マルシン・ゲーリングルガー〜プロイセン帝国の最後の輝き〜ルガーP08…自動拳銃の幕開けの開発史とモデルガン遍歴の話(3)
【金属モデルガンとの出会い】
金属製モデルガンにはほろ苦い思い出がある。
何度も書いているがリアル鼻垂れの小坊だった当時、駅前のおもちゃ屋の店頭のショウウインドーに金属モデルガンのピースメーカーが飾られていた。
黒々とした肌で銃口もシリンダーもしっかり開いていた。
なんせ地獄の46年規制の前だったから、金属モデルガンはまだ黒くても良かったし、銃身もシリンダーも貫通していて向こうが見えていた。
リアル厨房になって金属モデルガンを手にした時に地獄の46年規制がきて、金属モデルガンは白か黄色のペンキを塗らないと違法ということに変わった。
銃身もシリンダーもがっつり塞がないと「ジュートーホーイハン」という罪に問われるのだと聞かされた。
プラスティック製のモデルガンは銀玉鉄砲と同じ扱いで、黒のままで銃口もインサートを入れるだけで完全閉鎖でなくてもいいとお目こぼしがあったが黄色に塗られた銃口がないピーメは悲惨だった。
やがて白や黄色だけでなく金色も特別に大目にみてやる…ということにルールが緩和され、金色の金属モデルガンが復活した。
社会人になってからまたテッポ趣味の焼け木杭に火がついた時にCMCなどのピーメやレミントンアーミーなどを手に入れた。
亜鉛合金製だからみんな金色をしていた。
この黄金銃のモデルガンは磨いているだけで金色の着色がだんだん剥がれてきてクロームシルバーメッキみたいな色になる。
すると銀色は「ジュートーホーイハン」状態になるので、黄色のペンキを塗らなくてはいけなくなるとのことだった。
それを狙ってわざと磨く人もいたが、私は合法で楽しみたかったのでメッキが錆びてしまうのも我慢していた。
金属モデルガンはかくの如くテッポ好きには試練となった。
そんな悲惨な思いをして黄色ペンキの悪夢にうなされながらなぜ金属モデルガンにこだわっていたかといえば、やはり金属の重さ、質感がプラ製のモデルガンでは味わえなかったからだ。
亜鉛合金製のモデルガンは重量はほぼ実銃と同じだ。
また金属の肌に手を触れただけでひやりとする冷たさもABSやヘビーウエイト樹脂では味わえない。
しかし金属モデルガンは撃って楽しむというものではない。
サビに弱いし何よりも銃身が完全閉鎖されているので「音はすれども火も見えず…」な悲しさ。
今から思えばCMCのGSPやエルマルガー、コルトウッズマンなど珍しいテッポもいっぱい持っていたけど、飾っているだけでは飽きてしまう…とある時全部手放してしまった。
それから幾星霜…
先日マルシンのゲーリングルガーを手にいれて40年ぶり?の金属モデルガンとの邂逅。
銃身が完全閉鎖した金色のモデルガン…だがこのゲーリングルガーに関してだけは実銃も金色なのでこの色がリアルということになる。
最近リアル志向になってきた私の好みに合う数少ない金属モデルガンということになる。
マルシンのゲーリングルガーの銃身
全身金色で銃身は銃口から1センチぐらいのところで完全閉塞されている
だからダミーカートモデルだが私個人的にはダミーカートの方が嬉しかった
銃口のすり鉢状のクラウン、銃身のヘアラインツールマークなどが美しい
このカッチリ感・冷たさは残念ながらABSやヘビーウエイト樹脂で再現は不可能
このマルシンのゲーリングルガーは重量は850gで実銃とほぼ同じ。
手に持つとずっしり重いが、これでもブローニングハイパワー実銃の弾倉が空の状態の900gより50g軽い。
先日のタナカワークスのハイパワーヘビーウエイトで鉛ウエイトをがっつり仕込んだ重量と比較するとやっぱりルガーの方がかなり重い。
こういうところなんだよなぁ…
ヘビーウエイト樹脂のガスガンはマガジンもずっしり重いはずだが、やはり金属モデルガンには手に持った時のリアリティで全然敵わない。
【自動拳銃の発達史とルガー】
そのルガーの実銃のことについて。
これも以前も書いたが19世紀は銃器発達史の「カンブリア紀」のような時代だった。
生命は発生以来10億年もバクテリアのような形態でほとんど進化がなかった。
ところがカンブリア紀には突然生物の形態が一気に多様化して爆発的に種属が増える「進化の大爆発」が起こった。
それまでの単調な生物相から、草食動物、肉食動物、今日の脊椎動物の先祖に当たる脊索動物までが現れた。
