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マテバ2006M〜マルシンのガズガンリボルバーと
実銃のメカについて…久しぶりのリボルバーじゃ

Thermo Ballistic Machine

マテバ2006M〜マルシンのガズガンリボルバーと実銃のメカについて…久しぶりのリボルバーじゃ

随分前から気になっていたマルシンのマテバ2006M。

そこら中のブログで「トグサの銃」ということで散々紹介されているけど、正確にいうとマルシンがモデル化した2006Mはトグサの銃ではないかもしれない。
詳しいことは次回ぐらいに書くかもしれない。

それよりも床井雅美の「最新ピストル図鑑」シリーズでヨーロッパのユニークなリボルバーとしてマニューリンなんかと並んで紹介されていたのが興味を引いた。

もともとリボルバーが好きだった。

コルトもS&Wもそれぞれに好きなモデルはあるが、いかんせんコルトもS&Wも基本設計が古くその原型が完成して100年以上経っている。
S&Wのダブルアクションの原型のハンドエジェクターに至っては120年以上前の設計だ。

そして世界中の銃器メーカーがコルトとS&Wのコピーを作り続けている。

第三極としてスタルム・ルガーやチャーターアームズなんていう独自メカのリボルバーは存在する。

だがもう少し目先が変わった銃はないものかと思っていた時にこの本に出会った。





マルシンのWディープブラック仕上げのマテバ2006M
ブナ材のストック付きでマルシン製はこのグリップの材質が気に入らなかったので
今まで二の足を踏んでいたがこの個体のグリップはなかなか綺麗
これはそのうち亜麻仁油で仕上げ直そうと思っている




床井雅美の「最新ピストル図鑑2」よりマテバ2006Mのページ
右ページの図は2006Mの原型のMTR6の透視図で水鉄砲のようなスライド式トリガーが見て取れる
左ページの3インチモデルはカテゴリー番号CAT5577、シリアル番号001083で
まさにマルシンのマテバと同じ、おそらくマルシンのモデルになった個体だ
後期モデルはサイト周りのピンの数が違う




マルシンのマテバはどういうわけか6インチバレルが標準のようだが
上記のモデルになった個体には3インチの銃身がついている
映画やテレビシリーズのトグサの銃もよく見ると4インチじゃないかという気がする
マテバをもし手に入れるのなら4インチか3インチモデルとずっと思っていたので
今回この4インチモデルに出会って思い切ってしまった
しかしほぼイメージした通りのマテバと出会えた




マテバは写真で見るとデカイという印象があるが実物を手に取って見るとやはり印象通りデカイ
しかし左右幅は意外に小さいので非実用的なデカさというわけでもないと思う
ただ攻殻機動隊の影響でこの銃をコンバットガンだと思っている人が多いみたいだが
実際には構造やデザインからこれがスポーツガンだということがわかる
なぜそう思うか詳細は後ほど




そしてマテバの最大の特徴は銃身がシリンダーの下側についていること
銃身の上にあるブロックはバレルウエイトで実銃の場合は鉄のインゴット




マテバのダブルアクションポジション
マテバのトリガー、グリップのアレンジはオート拳銃のそれに近いので
ダブルアクションオートを扱う人にも違和感がないようにデザインされている
マルシンのダブルアクションのタイミングはとても微妙でシリンダー固定と
シアが切れてハンマーが落ちるタイミングがほぼ同じ
ハンマーの落ちる方が早い時もあってガスガンの
ダブルアクション時の命中精度はなかなか微妙だと思う




シングルアクションのポジションだとハンマーが随分後ろの下にあるのがわかる
なんせシリンダーの一番下のカートリッジを叩くのでこのポジションになる
シングルアクションのシアのキレはなかなか良好なのでガスガンの
シングルアクション時の命中精度は多少は期待できるかもしれない
ここらマルシン製のニューナンブと同じだ




マテバのシリンダーのスイングアウトした様子
コルトやS&Wと違ってシリンダーは上に振り上げるようにスイングアウトする
その角度も180度なんてものではなく200度ぐらい開くので
慣れないと逆に扱いにくいかもしれない




