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映画に登場するプロップガン〜マテバ2006Mと攻殻機動隊〜マルシンの
ガスガンと創作上のM2007との関係は?というはなし

Thermo Ballistic Machine

映画に登場するプロップガン〜マテバ2006Mと攻殻機動隊〜マルシンのガスガンと創作上のM2007との関係は?というはなし

マテバ…というともうすっかり「トグサの銃」とイコールになっているのでそこに関心が高い人の方が多いかもしれない。
こちらの話を先にする。

攻殻機動隊は90年代の押井守の映画と2000年代のテレビシリーズでは結構別物で、実はたまたまお知り合いの息子さんがこのテレビシリーズの方の制作スタッフにクレジットされていたのでちょっとした裏話も聞いている。

脚本とか設定を練り上げる上で凄まじいブレーンストーミングをやったという話だ。

こちらはアニメ制作とは縁のない単なる観客なので、例によって登場するテッポに注目してこの作品を取り上げる。


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

テレビシリーズのトグサの銃のディテールが確認できる回がこれ
STAND ALONE COMPLEX #3『 ささやかな反乱 ANDROID AND I』

ある特定の型式の旧式アンドロイドが連続して「自殺」するという事件が起きる。

この「自殺」がこの型式にだけ作用するウイルスによるものだということを突き止めた公安9課は、「地道な聞き込み」の末ある人物を突き止める。

その人物の自宅に令状なしに家宅捜索に入るバトーとトグサの二人。

ドアを叩き壊すバトーにトグサは呆れる
「乱暴だなぁ、俺なら無傷で開けられるのに」
「おめえじゃ時間がかかりすぎんだよ」

この弥次喜多コンビのような二人のおかしさが最高に出たのがこの回。





二人が踏み込んだ先でウイルスを放流した人物が特定されるシーン
デスクに置いたトグサのマテバでディテールがわかる
MA・TE・BA Modelo 6 Unicaにかなり似ている




MA・TE・BA 6 Unica 5インチバレルモデル(Internet Movie Firearms Database - Guns in Moviesより)
グリップとアンダーフレームの上でアッパーフレームとバレルとシリンダーがブローバックして
自動的にシリンダー回転・ハンマーコックがされるオートマチックリボルバー




MA・TE・BA 6 Unica 4インチモデル(同)
ガスシリンダーカバーとベンチレートリブのクーリングホールがなくてトグサのマテバにかなり近い
これのバレルウエイトを八角形にして5インチにしたらそのままトグサのマテバ




二人は「笑い男」事件との関連を疑い踏み込むが実際の容疑者は事件のイメージとは程遠い人物だった
部屋に山積みされた35mmフィルムを手に取り「すげえ映画マニア」とバトー
これはジャン・リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」と「アルファビル」
ベルリン映画祭金熊賞など常連だったゴダールの黄金時代の映画だ




容疑者の動機が古き良き時代のアンドロイドへの執着だった
と知って「なんでそんなものに」といぶかるトグサにバトーは
『いつの時代にも金じゃ買えない旧式デバイスへの
ノスタルジーが捨てきれない輩がいるってことさ』

とマテバを捨てないことへの当てつけをいうのだがそういうバトーは
ブローニングハイパワーをこのシーンで使っていて完全に目糞が鼻糞を笑う構図




こちらはInternet Movie Firearms Database - Guns in Moviesよりテレビシリーズのトグサの銃 M2008
さすがだなぁ、このアメリカのフィルムデータベース、こんな設定画までチェックしてる
テレビシリーズのトグサのM2008は概ね6 Unicaに似ているがバレルウエイトがやや細身
トリガー前のスロープがなだらかなところが目立つ違いで架空銃ではあるが「ありそうなデザイン」




同サイトはポセイドンモデルのM2008ガレージキットなんかも写真を載せていてオドロキ
アメリカ人どんだけプロップガンが好きなんだ!?