また今日のどの生物とも類似性がない「アノマロカリス」のような謎生物まで大発生した。
やがてこの爆発的に広がった進化は大絶滅によってほとんどの種族は消えてしまい、残ったごくわずかの種族が今日の地球の全生物相の先祖になっている。
アノマロカリス・カナデンシス(via Wikipedia)
銃機の発達史でもこれと全く同じことが起こっている。
銃がどこで発明されたかは諸説があるが、発明後数百年はマッチロック式あるいはフリントロック式先込め銃という形態でほとんど進化しなかった。
ところが19世紀に入って次々に様々な形態の発明が起こり、銃の形は爆発的に多様化していく。
誰もが夢見た連発銃を実現したリボルバーの発明、リボルバーの連射を画期的に速く正確にしたシングルアクションの発明、弾薬の元籠めを可能にした金属薬莢の発明…などを経てリボルバーが開花した話は何度かに分けて書いてきた。
ここでもう一つの要望が銃器ユーザーに生まれる。
ハンマーを起こすだけで装填が次々行われるシングルアクションはなかなか便利ではあるが、さらに引き金を引くだけで次々と装填・排莢が行われたら銃はもっと便利になるに違いない…
これが「自動拳銃」へとつながる。
1890年代には多種多様な「自動拳銃」の試みが行われた
これはウエブリーアンドスコットと英陸軍のフォスベリー中佐が共同開発した自動拳銃
ウエブリー・フォスベリーオートマチックリボルバーは激発と同時に銃の上半分が後退して
その力を利用して自動的にシリンダーを回してハンマーを引き起こす
初弾以外は常にシングルアクション状態で発砲できるという発明だったが
メカが複雑すぎて故障が多く重くそれなのにリボルバーと同じ6発の装弾数と
オートとリボルバーの悪いとこどりをしただけの発明になってしまった
マンリッヒャー M1894はブローフォワード方式の自動装填式拳銃
銃弾が発射される時にライフリングと銃弾のレッディングの抵抗で銃身は前に引っ張られるはずだから
銃身が前に移動して薬莢をはじき出し次の弾を復座の時に自動装填するという発明
実際には銃身が前に引っ張られる力とブリーチが後ろに押される力は作用反作用なので
構えがぶれることが動作の条件になっているという機械工学的にはどうなのという方式
連発のメカもどうしても複雑になって重量がかさんでくるのも欠点
シュワルツローゼ銃などこのブローフォワード方式は当時結構各国で試作された
この日本の日野式自動拳銃もブローフォワード式自動拳銃のひとつ
日野式は連発機能を簡素化するためにハーフオープンボルトのような撃発メカを搭載したが
このメカが装填の時に手がすべって暴発の原因になり発明者自身が重傷を負うことになる
理論上は合理的なはずのブローフォワード方式は結局大きく進歩することなく絶滅する
欠点が多いブローフォワードに対してブローバック方式で成功したモーゼルC96
1890年代はもうリボルバーはダブルアクションリボルバーに進化し始めるが
自動拳銃はやっと実用段階に入ってこのモーゼルもロッキングブロック付きの
ショートリコイルロッキングとダブルカラム・ダブルフィードのマガジンを持つなど
近代拳銃の基本的な要素をほぼ揃えてきた
しかしまだ片手で操作するにはでかい
モーゼルと開発競争を繰り広げていたのがDWM(ドイツ銃器弾薬製造社)のヒューゴ・ボーヒャルト
ロッキングブロック方式を採用したモーゼルに対してトグルジョイントロッキング方式のショートリコイルを採用した
ボーヒャルト、英語読みはボーチャードの最大の進化はマガジンをグリップの中に収めたこと
これにより拳銃を文字通り「ハンドガン(片手で打てる銃)」にできる可能性が生まれた
(via Wikipedia)
ボーチャードの特許申請書のメカ特許要件図
トグルジョイントでガッチリロックされたボルトが後退するとレシーバーの後端で
トグルのローラーが下に蹴られて開くために後部に大きなスペースがある
トリガーバープレートに抑えられ外付けされたシアをトリガーの
「ツノ」が押してストライカーを解放するメカはのちにルガーに引き継がれる構造
この申請図面ではリコイルスプリングは板バネでグリップの中に収められている
ボーチャード最終形の構造図
グリップの中にあった板バネはレシーバーの後端に移動されている
板バネの形状もゼンマイバネのように大きく曲げられた
恐らく全長が長い7.65mmボーチャード弾のマガジンをグリップに収め
