昔の愛機だったFender JapanのST57ストラトキャスターを復活させた…すごいサビ、埃汚れを落として流行りの「レリック」仕上げに
口絵写真のジャパンフェンダー・ストラトキャスター57年モデルをリフレッシュした。
口絵の写真だけ見たら遠目には綺麗に見えるがこのギター、ジャパンフェンダーが始まった最初の年に購入したファーストロットのストラトキャスターなのでかなり古い。
アメリカのFender社と日本の神田商会あたりが提携してジャパンフェンダーを立ち上げたのが、私の記憶では確か1982年だったか、それぐらいの筈。
Fenderというギターメーカーはいろいろ浮き沈み・毀誉褒貶がある会社で、RollingStone誌で1975年にエリック・クラプトンが
「ギターというのはビンテージのワインのようなものだ。
最近のフェンダーやギブソンのプロダクトは非常に品質が落ちてきたが、1959年製のギブソンのレスポール、1957年製のフェンダーのストラトキャスターはまさにビンテージワインのような良質なギターだった。」
と答えたことからにわかにビンテージギターブームが起きた。
このインタビューは私も当時リアルタイムで読んだので、その後のオールドレスポール、オールドストラトキャスターのもてはやされぶりはつとに見てきた。
原価は数万円だった筈のストラトキャスターが、FenderUSAの本物の57年モデルということで80万円とか本物レスポール59年モデルは120万円とかの値段が付いていた。(今は多分もう一桁高くなっている筈だ)
田舎の音楽好きにはとても手が届かない楽器だったが、1982年に神田商会がUSA Fenderと提携して「ジャパンフェンダー」を立ち上げるというニュースを聞いた。
その最初のロットが楽器屋に並んだ時に早速見に行ったがその時の楽器屋店員の説明
「フェンダージャパンは上級モデルはUSA Fender製のハードウエアを搭載しているが、それだけでなく1stロット限定でアメリカでシーズニングした木材を輸入して組み立てるので、ジャパンフェンダーと言いながら実質USA Fenderだ」
とのことだった。
それで飛びついてこのギターを購入した。
思えばもう38年も昔のことだ。
その1stロットモデルのストラトキャスターがこれ
ブリッジ、トレモロユニット、ジャック、ペグなどの金属部品は購入当時は
メッキがかかってピカピカだったがもうすっかり錆びて真っ白になっている
しかももう20年近くギターアンプにも火を入れていないぐらい音楽から離れているので
ピックガードも埃がこびりついて拭いたぐらいでは取れない
ペグのサビが一番ひどい
真っ白になっている
いくつか打撲傷があるボディ
このギターの一番の問題点は40年近く経って年齢並みに塗装が
剥がれてきているネックに対してボディがまっさら状態ということ
実はこのギターニコイチだった
このストラトキャスターをなんとかしたいとずっと思っているうちに音楽そのものから遠ざかっていたのでほったらかしになっていたが、このギターちょっと問題を抱えている。
店員に勧められるまま気に入ったST57を2本買って、これをニコイチにした。
オレンジボディのストラトのネックとタバコサンバーストのストラトのボディを組み合わせて、一台でっち上げた。
オレンジボディの指板の弾きやすさとタバコサンバーストのボディの鳴りが気に入ったのでいいとこ取りをした。
残りのタバコサンバーストのネックとオレンジボディはどうしたかはっきりおぼえていないが、押入れに見当たらないところを見ると引越しの時に楽器屋に売り飛ばしたんだと思う。
それから38年の歳月が経ち、ネックはいい感じに塗装が剥がれてきたがボディはいつまでたってもそのまま全く剥がれもなし。
この2台のギター、全く同じグレードのものを購入したと思っていたが、実はタバコサンバーストの方が一つランク下のモデルだったようだ。
たしか上級モデルは塗装が本物のビンテージと同じラッカー塗装だが、中級モデルはポリウレタン塗装をビンテージ風の色調に調合したものだという説明を聞いた。
このタバコサンバーストボディがどうやら後者だったらしい。
まず見た目が問題でネックの指板がいい感じに塗装が剥がれているのに、ボディが新品と変わらないのはいただけない。
ポリウレタン塗装は経年変化で薄くなったり剥がれたりしないが、ラッカー塗装は自然に剥がれてくる。
それ以上に問題なのは購入当時、ストラトらしいパキパキした鳴りだったのにだんだん年とともに、鳴りが重くなってきているような気がする。
「鳴りが重い」という感覚的な表現になってしまうが、鳴らないわけではなく鳴っているんだけど購入当時はもっとパキパキした乾いた音が出ていたはずなのに…とずっと思っていた。
先日35年前の自分の録音テープをこれまた久しぶりに聴いたら、それが気のせいではなく実際当時は乾いた音が出ていたことが判明。
気のせいではなかった。
これもボディのポリウレタン塗装のせいかもしれない。
なのでこれをレリック風に剥がして鳴りが変わるか試してみたくなった。