ところがテレビシリーズの初期の頃はトグサは6インチのマテバを使用していた
STAND ALONE COMPLEX #1 『公安9課 SECTION-9』より
ロボット芸者に拘束された外務大臣救出ミッションで遅れをとったトグサが
怒りの射撃訓練をするシーン、排莢・装填を繰り返して激しく連射するトグサに
「経費の無駄遣いね。任務のたびに慌てて射撃練習をするのなら義体化することをお勧めするけど」
と少佐の冷ややかな声
このマテバはシリンダーフルートがなく2006Mに近いイメージのデザイン




テレビシリーズシーズン2のS.A.C. 2nd GIG #10 『イカレルオトコ TRIAL』より
サイボーグが女性を襲う現場に通りがかったトグサが女性を救うために
サイボーグの手足をすべて撃って無力化しようとするが感覚器官をオフにしているサイボーグに
6連発、再装填の合計12発を使い尽くしても女性を救うことができなかった




このシリンダーのスイングアウトは左下方向でフレームの上は繋がっておらず
コルトネイビーのように開いているの特徴がまさにUnica 6




トグサはこの事件の重要参考人として出廷、弁護士の尋問を受ける
「トグサさん、あなたはこれに見覚えがありますか?」
「はい、それは私が勤務時に使用しているのと同じ銃です。」
「なるほど、これはマテバ社のオートリボルバーのレプリカですが、
あなたの職場では全員がこれと同じ銃の使用を?」

このシーンからトグサは2nd GIGで4インチのマテバを使用していることがわかる



この事件はたまたま半グレの義体化したDV男が自分を袖にした女性を殺害する場面にトグサが行きがかっただけの事件だったが、その弁護に有名な人権派弁護士がついてむしろ加害者を警察官の横暴による被害者に仕立て上げ表向き非公式な公安9課を白日のもとに引き摺り出そうという陰謀に発展する。

このシリーズはこのように一見なんの脈略もない1話完結のエピソードが、底流では大きな事件へとつながっているという構成になっている。

このエピソードも2nd GIGの最終回の9課と内閣調査室の合田という黒幕との対決への一つの序章になっている。




攻殻機動隊 Ghost in the Shell

このアニメシリーズがアメリカやヨーロッパでキッチュ的人気を博すきっかけになった第1作目の映画。

ヤングマガジン別冊に不定期連載していた士郎政宗のコミックを映画化したものだ。

この映画の冒頭、人間の脳をハッキングする「人形遣い」を追う任務に向かう途中、少佐とトグサがこんな会話をする。


「まだリボルバーを使ってるんだって?
ツーマンセルで2挺下げてもまだジャムが怖い?」
「俺はマテバが好きなの」
「援護される身としては好みより実効制圧力を問題にしたいわ。やばい目にあうのは私なんだから。ツアスタバにしなさい。」
「少佐、前から聞いてみたかったんだけど、なんで俺みたいな男を本庁から引き抜いたんです?」
「お前がそういう男だからさ。」
「へ?」

この会話から少佐はトグサの銃の選択とその戦闘力に若干疑問を感じてはいるが、決して足手まといと感じているわけではなく、むしろ9課の新しい戦力としてアテにしていることがわかる。

「非正規活動の経験がない刑事(デカ)あがりで妻子持ち、電脳化してても脳みそはたっぷり残っているしほとんど生身」
「戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ」
「組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死」

彼らが所属する警視庁公安9課は、警察の内部にありながら警察とは完全に独立した諜報活動を展開する組織。

電脳を駆使した情報戦だけでなく完全義体化したメンバーによる「荒事」も得意とするチームだが、その中にあって違う視点を持った「生身の人間」を置いておきたかったというのが少佐の意図。

その生身の人間の感覚の象徴がまさにトグサのマテバだった。

これが例のテレビシリーズ第一回目の「STAND ALONE COMPLEX #1 」で
「経費の無駄遣いね。任務のたびに慌てて射撃練習をするのなら義体化することをお勧めするけど」
という言葉につながる。

生身のトグサは、ましてやダブルアクションリボルバーを使ってサイボーグと同じような正確無比な射撃ができるわけではない。
しかし実戦任務ではサイボーグと伍して同じ任務遂行を要求される。
遅れをとった悔しさから無茶な射撃練習をするトグサに少佐はこの言葉をかける。

その真意は「お前もさっさとサイボーグになれ」ということを求めているのではなく
「お前はお前にしかできないことをやれ
サイボーグと張り合って射撃練習をするのは無意味」

と言っているようで、一見冷ややかに聞こえるこの言葉から実は少佐の期待感や優しさが感じられるシーンだった。





例のデータベースサイトより攻殻機動隊Ghost in the Shellのプロップ設定資料
マテバM2007となっているがMA・TE・BA 2006Mとかなり近い
違いはバレルウエイトが実銃2006Mよりもかなり左右幅が大きく
ウエイト上端に光学サイト固定用のレールがないことと
使用弾は357マグナムではなく9mmパラベラムだという点
リムレスの9mmパラ弾を使うためにシリンダーはカウンターボアではなく
リムのスペースを後ろに開けていると設定資料に書いてある
細かい!




