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映画に登場するプロップガン〜ひたすら磨いたミリポリが
登場するフィルムはギャングムービーだけじゃないぞ!

MP on the film

映画に登場するプロップガン〜ひたすら磨いたミリポリが登場するフィルムはギャングムービーだけじゃないぞ!

一昨年に手に入れたポリッシュ仕上げのABSミリポリとチーフをずっとなんとかしたいと思っていて試行錯誤を続けていたがやっとなんとかなったという話を前回まで書いていたが、このテッポが登場する映画の話がまだだった。

ミリポリことSmith & WessonのM10 Military and Policeの登場する映画なんて、それこそピーメが登場する西部劇と同じことで、ミリポリが登場するギャング映画、刑事物なんてどっさりあるに違いない。

…と思ってテッポが効果的に使われていた映画を何本か改めてチェックしてみたら、印象に残るシーンは意外にもコルトのポリスポジティブだったりして思ったよりもミリポリが使われている映画は少ないことに気がついた。

なぜだろう?

アメリカ人の伝統的なコルトびいきとかも関係あるのかな?

日本ではマルゴーだかコクサイだかがハンドエジェクターとかいう名前で黎明期からモデルガン化していた銃だし、このテッポにノスタルジーを感じる世代はいると思うんだけど、印象と違ってフィルムでは冷遇されているのかもしれない。

いくつか拾ってみたらやはりフィルムノワールっぽい作品がいくつか並んだ。

このテッポは地味だしスタンダード中のスタンダードなんだけど、その割にはキャラが強い。




アンタッチャブル

ミリタリーとポリスというモデルネームから軍と警察仕様みたいに連想するけど、実際には警察はともかく軍で使用されたのは一部で、むしろ私立探偵&ギャング御用達というイメージが強い。

それでギャング映画というと、やはりアル・カポネ。

子供の頃「アンタッチャブル」というアメリカのテレビシリーズが放送されていて、それを両親も好きで結構見ていた。

このシリーズの冒頭で決まりのナレーションが
「エリオット・ネスとFBIの面々は、マシンガンケリーの情報を掴みその隠れ家を襲った!」
という調子だった。

それでエリオット・ネスとアンタッチャブルのメンバーというのはFBI(連邦司法捜査官)だと思っていたが、ブライアン・デパルマのこの映画で、実はエリオット・ネスはFBIの所属ではなく財務省の所属だということを知った。

そういえばアルカポネ(…本名はアルフォンソ・ガブリエル・カポネというすごくイタリアっぽい名前なのもこの映画の裁判シーンで知ったのだが)の起訴事実は殺人でも禁酒法違反でも暴行でもなく脱税だけだった。

史実ではエリオット・ネスの「不可触捜査班」は話題になって人気もあったが、その追っていた禁酒法違反容疑は立証できず不起訴、別のチームが内偵していた脱税容疑が結局アルカポネを追い詰めた。
映画ではエリオット・ネスが脱税で起訴したような話になっていた。


昔見ていたテレビシリーズでは、エリオット・ネスらに襲われたマシンガンケリーが
「撃つな!Gメン!撃つな!Gメン!」
と叫んで投降したことから
「Gメン、ガバーンメントメンのことか、これはいいな」
とネスらがその呼び名を気に入ってGメンと名乗り始めたのが「Gメン」という言葉の起こりだというくだりがあった。

本当かどうかは知らない。

本当だったら面白い話だけど、映画もドラマもかなり脚色があるからなぁ…





カナダ国境で密輸入酒を押さえるべく輸送団を急襲したアンタッチャブルのメンバー
帳簿係の自白させるため「シーザーと同じくらいとっくに死んでる」男の口に
銃口を突きつけ「白状しないならこの場で殺す」的な脅しをするシーン
カナダの国境警備隊員が「こんなやり方には同意できかねます!」
と抗議すると「シカゴでは毎日これですよ」とネスが切り返す




このシーンでショーン・コネリーが使うリボルバーがミリポリだった




冒頭のアンディ・ガルシアが警察学校で射撃練習をするシーンは
ミリポリだと思っていたが改めてしっかり観てみたらコルトのポリスポジティブだった
ミリポリが使われているシーンは2シーンしかなかった




