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またまたテッポを磨くステイホーム週間…ずっとなんとかしようと
思っていたエンフィールドNo.2 Mk.1リボルバーを磨いたぞ

Enfield shining

またまたテッポを磨くステイホーム週間…ずっとなんとかしようと思っていたエンフィールドNo.2 Mk.1リボルバーを磨いたぞ

3年ほど前に取り上げたエンフィールド No.2 Mk.1リボルバーをまたまた外出自粛のあおりを食らって磨いてしまった。

エンフィールド No.2 Mk.1リボルバー…前にも書いたけど「ラピュタ」のムスカ大佐の銃だ。

ムスカ大佐はアニメでは3インチのポリスタイプっぽい銃を使っているが、これはミリタリータイプの5インチバレルのモデル。

前回は分解修理とメカの解説に終始したが、今回も完全分解はしたもののフレーム・シリンダー・バレルを磨く、パーティングラインを消す、金属部品をブルーイングしなおすなど見てくれ重視のカスタマイズ。

この3年の間にテッポの仕上げの技術はちょぼちょぼだが、写真は上達したと思うのでせっかくの好きなタイプの銃なのできちんとした写真も撮ってみた。





前回はメタリックの塗料を30年前に塗装した地肌を
そのまま生かしていたが今回は外見は完全に磨き上げた
ABS部分は銀磨きで仕上げて金属部品は黒染めを落としてブルーイングしなおした




シリンダー、バレルの光り方に注目




実銃のエンフィールドの写真を集めて仕上げを観察していたが
パーカライジングみたいな仕上げはあまり見かけない
マットなブルーイングだが大抵のエンフィールドはブルーイングが
はがれかけて鉄色になっているようなコンディションのものが多い




そしてエンフィールドの最大の特徴はこのクラシックな中折れメカ
いわゆるブレークオープントップで自動的に排莢もするメカが19世紀的で好き




シリンダーがスイングアウトするタイプのリボルバーならシリンダー映り込みの
写真を撮るところだが中折れ銃はそれができないのでこういう写真を撮ってみた




エンフィールドのスチームパンクっぽいメカメカしさが好き
そしてこのプロフィールのバランスの良さがまたまた好き
ABSペカペカのモデルガンだったが金属っぽさが出て重さがイメージできるようになった




バレルサイド、シリンダー、トリガーガード、グリップの映り込みに注目




太陽光+レフでも一枚
外光を受けるとオート並みに平面が多いエンフィールドは光を反射する
オートのような平面とリボルバーの曲面を併せ持った面白い造形なのも
このエンフィールドの特徴




グリップ、トリガーガード、バレル下面の映り込み
バレルゲートレバーが映り込んだフレームサイドにも注目




フレアが載ったバレル




逆光にレフを乗せたフレームサイド
金属っぽさをスチルで表現するのはなかなか難しい
太陽光だと白飛びするし…








今回金属部品のパーティングラインを綺麗に消したのも印象が変わる重要な要素
トリガー中心にくっきり残っていたパーティングラインを消した




バレルゲートレバーにもくっきりパーティングラインがあったのを綺麗に消した
黒染めも落としてスーパーブルーでブルーイングしケースハードゥン風に仕上げた




こちらは3年前にリペアした当時の写真
ゲートレバーにくっきりとパーティングラインが残っている




ゲートレバー、ハンマー、トリガーはケースハードゥン仕上げにした




トリガーも前後の中心線にパーティングラインがくっきり
残っていたのを綺麗に消してブルーイングで仕上げた




ハンマーの後ろに残っていたパーティングラインも綺麗に消した
そしてリボルバーの後ろ姿フェチの大好きなアングル
グリップ後面に横線のグルーブが入っているのもエンフィールドの特徴







気狂いピエロ

エンフィールドは第二次大戦当時の英国軍の制式拳銃だったから、登場する映画というと当然戦争映画…と思いきやエンフィールドが登場する戦争映画は皆無に近い。

おそらく実際の戦争では拳銃が活躍する場面なんてほぼないので、映画でもわざわざそういうシーンを作りにくいんだろうと思う。

エンフィールドが登場する映画を探していたらまたヌーベルバーグの作品が浮かび上がってきた。

ジャン・リュック・ゴダール監督の全盛期の作品で、おそらく出演のジャン・ポール・ベルモンドやアンナ・カリーナも一番輝いていた時代のフィルムだった「気狂いピエロ」。

そして注目され始めたサミュエル・フラーもちょい役で出ていた。

初めて観た時に衝撃を受けて、大部分のシーンをゴダールは役者のアドリブに任せてハプニング的に撮れたフィルムをつないでこの映画を完成させたというエピソードを聞いて二度驚いた。