これはMA・TE・BA 2006M実銃
ウエイトの左右幅は細く上端にサイト固定レールが左右に突き出ている
シリンダーは磨き上げられブルーイング仕上げ




これはマルシンのマテバ2006M
マルシンは概ねマテバの雰囲気を再現しているがバレルウエイトにレールが
ないのはこのモデルがかつて「トグサの銃」として販売された当時の名残
実銃にはこのタイプのバレルウエイトは見つからない
そしてこういうマットパーカライジングみたいな仕上げの実銃も見つからない




先のフィルムデータベースのサイトでマテバとして紹介されていたマルシンの2006M
最近は海外のテッポのサイトでもマルシン製のエアガンの
写真が「マテバ」として紹介されているから注意が必要
リアサイトの前に肉引き防止の湯口のあとがモールドに
残っているのでマルシンのエアガンだと識別できる




「人形遣い」の踏み台にされたハッカーと清掃局員を追い詰めたトグサたちは手痛い反撃にあう




「トグサ!まだ生きているのなら残りの二人を確保!」と少佐の指示
「やれやれ、優しさのない職場だねぇ」這々の体でぼやくトグサ
5インチのマテバをサウスポー用のバスケットタイプホルスターに入れ
リバースドローに腰の後ろに吊り下げている様子が描かれている




9課に縁の深いメガテクボディ社に逃げ込んだ「人形遣い」を名乗るアンドロイドを
回収に来た外務省6課の職員二人の体重が500kgを越えることに気づいたトグサ
少佐にこのことを報告し銃撃戦に備える
「確か政府施設内での熱光学迷彩の使用は違法でしたよね」
「国家機密法違反で重罪よ、6課が何かやばいこと考えてるわね
用意できてる?」
「マテバでよければ」





「人形遣い」を奪取した謎の犯人グループの逃走車両に4発撃ち込んだ後
残弾も排莢してマテバに9mmトラッカー(追跡弾)を装填するトグサ
「頑丈な車だぜ、9mmじゃ傷もつかねえ」
「てめえのマテバなんざアテにしてねえよ。よし新米にしちゃいい出来だ」
「ナンバープレートに一発、 いい腕だろ?」
「次から2発撃ち込め」



劇場版の「Ghost in the Shell」でトグサが使用するマテバはMA・TE・BA 2006Mにかなり近いM2007で、テレビシリーズで使用するのはMA・TE・BA 6 Unicaにかなり近いM2008なんだけど、トグサがこの近未来モデルではなく真正のマテバを使用する回もある。

テレビ版シーズン1の最終エピソードSTAND ALONE COMPLEX #26 『公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX』では、9課は与党政権の薬島幹事長を頂点とする陰謀と敵対し、厚生省麻取や海自の海ぼうず、あらゆる政府諜報機関を敵に回し、最後はメンバーの全員が拘留、殺害され壊滅状態になってしまった。





壊滅した9課のメンバーでただ一人自宅待機をさせられていたトグサは
クローゼットから旧式マテバを取り出しサリンジャーの本と一緒に持ち出す




何かを決意したトグサが手にするマテバはテレビシリーズで
使用していたマテバM2008ではなくMA・TE・BA 2006Mだった
バレルウエイトの左右幅が狭くサイトレールがある実際に販売されている純正マテバだ




与党幹事長に密かに近こうとした時に背後に迫る影
「少佐、もしオレが考えていたような結末が待っていた時は…」
「動くな!ゆっくりと手を出してこっちを向け!
お前の腕じゃ薬島に接敵する前に捕まるなw」

