マルシン・ゲーリングルガー〜プロイセン帝国の最後の輝き〜ルガーP08…ゲーリングモデルと自動拳銃の幕開けの話(1)
ルガーP08ってスチームパンクみたいな雰囲気があってなかなか好きなテッポだった。
シアレバーとかエジェクターとかトリガーレバーメカなどがフレームの外にはみ出ているとか、エンフィールド/ウエブリーアンドスコットのリボルバーに通じる19世紀的なメカメカしさがよい。
そのスチームパンク的雰囲気をますます楽しめるエングレービングてんこ盛り、金メッキギラギラモデルがマルシンのゲーリングルガーP08ダミーカートモデル。
クラシックな外観に18世紀的な装飾が映えるので、ずっと気になっていたモデルだったが最近の悪食…もといジャンク漁りで安く手に入れたので、ほぼ動かないガラクタだったのを修復して完動品に生まれ変わらせた。
夏頃にはスライドがぱっくり割れたタナカのハイパワーに途方に暮れて「ジャンク漁りはもうやめよう」とかなり反省したが、こういうことがあるとやはりジャンク漁りはやめられない。
その入手過程は次回書くとして、まずはこのマルシンルガーの出来について。
マルシンルガーのゲーリングモデルは例の通販でモデルガンを素人に売りつけるACGのタイアップ商品
だからワイアット・アープやカスター将軍の銃と同じくメッキ・エングレの装飾品のような仕上がり
そういう出自なので中古はかなりコンディションが悪いものばかりがオクなどに出てくるが
今回は作動は全滅だがメッキはほとんど錆びていない見かけのコンディションは良好なものが出てきた
メカ部分を直してちょっと磨いたら新品同様のコンディションになった
ルガーは装飾無しでもメカがフレームの外側にはみ出ている19世紀的なテッポなのだが
こういうメッキ・エングレフル装飾だとまさにプロイセン帝国のラストプロダクトにふさわしい派手さ
古めかしいが全体的にバランスのとれた美しい姿をしている
第二次大戦のアメリカ兵のスーベニールとして日本軍の
軍刀と並んで人気があったというのもうなづける
バレル下側には製造者のマルシンの刻印と22金が彫られているので
これはおそらく元はACGではなくマルシンの組立キットだと思われる
フレーム左側には「ハインリッヒ・クリークホフ兵器製造所・スール・1939年8月15日」の刻印
これがナチスの副総統のヘルマン・ゲーリングに寄贈された時の記念刻印と思われる
ルガーはのちのP38ほど規格化が進んでおらず一挺ずつ手作業で部品をすり合わせて製造するので
多くの部品は互換性が無くそのため各部品にシリアル番号の末尾番号を打刻することで有名だが
このゲーリングモデルはフレーム前部とマガジンの底にだけ通番刻印がされている
他の銃と部品を入れ替えることはないだろう…というスペシャル仕様なのかも
チェンバーに装填するとエキストラクターが盛り上がって「GELADEN」の文字が見える
これは「荷を積んだ」「装填した」という英語のLOADEDにあたるドイツ語
エキストラクターはボルトの真上に付いていてこのレイアウトだと薬莢が真上に飛んで射手の顔を
直撃しないかという気がするがモーゼルなどもこうなのでむしろこの時代の標準だったのかもしれない
最終弾を撃ち尽くすとトグルジョイントが上がりっぱなしになってホールドオープンする
ホールドオープンメカはマガジンと独立しているのでマガジンを抜いてもホールドは解除されない
次のマガジンを入れてトグルグリップを軽く引くと初弾が装填される
弾切れを知らせるだけでなく再装填もスピードアップした今日では当たり前だが当時は画期的なメカ
エジェクションポートにダミーカートが見えるこのリアルな光景はガスガンでは味わえない
マガジンはフォロワーハンドルを引き下げて9mmルガー弾が7発装填できる
9mmパラベラム弾はこのルガーのために開発された装弾で名付け親は開発者のゲオルグ・ルーガー
ラテン語の成句の「 Si vis pacem, para bellum (汝平和を欲すれば戦さに備えよ)」から
(上)DWM製Luger P08実銃と(下)マルシン製ゲーリングルガーP08ダミーカートモデル
プロポーションについてはマルシンはやや太めのような気がしないでもない
メカについては過去のどのモデルよりもリアル
起立してホールトオープンしたトグルジョイントとグリップ後面のエングレービング
バレルエクステンション・ボルト上面のエングレービング
それにしてもすごい細工だと思う
トリガーガード周り、スライドレール周りなど少しでもスペースが
あるところにはこれでもかとエングレービングが施されている
セーフティの動き:gesichertはsicherの過去分詞形で「保護された」「安全な」というような意味
英語で言えばcoveredとかsecuredみたいな単語にあたるかな
この文字が見えるようにレバーを下げるとシアレバーを抑えるようにセーフティがせり出してくる(上)
文字が隠れるようにレバーを上げるとシアレバーを抑えていたセーフティが引っ込む(下)
フィールドストリッピングはバレルエクステンショングループを
ショートリコイルポジションまで後退させてテイクダウンレバーを下に回す
セーフティ解除をあらかじめ忘れずに
するとトリガーレバーカバーが外れてバレルエクステンショングループが前に引き出せる
一度半分まで前に引き出してトグルジョイントにテンションを
かけているカップリングリンクをリコイルレバーから外す
トグルを半分ほど折って銃を逆さまにひっくり返して
カップリングリンクをトグルの中にしまい込むように回転させる
するとバレルエクステンション・ボルトグループがごっそりフレームから抜ける
日常的な手入れのための通常分解の手順はこんな感じで組立もこの逆の手順
複雑なメカの割には意外に慣れれば簡単な分解法
ボルトをホールドオープンさせるメカ
このメカも今回最初入手した時はまともに動いていなかった
2021年11月8日
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