あたりから連綿と継承してきたスライドの上面をざっくりとカットするデザインを捨てて、ブローニングタイプのバレルをすっぽり覆ったスライドデザインに変更したことと、それでもブローニングタイプのティルトバレルのショートリコイルロッキングメカの軍門に下るのが嫌で「ロテイティングバレルロッキング方式」という耳新しい方式を導入したということだと思う。
自動小銃や機関銃の世界では「ロテイティングボルトロッキング」という方式は割と一般的だ。
しかしハンドガンでロテイティングロッキングというのなかなか同類は思い浮かばない。
このメカがどうなっているのかなというのは当時から大いに気になっていた。
【KSCのM8000について】
そのロテイティングバレルロッキングメカを忠実に再現したガスガンがKSCとウエスタンアームズの二社から競作のように発売されたのが実銃が発表された翌年の1996年だったか、当時は今よりもエアソフトガンメーカーも腰が軽かったし体力もあった。
正確には9mm口径のM8000を出したのはKSCで、WAはM8045という45口径のモデルを発表したので多少は住み分けもあったのかもしれない。
しかしその後、例の商標権訴訟の嵐の時代が来て、KSCはベレッタの刻印を完全に削除して刻印はすべて「KSC」になってしまった。
そのあとは各メーカーの報復合戦になってS&Wやワルサーの商標をWAに使わせないとか本格的紛争になっていき、さらに金属フレームの自主規制を提言したWAが金属フレームのガバカスタムを発売して他社を牽制するなどの醜い泥仕合にユーザーも振り回されて
「テッポメーカーなんか全部滅びろ」
と呪詛の言葉を残して私個人もめぼしいテッポのコレクションを中古屋に投げ売りして、中古屋に持ち込むガソリン代も出ないような普及版のモデルガンは粗大ゴミの日に全部捨ててしまったという歴史がある。
以来20年以上テッポアパシーだったのだが、この数年またちょくちょくテッポをいじり始めるようになった。
そしたらメカには興味があったが、テッポメーカーのいざこざにうんざりして手にすることがなかったクーガーが手に入ることになった。
懐かしい。
クーガーはベレッタのM92FSとM84の中間ぐらいの中型拳銃なのかと当時思い込んでいたが、実際に手に取ったクーガーは意外にでかかった。
これは中間ぐらいのクラスを狙ったのではなく、いろいろ欠点を言われていたM92系の後継機種としてベレッタが開発した銃だったんだということを手にして初めて知った。
全体的に傷もなく綺麗だったがジャンクだったのはブローバックができずに一発も打てないことと、スライドストップがかからないという二点のためだった。
KSCのM8000クーガーを入手
全体的にはKSCらしいかっちりした出来でなかなかいいんだけど
ガスを入れて撃つといきなり生ガスを吹いて一発も撃てない
またスライドストップもかかるがマガジンを抜くとスライドが戻ってしまう
生ガスを吹く原因はピストン周りにありそうだったのでスライドを完全分解してみた
開けてビックリでピストンの頭についていないといけないピストンカップ(丸囲み)が
シリンダーのお尻のところに入っていてピストンの脇をガスがいけいけになっていた
前のオーナーが完全分解したらしいがピストンカップを
つける場所がわからず適当に入れたとしか思えない
せっかく完全分解したのでエキストラクターの部分の黒染めを
剥がしてアルミニウムブラックでブルーイング
このエキストラクターが単なるモールドではなく別部品の表現に
なっているのがKSCのポイントなのでここをよりリアルに仕上げた
組み込んだ時の様子
たったこれだけのことだがこれだけでも随分と印象が変わる
オートマチックセーフティやブリーチ固定ピンが単なるモールド
なんだけどここらもなんとかしたくなってきた
セーフティレバーも黒染めを剥がしてブルーイングした
もうひとつ謎だったのがスライドストップ
スライドの切り欠きが引っかかる突起の先端がなぜか丸く削られていた
これなんか自然に丸くなったとは思えないので意図して削ったんだと思うけど
前のオーナーの狙いが全く意味不明
スライドストップするのが嫌だったのか?