さらにリコイルスプリングも収めるとグリップの前後長が長くなりすぎるため
スプリングの位置をレシーバーに移動したのだと思われる
7.65mmボーチャード弾と7.63mmモーゼル弾(via Wikipedia)
両者の外形、口径は似ているが装薬量の違いを
区別するために口径表示を変えているので互換性はない
小口径高速弾のため全長が長いボトルネック型の薬莢を採用している
このボーチャード拳銃はマガジンをトリガーガードの前に置いたモーゼルに対して、グリップに内蔵したのがアドバンテージだった。
特許図ではリコイルスプリングはリーフ状でグリップに内蔵されているが、実際に製品化されたボーチャードではゼンマイスプリングのような大きく曲がった形状に変更され、それを収納するためにさらにお尻が大きくなってしまった。
マガジンをグリップに収めて自動拳銃の小型化の可能性を示すことはできたが、実際に完成されたボーチャードは片手で射撃するにはちょっと持て余す大きさだった。
ハートフォードワークスから発売されているボーチャードC.1894のダミーカートモデルガン
ダミーカートモデルなのでボーチャードのロッキングメカは正確に再現されている
そしてボーチャードのデカさも手にとって体感することができる
ボーチャードのC.1894とモーゼルのC96の原型のC94とどちらが世界最初の実用自動拳銃なのかというのは議論のあるところだが、こうして両形式が出揃って世界に向かってこの新方式を売り込むことになった。
モーゼルのセールスは順調でプロイセン帝国内だけでなく、日本や中国の国民党軍などでも採用されるなど各国で評価された。
DWMもボーチャードをアメリカなどに売り込んだ。
ちょうど開催されていたアメリカ軍の制式拳銃トライアルに参加…しかし採用されなかった。
一つにはアメリカ軍の45口径信仰が障害になったという説もある。
アメリカの45口径信仰は1898年の米西戦争の折、フィリピンのモロ族との戦闘で38口径を数発受けても怯まない原住民に恐れをなしたのが起源という説をよく見るが、実際にはもっと古い。
Smith & Wessonが優れたメカのリボルバーを開発しても、なかなかアメリカ陸軍制式拳銃に採用されなかったのはやはり口径の問題がある。
おそらく西部開拓時代のネイティブアメリカンとの戦闘で、すでに拳銃は44口径以上でないとダメだという信仰がアメリカ軍に生まれていたと思われる。
さらに装弾数10発のモーゼルに対してほぼ同じデカさ、重さでボーチャードは8発。
装薬量もモーゼルが多いので貫通力などは上…などボーチャードにはなかなかアピールできるセールスポイントが見当たらなかった。
このボーチャードのアメリカトライアルへの売り込みを担当したのがゲオルグ・ルーガーだった。
この時にルーガーの胸にどういう思いがよぎったかは知る由もないが、セールス的にはほとんど失敗と言えるボーチャードに改善の可能性を感じていたのかもしれない。
ボーチャードの弱点を改良すべく開発されたルガーM1900
最大の特徴はレシーバーの後部の大きなスプリングとトグルジョイントの
アンロックのメカのスペースがなくなって小型化に成功したこと
ルガーM1900の特許申請の要件構造図
ボーチャードで一度見捨てたリーフスプリングをグリップに内蔵する構造が復活している
またシーソー状になっていたボーチャードのトグルの最後部のバーを片持ち構造に変更して
シーソーの反対側を蹴り下げるのではなく関節部についたトグルグリップを
レシーバーが蹴り上げる構造に変更してトグルジョイントのコンパクト化に成功した
しかしこのスプリング構造は問題を抱えていた
師匠(?)のボーヒャルトから離れて独自に自動拳銃を開発し始めたルーガーは、後部を蹴り下げるトグル構造をやめて、ジョイントの関節部をレシーバーが蹴り上げるという発想の転換でトグルジョイントの小型化に成功した。
しかし一度は棄却した板バネをグリップに戻した方式が問題を起こした。
板バネのテンション不足による装填不良、さらにスプリングの破断などの問題が起きた。
そこでルガーは二つの改善策を講じる。
一つは板バネをやめて圧縮率を稼げるコイルスプリングに変更したこと。
そしてコイルスプリングをグリップに収めるスペースを確保するために、30口径(7.65mm)のボトルネック高速弾をやめて9mmルガー弾を開発してマガジンの前後長を短くする変更を加えた。