ミニリューター+ディライトホイールの組み合わせでハードウエアのサビ落としをした
3〜6弦のペグは磨いたもの、1〜2弦のはまだ未着手
サビ落としとポリッシュが完了したマシンヘッド
これだけでも見た目が変わるし手に持った時の感触も全然違う
錆びたギターを触っていると自分まで錆びた感じがして本当にイヤ
トレモロユニット、ブリッジ、ジャック、トレモロアームをバラしてこれも全部サビ落とし
そしてボディは打撲傷隠蔽も兼ねてレリック風に加工
ボディの後ろは本当はトップよりもダメージが大きくなるはずだがこちらは控えめ
サンダー(紙やすりホイル)が擦り切れて持ちそうになかったので表を重点的に加工した
レリック(骨董)加工したボディ
ボロボロに錆付いていたハードウエアも全部ピカピカに
特にピックガードのネジが赤錆を吹いていたが磨いて光るようになった
ピックガードも完全にとはいかないがかなり白くなった
ちなみにピックアップカバーはベークライト製のものに交換したら
経年変化でまっ黄色に変色したが実物57年モデルのベークライトは
変色しないんだそうだ…まあ雰囲気あるからいいけど…ちょっと割れちゃってるけど
Fender Japan ST57 asortモデル全景
ボディトップの雰囲気
コンタードボディ周りの雰囲気
ここの周辺にダメージを受けているビンテージが多いのでここらを重点的に剥がしてみた
剥がした後研磨剤でピカピカに磨いて楽器メンテナンス用のレモンオイルを塗りたくった
フレットもピカピカに磨いたので指の滑りが気持ちいい
さて露出した木目に注目、ビンテージストラトのボディはアルダーと決まっているのだが
どうもこれはウレタン系の塗料と組み合わせるためにホワイトアッシュが使われているのか
木材の色がやけに白い気がする
最近手を入れたテッポと仲良く並んだレリックストラトキャスター
ボディの地肌がちょっと白すぎるが地道にレモンオイルなどを塗り込んで
自然に黒ずんでくるのを待つことにした
目的は見た目カスタムじゃなくて音をなんとかしたいということだったからね
楽器店オリジナルのレリックカスタムが最近流行っているそうだ。
Fenderなどの新しいギターの塗装を剥がしてダメージ風に仕上げるカスタムのことなんだそうだ。
それで塗装を剥がしたら当然下からは真新しい木材の肌が出てくるので、これも経年変化で変色した風の色を調合したトップコートを塗装…というようなことをするらしい。
そんなことしたらせっかく塗装が剥がれて鳴りが軽くなるかもしれないのに、逆に塗装が厚くならないか?
見た目はリアルになるかもしれないが、使い込んで古くなった鳴りを再現したいためにレリックをするんじゃないだろうか…と思うがそういう加工の方がオクなんかでも高く売れるらしい。
いまはPCベースの加工で音なんかどうにでもなるから、どうでもいいのかな
ところでFenderのその後の話。
ジャパンフェンダーが立ち上がった当時USA FenderはまだCBSがオーナーだった時代と思うが、その後経営者も変わり、なんとUSA工場を売り飛ばしてしまい1980年代のUSA Fenderのビンテージ復刻モデルは日本の神田商会製のモデルの逆輸入品だったのだそうだ。
そのうちジャパンフェンダーも立ち消えとなり、今のUSA Fenderはメキシコとかの第三国で製造されているのだそうだ。
歴史的名器のモズライトが高校生の入門用通販モデルになり、今では東南アジアブランドになっているのと同じ道を歩んでいるらしい。
ジャパンフェンダーも初期ロットモデルの出来が非常に良かったので、その後ストラトキャスターのカレントモデルとかマスタングとかジャズベース、プレシジョンベースとかいろいろ買い漁ったけど、ウワサ通りセカンドロット以降からの出来はまるっきりグレコとか東海楽器と同じレベルであまり気に入らなかったのでプレシジョンベース以外は全部売り払ってしまった。
結局気に入ったのは、このストラトキャスターだけだった。
品質はグレコ、トーカイレベルになってしまったけど安いのでジャパンフェンダーは生き残るんだろうなと思っていたが、私が音楽にすっかり感心を失ってしまった間に1997年にジャパンフェンダーブランドも消滅したんだそうだ。
といいながら、神田FenderとかメキシコFenderとかいろんなモデルが入り乱れてどれが実体なのかよくわからない状態になっている…これも京都モズライトとかよくわからないブランドになってしまったモズライトと同じ道を歩んでいる。
1980年代のジャパンフェンダーのカタログ
イメージ写真にジェフ・ベックとイングウェイ・マルムスティーンが使われているのが時代
1stロットでハードウエアも木材も塗装もすべてUSAビンテージ仕様で
作られていたのはこのST57-115モデルだけだったと記憶している
ニコイチしたギターは2台ともこれだと思っていたのだが
タバコサンバーストボディは下のクラスだったらしい
2020年10月8日
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