ここのエッジを尖るように削り直したらスライドストップがかからない問題もあっさり解決した
こうしてホールドオープン後マガジンを抜いてもスライドが勝手に戻らなくなった
これが正しい実銃と同じ動きなのだけどそういうことを知らないユーザが
「故障か?」と思ってスライドストップを削ったのか?それとも他に狙いがあったのか
前のオーナーが何を考えていたのかさっぱりわからないがとにかくこんな簡単な調整で
ほぼ新品のクーガーがジャンク価格で手に入ったんだからジャンクあさりはやめられない
KSCのM8000は発売当初はベレッタの刻印が入っていて
グリップにもベレッタの三本の矢のマークが入っていた
例の商標権訴訟のあおりでKSCはベレッタマークを完全に削除してしまい
スタイルやメカはリアルだが刻印が「なんだかなぁ」なモデルになった
でも刻印以外はとても良くできたモデルだし発売当初はモッサリしていたブローバックスピードも
刻印改定モデル以降はビシッと手首にショックがくるような鋭いリコイルに改良された
(上)Beretta社製M8000Fの実銃と(下)KSC製のM8000F
(上)Beretta社製M8000Fの実銃と(下)KSC製のM8000F
比較するとスタイリング的にはほぼ完璧に実銃を再現している
刻印を除けばリアルで実銃はフレームはアルミ合金製なので
こういうフレームシルバーモデルも実際にあったかもしれない
グリップパネルはKSCのマーク
東京マルイみたいに正一稲荷の紋章みたいな紛らわしいマークで
ごまかすぐらいならいっそこの方がすっきりして男らしいかもしれない
でもまあ近日中にベレッタの三本矢のマーク入りグリップパネルを入手するかな
スライド刻印もPietro BerettaとなっているべきところがKSC Cooporationとなっている
このテッポの最大のポイントはこのロテイティングバレルロッキングで
このメカは発火モデルガンでは再現できない
これは発砲前のロックがかかった状態
スライドが少し後退するとバレルが回転してエジェクションポートに
見えていたロッキングラグが上に隠れる
このロッキングラグが実際にスライドにロックしているので
回転して初めてスライドは解放されてブローバックできる
この再現度はやはりガスブローバックでないとなかなできない
通常分解の手順はM92FSなんかとほぼ同じでフレーム左側の
テイクダウンレバーを引き下げるとスライドが前に抜ける
分解するとフレーム、スライドリコイルスプリングブロック
ロテイティングカム、バレルに分解できる
バレルにはロテイティングカムの突起が入る溝が切ってあり
このガイドでスライドが後退すると銃身が回転する
ロテイティングカムはフレーム側に固定されその上を
リコイルスプリンググループとバレルが前後する
このシステムを採用した狙いはバレルに前後運動以外の動きをつけないことで
狙点のズレを防ぐということもあるだろうし世界中の銃器メーカーが
軍門に下ってしまったブローニングタイプのティルトロッキングの
ショートリコイルメカを導入したくなかったという意地のようなものも感じる
このメカはベレッタの最新型のPX4にもほぼそのまま継承されている
それ外のメカはベレッタM92系とほぼ同じ
スライドの右側にトリガーバーが外付けされているのも同じだ
その下にASGKマークの刻印がある
テイクダウンレバーの内側にKSCのマークが隠れている
刻印はベレッタだがKSCのマークがここに隠されている…という演出だったのだが
例の訴訟騒ぎでベレッタ刻印が全部KSC刻印に変更されてしまったので
KSCマークをここに隠す意味もなくなってしまった
フレーム側のメカはM92系のメカを踏襲していてスライド溝にディスコネクターの突起、
フレーム上にデコッキングピースの突起が見えているのもまま
スライド破損時の割れたスライドが飛び出すのを止めるための拡大ハンマーシャフトヘッドが
スライドの溝にかみ合っているところまでM92FSと同じなのは感心した
スライド破損の心配がないからこの形状にしたはずなのに
一度ついたレピュテーションは簡単に覆せないらしい
KSCはNC工作機でフレームやスライドを削りだしているのが当時評判になった
フレームには今となっては多少大げさだがそのツールマークがはっきり残っている
ダストカバー、トリガーガードの内外にもはっきりツールマークが…
その割にはトリガーガード内側のパーティションラインが
完全に消えていなかったりなんとなくチグハグではある
KSCのガスガンはヘビーウエイトではないが持ってみたところ重量は800g近くあって、なかなかずっしりくる。
マガジンがソリッドなジンクだからかずっしり重い。
クーガーの評価に関してはKSCとWAだとエアガンファンの間ではWAの方が評価が高いのかな?
でもWAって伝統的にデフォルメがあるし、そして何よりも金属部品が数年で劣化して自然崩壊が始まるという品質の悪さもある。
それに往年の訴訟合戦の口火を切ったしダブルスタンダードな自主規制論とか、メーカーとして完全に信用していないのでWA製品だけは死んでももう二度と購入しないと心に決めている。
モデルとしての出来もKSCの方がいいと思うよ。
今ではモデルガンのような1/1スケールの模型にも完全に商標権は適用されるという慣例法が、どうも世界中のスタンダードになってしまっているようなので今更WAに恨み言を書いても仕方がないのだが…
クーガーを手に入れたのは出物のジャンクがあったからだけどそれだけではない。
話は次に続くのだ…(多分)
2019年11月26日
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