Xカートリッジ仕様になってシリンダーは素通しになった




このチェンバーの内径は357マグナムより0.3mmほど細いので
357マグナムダミーカートリッジや他社の38口径のカートリッジは入らない
シリンダー内を0.3mmほど削れば入るようになるかもしれないが
BB弾の発射には悪い影響しかないだろうからやるなら
発射機能は殺すぐらいの気持ちでやらないといけない




(左)フルサイズの357マグナムダミーカートリッジと(右)マルシン・マテバのXカートリッジ
マルシンのカートリッジは実物357マグナムよりも1mm半ほど全長が長く
ケースの直径は0.3mmほど細いのは一種の安全策なのかもしれない
通報魔のウエスタンなんちゃらいう同業者のクレームに配慮したのかも




同じマルシン製のニューナンブはカートリッジの後ろからノズルがカートリッジを押していたが
マテバはシリンダーの前からコーンがカートリッジを押して密着する構造
ガチャガチャ動かしても壊れにくい構造に改善されたのかもしれない




リコイルシールドは下側にガスルートのノズルがある
シリンダーハンドとシリンダーストップが右にオフセットしているなどメカについてはS&Wに近い




アウターバレルを外した様子
実銃は専用工具を使ってダンウエッソンのリボルバーのように銃身を交換することができる
マルシンは同じように専用工具を使ってアウターバレルを外すとホップの調整ができる
6インチモデルはバレルを外さなくてもバレル上にホップ調整孔があるがこれはこれでがっかり
3・4インチモデルは穴がないので見かけはリアルだがホップ調整は分解が必要
ホップはコンディションがコロコロ変わるので本当は手軽に調整が
できた方がいいのかもしれないがライブカートリボルバーをゲームで使う人は
あまりいないと思うのでむしろ見かけリアルな方が嬉しいかもしれない




シリンダーヨーク(コルトでいうところのクレーン)の固定ネジはサイト前のここにある
これを抜けばシリンダーグループが取り外せる




無骨な姿をしているがこれでもフルアジャスタブルなサイトがついている
照門の左のネジがウインデージスクリューで左右を調整する




フロントサイトのネジがエレベーションスクリュー
上下の狙点調整はここでできる




マテバがスポーツガンだと思う根拠がこのバレルアレンジのため
バレルをシリンダーの下側に配置することでグリップからのギャップは16mmとなった




これをオート拳銃と比較するとグロックG17の場合19mm




ベレッタM92Fの場合35mm




H&KのP7の場合14mmでこのバレル軸線のオフセットは最新オート拳銃並みと言える
S&Wやコルトのリボルバーはもっと大きな軸線のズレがあるので
これはマズルジャンプを抑えるのに当然有効だと思われる




そして銃身の上他社のリボルバーなら銃身があるべきところには
でっかい文鎮のようなバレルウエイトが鎮座している
つまりマテバのアレンジはマズルジャンプを抑えることだけを念頭に置いている




リボルバーの実銃を撃ったことがある人ならわかると思うが
リボルバーの問題点はマズルジャンプというよりはむしろそのリコイルショック
オートと違いリボルバーのリコイルショックは手首にガツンとくるので
多弾数を撃つと手首を痛めるのでむしろマズルジャンプでショックを逃した方が撃ちやすいはず
つまりこのアレンジはコンバットというよりもラピッドファイアピストルのような
マトを撃つオリンピック競技用のアレンジということになる




バレル軸線をグリップに近づけデカイ文鎮を銃身の上に載せる
これは5発を数秒間隔で25m先の紙のマトに当てる競技に最適なアレンジだと思う




でもマテバがなんで有名になったかというと競技大会で使用されているからではなく
トグサが「俺はマテバが好きなの」といった一言があったから
コンバットガンのイメージでナイロンホルスターに入れてみた




