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映画に登場するプロップガン〜フランスの絶望を
ドイツの高級将校用の銃で表現するリアリズム〜ルイ・マル「鬼火」

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映画に登場するプロップガン〜フランスの絶望をドイツの高級将校用の銃で表現するリアリズム〜ルイ・マル「鬼火」

映画のクレジットでどこを見ますか?

主演俳優?女優?音楽?CGスタッフ?…今時の映画好きってそんな感じで映画を選んでるんだろうな…

でも映画ってやっぱり作家性が高いものが完成度も高いし、印象に残る。

映画の場合は一番重要なのは監督のクレジットだと思っている。
テレビドラマは演出・監督ではなく脚本で決まるような気がするけど…


フランスの好きな映画監督となるとルイ・マル。

この人はなかなかしたたかな作風の人だと思うから。


鬼火

誰かがモノマネしてたけど、フランス映画ってベッドに座り込んで
「人生は苦悩の連続だ
愛は何ももたらさない
生きることは羞恥を欺瞞で麻痺させることでしかない…」
とかいって頭を抱えて独り言の長ゼリフをいう映画というイメージがある。

おそらくこれはこのルイ・マルの「鬼火」が定着させたイメージだ。

ところがこのマルの「鬼火」は一見私小説風の独白映画のように見えるけど、これは全くのフィクション、作り話でルイ・マルはコメディを撮るのと同じような気分で撮っているらしい。

この映画はちゃんと原作があって、それも私小説ではなく実在の前衛芸術家の挫折を描いた小説を基にしている。

アルコール依存症のアランはもう寛解しているのに療養所から出ようとしない。

昔の恋人の女性と会ったり、古くからの友達と会って話したり、療養所の先生とチェスをしたり…鏡に「7月23日」と自分の死ぬ日を書き留めて、女物のネッカチーフに包んだルガーに頬ずりをする日々。

しかし昔の恋人にも友人たちにもそれぞれの自分の世界があり、主人公の世界とは永遠に交差しないことを再度思い知って彼は胸に銃口を当てたルガーの引き金を静かに引く…

おおむねこんなストーリー。





かつては華やかな世界の住人だったと思しき主人公アランは
アルコール依存症の療養所で自殺を考える日々を過ごす
カバンの中から女物のネッカチーフに包まれたルガーを取り出し頬ずりする
「私の人生は遅々として進まない…急がねば…」とつぶやく




このフランスの苦悩を描いた主人公が持つ銃がプロイセン帝国の
栄光の時代の工業製品「ルガーP08」なのが不思議な組み合わせ




そして決行の日…静かにトグルジョイントを引いて弾を装填し安全装置を外す
最後の友人たちに会いに行って自分を引き止めるものがあるかどうか確かめに行く




こちらはタナカのガスガンのルガーP08
トグルジョイント方式のロックとシーソー式のシアレバーを再現した優れもの
そのシアレバーを外から押さえ込む独特なセーフティも再現されている




このルガーはなぜか女物のネッカチーフに包まれてカバンにしまいこまれている
華の都のパリ、文化の開花する街の空気を謳歌しながら満たされない思いは募る…
なぜフランスの文化人がドイツの将軍が愛用するような銃を使って自殺するのか
この銃自体が先の大戦のスーベニールなのか、その銃を使って自死するのは
どういうことなのか、銃の入手先は?なぜいつも女物のネッカチーフに包まれているのか?
このプロップガンのチョイスだけでも画面の背後に語られない物語がありそうな組み合わせだ



地下鉄のザジ

ルイ・マルが「鬼火」を監督したのが1963年。

この映画でルイ・マルは人生に失望した思いを吐露したのか…と思いきやお気楽で能天気なコメディ映画の「地下鉄のザジ」を監督したのが1960年…

たった三年で人生のどん底に転落したのではない。

この監督さんが「死刑台のエレベーター」でデビューしてサスペンス映画の一つの源流になったのが1958年、1967年にはエドガー・アラン・ポーのスリラー短編をオムニバス映画化した「世にも怪奇な物語」に参加して、その直後に青春の芽生えみたいな「好奇心」という映画を撮ったり、このルイ・マルという人はどちらかというとなんでもこなす器用な人なんだと思う。

「鬼火」の3年前に撮影された「地下鉄のザジ」は、パリの下町の人情と大人たちをかき回す天真爛漫な少女を描いた映画。

「地下鉄に乗りたい」
それだけを楽しみにパリに上京してきた少女ザジ。
ところがこの日、パリの地下鉄はゼネストでどこも運休。

親戚のおじさんはなんとかザジの機嫌を取ろうと、凱旋門やエッフェル塔とパリの名所を自分の商売道具のタクシーで案内する。
「あれが凱旋門、偉大なナポレオンの戦勝を記念して建てられたんだよ」
「ふん、あんなハゲのチビなんかクソ食らえよ」
「おお麗しのエッフェル塔!パリの象徴!」
「エッフェル塔なんかクソ食らえ!私は地下鉄に乗りたいの!」
というような調子で愉快な会話が続く。

マルという人にとってはこのドタバタ喜劇も、人生に行き詰まって引き金を引く前衛作家の悲劇も等価に見えているんではと思う。

だから、自殺の小道具に最もフランス的でないルガーの自動拳銃を選んだ。

この奇妙な組み合わせと、いろいろ経緯がありそうな友人たちとの会話の積み重ねで、映画では語られない過去がいろいろあるに違いない…と観る人に思わせる達者な表現力。

あとサティーのピアノ曲を知ったのもこの映画。

そして「昔の友人」の一人ジャンヌ・モローがとっても綺麗!


この映画はルガーの発砲シーンがある珍しい映画だ。

発砲シーンといっても音だけというのが、またマルの演出なのだが。

学生時代に初めてこの映画を観た時には結構衝撃を受けたのだが、ある程度年齢を重ねて再度観てみると
「なるほど、これはよくできたフィクションなんだね
物語を紡ぐように周到に構築された映画なんだね」
と思えるようになってきた。





タナカワークスのルガーはプロポーションもいいしメカも
アレンジはされているけど雰囲気は再現されている優れもの
近いうちミリタリー風のガンブラックに塗装して手を入れる予定
その時にまたルガーが登場する映画を取り上げようと思うが
PPKと同じくルガーの発砲シーンがある映画は非常に珍しい
「鬼火」は音だけとはいえその非常に珍しい一本だった



2020年4月14日
















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青木さやか