DWM製の9mm Parabellum Pistole実銃
主な改良点はリコイルスプリングにコイルバネを採用し使用弾も7.65mmから
9mmに変更して高速弾をやめて弾頭重量で威力を維持するという方向に変更した
この変更でグリップに収納されたスプリングとトグルジョイントのコンパクト化が
可能になり初めて「片手でも射撃可能な拳銃」が実用化した
この9mm改良拳銃はプロイセン帝国軍に採用され採用年から「P08」と命名された
またカイテル皇帝のラテン語の標語からとって「Pistole Parabellum」とも呼ばれる
のちにこの使用弾薬を9mmパラベラムと呼ぶようになったのはこのルガー専用弾だったことから
マルシンのルガーは構造的にはかなりの再現性だと思う
この9mmパラベラムピストルは、プロイセン帝国軍に採用されP08として制式拳銃となった。
ここで成功を収めるとゲオルグ・ルーガーの原風景…なのかどうか不明だが江戸の敵を長崎で討つ…アメリカ陸軍制式拳銃トライアルにリベンジするという流れとなる。
折しも1906年よりアメリカ陸軍は制式拳銃のトライアルを開始しており、これまでリボルバー一辺倒だったのに対して今回は自動拳銃に意欲を見せていたので渡りに船だった。
しかしここでまた口径問題が壁になった。
(上)Colt M1911A1実銃と(下)マルシンのコルトM1911A1ガバメントモデルモデルガン
軌道に乗り始め米トライアルに挑んだルガーに立ちはだかったのはブローニングだった
ブローニングはモーゼルやボーチャードとも全く違う「ティルトロッキング」という
シンプルなメカで米軍の「45口径に対応してほしい」との要求仕様をクリアした
DWMもP08を45口径にスケールアップした拳銃をトライアルに提出した
この銃は数挺試作されたがルガーの複雑なメカが45口径に合わず信頼性が低いと評価された
結局ルガーはアメリカの拳銃トライアルで敗退し制式拳銃は
ブローニング設計のコルトのモデルで決定されM1911の名前が与えられた
トライアルには敗退したがこの45口径のルガーは世界に数挺しかないということで
のちにオークションで世界一高い価格をつけた銃として記録に残ることになる
人気が高いのでアメリカにはこの45口径ルガーのレプリカを製造するメーカーまで現れる
これはLugermanのLuger45実銃
アメリカ軍制式拳銃の座を獲得するというボーチャード、ルガー2代続いた夢は実現しなかった。
しかしルガーの精緻なメカとバランスの取れたプロポーションのおかげで人気の高い銃にはなった。
特にプロイセン帝国軍最後の戦いである第一次世界大戦を戦い抜き、その当時拳銃を携帯する将校だった年代の軍人が第2次大戦では将軍に昇格していたため、この時代にはプロイセン時代を懐かしんで官給品のPPKやP38を拒否して私物のP08を携帯する将軍が多かった。
銃としては完全分解、再結合が難しく部品が手作業で調整されているために互換性がないなどの欠点があるにもかかわらずこうしたメンタルな背景からの愛用者が多いのがこの拳銃の特徴だ。
ルガーのトグルジョイントのロッキングの仕組み
閉鎖している時トグルは真っ直ぐになっているように見えているが実は
その支点を線で結んでみると下向きに曲がった「く」の字になっているのがわかる
撃発が起きてバレルエクステンションが後退し始めてもこのためトグルは開かない
バレルエクステンションがここまで後退するとトグルの支点についた
トグルグリップがレシーバーの横のスロープに衝突し上に跳ねあげられる
するとボルトを固定していたトグルが自由に曲がるようになり
ボルトの後退モーションとガス圧によりトグルジョイントが完全に曲がりボルトが開く
排莢口に見えるエジェクターと次弾
ボルトが後退すると排莢しボルトが戻る時に装填が起こる
リコイルスプリングとメインスプリングバーとリコイルレバーの関係
ボルトが閉鎖している時にはスプリングは伸びている
ボルトが後退するとカップリングリンクは上に引っ張られ
リコイルレバーも引き上げられスプリングは縮む方向に圧縮される
トリガーとトリガーレバー、シアーの関係
トリガーを引くとトリガーレバーは引き下げられ「く」の字についたトリガーレバーの
角がシアプランジャーを押してシーソー状のシアの反対側が引き上げられストライカーが外れる
