水平二連散弾銃のレシーバーにケースハードゥン調のブルーイングをかけた…炭素焼き…浸炭焼き入れともいうそうな…のニュアンス狙い
もはやライフワークみたいになっているサンコイチのサイドバイサイドのショットガンの仕上げだが、ここのところちょっと頓挫していたが少し進展した。
磨きッパだったレシーバーにブルーイングをかけた。
前にレシーバー、トリガー、トリガーガードなどをミニリューターで研磨をかけたところ無骨なハドソンマッドマックスベースのショットガンが、ちゃんとした猟銃に見えてくる…というところまで進展していた。
これをそのまま放置していたら、亜鉛合金製なので当然錆びてだんだん白く艶もなくなってくる。
今、チェンバーをインナーバレルありのものに交換しようか、それとももうモデルガンと割り切ってこのまま仕上げようかという選択でちょっと頓挫していた。
前回実射テストをしたところ、なんと7メートル先のマトにあたるどころか届かないことが判明。
これでサバゲをするわけではないから別にいいと言えばいいのだが、駄菓子屋で売っている幼児用のつつき出し…いわゆる銀玉鉄砲にも実射性能で負けそうな感じなのでさすがにどうしようか迷っていた。
華山のマッドマックスって個人輸入時代は威力が強すぎて警視庁に実銃判定されていた記憶があったのだが、そこに配慮したせいか、配慮しすぎたのかBB弾が3〜4メートル先のところに散らばって落ちるだけの威力になってしまった。
さすがにこれだったらBB弾を手で投げた方が威力があると思う。
そういう理由でバレルの仕上げは今中断中なのだが、レシーバーはもうこのまま変更はないだろうから先にそっちを仕上げることにした。
仕上げの参考にしたのが実銃銃砲店の通販サイトにあったミロクの水平二連
(上)ミロクの両引き水平二連実銃と(下)が華山+ハドソンサンコイチのサイドバイサイド
ミロクはもうかなり前に水平二連の製造を中止しているのでこの銃はなかなか貴重
本日時点ではまだ売れていないので実銃を所持できる人で古風な銃が好きな人はおすすめ
本体価格20万円とかなりの掘り出し物かもしれない
ただし実銃はコレクションして撃たないで置いておくと公安に「眠り銃」と判定されて
所持許可を取り消されることがあるのでこういう銃をメンテナンスしながら所持するのは
かなりお金と気持ちの余裕がある人でないと無理なのかも
(上)ミロク両引き水平二連散弾銃実銃のサイドビューと(下)華山+ハドソンサンコイチショットガン
ミロクは26インチバレルで華山は28インチバレルなんだけど
テーパーが強いせいかミロクの方が銃身が長く見える不思議
華山はバレルはまだ削りッパで仕上げをしていないので黒染めがはがれている
ストックもストックオイルで仕上げ直す予定
(上)ミロクのレシーバーと(下)今回仕上げた華山サンコイチのレシーバー
銃砲店によるとミロクは浸炭焼きいれ、いわゆる炭素焼きのケースハードゥンなんだそうだ
ケースハードゥンにはいくつか種類があってこれはガスなどで鉄に炭素を浸み込ませてから
焼き入れすることでこのような美しいケースハードゥンになるとのこと
このイメージそっくりは無理にしてもかなり参考にしてバーチウッドのスーパーブルーを
2倍に希釈して筆で薄く何度も塗っては拭き取り磨いて塗ってを繰り返した結果がこれ
(上)ミロク(下)華山+ハドソン
炭素焼きの実銃は結構青みが強いがスーパーブルー仕上げの華山は虹色になった
ケースハードゥン仕上げは同じ手順でやっても同じニュアンスにはならない
天候も関係あるかもしれないし薬液の濃度も関係するかもしれない
筆を使うかウエスを使うかでもニュアンスが変わってくる
同じものが二つとできないのが面白い
多分実銃の焼き入れも同じものは二つとできない
(上)ミロク(下)華山+ハドソン
銃身と先台の金属部分は塗装でブルーイング仕上げのニュアンスにする予定だ
前回磨いたレシーバーだがそのまま放置したらすっかり光沢もくすんで真っ白になっていた
先にこちらを仕上げることにして再度レシーバー、トリガー、トリガーガードを磨きなおした
セーフティスプリングは赤錆が浮いていたのでこれはサンディングした
2倍希釈のスーパーブルーで仕上げ中のフレーム
赤錆が浮いていたスプリングは文字通り錆止めのためにブルーイングした
フレームレシーバーは少し塗ってはすぐに拭き落として磨いてまた塗る手順を繰り返した
虹色になってきたトリガーガード
両引きの二本のトリガーもケースハードゥンに
塗っては磨くを繰り返した結果光沢と虹色の反射を持ち始めたレシーバー