もう一つのシーンがシカゴセントラル駅の大階段のシーン
アンディ・ガルシアがミリポリのシングルアクションで
帳簿係を人質にとったギャングを一撃必殺で狙撃する
その時のテッポがミリポリだった




ミリポリ発砲シーンのアップ
よく見ると発砲シーンの別のチェンバーにはちゃんと弾頭が見えている
これはデパルマのリアリズムということなのかもしれないが大変危険な撮影だ
弾頭がついたダミーカートを入れて一発だけ空砲を入れて発火させていると
ダミーカートの弾頭が脱落して弾が発射されてしまう事故が起こりうる
確かブルース・リーが死んだ事故もこれが原因だった記憶がある




コクサイのミリポリの同アングル
遠目にはコルトのポリスポジティブと似たシルエットだが
見分けるポイントはエジェクターロッドキャッチがあるかないか
あるのがミリポリ、なくてエジェクターロッドが独立しているのがコルト



ユージュアルサスペクツ

ミリポリが出てくるのはギャング映画だけではない。

この「ユージュアルサスペクツ」はギャング映画というよりサスペンス、ピカレスクムービーに入るのかもしれない。

「何か」を密輸していたと思われる貨物船が港で炎上。

ただ二人の生存者の外国人の船員とコソ泥。

重傷を負った外国人は「カイザー・ソゼ」という謎の言葉を残して事切れる。

たった一人の生存者になったコソ泥は「カイザー・ソゼ」の名前を聞くと怯えきって言葉をはぐらかす。

一体何があったのか、このコソ泥を警察が追求するうちに驚くべき事実が判明する…という意外なストーリー展開でこの映画はアカデミー賞脚本賞と助演男優賞(ケビン・スペイシー)を受賞している。





コソ泥が少しずつ語り始めた「カイザー・ソゼ」の正体
人質に取られた家族を自らの手で殺し敵対する者たちを根絶やしにする冷酷な怪物…
その凄絶な過去の回想シーンでソゼの手に握られた銃はミリポリの4インチモデルだった




同アングルのコクサイミリポリ4インチ
スタンダードなテッポだからこういうシーンでは逆に説得力がある



地獄の黙示録

M10はミリタリーアンドポリスというニックネームで呼ばれているが、実際には1920年代から1960年代にかけて警察用ピストルとして広く採用されているにもかかわらず軍用としてはあまり採用されていない。

戦時中は制式拳銃のM1911の不足のために仮採用されたM1917もまた不足したため、M10もいわゆる「ビクトリーモデル」と命名されて米軍に補欠の補欠として仮採用された。

しかし米軍はもともと38口径は信頼していなかったのかもしれない。
戦争が終わったら仮採用したミリポリは全部払い下げてしまった。

このうちの一部が日本警察に払い下げられ、ミリポリをオープンホルスターに吊った警察官は1980年代頃まで見かけた。


米陸軍はミリポリを本採用しなかったが、空軍は守備隊兵装としてミリポリを採用した。

手元の写真が出てこないが、1960年代の戦略空軍のICBM基地のミサイルサイト勤務の兵士は皆ミリポリを腰に吊っていた。

空軍は陸軍に先駆けてAR-15をM16という名称で基地守備隊のライフルとして採用しているので、小口径の銃には理解があるのかもしれない。


地獄の黙示録を見るとドラン河を遡上する海軍のパトロールボートの艇長がミリポリを持っていた。

海軍がミリポリを制式採用しているのかどうかは知らないけど、映画のモデルは戦時中のビクトリーモデルとは明らかに違うモデルだからそうなのかもしれない。





農民のサンパンを臨検するパトロールボートの艇長は手にミリポリを持っている




よく見ると3インチのブルバレルモデルでFBIはこういうモデルを使用していたが
海軍もこういうモデルを使ったのかどうかよく分からない
ただこの映画は前にも書いたが銃器の考証は
結構しっかりしているので本当にそうなのかもしれない
個人持ちの兵装という設定なのかもしれないが…