初見の時から小人の男が持っていた中折れ銃が気になっていた。

改めて観直してみて、あの小人が持っていた銃がまさにエンフィールドだった。

そしてそのエンフィールド銃がラストシーンの悲劇的な幕切れで使われている銃だということに気がついた。





「助けに来て!」と電話でフェルディナン(ベルモンド)を呼び出すマリアンヌ(カリーナ)
しかしこの女は二人を追い回す謎の男たちと微妙に通じ合っているようなそぶりもある
小人の男が持っているのがエンフィールドNo.2 Mk.1
ウエブリーアンドスコットの中折れ銃に似ているがフレーム前端にエキストラクターの
突起がないのがエンフィールドの特徴でこのカットで確認できた




この小男が銃を折って弾を込めるシーンが続く
このシルエットが決定的でエンフィールドで間違いない




エンフィールドの排莢、装弾はこんな感じ
銃を折れば空薬莢を排出するし大きく開いたシリンダーには弾が込めやすい




上のシーンと同じく最大のオープン角度にしたエンフィールド




そしてラストシーンでこの銃を発砲するフェルディナン
この映画は役者のアドリブに任されているのでカメラマンが
役者の動きに追いつけていないシーンが幾つかある
ラストのこのベルモンドの発砲シーンも実は肝心のカットが発砲の瞬間を押さえきれていない
それでもOKにしてしまうゴダールの演出意図は完全にカット割された
ハリウッド式の映画製作へのアンチテーゼだったのかもしれない




同アングルのエンフィールド
こういう綺麗なカット割で発砲のアップを撮るような映画の
手法にゴダールは飽き飽きしていたのかもしれない


この映画は破滅に向かって猛スピードで突き進んでいく男女の野放図で無計画な恋の物語だ。

そして男も女も純真でも無垢でもない、それぞれに日常正確に飽き飽きしよからぬ連中とも交流があるようでもあり、しかし実際に脱出行を突き進んでいくと女は心変わりし、男は愚劣な恋心に殉死する…儚いような愚かな二人の物語だ。

その重要なシーンでエンフィールドが使われていた。




タイタニック

もう一つ中折れ銃が登場する映画が気になっていた。

世界最大の巨大で超高速な豪華客船「タイタニック」号の処女航海に乗り合わせたデイカプリオとケート・ウインスレット。

偶然の糸に手繰り寄せられて二人は恋に落ちるが、その夜タイタニックは運命の氷山との接触事故を起こす。

船は数時間かけてゆっくり沈み続けたが、救命ボートの定員は乗船している総人数の半分もない。

ここで他人を踏みつけてでも自分だけは助かろうとするか、自分を犠牲にしてでも誰かを救おうとするか人々の行動と思惑が複雑に絡みあう。

救命ボートに殺到する乗客を「順番に並べ!」と制する船員たちは、暴動が起こりそうな群衆を銃で脅して鎮めようとする。





船が半分も沈み始めると誰の目にも救命ボートの定員が
乗客全員を救うには全く足りないことが明らかになっていく
乗客は暴動状態になりこれを抑えるために思わず乗客を
撃ってしまった船員は自らを罰する一発を発砲する
このシーンはエンフィールドではなくウエブリーアンドスコットだった
フレームの前端にエキストラクターの突起があるのがエンフィールドと見分けるポイント
考えたらタイタニック号の遭難は1912年のことなのでここはエンフィールドでは考証的に合わない




エンフィールドはこの通りフレーム前端がまっすぐ
この小型化が銃を軽量化したが強装弾が撃てないという弱点にもつながった




(上)Enfield No.2 Mk.1の実銃と(下)マルシン工業のエンフィールドNo.2 Mk.1モデルガン




(上)Enfield No.2 Mk.1の実銃と(下)マルシン工業のエンフィールドNo.2 Mk.1モデルガン
実銃はミリタリー仕様なので比較的マットなブルーイング仕上げが多いが
コンディション的にブルーイングがかなり禿げて下地の鉄色が見えて
銀色っぽい金属感のあるブルーという印象の銃が多い




そういう古い鉄の塊っぽい雰囲気を狙った今回の仕上げ




やはり金属部品のパーティングラインがなくなったのが印象を大きく変えたと思う








エンフィールドは個人的には好きな銃なのでこれが見られる水準になったのが嬉しい



2020年5月11日
















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