こうしてできあがったレシーバーとトリガー周り
左サイドはこんな感じ
そしてケースハードゥンは見る角度や光線の加減によって色合いが変わる
リコイルシールド(?)の球形の膨らみもピカピカに研磨した
レシーバー底面とトリガーガードの仕上げ
レシーバー上部のブリーチからセーフティ周りもケースハードゥン仕上げに
華山はハドソンの伝統を引き継ぎなぜかプラスネジを使うが当然実銃はすべてマイナスネジ
おそらく組立工場でパートのおばちゃんが組立てやすいようにプラスネジを採用したんだろう
ここは当時から批判があるところだったがカスタムネジなのでどうしようもない
フレーム、トリガーガードはケースハードゥン仕上げで更にピカピカにポリッシュした
外観的にはあとはバレルの仕上げとストックの仕上げをすれば完成というところまでこぎつけた
チェンバーの仕様が決まったらバレルの継ぎ目は消して塗装で仕上げる予定
トリガーもケースハードゥン+ポリッシュ仕上げ
両引きのトリガーの表面がパーティングラインもなく
ピカピカにポリッシュされているのはとても重要
Nobelの12ゲージ8号装弾の撃ちガラと
ここからが悩ましい選択だ
華山のカートリッジは実弾より直径が一回り大きいのでダミーカートは
エクストラクターに引っかからずにチェンバーに落ち込んでしまう
こうして実弾薬莢を入れると見た目はリアルだが動きは全然リアルじゃない
チェバーの中にアルミ板でスリーブを入れればリアルになるが華山のカートリッジは使えなくなる
噂ではPPSのカートリッジはリアルサイズらしいが実射性能では華山と大差ないらしい
どうせ威力がないならもうモデルガンとして割り切ってしまうか…どうしようか
そこらの仕様さえ決まればバレルの仕上げにも取りかかれるのだが…
28インチ全景
ピカピカです
お分かりいただけるでしょうか?
ピカピカです
ピカピカです
猟銃イメージなのでポリッシュしています
華山のカートリッジ(三ツ口タイプ)
これを使うのかPPSタイプに改造するのか…
はたまたダミーカート専用にしてしまうのか…
虞や虞や、汝をいかんせん…
バレルを折ってカートリッジがエキストラクターに引き出されている様子
水平二連のこの姿が好きなんだけど…どうするかなぁ…ダミーカートモデルにしてしまうかなぁ…
リアサイトをリューターで削り落としたあとが銀色に剥げているバレルをなんとかすれば…
といってまた数ヶ月悩み続けるオカン…
ところでケースハードゥンとかなんぞや…なんだけど昔は実用的な意味があったらしい。
19世紀から20世紀初頭ぐらいまでは銃を作る工作技術は、基本鋳造が中心で大まかに鋳造で形を作って細かいところを削りだすスタイルなのであまり硬度の高い鋼鉄は使えなかったとのこと。
比較的柔らかい鉄で銃を作り、フレームやハンマー、トリガーなどの強度が必要な部品は焼き入れをして強度を得ていた。
その焼き入れなんだけど、調べてみると表面だけ焼く表面焼き入れと中までしっかり火を通すズブ焼き入れがあり、表面焼き入れも浸炭焼き入れ、窒素焼き入れ、高周波焼き入れ、レーザー焼き入れ、電子ビーム焼き入れなどかなり種類がある。
19世紀に盛んだったのはこの炭素焼きというやつで、この特徴は仕上がりが独特の色むらがあり虹色に鉄が光るようになること。
20世紀中盤になると工作技術が進歩して、超硬工具も発達したためクロム鋼やモリブデン鋼など硬度の高い鉄のインゴッドを削りだしで工作する技術も実用化されケースハードゥンはあまり意味がなくなってきた。
20世紀中庸からはケースハードゥンはむしろコレクター向けの古式銃に美しい焼紋をつけるための美術的な仕上げに変わってくる。
SAAとか昔のパーカッションリボルバーの復刻版とか、こういう猟銃とか趣味性の高い銃の仕上げとして継承されてきた。
1970年代ぐらいまでのSmith & WessonやColtの民間向け拳銃のトリガー、ハンマー、セーフティレバーなどがケースハードゥンで仕上げられているのは実用性よりも
「護身用とはいえ、どうせ持つなら美しい銃を持ちたい」
というユーザーの嗜好に答えたものらしい。
最近のモダンなポリマー拳銃は金属部品はパーカライジングか塗装なので、美しくもなんともない。
ベルギーのリエージュ銃器製造組合のハンドメードの有鶏頭散弾銃
金属部品は炭素焼きで仕上げられている
今日でも伝統の匠の技としてこういう仕上げが伝承されている
2020年9月23日
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