(上)コクサイのガスガンのS&W M66と(下)マルシンのマテバ2006M




(上)コクサイのガスガンのS&W M66と(下)マルシンのマテバ2006M
マテバはごついというイメージがあったがこうして4インチの
357マグナム6連発を並べてみると意外にサイズに差がないことがわかる




(左)マルシンのポリスリボルバーことニューナンブM60に似ているといわれる銃と(右)マルシンマテバ




(左)マルシンのポリスリボルバーと(右)マルシンマテバ
M60はヘビーウエイトをポリッシュしたダメージ仕上げにしたが
マテバはあえてABS製のWディープブラック仕上げを選択した




(上)タナカワークスS&W M40センチニアルと(下)マルシンのマテバ




タナカはスチールジュピターフィニッシュ、マルシンはWディープブラック
タナカはヘビーウエイト素材にメッキした上からコーティングで着色されていると思われる
マルシンは銅メッキの上に亜鉛めっきをかけて酸化処理をしているようだ
詳細は不明だがマルシンのマニュアルには「アルミブラックで補修可能」とわざわざ書いてある




仕上げの過程は全く違うようだが両者の見た目は驚くほど似ている




それにしても最近のメッキモデルのリアルさときたら40年前の自分に
モデルガンの仕上げはここまで進歩するんだぞと教えてやりたい




フレーム左にはマテバと所在地の刻印
マテバというちょっと変わった名前だがイタリア語の
「Macchine Termo-Balistiche」の最初の3音から取った
この意味は「熱弾道機器」というメーカー名で頭文字ではなく3音を取った
なので正確には刻印もMA・TE・BAとなっているしパッケージにもそう書いてある




フレーム右側にはSTGA(全日本トイガン安全協会)の刻印
STGAはASGKの専横から離脱したマルシンが中心に創設した業界団体で
「ガスガンはマニュアルセーフティつけなあかん」とかの
意味わからん業界基準を回避するための新団体とも言われた
この辺の業界事情はもううんざりなので深掘りする気は無い
そしてシリアルナンバーは例の床井雅美の本の写真の個体と全く同じ




(上)イタリアMA・TE・BA社の2006M実銃と(下)マルシン マテバ2006M
例によってフォルムの捉え方は抜群だが実銃は文鎮ウエイトの上端に光学サイト取り付け用の
レールがついているのが標準だがマルシン製はなぜかこれが省略されている
もともとの出自が「トグサの銃」なのでこういうところがちょっと実銃と違う
マテバは猟銃・競技銃のメーカーなのでストックは猟銃のような美しい仕上げのものがついている
「トグサの銃」として始まったマルシンマテバはかなりマシになったがやはりミリタリーな仕上げ
これはワトコオイルを使って仕上げ直しを考えている



マテバ2006Mがコンバットガンではなく、ラピッドファイアピストルなどのスポーツ競技用の銃だという根拠についてさらに続ける。

五輪競技のラピッドファイアピストルは22RL弾を使用した小口径の銃の競技というイメージがあるが日本ライフル射撃協会のピストル ルールでは38口径のセンターファイアのカテゴリも認められている。

25mセンターファイアピストル
7.62mm ~ 9.65mm (.30口径~ .38口径)

となっており、日本ではマグナム装弾の使用は禁止されているが、ヨーロッパにはそういうカテゴリーがあるのかもしれない。
マテバ社のラインナップにも38スペシャル専用の2006S、競技仕様の2006Cという型番も存在する。

ラピッドファイアピストルは5発の弾を1発6秒の持ち時間で25m先の2センチ径のマトに当てるという競技で、なんせ持ち時間が6秒しか無いのでリコイルショックを抑えるよりもマズルジャンプを抑えるというアレンジになったのだと思われる。

その意味では合理的な設計なのだけど、競技自体の人気がなかったせいか、やはりラピッドファイアピストルはオートマチックがいいという選手が多いせいなのかマテバ2006Mはあまり売れなかったらしい。

次回はその後のマテバの数奇な運命について…書くかもしれないし違うことを書くかもしれない。



2021年6月17日
















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