Previous Topへ Next

APS M870にカンチレバー着けました…ってそもそもカンチレバーって
なんじゃい?っと思っていたらよく知っている言葉だった…

cantilever

APS M870にカンチレバー着けました…ってそもそもカンチレバーってなんじゃい?っと思っていたらよく知っている言葉だった…

APSのCAM870のショートバレルにカンチレバー着けました…ところでこういうサイト台のことを「カンチレバー」っていうけどもカンチレバーってそもそもなんだったっけ?…なんか馴染みがある言葉のような…忘却の彼方に追いやられた言葉のような…

と思っていたら思い出した。

カンチレバーってあれじゃん!

とても馴染み深い言葉であったよ。

いつから馴染み深かったかを思い出した順に…


昔々のそのまた昔、結構なオーディオマニアだった。

当時はアナログレコードの時代だった。

音楽を聴くときはレコードプレイヤーに、30cmのLP盤を載せて、息を止めながらターンテーブルの針をレコードに置いた。

と、慣例的に「レコードに針を置く」…とかいうがあのレコードの上に置いていたのは正しくは針ではない。

あのレコードの上に置いていたのは針ではなくアームだ。

あのアームの先についているのは…カートリッジだ。

カートリッジの先についている交換針を「針」と呼んていたが正しくはあれはノブと呼ぶらしい。

そのノブの先についている細い金属の棒も「針」と呼んでいたが、あれも正しくはカンチレバーというのだと先輩オーディオマニアに教わった。

じゃ、針は一体どこについているのだ?とおもったらそのカンチレバーの先に乗っかっているルーペで見ないとわからない小さな宝石チップを「針」というらしい。





日本精機宝石工業さんというレコードの針先の
宝石を作っている会社のホームページにありがたい解説図があったのでお借りした
この図はMM方式のカートリッジの概念図だがMC方式もMV方式も概ね似ている
ダンパーの先にカンチレバーがついていてこれがレコードの溝の揺れに合わせて自由に動き
その動きを根元のコイルと磁石で電気信号に変換してアンプで増幅して音楽として再生される
要はこういう片側だけが固定されてもう一方が固定されていないものをカンチレバーと呼ぶ



そうだよ、レコード針…と僕らが思っていたカートリッジの先についていた細い金属棒は正確には「カンチレバー」というのだった。

調べてみたら元は建築用語で、片方だけが固定されている梁のことをカンチレバービーム(cantilever beam)というのだそうだ。
日本語では「片持ち梁」、両側が固定されている一般的な軸組構造の梁は「両持ち梁」というらしい。
英語ではboth sides fixed beamとでもいうのかな、なかなか適切な訳語が見つからなかった。

ちなみにどうでもいいうんちくを言うと建築屋さんは「キャンチレバー」という言い方をするらしい。


で、「針じゃなくてカンチレバーね」と先輩オーディオマニアに注意されながら思ったのは
「カンチレバーって飛行機みたい…」
ということだった。

飛行機の世界では片持ち翼のことをカンチレバーウイング、あるいはカンチレバーストラクチャという。

これもまた昔々のそのまた昔のさらに昔…飛行機マニアだった時のこと…





(上)フランスがまだ航空先進国だった当時の(今でもそうじゃわいと
フランス人は言うだろうが…)SPADと(下)ポーランドのPZL
複葉機時代は主翼は支柱と張り線で根元と翼端を固定されていたので両持ち式
PZLはだいぶ時代が進んで翼の途中まで支柱で支持しているので
そこまでは両持ち構造でそこから先の翼端側は片持ち構造だった




これは何の三面図だったかな…戦間期も最後の方になると低翼単葉が主流になるが
このようにやはり張り線や支柱で翼を支える飛行機が多かった
支柱や張り線は無い方が空気抵抗を減らせて有利なのはわかっていたが
無くすには翼を頑丈に作らねばならずその重量増加が性能に悪い影響を与えると考えられていた




諸説あるがおそらく実用機で世界最初の片持ち翼機のユンカースf13
やればできるじゃん…ということを証明してみせたユンカース博士
こういう翼の根元側だけで固定されている翼をカンチレバーウイング、
こういう構造をカンチレバーストラクチャーというということは飛行機マニアは知っとるわい…
と腹の底でオーディオマニアの権威につぶやいていた(面と向かっては言えない…)



片持ち翼を持った代表的な飛行機は?…というより今日目にするほぼ全ての飛行機は片持ち翼の、つまりカンチレバー構造の飛行機で、そうじゃないものをあげていったほうがはるかに速い。

このように両側を固定するのではなく、片方だけを固定するような構造をカンチレバーという。

ちなみにカンチ・レバーでもカンチレ・バーでもない、カンチレバーで一つの単語。

アウトなリガーでもアウなトリガーでもなくアウトリガーで一つの単語というのと同じ。


散弾銃の単銃身にサイトを固定するときに、アイレリーフを稼ぐために銃身の根元の後ろに飛び出すような構造でサイトレールを固定するのも片持ち構造なので「カンチレバー」という。

