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マルシン・ゲーリングルガー〜プロイセン帝国の最後の輝き
…だったはずのジャンク品をいかにまともに動くようにしたか(2)

Last aureola

マルシン・ゲーリングルガー〜プロイセン帝国の最後の輝き…だったはずのジャンク品をいかにまともに動くようにしたか(2)

見た目はほぼ新品の綺麗なゲーリングルガーを、かなり割安のジャンク価格で入手した。

なぜジャンク価格かというとルガーの形をしたオブジェ状態で、ほぼすべての可動部分がまともに動いていなかったからだ。

1)トグルジョイントがふかふかで手で押してやらないと完全に復座しない

2)空のマガジンを入れてトグルを後退させてもホールドオープンがかからない…またはたまにかかってもマガジンを抜くとボルトが戻ってしまう

3)トリガーを引いても何も起こらない…トリガーバーがシアにコンタクトできていない

4)装填したダミーカートは排出しない…なので2発目は初弾とぶつかって確実にジャムる

こんなところかな。
要するにモデルガンとしての機能は全滅で、本当にただのテッポの形したオブジェまたは文鎮モデルと一緒。
これを修正した。

あとマルシンのグリップの共通の弱点で、アイボリーグリップがどう見ても象牙に見えない…ペカペカのプラスティックグリップにしか見えないのでそれも修正した。





最初の状態はトグルを引いて手を離すとボルトはここまでしか戻らない
だから装填もできていないので手で押してやらないとボルトは閉鎖しない




この個体はACGやマルシンの完成品ではなくどうやら組立キットのようだが
最初のオーナーが組立キットに慣れていなかったようで調整ができていなかった
メインスプリングガイドが曲がっていたので修正、メインスプリングも
よれていたので一度バラしてキレイに入れ直した




不具合状態の写真を撮り忘れたので完成品の写真を参考にしてもらいたいが
メインスプリングは巻きが一重でも重なっているとバネの力が半減する
またフレームからはみ出している場合も同じで一巻きぐらい
影響ないだろうと思っているとこの不具合を起こしてしまう
このように一巻きも重なっていない・フレームからもはみ出しいない
という状態にしないとトグルがふかふかで戻らなくなってしまう




ホールドオープンがかからなかったのはメインスプリングの巻きが重なって
ボルトが完全に後退できていなかったからだがそれだけでなく
ホールドオープンラッチが引っかかってちゃんと動いていなかったからだ
赤丸で囲んだスライド溝にバリがあってここに引っかかって上がらなかったので
ここのバリを削ったところホールドオープンラッチが自由に動くようになった




(上)マガジンが入っていない状態・ホールドオープンラッチが下がっている
(下)マガジンがカラになった状態・ホールドオープンラッチが上がっている
このラッチがボルトをキャッチして残弾ゼロになるとトグルが開いたままになり
マガジンを抜いてもボルトが戻らないのが正しい動き




トリガーを引いても何も起こらない問題はシアのプランジャーピンが紛失していたため
ピンがなくてもプランジャーを差し込んで組み立てても形にはなるがトリガーバーが
シアプランジャーを押してもゆるゆるでシアを押し込むことができない
最後にこのピンが余っていたはずなんだけど「余ったから捨てちゃった」ということかな
マルシンから取り寄せるまでもないと思ったのでこの径の釘を切って
両端をかしめてピンの代わりに打ち込んでプランジャーを固定した




ダミーのエジェクターがなぜか接着剤で止めてあったが
これはレシーバーに抑えられてそのテンションで固定されるはずの部品なので
根本のところを少し曲げて抑えのテンションがかかるように修正した




実銃だとこのエジェクターから伸びた爪がボルトまで届いていてここにケースが
衝突して排莢されるはずだがこの部品には固定用の爪しかなく貫通していなかった




ゲーリングモデルには別パーツのエジェクターがボルトに着くはずなのだがこの部品も紛失していた
ここで悪魔の囁きで自分でアルミ削り出しでエジェクターを作ってしまおうか…とも考えたが
思い直して素直にマルシンのサポートに電話して部品を送ってもらった
中3日ぐらいで送ってくれたのでみなさんも悪魔の囁きには耳を貸さないようにしてもらいたい
最近のメーカーさんのサポートはどこも親切だな…とまたもや感心させられた




エジェクターが飛び出してカートリッジをキックしてこれで排莢が起こる
この部品が紛失していたので装填したカートは1発も排莢されない状態だった




ちょっと気になったのがボルトの後部がねじ込み式でストライカーをここから
挿入するようになっていたがこれ六人部さんの金型ではないかなと思ったこと
このネジをかしめて抜けないようにしてあるのは改造防止のためなんだけど
こういう仕組みって六人部ルガーで見た覚えがある