バトーの手にはトグサ愛用のマテバM2008が…



シリーズにはこのようにちゃんと純正のMA・TE・BA 2006Mも登場する。

どうやらマテバM2008は警察からの官給品で、このMA・TE・BA 2006Mはトグサ個人の私物という設定らしい。

トグサ、どんだけマテバが好きなんだか…





STAND ALONE COMPLEX #11 『亜成虫の森で PORTRAITZ』でもトグサは
官給品のM2008ではなく私物のMA・TE・BA 2006Mを使用している
笑い男事件の関連で警察に大量不正アクセスをかけて来た厚生省の授産施設に潜入
所長室に忍び込んで記録を盗み見しているのを所長に見つかり警備サイボーグにボコボコにされ反撃




腰から抜いたマテバは妙にウエイトの背が高いがまごうことなき2006M
「電子情報と違って複製が利かないんだからさぁ、丸腰なわけないだろ」
サイボーグに6発撃ち込み無力化するが所長に頭を殴られて大量出血の重傷…




と思いきやトグサが6発撃ち込んだのはヘラクレスの石膏像で
電脳を焼き切られたはずの所長の死体もない
トグサも全く怪我もしていないしトグサが描いた「アオイくん」の
モンタージュは例の笑い男のマークそのものだった
一体どこから偽の記憶をつかまされていたのか…ひょっとしたら
授産施設に入るところからすべて偽の記憶かもしれない…という
のちの「イノセンス」にも通じるような幻想的な物語だった


この回でトグサは「笑い男事件」の真犯人に接触することになる。

しかし笑い男こと「アオイくん」は授産施設の仲間にメッセージを書いた左利きのキャッチャーミットだけを残して忽然と消える。
(左利き用のキャッチャーミットとはありそうであり得ないものという意味なんだそうだ)

「アオイくん」がキャッチャーミットに残したメッセージがこれ
You know what I'd like to be?
I mean if I had my goddam choice, I'd just be the catcher in the rye and all.

僕が何になりたいかわかるだろ
もし神様の野郎が選択肢を与えてくれるならライ麦畑の見張り番のようなものに本当になりたかったんだ

これは薬島幹事長暗殺の決意をしたトグサが持ち出した本、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の一節だ。

この小説では自分の周囲の俗物的な人間関係に失望し、全ての社会性を拒否した神経症気味の若者が、
「僕は全てのことから耳を塞ぎ口を閉ざしたい」
と願いつつ通りすがりの少女が歌う「誰かが誰かをライ麦畑でつかまえたら」という歌声に初めて安らぎを感じ、最後にこう独白する
「で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ――どっかから、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ」





笑い男マークに書き込まれたフレーズはサリンジャーの小説の一節
「僕は耳を閉じ口をつぐんだ人間になろうと考えた」




マテバ 2006Mが登場する映画について調べたがライノやUnicaならいくつか作品が上がってくるが
マテバ2006Mに関しては「攻殻機動隊」のシリーズしか検索で出てこない
今マテバは会社も再興して2006Mも結構人気があるそうだがこれもひとえに攻殻機動隊のおかげらしい




MA・TE・BA 6 Unicaなら「LOOPER」という映画が例のデータベースで取り上げられていた
これはインセプションなどで印象的な演技を見せたジョゼフ・ゴードン・レビットが
未来の自分(ブルース・ウイリス)に出会って運命を変えるというSFで未来の自分がUnicaを使用していた
顔つきがあまり似ていないレビットとウイリスを似せてしまった
特殊メイクアップの日本人辻一弘のメーク手法も話題になった作品だった
これはこれでそのうち詳しく取り上げることにする



検索でマテバの映画は攻殻機動隊しか出てこなかったので、もう攻殻機動隊一色でマテバの登場するフィルムをまとめた。
それにしても今回もお世話になったデータベースでのマテバの検索結果がこれ。
Mateba Autorevolver - Internet Movie Firearms Database - Guns in Movies
毎度感心するが情報が深い。



なお、攻殻機動隊の映画、テレビシリーズについてはかなり前だがこちらでも解説を書いた。
攻殻機動隊 Ghost in the Shell
攻殻機動隊 Stand Alone Complex~Individual Eleven
きらびやかな舞台設定に幻惑される微妙な恋物語


興味があればこちらもどうぞ。



2021年6月22日
















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