ミラーズ・クロッシング

西部劇にピーメが使われるようにギャング映画にはミリポリが使われるのは当たり前…と思っていたが、実際にチェックするとびっくりするぐらいギャングどもはミリポリを使っていない。

これは映画会社の都合なのか、実際ギャングどもは「ポリス」という名前がついた銃をゲンが悪いと嫌ったのか…
(それならコルトのポリスポジティブもダメじゃないかという気がしないでもない)

映画会社の都合というのは結構ある。
「ダーティハリー」でドン・シーゲルはS&WにM29の4インチをプロップガンとしてオーダーしていたが、S&Wのやる気がない担当者のずさんな仕事で6.75インチのM29が撮影現場に届いてしまった。
撮影日程が迫っていたのでシーゲル監督は、そのまま6.75インチのM29をクリント・イーストウッドに持たせて
「もう一発弾が残っているか試してみるか?
言っとくがこの銃は44マグナムといって世界最強の威力を持った銃だ。
弾が残っていたらお前の頭は粉々に吹っ飛ぶがそれでも試してみるか?」
と脅すあの有名なシーンを演出してみせた。





ギャングものの代表ということで観返してみたらこの映画はコルト32オートや
ディテクティブ、ポリスポジティブなどコルト拳銃のオンパレードだった
唯一ミリポリが出てきたのがギャングに買収された警官に混じって
殺し屋が敵対したギャングを皆殺しにするシーン
2挺拳銃のガンマンが持っていたのが5インチのビクトリーモデルだった
1920年代ならあり得るチョイスだがギャングはコルトが御用達なのかとても少数派だ



HANA-BI

コメディアン・ビートたけしが深作欣二に見出されて監督「北野武」として映画制作に関わり始めた当初は、松本人志の「大日本人」のようなお笑いタレントの話題作りだけの三流映画みたいな見方もされていたが、「その男、凶暴につき」「ソナチネ」などは結構映画評論家から高評価を得ていた。

只者ではないと認識させたのはやはりベネチア映画祭で金獅子賞を受賞した「HANA-BI」だった。


警察組織を追われ難病の妻を伴って死出の旅に出るというストーリーは後年の「Dolls」にも通じる北野武のテーマなのかもしれない。

北野武がアカデミー賞なんかよりもはるかに権威がある三大映画祭の受賞監督になれたのは、いまだにフロックかもという評価が付きまとうくらい出来不出来の差が激しい監督だが、「アウトレイジ」シリーズなどを観るとやはりこういうテーマなら本領を発揮する人なのかもしれない。





主人公の元刑事(ビートたけし)が警察を追われたきっかけになったのが
張り込み中の犯人(薬師寺保栄)が同僚に発砲した事件
この男にリボルバーの全弾を撃ち込んでしまったため元刑事は懲戒免職になる
薬師寺はミリポリのビクトリーモデルを使用している




4インチのミリポリ戦後モデルと5インチのビクトリーモデルでは
ちょっとフォルムが違うがいずれもいいバランスのテッポだ




元刑事の西がヤクザから巻き上げたミリポリのブルバレル3インチモデル




ダブルアクションリボルバーはハンマーとシリンダーを掴まれると発砲できない
さすが北野武は銃に詳しいらしく銃を突きつけたヤクザの銃を押さえ込んで発砲できなくする
キタノブルーとか編集のテンポとか映像的にも才能がある人だし
深作欣二仕込みの銃撃シーンのリアリティーもある
日本の映画監督はほぼ全員テッポアパシーなのでこういう銃に詳しい監督は貴重だと思う




コクサイミリポリをポリッシュして銀磨きをかけた様子を撮影した前回の写真が
光を反射しすぎてまるでメタリックシルバーみたいに見えたので写真を撮りなおした




すこし色温度を変えて撮った写真




Smith & Wessonのブルーイングは黒ヌメのツヤありガンブラックなのだが
そのヌメッとした感じに近づいたと思う




この銃の原型が19世紀末の1899年に完成してハンマーブロックメカ以外の主要な構造は
ほぼ形をかえていないというのが信じられないくらいミリポリのスタイルはバランスがいい
登場した時からほぼ完成していて120年以上形を変えていないというのがすごい



2020年4月13日
















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