全く動かない以外は新品同様…と書いたが全くの新品ではなく見えないところでメッキの浮きが見つかる
スクラップ状態のまま数年手入れも全くしないで飾っていたんだろうなぁ




とりあえず以上の修正をしたところ空マガジンを入れてトグルを引くとオープンのまま
ボルトが止まるようになったしマガジンを抜いても勝手にボルトが戻らなくなった
トグルを少し引くと勢い良くボルトが閉まって次弾を装填するようになった
排莢もちゃんとできるようになり引き金を引いたらカチッとストライカーも落ちるようになった
モデルガンとしての機能は全部復活した




あとこれはマルシンの問題なんだけど実銃の象牙グリップをABSで再現しているが
このABSグリップがいかにもプラスティックのテカテカグリップ
カスター将軍のコルトネイビーと同じ欠点がある




全体的にテカっているプラを板に巻いたサンドペーパーで平面出しして仕上げもマットにした
エングレービングの彫り物に塗装された黒がはみ出しているところもあったので
そういうはみ出しもサンディングで削り落とした




こうして仕上げ直したグリップパネル
遠目には象牙に見えるかな
残念ながら手に持つとやはりABSペカペカなのがわかってしまうが
象牙はいまではワシントン条約の規制品なので
新品が手に入る可能性はゼロ…ここは仕方がない




ほぼスクラップに近いジャンク状態だったルガーを完動品にまで持って行ったので
「やはりジャンク漁りはやめられない」とまた思い始めている今日この頃
銃のメカを知らないなら組立キットなんか手を出さなきゃいいのに…
とも思うがそのおかげでこういう掘り出し物を手に入れることもできる
調子の乗っているとまたタナカのハイパワーのように頭を打たれることになるかもだが…


最近のエアガンファン、モデルガンファンは前回のハイパワーの時も思ったけど、銃のメカに詳しくない人が多い気がする。

だからトラブルが起きても見当違いの部品を削ったり、カサ増ししたりで一向に問題が解決しなかったり、組立キットを組み立てると最後に部品がいくつか余ってまともに動かない…ということになるようだ。

以前ベレッタのM8000クーガーのジャンクの時もガスピストンカップがなぜかシリンダーの外側についていたり、それぞれの部品の目的がわからないからどこにつけたらいいのかわからないという感じだ。


機械設計というのはみんなそうだけど、特に必要ないけど部品つけとけ…みたいな部品は一つもない。

むしろ機械設計者は心血を注いで部品数を減らす努力をしているはずで、なぜなら余計な部品、余計な分割構成は必ず故障の原因になるからそういうものを一つでも減らすという努力をしている。

大げさな言い方をすれば人類の機械文明というのはそういう地道な努力で成り立っているし、そういう地道な機械文明の努力の軌跡を知ることができるサンプルが銃器設計の世界だと思っている。

だからテッポのメカに夢中になっているわけで、単に映画のスターと同じポーズを取りたいためだけにテッポを欲しがっているわけではない。


だから組立キットを組み上げて小さなピンが余ったら
「なんだかわからないけど多分余った部品なんだろう」
なんてポンと捨てないで冷静に考えてみて欲しい。

そのピンはなんらかの働きをするために付けられているはずなので、そのピンがないと何かの機能がまともに動かないはずだ…必ずそういう不具合の原因になるということを。


もっとも組立キットをいい加減に作って投げ出す人がいるおかげで、私のようなジャンク漁りは助かっているのだが…

最近観た「AK47」という映画でまさにこういうメカに心血を注ぐエンジニアの話が出てきたので、この話は近日中にまた書くかも。





今回のジャンク再生で大変参考になったのでマルシンの部品表を貼っとく
ただしこれはゲーリングモデルではなくエングレなしのルガーP08モデルの部品表
エジェクター(13番)が一つの部品になっていてこの方が実銃の構造に近いのだが
ゲーリングモデルで外側と内側に分割されたのは部品の耐久性か何かの問題だろう
ということは迂闊に改造しなくて正解だったということかもしれない




この部品価格表は2021年の10月段階ではこのまま改訂されていなかった
ただし今後は価格が改訂されることはありうるので部品請求の前に
メーカーのサポートに電話して確認したほうがいい
親切に部品請求の手順を教えてくれるはずだ


2021年11月9日
















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