これに対してレシーバーにサイトレールを取り付ける方法もある。





こちらはAPS純正のCAM870用のサドルマウント
M870にスコープを載せたいだけならこれを買えばポン付けできるはず…なんせAPS純正品なので
実銃についてはレシーバーに穴を開けてレールを固定している人、
サドルマウントを使っている人、カンチレバーを使っている人三者三様だ
それぞれにメリット・デメリットがあるが私はこのガイコツの
彫り込みが好きではないのでこれは敬遠した




レシーバーにサイトマウントレールを固定する方法に対して
バレルにマウントをつけるのがカンチレバーサイトマウント



レシーバーに穴を開けて直にレールを固定する方法と、サドルマウント、カンチレバーそれぞれのメリット、デメリットはこんな感じかな。

【レシーバーに直付け】
・メリット
工作が簡単
レシーバー上ならサイトと眼が近いのでアイレリーフが最適
・デメリット
レシーバーに穴を開けないといけないのでレールを外すとみっともない
レールを外せないのでリブ付きバレルが使えない
そのため光学サイト専用銃になってしまう

【サドルマウント】
・メリット
穴あけなどの工作が不要・取り付けが簡単
・デメリット
サドルがシリアル番号を隠してしまうので登録更新の時に毎回外さないといけない(実銃の場合)
サドルを取り外し・取り付けをするたびにサイトの調整が必要
サドルを外さないとリブ付きバレルが使えない

【カンチレバー】
・メリット
バレルごとに光学サイト固定なので交換ごとにサイト調整不要
登録番号確認のために外さなくていい(実銃の場合)
・デメリット
強度的に不安

クマ、イノシシ、シカ猟しか興味がない人は固定レールが一番かもしれないが、クレイ射撃もやりたい人なら固定レールとサドルマウントのデメリットは割と厳しい、逆にクレイしかやらない人はサドルマウントでも我慢ができる…という感じかな。

最近は光学サイトを使うショットガンシューターも多いようなので、カンチレバーを再現するにあたりそのデザインをリサーチしていた。

Remingtonの純正カンチレバーというのもあって、これがなかなかかっこいい。

しかしちょっと問題があった。





アメリカのショットガンシューターのYouTubeよりRemingtonの純正カンチレバー
かっこいいんだけど形がどうも力学的にかなり不合理でこのまま再現するとすぐに折れそう…
と思っていたら実際に折れるんだそうだ…詳しくは本文


見た目は一番かっこいいRemingtonのカンチレバー。
多分そういうことから人気もあるみたいだが、実際に使っている人の評判はあまり芳しくない。

Remington純正カンチレバーを使っているときちんとゼロインを合わせているのに、照準がずれるという指摘がある。
詳しくはこちらのサイト参照。
純正カンチレバーバレルはゼロインがズレる

このサイトで紹介されている実際の射撃の動画がこちら。
We Switch Out the Barrel of a Remington 870
なんとサボットスラグ弾を撃った瞬間にカンチレバーがまるで鞭のようにボヨヨンとしなる様子が超スロー撮影で捉えられている。

そして実際にRemingtonのカンチレバーが折れてしまったという記事も見つけた。
Remington870 カンチレバー 破損

確かにこの形だと応力がレールの根元に集中して、折れるよなぁ…この破損は設計ミスなんじゃないかなぁという気がする。

そして工作材料としてはABSとアルミぐらいしか使えないガスガンのカスタマイズでこの形を破損しないように作れる自信がなかったので他のデザインを物色した。





Remingtonのカンチレバーはアルミ製でしかもバレルに木ねじで固定されているなど
材質や工作に問題があるようだが設計ミスもあるんじゃないかと思う
これはモスバーグのカンチレバーだがこちらは鋼鉄製でバレルに
ろう付けされて強度的にはRemingtonよりもかなりいいらしい




とはいうもののモスバーグも再現するにはやはり不安な形をしている
実銃はスチールだからいいかもしれないがこちらはアルミかABSの工作なので
この形はちょっと厳しい




こちらはフランス製のハスティング社のカンチレバーを装着したWingMaster
フランス風に発音するとアスティンと読むのかもしれない




バレルに固定されている面積が大きいのでこれならなんとかなりそうだ




ハスティングのカンチレバー(上)のデザインを忠実に再現したわけではないが
雰囲気を参考にしてAPSに工作したカンチレバー(下)




スコープをつけた21インチバレルは大物猟メインのハンターのレイアウトなんだけど
こうしてリビングに立てかけて置いているとサム・ペキンパーあたりの
映画に登場した銃のような雰囲気もあるかもしれない




あるいはクリント・イーストウッドの「ホワイトハンター・ブラックハート」あたりに
登場したゾウ撃ちの銃がこんな雰囲気だったんじゃないかな…うろ覚えだけど




ということで26インチ、21インチともに工作完了したAPS CAM870改めRemington M870








前回盛り込みきれなかった写真も公開







しばらくはこのテッポで遊んでいると思うけど早速次の課題が舞い込んできている。

先にM870が登場する映画の話をしたかったけどどちらがさきになるかは次回次第…



2021年10月15日
















Previous Topへ Next





site statistics