ボーチャードはトリガーとトリガーレバーが一体部品だったがルガーでは分割された
バレルエクステンションが後退しているときはシアプランジャーは
トリガーレバーから外れているのでこれがディスコネクターの役目をする
ルガーはまるでパズルのような精緻な部品割のために調整が難しい銃なのかもしれない。
またブローニングやモーゼルなどと比べて連発の動作が遅いという欠点も指摘されている。
これが45口径に対応できなかった理由かもしれない。
しかし45口径ルガーはアメリカではプレミアがついている。
「ウォール街」という古い映画でマイケル・ダグラスがテレンス・スタンプに銃のコレクションを見せびらかすシーンがある。
「このルガーは45口径で世界に数挺しかない非常に珍しい銃なんだ」
「悪いが、いまは銃の講釈を聞きに来たわけではない」
というやりとりをする。
米軍トライアルの時にDWMは45口径のルガーを6挺しか作っていない。
そのうち現存するのは1挺しかないので、これが拳銃のオークション価格の最高記録を持っていると聞いたことがある。
「ウォール街」のマイケル・ダグラスも世界に一挺しかないコレクター垂涎の銃を持つほどの投資の成功者という設定で、そのシンボルとしてルガーが登場した。
(上)DWM製P08実銃と(下)タナカワークスのルガーP08ガスガン
メカニズムはダミーカートモデルのマルシンの方がリアルなんだけど
プロポーションを比較するとなんとなくタナカの方がリアルな気がする
(右)タナカワークスのルガーP08と(左)マルシンのゲーリングルガー
タナカはスリムでマルシンはグラマラス、実銃はタナカの方に近い気がする
(上)タナカワークスのルガーP08と(下)マルシンのゲーリングルガー
かつての実銃と全く構造も分解法も違うMGCモデルガンに比べると
タナカのガスガンはテイクダウンレバーを下げてトリガープレートを外し
バレルエクステンションを引き抜く分解方がリアル
しかしカップリングリンクは存在せずトグルのテンションは
支点の関節に巻かれたコイルスプリングでかけている
タナカのルガーはガスガンの宿命でブリーチにあたる部分がスピストンで埋まっている
なのでストライカー方式再現は不可能でハンマーでガスバルブを叩く構造は仕方がない
それでも最終弾を撃ったらホールドオープンしてマガジンを
抜いても止まっているなどアクションは頑張っている
トグルジョイントという構造がもともと機械工学的には縦の大きなモーションを横方向の大きなトルクに変換するためのメカニズムなので、こういう場所に使うのがふさわしいのかは疑問がある。
もとはトグルジョイントストッパーのように軽くひねって重いものを動かないように固定するとかのメカとして使われる構造。
ボーチャード・ルガーと続いたこのトグルジョイント式のロッキングメカは、結局後続する銃に引き継がれず、このメカも銃器の大絶滅の時代に滅びてしまった。
カンブリア紀の暴君として食物連鎖の頂点に君臨したアノマロカリスは、その種族の系統すら残すことができなかった。
結局カンブリア紀以降も生き抜いたのは脊椎動物の祖先になった脊索動物と節足類、軟体類ぐらいで、それ以外の多種多様な系統は大部分絶滅してしまった。
米軍トライアルから110年の歳月が流れた現在のハンドガンの構造は、ルガーを破ったブローニング方式ばかり。
トグルジョイント方式が自動式回転拳銃やブローフォワード方式とともに絶滅してしまったのは、カンブリア紀以降の大絶滅と似ている気がする。
【追記:固有名詞の表記について】
以前ヘッケラーアンドコックについて調べていたら、個人ブログで
「ドイツ語の発音に忠実に『ヘッケラーアンドコッホ』と記述するべき」
と書いているエントリを見つけたが、それをいうならドイツ語に忠実に
「ヘッケラー ウント コッホ」
と書くべきだと思った。
しかしそれをいうならワルサーは
ヴァルター
と書くべきだしルガーは
ルーガー
と書くべきだと思った。
ここでは開発者の個人名はドイツ語寄りの表記にして、銃の名前は一般に浸透している表記法に寄せた。
ドイツ語に忠実にというのも限界があって「ボーチャード」を「ボルヒャルト」と記述しているネット記事も見かけたが、確かにそうなんだけど実際の発音は「ボーヒャルト」が近いと思う。
2021年11月14日
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